Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】   作:フェルゼン

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Prologue #03

◆ ◆ ◆

 

 

 「創生せよ、天に描いた星(せい)辰(しん)を──我らは煌めく流れ星」

 

 刹那、紡(つむ)がれる絶対不可侵の詠唱(ランゲージ)。

 ヒユリを抱えるコハクの眼前に、虎の顔を持つ巨(きょ)躯(く)の異形が立ち塞(ふさ)がる。

 恐ろしい巨腕を振り上げ、いざ獲物を屠(ほふ)らんと迫ろうと関係なく、声は己の祈りを解き放つ

 

 「妃神の狂気に蝕(むしば)まれて、私は愛する者さえ火に焚(く)べた。約束された末路を前に、凍(い)てた雫が頬を濡らす。

 医神(エイル)の霊薬、詩神(ダグザ)の大釜。あらゆる権能の総(すべ)てを持ってしても、その輝きを掬(すく)い取ることはできない」

 

 それは、闇(あん)黒(こく)の底から響く光の言(こと)霊(だま)、■■の誓(う)約(けい)。天へ捧げる誓いの詠(こ)唱(え)だ。

 慟(どう)哭(こく)して零(こぼ)れ落ちる嘆きの涙は、積もり積もって現れた■■神の瑞(みづ)の御(み)霊(たま)となりて、今ここに少(・)年(・)の(・)身(・)体(・)を(・)媒(・)介(・)に(・)し(・)て(・)芽吹かんとしている。 

 

 「ああ、神聖なる火(ほ)産(むす)霊(び)よ。罪穢れし我が元へ、禊(みそぎ)の託宣を授け給(たま)え。

 蒼(あお)褪(ざ)めて血の通わぬ死人の躰(からだ)がなかろうと、想いは何一つ色(いろ)褪(あ)せてはいないのだ」

 

 戦乱へと齎(もたら)される破壊と開(かい)闢(びゃく)を司る黄金と赫(かく)焔(えん)の光が、絶対的な力の波(ジャガーノート)と化して周辺一帯に轟き渡る。

 黄金光が大虎を吹き飛ばし、赫焔光が周囲の小型を業火の熱で焼き尽くした。

 

 その光景を見届けて、コハクはふと、腕の中で永眠した少女へ視線を落とした。

 まるで眠るかのように息絶えた彼女の身体を、そっと地面に横たえさせると、頬(ほお)を伝う涙を指先で拭い取る。

 そして、痺(しび)れた自身の肢(し)体(たい)に鞭(むち)を打って立ち上がった。

 

 「待ってろ⋯⋯すぐ⋯、帰ってくる⋯⋯」

 

 口(くち)許(もと)に微笑を浮かべ、優しい声音で告げた後、コハクは一度だけ瞼(まぶた)を閉じる。

 決意と共に瞼を開き、次の刹那には踵(きびす)を返して走り出していた。

 

 目指すは先ほど地面に突き刺さった長剣。

 何(いず)れにせよ、武器がなければ戦えない。

 如(い)何(か)なる神や"運命"でも、決して穢れない絶対不可侵のモノが、その存在感を強めていく。

 空間を震撼させる力を前に、虎に酷似した顔を持つ巨大な異形が、恐怖の咆哮を上げて少年へ牙を向けながら肉迫した。

 

 前足の肩甲骨から生える橙(だいだい)色(いの)のマントを帯電させ、決死の特攻を仕(し)掛(か)ける異形。

 だと言うのに、恐ろしい巨(きょ)軀(く)*1が放つ突進攻撃を前に、少年は泰(たい)然(ぜん)*2とした様子を維持している。

 生命(いのち)を貪(むさぼ)*3り喰らう牙を自(・)然(・)と(・)受け流すように迎撃し、軽(・)い(・)動(・)作(・)で(・)殴(・)り(・)飛(・)ば(・)し(・)た(・)。

 

 それが、試合開始のコングとなる。

 周囲に群がり、獲物の所(しょ)作(さ)を探っていた小型の異形らが、瞬く間に捕食せんと雪(な)崩(だ)れ込むが、時すでに遅し。

 あらゆる"常識"を無視して大地に輝く固有の星と、それを統べる神の新生により、基準値(アベレージ)は発動値(ドライブ)へと移行しているのだ。

 

 もはや、小型程度の異形では少年の疾走を止めるに能(あた)*4わず。

 走るだけで、二つの光を纏(まと)うだけで、全身が焼けていく。

 いいや、消(・)滅(・)していた。だが、その程度の理由で止まる訳にはいかない。

 あらゆる不条理の代償を、苦手な胆(たん)力(りょく)で耐えながら、彼はただひたすらに長剣の元へ疾走し続ける。

 

 「背負いし罪と、課せられた使命(つとめ)を、涙と共に乗り越えよう。怒りさえも置き去りに、白翼継嗣は地祇(ちぎ)へと降る」

 

 堪(こら)えろ。否、耐えてくれ。た(・)だ(・)そ(・)れ(・)だ(・)け(・)で構わない。

 重要なのは、目的を果たすことであり、それを達成させる覚悟のみ。

 何故なら、意志力は時に勝利の趨(すう)勢(せい)を左右する。

 ゆえに、まずは足掻け。無様に抗いながら、己の意志を貫くのだ。

 

 ただ前へ。ただ前へ。

 "生きる"ために、帰るために。

 悲哀の連鎖を断ち切る情熱を胸に宿せ。道理は蹴飛ばし、不可能を踏破しろ。

 無理だとか、無駄だとか、そんなものは我らにとって前に進む為の起爆剤でしかない。

 

 「ならばこそ──天地奈落を流離(さすら)うかの如く、再び銀河を目指せ天駆翔(ハイペリオン)。

 水星よりかつて譲られた竪琴の音を悲哀と共に奏でながら、果てなき日常(たびじ)を取り戻すのだ」

 

 そこには己が片翼に檄(げき)を飛ばしつつも、同時に心の底から慮るような色を宿している。

 いや、実際に心配なのだろう。何故なら、声の主が宿す星光(ほし)は基準値と発動値の差が激し過ぎる上、その代償は神(・)宿(・)コ(・)ハ(・)ク(・)が(・)支(・)払(・)わ(・)ね(・)ば(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)のだから。

 正直、自らの意志で走り出し、荒神(アラガミ)相手に牽制できただけでも驚嘆に値することだった。

 

 ゆえに、声の主に出来ることと言えば、終始一貫として変わらない。

 せめて片翼だけでも生かすため、問題の解決手段を彼に貸し与えようと、己の異能を目覚めさせていく。

 

 「我らの想いは、今ここに──」

 

 そうして、コハクの手が長剣の柄(え)を握り締めた刹那に。

 

 「超新星(Metal nova)──

 朔月と耀やけ(Panta-rhei)、黄金の天駆翔(Crysoluis)」

 

 ──さあ、"逆襲(ヴェンデッタ)"を始めよう。

 

 大切な"過去"を抱き、夢見る"未来"に行くために。

 今こそ、愛しい"現在(いま)"を生き抜こう。

 悲哀(なげき)と慟哭(さけび)を知る超新星が、長き時を経て今ここに、新生を果たすのだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 次瞬、莫大なる質量を有した光焔が、周辺にいる全ての異形を薙ぎ払う。

 たとえ、どれだけ大量の物質を捕食した異形であろうとも、この質量には耐えられるはずが無い。

 実に、那(・)由(・)多(・)分(・)の(・)神(・)秘(・)を内包する光焔だ。その巨大すぎる波動は、もはや一個人が扱えるエネルギー量を超過して、尚も増大し続けている。

 新(セ)西(カ)暦(イ)に満ちる星辰体(アストラル)と禍神体(オラクル)に感応すればするほど湧き上がる無限の光焔。破壊の神威の具現たる黄金の光と、世界に開(かい)闢(びゃく)を齎(もたら)す深紅の焔が、今、長剣に、その肉体に、宇(・)宙(・)の(・)ど(・)こ(・)か(・)に(・)あ(・)る(・)惑(・)星(・)として、この世界に顕(けん)現(げん)した。

 

 「······あぁ」

 

 黄金と黒(くろ)鋼(がね)の長剣を構えながら、コハクは独り言(ご)ちる。

 

 「分かって···いたはずなのにな······きっと、その手を離したら、後悔するって······」

 

 同時、新たな涙が頬(ほお)を濡らした。

 今も腕の中に残る温もりに、彼の口許には自(じ)嘲(ちょう)の笑みが浮かぶ。

 

 「グルル······ッ」

 

 周りには、先ほど薙ぎ払った異形とは別の異形たちが、喉(のど)を鳴らして獲物の様子を窺(うかが)っていた。

 にも関わらず、コハクは語り続けた。朗(ろう)々(ろう)と。

 

 「···守りたかった······守りたかったんだ···本当は······。だけど、真正面から守れば、きっと日向で笑うあいつを、非日常(こっち)に巻き込んじまう······。

 だから···それだけは嫌だった······。あいつには、日常(ひなた)にいて欲しい···笑顔でいて欲しい······、泣いて欲しくない···。あいつが日常(そっち)にいてくれたから、俺は帰りたいって······心の底から思えたんだ」

 

 それは、本音と共に吐き出される慙(ざん)愧(き)の念。

 彼が神宿ヒユリと言う、日常の象徴を突き放してまで守ろうとした、虚飾のない動機である。

 

 「周りの人が言うように···俺は化(・)け(・)物(・)じみた体質だから······」

 

 手にした武器は、対異形用に製造された物。

 しかも、ただの武器ではない。取り扱う上で、武(・)器(・)と(・)の(・)適(・)合(・)率(・)が(・)求(・)め(・)ら(・)れ(・)、適(・)合(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)武(・)器(・)に(・)接(・)続(・)す(・)れ(・)ば(・)、最(・)悪(・)の(・)結(・)末(・)が(・)待(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)ような代物である。

 そんな武器と接続しながら、最(・)悪(・)の(・)結(・)末(・)に至らぬ少年は、なるほど確かに化(・)け(・)物(・)と言えた。

 

 人間は、自分とは異質な人(せい)間(ぶつ)を排除したがる性(さ)質(が)を持つ。

 自分には理解できない、許容できない存在を前にして、恐れることなく接する事が出来る人間など、それこそ指で数えられる程しかいない。

 それだけ、人の心は強く出来ていないのだ。

 

 ゆえ、コハクは化(・)け(・)物(・)と呼ばれるのも、謗(そし)られるのも、罵(ののし)られるのも、忌み嫌われるのも、総じて無(・)理(・)は(・)な(・)い(・)と受容したのである。

 ただ、自分の愛する日常が続けばいい。

 それを守れれば十分。日常(そ)の象徴たる少女が忌避される存在にならなければ、どんな苦痛とて耐えられた。

 

 「その為には···手を離すしかなかった······」

 

 拒絶しなければ、彼女を守れないと。

 そう思い、差し伸べられた手を弾き、振り解いた。

 

 だが、そんな事で凹(へこ)たれるほど、あのヒユリと言う少女は弱くも、繊細でもない。

 わ(・)た(・)し(・)だ(・)け(・)は(・)、あ(・)な(・)た(・)の(・)味(・)方(・)だ(・)よ(・)──そう言って、共に過ごそうと試みるのだ。こちらの気持ちなど、一切無視して。

 

 「···馬鹿なのは······俺の方だッ」

 

 刹那、襲い掛かって来た小型恐竜を彷彿とさせる異形を、右から左に、長剣で横一文字を描きながら、その身体を真っ二つに寸断する。

 鮮血が宙を舞う中、突進して来たのは、緑の昆虫類を連想させる小型の異形。こちらも、流れるような動きで、左から右に描く逆さ横一文字で斬り伏せた。

 

 「守りたいと思うのならッ」

 

 静かに慟(どう)哭(こく)しながら、振りかぶった長剣に、黄金と赫焔の破壊光を集束させる。

 同時、獲物を捕食せんと牙を剥(む)き、突進してきた巨大魚の姿をした異形に狙いを定め、タイミング良く長剣を振り下ろした。

 

 力を装填(チャージ)された事で、リーチの伸びた斬撃は、意図も容易く巨大魚の身体を構成する結合部位を全て破壊する。

 次いで、空を裂く音と共に襲来して来たのは、翼手を持つ人型の異形だ。

 

 その襲撃を、鋭い聴覚で予見していたコハクは、即座に装甲を開く。

 成人男性すら、簡単に地面へ踏みつけられる鳥の趾(あし)が装甲に爪を立てるも、コハクを傷付ける事は出来ない。

 装甲を開く際、長剣を逆手に持ち直していたコハクは、そのまま返す刃の如く長剣を振り上げて反撃。その斬閃で以て、鳥怪人を斬殺した。

 

 「そ(・)の(・)手(・)を(・)、離(・)す(・)べ(・)き(・)じ(・)ゃ(・)無(・)か(・)っ(・)た(・)ん(・)だ(・)ッ(・)ッ(・)」

 

 守りたいと願う者の手を握り、離すまいと掴み続けること。

 それが守ることなのだと、喪失と共に理解する。

 

 「だから······」

 

 だから、せめて······と続けながら、空中を飛び交い、毒を吐き出す卵形の異形を、地を蹴り上げて跳躍すると同時、身体を縦回転させて斬り捨てた。

 地面に向かって墜落しながら、石(せっ)膏(こう)像(ぞう)のような人面を持つ異形の長い首を、斬断する。

 同時、爆砕する地面。少年の身体を中心に走る紫電の閃光が、淡い金色の軌跡を鋭角的に描き残しながら、地面を滑って四方に拡散した。

 

 猿型の異形を始めとした地を這(は)う異形らの群れが、地面を奔(はし)る稲妻に気付かず、その足で踏みつけた瞬間、黄金の電撃が迸(ほとばし)る。

 苦悶の声と共に、耐久力の低い個体から息絶えて行くのを見届けて、コハクはゆっくりと立ち上がった。

 

 「あいつとの約束は、必ず守ろう」

 

 小さく呟かれた言葉は、嘆きを情熱へと変える誓い。

 傷付きながらでも、間違いながらでも、相手(だれか)と手を取り合い、歩み続けること──それこそが少女から託された想いであり、願いである。

 どんな茨道でも、大切な相手(だれか)がいれば、それだけで幸福だ。

 

 ならば、この大切な"過去(おもいで)"を後ろに背負うような真似だけはしたくない。

 これは単なる勘に過ぎないが、後ろに背負ったが最後、自分は絶対に忘れたくないと思っていた"過去"すら切り捨てるだろう。

 何(・)故(・)そ(・)う(・)誓(・)っ(・)た(・)か(・)という思い出を薪(たきぎ)にしながら、誓(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)という状態にのみ純化させる奇形じみた生き方を実践する、"運命"の虜(りょ)囚(しゅう)になってしまうのではと。

 よって、それだけは願い下げだと、自らが背負う■としての在り方を、心の底から否定した。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

*1:
大きい身体。巨躯とも。

*2:
物事に動じないで、落ち着いている様。

*3:
際限なく欲する。

*4:
 不可能な事の意。なしえない。できない等。

 また、可能な事の意。なしえる。出来る等。明治時代以降は、肯定な言い方にも使える。




 更新が遅れて、大変申し訳ありませんでした!
 なかなか納得出来る詠唱が書けなくて、元ネタをインプットにインプットを続けていたら、こんなにも遅れて······いや、本当に申し訳ない<(_ _٥)>

 書き方としては、こんな感じ。

 1.マス目のある紙を用意します。
 2.詠唱のコンセプトを決めます。
  例)公開ラブレター、政権公約、自虐ネタetc.
 3.詠唱の元ネタを、コンセプトに沿って書き出します。
 4.ネットで上書きします。
  この際、不要と感じた部分は削除すると良いでしょう。
 5.以上、納得が行きましたら完成です。

 と言った感じ。何だ、このレシピ感。
 まあ、忘れないようにするには、これが1番ですね。
 初っ端から苦戦しましたが···この為、詠唱がある部分はどうしても時間がかかると思います。

 しかし、型月でヘラクレスの幼名ver.出てたのね。
 詠唱の元ネタを探ろうとしたら、「アルケイデス Fate」と出てきて、「誰かが考えた二次鯖か?」と思いながら調べてみたら、公式でビビったww
 被らなくてちょっと安心(そこ!?)
 後、今年のサンタさんに発狂&吐血。カッコイイ。
 イベント周回は専ら早朝と夜中なので、執筆活動には支障はありません。てか、出させません。

 ステータスは次回公開!
 遅れは必ず取り戻す! こういう時こそ、「まだだ!」
 では、またの次回〜。

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