Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】 作:フェルゼン
逃げて、逃げて、逃げ続ける。
先に待つ、ろくでもない未来から。
向き合いたくない全てから。
逃げて、逃げて、逃げ続けるのだ。
だからまず、第一に目を閉じよう。
耳を
呼吸を止めて微動だにしない。
心は、石のように
1
そうして、
感じたくないもの、気付いてはいけない事実──それが手に余るから、
「キシャアァァァァァァアアアアッ!!」
「······邪魔だ」
思わず耳を塞ぎたくなるような奇声を上げ、飛び
まるで、言葉通り
「ギヤァァァアアアァァァァァアア──ッ!」
刹那、苦悶の咆哮を上げる蠍の
鋏を粉砕された衝撃で巨大な
それを、青年は決して見逃しはしない。
「くたばれ···ッ!」
一気に敵の
だが、青年の腕に伝わるのは、生々しい獲物の肉と骨を断ち切る感触ではない。むしろ、感じるのは空を斬り裂いたような
恐らく、先の攻撃は蠍とは思えぬ
押し出されるような衝撃波が、この場に
「キエェェェェェェェエエッ!!」
「づぅッ、ぉぉ──ッ」
奇襲にも近い突撃。避ける暇もない。
結果、青年は大剣を盾代わりにしたまま、巨大アラガミの身体を支える事を
再び吹き荒れる衝撃波。目深に
浅黒い肌とは対照的な、白に近い
それは、新西暦の世において、歴史の転換期に必ず確認されたという、月の女神を象徴する髪色であり、彼もまた、先代たちと同じ宿命にある事を意味している。
少なくとも、
だからこそ、青年は逃げ続けている。
冗談ではないと、
「······ッ、くそっ、たれがぁぁぁぁぁああッ!!」
刹那、
踏ん張りが利きにくい雪原を、
最早それは、
何故なら、彼が貫く生き方は
忌まわしい過去から。
現実に生きる自分から。
腹の底から憎悪する存在から。
先に待つ、ろくでもない未来から。
何もかもから逃げて、逃げて、逃げ続けるのだ。
だからこそ──
「目障りだ、消えろ」
闇の眷属らしい、底冷えするような死刑宣告と共に、力を
放たれた斬撃は、狙い
「ギャァァァァァァアアアアッ!!」
当たり前に直撃を喰らい、耳障りな断末魔を上げる。
大きな音を立てながら、白い地面に落下した
「·········」
対象の討伐を確認し、ソーマは残心を決めるでもなく、深い
大型アラガミの討伐任務を単騎で成し遂げながら、彼の心に達成感というものは存在しない。
あるのは空虚。獣を殺すことに慣れた人間特有の虚脱感だけ。
だがしかし、それもむべなるかな。ソーマの逃避行は、現在進行形で続いている。
むしろ、その逆──勝てば
必ず、より強大な姿となって次の苦難が訪れる。
それこそ何かの
敵に、任務に、難問に、勝負に、勝てたところで状況は一向に改善されない。それどころか、難易度が上昇した状態で、似たような事態が連続するという始末。
身をすり減らして勝利した途端、より恐るべき難題が必ず目の前にふりかかる。
まるで、災厄という名の宝石だけが詰め込まれたパンドラの
それを、ソーマは誰よりも知っている。
ゆえに、彼は決して警戒を
獣を殺し慣れた人間特有の虚脱が、そこにはあった。
「······、────」
討伐対象外の
右手に握る
刹那、黒光する大剣が
二、三度ほど肉を
その際、神機を制御するヘリオドール色のコアが光を灯したが、
レッグポーチから携帯を取り出し、目的の人物に電話をかけた。
「こちらソーマ、対象の討伐を確認した。帰投準備に入る」
事務的な報告。それ以上の意味など必要ない。
携帯をポーチの中へ仕舞い、
旧西暦時代、鶴岡八幡宮と呼ばれた場所で、独り帰投ヘリの到着を待ちながら、忌々しそうに目を吊り上げた。
「······いる」
何が? 言うまでもない。
「アイツらの中に······」
何が? 同じく言うまでもない。
「っ────、ふざけるな」
彼が
そう、“勝利”からは逃げられない。
誰であろうと、例外なく。
「俺は、誰にも、授けない」
ゆえに、その真実を
否、足掻き続ける事を望んでいるのだ。
2
しかし、いいやだからこそ──
「──理解した。ならば、
光に属する存在は、その望みこそを粉砕する。
代わりに場を満たしてくのは、春の訪れを告げるような、生の暖かさ。決して苛烈過ぎず、厳し過ぎず、動植物の生命活動を緩やかに促す、太陽の恵みに他ならない。
仮に、この場に光の眷属を知る者がいたならば、
この男は、本当に光の眷属なのかと。
肌を刺すような威圧感が出ていない。
激烈極まる雄々しさが
少なくとも、この男──
「
ゆえに、“勝利”から逃げ出したいのだろう、
さも、ここにはいない者が目の前にいるかのように語りながら、
「ああ、確かに。今の私なら共感出来るよ。間違いや
初志貫徹、毎日休まず
部屋は持ち主の精神状態を
ならば、汚れた部屋を掃除しないのは、疲労が蓄積している証なのかもしれない。
子供の世話や他の家事に追われた結果、洗濯物を
対人恐怖症を抱えた者であれば、相手の目を見て話が出来ないのも、仕方がない側面があるのではないか、と。
「別に──先達の言葉を否定するつもりはない。
むしろ、賛同さえしているよ。やるべきことを正しくやろうと努力すること。それを心がけるからこそ、人は初めて何者かになれるのもまた事実。
だが逆に、こうも思う。
ある意味、甘いと言えるだろう。
だが、
彼はただ、見逃してやるだけだ。今代の
ゆえに──
「ならばこそ、無理強いはせんよ、
ここは
相手が
「あまり、
最初から運命の渦中にいないことは百も承知。
ゆえに、切り拓く。運命の外側から内側に入る道を。
そう、
「総ては我が比翼のために」
彼が胸を張りながら、当たり前に生きて当たり前に死ねるように。押し付けられたのではなく、託されたのだと思えるように。
全力で、
それは光に属する存在として、余りに異質な行動理念だろう。
不特定多数の“誰か”ではなく、特定個人の
あー、約一ヶ月振りの更新です。遅くなりました。
にも関わらず、文字数少なくてごめんなさい!
結局、あのあと加筆修正しました。
本当に申し訳ない。
基本的なテーマは加筆前と変わりません。
シルヴァリオで言う月の女神枠が、銀の運命を
短文なのは変わらずorz...
アルカ君は甘いというより、飴と鞭の使い分けが上手いだけなので、ゼファーさんほど惰性が強いと、流石にヴェティママみたいになる。
それこそ、「立ちなさい、ゼファー。まだ一撃もらっただけでしょう?」的なことも、必要なら言う。アルカ君の場合、必死に庇いたい衝動を噛み殺しての発言になるけど( ̄▽ ̄;)
今回も読了して頂きありがとうございます。
また、次回にお会い致しましょう。
では| ・∇・)ノシ♪