Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】 作:フェルゼン
1
翌朝──
リンドウは、
チラリと、片目で部屋に呼び出した青年を
呼び出しに応じた辺り、完全な無視を決め込んでいる訳ではないと、青年の態度に苦笑しながらも判断して、リンドウは彼に告げた。
「急に呼び出して悪かったな、ソーマ。今日は折り入って、お前に頼みがある」
「断る」
刹那、ソーマと呼ばれた青年の口から飛び出したのは拒絶の言葉。それにより虚を
話し始めた瞬間、聞き手側が
予想通りと言えば、予想通りの反応だ。
だがしかし、まさか出鼻から折られるとは、
普段と変わらぬソーマの態度に
「···あのな、オレはまだ何も話しちゃいないだろ。断るかどうかは、オレの話を最後まで聞いた後でも遅くないと思うがね」
「···············」
「無言は肯定と見なすぞ〜」
「······ちっ」
舌打ちし、壁に背を預ける。フードの隙間から
三度目の
ソーマは確かに、人付き合いが苦手な一匹狼だが、人見知りする
明らかに、普段の調子を崩している。その理由を吐き出させてやりたいとは思うものの、同時に自分の踏み込めない領域だと、リンドウは即座に理解した。
秘めた痛みや過去を白日へ
リンドウは完全に前者側の人間だが、だとしてもソーマに関しては踏み込みたくても踏め込めない理由が、
その
ゆえに、今は
「結論から言うと、おまえにはエリックと一緒に、新人の実地演習に同行してもらいたい」
「断る」
再び即答。一瞬の逡巡もなく拒絶され、リンドウは盛大に肩を落とした。
予想通り過ぎる反応に、思わず頭を抱えて泣き出したくなる。
「まあ、そう言うなよ、ソーマ。なぁに、簡単さ。お前が前線で陽動。エリックが後衛でバックアップ。で、新人は新型らしく、遊撃を──······」
「興味が無い」
リンドウからの提案を
「あっ、おい! ちょ、ちょっと待て!!」
そのまま部屋を退出しようとする若者を、リンドウは慌てて呼び止めた。
同時に、ソーマの足が止まる。ゆらりと、まるで
「······なんだ」
「なんだ、じゃない。人の話を最後まで聞けって、さっき言ったばかりだぞ」
「俺には関係ない。新入りの実地演習には、お前とサクヤが同行すれば良いだろ」
「そうしたいのも山々なんだが···オレは
「なら、他の奴と組ませろ。俺は知らん」
冷たく突き放され、ソーマは改めて歩き出し、リンドウの部屋から退出しようとした──その時である。
「フフフッ」
廊下内に、不敵な笑い声が木霊した。
刹那、ソーマの顔が忌々しげに歪む。
見れば、何時からそこに居たのだろう。エレベーターホールで、赤毛の青年がサングラスを光らせて待ち伏せしているではないか。
まるで、生理的嫌悪感を
対する赤毛の青年は、そんな反応など全く意に介さず、意気揚々と声を張り上げる。
「話は聞かせて
「てめぇ、何でこの
「──ごはぁッ!?」
それはもう、
見事に
「ぐふっ······さ、流石は、僕の認めた
言いながら、彼は直ぐに起き上がり、いつものノリでソーマの攻撃を褒めるのだ。
「何が
「何を言う! 本気で殴って来てるのだから、技名の一つはあって当然だろうッ!!」
「てめぇは中二病か何かか!? 馬鹿かこの、
「ことわーる! これもリンドウさんの命令だ。君が任務を受けるまで、僕は絶対にここは通さんと誓っているッ」
「──、────」
次瞬、再び射殺せんとばかりの目で睨みつけられ、リンドウは
殺気という殺気を受け流し、
「ソーマ、君の気持ちは痛いほど分かるとも! 未来ある新入り君を自分と同じ任務に同行させるべきではない······そう、考えているんだろう?」
「──誰が、そんなことをッ」
「言わなくとも分かるさ! 僕は君の親友だからね!」
「誰が、誰の、親友だと?」
「このエリックが、君の」
「ふざけるなッ!」
「どわぁぁぁあああーッ!!」
再び繰り出されるは、ソーマ
エリックはそれをまともに喰らい、吹き飛ばされながらも、決して引き下がろうとはしない。
不死鳥の如くとは、まさにこのこと。その諦めの悪さに、流石のソーマも顔を引き
「かはっ···な、なんか、今日の君······何時にも増して、バイオレンスじゃないかい? いや、君の愛のムチは今に始まったことじゃないから、僕は別に構わないけど······」
「てめぇ···まさか、マゾか······?」
「何を言うッ。この程度で倒れるほど、僕は腰抜けじゃないとも!!」
「·············」
違う、そうではない──と、否定した所で無駄だろう。話は絶妙に噛み合わぬまま進行していき、いつものように振り回されるに違いない。
そんな未来を先見して、ソーマは盛大に溜息を吐き、舌を打ちながら吐き捨てた。
「···分かった、行けば良いんだろ。行、け、ば」
「おー、分かったらさっさと行ってこい」
「ふん···」
リンドウの手にあるオーダー表をぶん取ったソーマは、機嫌が悪いのを隠さないまま踵を返し、エレベーターに向かって歩き出す。
仕舞いには、エリックすら置いて行こうとするものだから······
「あぁ、待ってくれ、ソーマ!」
「やかましい! 一々、俺に
慌てて後を追い駆けるエリックに、年相応の罵倒を浴びせるソーマ。
まさに、嵐のような騒々しさで立ち去る二人を、生暖かい目で見送りながら、リンドウは上着の胸ポケットから
口に
はて、自分は大切な事を忘れていないだろうか?
と、疑問に感じた瞬間、リンドウはようやく大切なことを思い出す。
「やべ、コハクも同行させるよう言い忘れた」
しかし、ソーマのことだ。新人の実地演習だと知りながら、勝手に
バツが悪そうに頭を
内容は至ってシンプル。
現地集合──ただ、それだけだった。
2
そして、一方──
ソーマとエリックの二人は、一足先に今回の作戦区域内へと足を踏み入れていた。
「···良かったのかい?」
「何がだ」
「例の
「············」
無言。返答はない。
或いは、無言の肯定なのだろう。
実際、新人との実地演習だと言うのに、ソーマは当の本人を
他でもない、ソーマの独断で。
エリックはそれに異論を唱えない。むしろ、彼の判断に賛同さえしている。
裕福な家庭に生まれ、トイレの扱いが下手で、よく詰まらせては清掃員を困らせている
むしろ、その逆。こと人を見る目に関しては、エリック・デア=フォーゲルヴァイデも一家言を持っている。
ソーマと共に行動するようになって、まだ二年しか経過していないが、されど二年とも言うだろう。それだけの時間があれば、相手の本質を見極めることも可能なのだ。
それは、ある種の才能とも言えるだろう。
周囲の
ゆえに、エリックには分かるのだ。ソーマの真意、その冷たい言動の裏に隠された、彼の本質とも呼べるものが。
「君ねぇ···、確かにここは、他の場所と比べ、
ゆえに、新人くんを置いていく。危険は排除する······理解は出来るが、それを何故、リンドウさんに言わないんだい? ソーマが指摘すれば、彼も作戦区域を変更してくれただろうに。その、何も語ろうとしない態度は君の悪い癖だぞ」
「勝手に言ってろ。俺には関係ない」
鬱陶しげに吐き捨て、振り下ろしていた大剣を肩に担ぐ。
エリックの語りに、さして興味がないのだろう。ソーマは相手に
相変わず無愛想な親友の態度に、エリックは思わず深い溜息を
「君のそういう所······少し心配だよ」
「なに···?」
聞き捨てならない
任務に出撃して以降、一度も目を合わせずにいたソーマが、
「対人関係からすぐ逃げる。足が速い。そして意外に手も早い。いや···手の早さは意外ではないか······いずれにせよ、僕から見たソーマという少年は、まるで盗賊と旅人の星と言われる水星のようだと、僕は思うんだ」
「······お前、俺を馬鹿にしているのか?」
「まさか!」
むしろ、褒めている方だと続けても、説得力は皆無に等しいだろう。
何せ、水星に対応する大抵の者は、特殊プレイ好きの歪んだ性癖の持ち主なのだから。
「
「······別に」
「なんか距離を置いている感じにスカしてて、少し感じが悪い所は?」
「············」
「リンドウさんと微妙に怪しかったり」
「······おい」
「ははっ。今のは流石に冗談だ。気にしないでくれ」
笑えない冗談に、ソーマは顔を
文句の一つでも言い返してやろうかと思い、口を開きかけた──その時。
「だが···少しだけ、悔しく思ってね」
ポツリと、漏らすように
息を詰めるソーマとは対照的に、エリックは
「ソーマの顔は、常に何か悩んでいる顔だ。だと言うのに、何も相談してくれない······無論、僕はまだ若手だ。
「············」
「僕のブラストは、中々の火力を誇るぞ」
「誤射率No.2の野郎に言われても説得力がねぇな」
指摘してやれば、エリックは
本人曰く、カノンよりはマシだと自負しているようだが、ソーマから見れば五十歩百歩だ。どんぐりの背比べと何ら変わらない。
にも関わらず、相談してくれと
ああ、この男は──全く、どうして。
ここまで世話焼きなのかと、思わざるを得ない。
駄目なことだと、分かっている。
心を開き、気を許してはいけないことを。
ソーマという青年は誰よりも何よりも、その恐ろしさを理解しているからこそ、駄目だと己の心を自戒するのだ。
「あ、そうそう!
聞いてくれたまえ、妹が
「お前···またそれか······」
ゆえに──いいや、だからこそ。
リメイク前同様、エリックのキャラ掘りがメイン。
ドラマCDのエリックとはかなり異なると思いますが、うp主はゲーム外に『GE』のメディア媒体に弱いので、捏造するしかありませんでした。
何より、本作におけるエリックとエリナは、『Dies irae』に登場した「アルフレート・デア・フォーゲルヴァイデ」の血筋という設定。
勿論、ベア子との子孫。せめて、せめてアルフレートは報われて欲しいッ(切実)
ふと、思ったこと。
不動遊星は盧生の資格保有者だと思う。
というか、普通に甘粕の好みだろ、彼。
では、今回はここまで。
またの次回にお会いしましょう´∀`)Ψノシ