Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】   作:フェルゼン

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第九話 家族の為に/Für die Familie 中編

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 家族の為に──

 戦う理由など、それ一つで十分だ。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 藤木コウタの父は、ただの軍人だった。

 

 神機奏者(ゴッドイーター)としての適正は(もち)(ろん)のこと、星辰奏者(エスペラント)の素養も持たない。

 唯一の特別性と言えば、貴種(アマツ)の血を引く程度のものだろう。コウタも人のことを言えないが、普通という言葉は彼のような存在の為にあるのだろうと、幼いながらに思っていた。

 

 だが同時に、それで(おの)がアマツの(らく)()(しゃ)だと嘆くほど、父は卑屈な感性を持ち合わせてはいない。

 彼にとって、神機奏者(ゴッドイーター)の適正だとか、星辰奏者(エスペラント)の素養だとか、そんなものは総じて()()

 何故なら、それは目的達成の手段に過ぎないのだから。

 

 そして当然、必ずしも手段が一つとは限らない。

 父は常に、自分に出来ることを探し続ける男だった。仮に無いのなら、出来ると思うことを提案してみる。

 ある意味、頑固なのだろう。出来ないことは出来ないのだと、そのまま受け入れるつもりがない。

 

 例えば、神機でもない(ただ)の弾丸に禍神体(オラクル)()()して、小型アラガミを討伐してみたり。

 それを応用して、禍神体(オラクル)を塗布した火薬やニトログリセリンの類で爆弾を作り、接触禁忌種と呼ばれる個体でなければ、大ダメージを与えたりなど。

 母曰く、色々尽くせる限りのことを尽くしたらしい。

 

 らしい、と表現したのは、コウタに父の記憶が余り無いからに他ならない。思い出が無いという意味ではなく、幼過ぎて思い出すことが出来ないのだ。

 少なくとも、鋼の英雄のような気質の持ち主では無いと断言出来る。

 父がそうした諸々を実行したのは、別に不特定多数の“誰か”の為ではない。より根本的な問題から家族を守る為に、彼は行動に移したのだ。

 

 だから……

 

 ──俺は別に、大したことはしてないよ。

 

 それが、父の口癖。

 

 ──ただ、大切な家族を守りたかった本当にそれだけなんだ。

 

 本当に、ただそれだけ。

 無論、かと言って、それ以外はどうでもいい訳では無い。

 

 ──それにさ、……………られに、家族を…………なん…………こと…………だろ?

 

 今では、(おぼろ)()と化した父の言葉。

 何を語っていたのか、全く思い出すことは出来ないが、一つだけ言えることがある。

 彼がその理念を抱いていたからこそ、結果的に不特定多数の“誰か”を助け、家族も守ることが出来ていたと。

 

 何故なら、そんな父の背中に憧れ、自分もまた彼のように生きてみたいと、藤木コウタは心の底から願ったのだから。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

   4

 

 

 そして──

 

 なべて世はこともなし。

 時は流れる。日はまた昇る。数多の傷と痛みを(れき)(さつ)しながら。

 荒廃した日々は(ゆる)やかに、されど穏やかではない様相で続いていくのだった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 翌日。

 昇降機からエントランスに降りたコハクは、小さな(ため)(いき)を吐いた。

 

 周囲を見渡せば、普段通りの任務に勤しむ神機奏者(ゴッドイーター)達の姿があり、昨日のお通夜状態が嘘のようである。

 別に、その変わり身の速さに呆れた訳ではない。死者を(いた)み、嘆く時間を共有出来るのが僅か半日程度という現実に嫌気がさしただけ。

 

 ──なるほど確かに、()()()()()()()()だな……

 

 ソーマの言葉を思い出し、胸中で独り吐き捨てる。

 何を指して、彼はクソッタレと称したのか。その真意は未だに分からないものの、別の視点見た場合、何も的はずれな意見ではない。

 神宿コハクが愛しているのは、なんていうことはない、ありきたりな日常だ。悲しければ嘆き、腹が立てば怒れば良い。そうして分かち合える刹那こそ、()()えのない宝である。

 ()()神機奏者(ゴッドイーター)の本質が軍人であるとは言え、戦う相手がいなければ、普通の生活を送れたに違いない。そう断言出来るからこそ、コハクはソーマの意見に賛同したのだ。

 

 ふと、(のう)()にスノーノイズが走る。

 その向こう側。(ぎょう)(こう)とも西日とも受け取れる光に、悠然と(たたず)む人影があった。

 

 『世の不条理に怒るかね? 英翼(ベレロフォス)

 “いや

 『ほぉ……。その理由を()いても?』

 “理由、ねぇ

 

 問いに答えながら、コハクは(きびす)を返し、歩き出す。

 ラウンジに設置された長椅子に腰を下ろすと、流れるように1階ロビーに視線を向けた。やはりと言うべきか、そこにエリナの姿は見渡らない。

 (しばら)く会えそうにないことを深く噛み締めながら、言葉を継ぐ。

 

 “一番は、()()()()()かな”

 『と、言うと?』

 “怒る気持ちは分からんでもないが怒った所で俺の夢が叶う訳じゃあない。(アラ)(ガミ)が生まれた事実が変わる訳でもない。

 だったら、どうしたら俺の夢が叶うのか、お前と一緒に考える方がマシだぜ”

 

 コハクの持論に、金髪の偉丈夫は僅かに驚愕で揺らいだ後、()(ちょう)にも似た苦笑を浮かべた

 

 『フッなるほど、(けい)らしい』

 

 11年前のあの日以来、二心同体として共に生活を送ってきた男だからこそ分かる。先の弁は、嘘偽りない神宿コハクの本音なのだと。

 光の眷属でありながら、(ただ)(びと)の感性を持つ比翼の(まぶ)しさに、思わず目を細めた──その時。

 

 「おお、今日はアンタと一緒かぁ」

 

 不意に、明るい声がエントランスに響き渡った。コハクが我に返ると同時に、昇降機からコウタが降りてくる。

 それと入れ替わるように、彼の脳裏を覆おおい尽つくしていたスノーノイズが、男の姿と共に、空気に溶け込むように消えていく。

 

 「よぉ、久しぶり」

 「うーっす、お互い無事で何よりだね! 命あってのこの商売だからねぇ」

 「…………?」

 

 普段通りの明るさを振り()きながら、こちらに歩み寄ってくる同期に違和感を覚えて、思わず(いぶ)かしげに目を(すが)めてしまう。

 何だ、これは? 何かが()()しい。

 その声音も、その態度も、普段とは何も変わらないのに、とても不自然に見えるのだ。まるで、背伸びをしているような、無理をしているような……そんな印象が(にじ)み出ている。

 

 「どうした、いきなり。お前がそんなことを言い出すなんて……なんか、あったのか?」

 「────! いや、別に! 何でもねえよ」

 「本当か?」

 「本当だって! おまえこそどうしたんだよ、いきなり……

 「なんとなく──」

 

 そう、本当になんとなく。

 

 「らしくねえなって、思ってな」

 

 コウタから感じた印象を言葉通りに伝えると、彼は苦笑しながら、指先で(ほお)()いた。

 後ろめたそうに視線を彷徨(さまよ)わせ、恐る恐ると言った様子で(たず)ねてくる。

 

 「はは、分かる?」

 

 無言で頷き、肯定する。

 特にこの同期は、コハクが知り得る太陽属性の中で(もっと)もヒユリと酷似していた。

 それは単に、彼の(おも)(かげ)と重ねて見ている訳ではない。性格面で似ている所があるからこそ、もしかして──という直感が働いただけのこと。

 

 明るさが持ち前の者が、無理をしてそれを心掛けようとすると、何故か不自然に感じてしまう。それが自然体であるならば、尚更に。

 無論、見慣れている者にしか分からないだろうが。

 

 「言えよ。吐き出しちまった方が、楽になる時もある」

 

 だから優しく、諭すようにコハクは提案した。

 それに、コウタは申し訳なさそうに眉根を寄せ、考え込むように顔を(うつむ)かせる。

 幸か不幸か、出撃までには時間がある。許される限り、彼の返答を待ち続けていると、意を決したのか。俯いていた(かや)色の(そう)(ぼう)が、再びコハクを映す。

 

 「聞いたよ……同行してた人が、亡くなったんだってな」

 「ああ」

 

 コウタの言葉に納得すると共に、今度はコハクが俯くように目を伏せた。

 

 耳を(つんざ)く悲鳴。宙を舞う鮮血。周囲に(ただよ)い始める鉄錆の匂いに、虚しく(くう)を掴んだ手。

 あの時のことが鮮明に(よみがえ)り、後悔と虚無感に(さいな)まれる。

 常識的に考えて、エリックを助けることは不可能だ。それだけ彼の油断が招いた死は致命的であり、一瞬の出来事だったと言っていい。

 神機奏者(ゴッドイーター)の本質が軍人であることを(かんが)みれば、エリックの自業自得なのかもしれない。だが、そんな()()()()()と折り合いを付けるには、もう少し時間が必要だった。

 

 「最初はさ、そんなこと珍しくねーのにって、他人事(ひとごと)のように考えてた。だって、そうだろ? 今の時代、どこにいても荒神(アラガミ)に襲われて、大勢の人が死んでるんだからさ」

 「そうだな」

 「でも……エリックだっけ? おれ、その人の妹を、たまたま見ちゃってさ」

 「ああ」

 「それを見て、おれって本当に馬鹿だなって、思ってさ。おれにも妹がいるから、なんとなくエリックが妹の為に戦ってたんだって、分かるんだよ。だから──」

 

 だから──人死を当たり前だと無意識の内に思い込んで、納得していた自分の弱さが許せないのだと、コウタは続ける。

 

 「忘れてたよ。家族の為に戦うことが、何を意味してるのかってこと。おれに何かあったら、母さんも妹も路頭に迷っちまうだけじゃない。

 大切な家族を置き去りにしちまうことで、母さんと妹をスゲェ悲しませちまうことなんだって」

 「…………

 

 それは、忘れてはならない大切なこと。

 ()()に家族の為とは言え、それで当人に何かあれば、遺された家族は自分達の為に……と傷付いてしまう。

 実際、エリナがそうだ。エリックの戦う理由は知らなくとも、あの自暴自棄から薄々勘づいていた可能性が極めて高い。

 

 目の前で(かい)(こん)の念に(さいな)まれる同期に対して、コハクは一歩だけ歩み寄る。

 不安に揺れる瞳がこちらを映したその時、彼は自分の気持ちを正直に伝えた。

 

 「だが、直ぐに気付いて反省することが出来た」

 「えっ?」

 瞬間、目を丸くするコウタ。

 それに構わず、コハクは続ける。

 

 「人って生き物は厄介で、なかなか自分の間違いに気付いたり、認めたり出来ないものなんだぜ。だから、そんな当たり前のことができる時点で、お前は充分強い奴だよ」

 「コハク……

 

 何時になく能弁なことに驚きながら、されど(つむ)がれる言葉の内容に、心が自然と惹かれていく。

 男が男にそんな感情を抱くのはおかしなことかもしれないが、今のコハクにはそれだけの()()があった。

 

 それが一体何なのか、藤木コウタには分からない。

 だが、一つだけ分かることがある。

 

 それは、置き去りにはしないということ。

 仮に、コウタが道に(つまず)くことがあろうとも、時には立ち上がる力を貸したりしながら、必ず待っていてくれるということ。

 

 無論、根拠など何一つ無いのだが、しかし──()()()()()()()()()()()()

 その事実があるだけで、筆舌に尽くし難いほどの喜びが溢れるのだ。

 

 だから──

 

 「間違いに気づけたなら、正せば良い。そうだろ?」

 「────! ああ!」

 

 淡く微笑みながら問い掛けてきた同期に、コウタは力強く頷いた。

 

 「そうだよな。こうやって、暗くなっててもどうしようも無いことだよな。

 うん大丈夫、何か自信出てきたぜ! 根拠なしに決めてるから、無敵っしょ!」

 「それはなんか、違う気がするが……

 「硬いこと言うなよ〜。あ、そうだ。

 サクヤさんって、知ってるよね?」

 

 唐突な問いに訝しみながらも、コハクは(しゅ)(こう)する。

 

 「もしかして、仲良い?」

 「さぁ、どうだろうな……知り合って、まだ日が浅いし

 「マジ? でもさでもさ、あの人って何かよくね?」

 「は?」

 

 刹那、何かが道化のように()けるような音が響いたような気がした。

 

 「だってそうじゃん! 美人だし、感じも良いし、強いしさ。戦うお姉さん、って感じでさ。たまんないよなー!?」

 「そ、そうだな?」

 

 先程とは打って変わった態度に、コハクは困惑しながらも(あい)(づち)を打つ。

 まさか、自分の励まし方に問題があるのだろうか? と不安になった。だが、悲しいかな。これが藤木コウタの通常運転である。

 

 「よおおし! なんか、テンション上がってきたああ!」

 

 不意に同期が大声を上げ、反射的にコハクの肩がビクリと跳ねた。

 それこそ頭に何個ものクエスチョンマークを浮かべながら、恐る恐るとコウタに声をかける。

 

 「な、何がだ?」

 「ん? そんなの当たり前だろ〜」

 「そうなのか……?」

 「おう! 今回の任務、どっちが多く倒すか勝負しようぜ!」

 「はぁっ!?」

 

 一瞬、何を言われたのか分からなかった。

 だがそれも、むべなるかな。先程まで自分の馬鹿さ加減と、家族のために戦うことの意味を話していた空気が完全に消え去っているのだから。

 

 「サクヤさんに、いいとこ見せてやるぜー!」

 

 一人勝手に盛り上がるコウタに、完全な置いてけぼりを喰らいながら、コハクは深い溜息を吐く。

 今度は嫌気から来るものでは無い。正真正銘、呆れからくる溜息である。

 

 「もう勝手にしろ」

 

 お手上げポーズをして、心底仕方なさそうに、コウタの提示してきた勝負に乗るのだった。

 

 

 




 コウタの切り替えの速さは、神がかり的だと思う。
 合同任務=演習と考えると、エリックの死からそこまで日は経過してないと思うのに、これだよ? 凄くね?
 普通にゼファーさん、狂い哭くよ? ←オイ

 神座世界とクロスさせると分かるけど、GEの世界観はかなり覇道神が生まれやすい環境やね。
 むしろ、世界に怒らない方が不自然。みたいな?

 コウタの父は完全捏造です。(´>∀<`)ゝ

 遂に始まりましたね。アーディティヤ。
 まさか、あそこまで地獄だとは。
 第一神座は死ねるだけ、マシだったんだな。

 しかし、他の後書きにも書いたが、ソーマが更に自分の名前を嫌いになりそう······インド神話のソーマは、アムリタと同一視されてるんだよ。
 あれ? そもそもGEシリーズに「アムリタ」という素材が登場してね?

 アムリタ···荒神の脂が乳化して出来たとされる液体。
 あばばばばば((( ;゚Д゚)))
 ちょっと! 荒神の性質的に笑えないんだけど!!

 ん? そう言えば、リザレク編の「月を睨む影」で出てきた荒神のコア······ビスマスと似ているような······あははは、まさか(白目)
 これは、予想よりスケールがデカくなりそう(小並感)

 ※余談※

 遂にSwitchを購入して、GE3本編クリアしました!
 因みに男主。武器は双剣。ボイスは男13。

 エンゲージ発動-6
 「不可能などないと···証明してやる!」

 止めろ! 光の魔王が釣れちまうだろ!!
 と、冗談はともかく。
 最初の感想は、逆襲劇(ヴェンデッタ)始めよう? だった。

 世界観的に相性良すぎるんだよ、逆襲劇(ヴェンデッタ)と。
 特にヴェルナーの最期。
 モブ兵士のブーメラン発言には殺意湧いたわ。

 これだけ殺しておいて?
 今まで散々、AGEの命を食い物にしてきて。
 現在進行形で殺してる奴等が言えること?

 多分、Diesのプロローグよろしく、やられた側の心情を描写したつもりなんだろうが、今迄の所業を考えると因果応報、自業自得。何今さら被害者ヅラしてるの? って感じ。
 これならまだ、ヴァルター・ゲルリッツ曹長の方が同情出来るし、感情移入も出来るわ。

 取り敢えず、ヴェルナーは救います。
 以上。

 男主とユウゴの関係が尊い······(ナーキッド感)

 という訳で、今回はここまで。
 では、またの次回に!

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