Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】   作:フェルゼン

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第九話 家族の為に/Für die Familie 後編Ⅰ

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◆ ◆ ◆

 

 

 そうして──

 二人は、今回の作戦エリアに足を踏み入れた。

 

 「うっひょー、すっげぇー」

 「……

 

 同時、視界一面を(おお)()くす白銀の世界に、年相応の反応を示すコウタと感嘆の息を()らすコハク。

 はらはらと舞う白い欠片(かけら)が、廃墟と化した寺院に降り積もる様は幻想的で、美しく映えるがゆえにどこか人智の及ばぬ風情を(たた)えている。

 原則、人と大自然は相容れない。彼岸花が土を踏まれると咲かなくなるように、人の手が入っていないからこそ美しいという見方があり、それは即ち人が入り込めない場所であることを意味していた。

 

 何故なら、人の存在は自然を(おか)す。その営みが侵入するだけで、ある種の生臭さが生じてしまうのは避けられない。

 それは人工物も同じことだが、元より貴種(アマツ)の祖先は自然崇拝。自然を(おそ)(うやま)うからこそ、神仏を(まつ)る神体から社に至るまで、(すべ)て自然のものから調達する。

 だから、この銀世界に馴染むのだろう。人の手が入らなくなれば、自然由来の人造は朽ち果てていく運命であり、それこそが自然の摂理。

 人造は天然に敵わないなど()(まん)という言葉があるが、あれはあれで的を射ている。現に、()()()()()()()()()()()()()()のだから、敵わない理屈などある訳ないのだ。

 

 「見ろよ、コハク! 雪だ、雪!」

 「見りゃあ分かる」

 

 素っ気なく応えるものの、内心はコウタと似たようなもので、目の前の光景に感動している。

 年相応の反応を示す同期に代わり、周囲を警戒しているのだから、無理もない。()()に出撃ゲートと言えど、安全が確保されているとは限らないのだ。

 

 「おれ、こんなに雪が降ってるとこ、初めて見たよ」

 「俺もだ」

 

 目を輝かせながら告げるコウタに、コハクは静かに同意する。

 旧西暦時代、日本は四季が明確とした国として、他国から人気を博していたらしい。その一部だった影響か、今の極東にも明確な四季がある。

 残念ながら花見や紅葉狩りという文化は(すた)れてしまったが、まだ日常の中で季節の移り変わりを楽しむことが出来た。

 

 だがそれも、過去の話になりつつある。

 (アラ)(ガミ)の発生により、桜や銀杏(いちょう)などの木々が食い荒らされてしまった。加え、六年前のロシアで次元間相転移式核融合炉が暴発した影響か、近年世界中のいたる所で異常気象が続いている。

 その為、一年で(もっと)も寒い時期だと言うのに、支部の方では未だに雪が観測されていない。ましてや、これほどの雪となれば尚のこと。

 

 「……ノゾミにも見せてやりてえな」

 

 不意に、コウタから()れた無意識の本音。

 出撃前まで交わしていた会話を(かえり)みるに、ノゾミとは彼の妹を指しているに違いない。その口振りから雪を見たことがないのだろう。

 ならばこそ、見せたいと願う。その素朴でちっぽけな──それでいて()()えのない幸せこそを(たっと)ぶ少年の夢に、自然と笑みを浮かべた。

 

 だから──

 

 「なら、尚のこと生きて帰らねーとな」

 

 コウタの背を軽く叩き、コハクは続ける。

 

 「雪、妹さんに見せてやろうぜ」

 

 同期が口にした願いは、叶えようと思えば叶えられる夢だ。いつ、どのタイミングで荒神が出現するか分からない為、雪遊びするほどの時間は確保出来ないが、見学ぐらいは実現可能だろう。

 とある本によれば、人は何を経験するかではなく、誰と経験するかで幸福度が変わるらしい。

 それが事実なら、コウタの存在は必要不可欠だ。ノゾミと呼ばれた少女にとって、彼は掛け替えの無い身内なのだから。

 

 それは別に、先の話を掘り返すようなものではない。

 突如として提示された案に、少しだけ面食らいながらも、コウタは笑顔で(うなず)いて見せる。

 

 「だな! よ〜し、お兄ちゃん頑張るぞぉ〜」

 「ふっ。なら、ついでに俺の出番も持ってってくれ」

 「おう、任せろ! ──て、なにさりげなく勝負から逃げようとしてるんだよ、おまえッ」

 「だって、面倒くさいんだもん」

 「何がもんだ! 何が! ぜんっぜん可愛(かわい)くねぇよッ」

 「可愛くなくて結構だ」

 「いいから、真面目に聞けぇ〜〜〜っ!」

 

 軽くあしらいながら、呆れ気味に嘆息する。

 流れ的に勝負を無かったことに出来そうな空気だったが、どうにも上手くいかない。

 欧州で外交官をしていた先祖に、そのコミュニケーション能力を分けて欲しいと本気で願うほどに。

 

 「そもそも、おまえは──」

 

 と、コウタが言いかけた、その時──

 

 『こちらヒバリ。コハクさん、コウタさん、聞こえますか?』

 

 まるで間に入るように通信機から、ヒバリの声が響いた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 刹那、二人は瞬時に気持ちを切り替える。

 オペレーターから連絡が来たということは、今から出撃しようとしている作戦区域内で、何か動きがあったということだ。

 

 「こちらコウタ。聞こえるよ、ヒバリちゃん」

 「こちらもだ」

 『数分後に雪が降り止みます。視界を確保してから出撃して下さい』

 「うっし、分かった」

 「りょーかいした」

 

 (しばら)くすると、吹雪が徐々に弱くなり、景色の大半を覆う白い(ゆき)(けむり)が空気に溶けるように消えていく。

 そうして見え始めた景色は、木造による建造物群。およそ、神の社にあるとは思えないほど生活感溢れる民家だった。

 

 「ここが、鎮魂の廃寺

 「まさにアーカイブで見た、古き良き日本って感じだな。ヒバリ、これも旧日本の遺物(ロストテクノロジー)なのか?」

 『そのようです。何でも大破壊(カタストロフ)の際、空間変動の影響で鶴岡八幡宮と古民家の一部が融合したと考えられています』

 「なるほどな」

 

 作戦区域として指定されるほどだ。アドラーや古都プラーガのようなロストテクノロジーは存在しないのだろう。

 少なくとも、それらしい痕跡も見られなければ、気配も感じられない。六年前のロシアのように、ロストテクノロジーを守りながら荒神を討伐──などということにはならないはずだ。

 

 ただ、懸念点があるのもまた事実。

 古民家と融合した影響か、或いは鶴岡八幡宮の時からそうなのか。どちらにせよ分からないが、鎮魂の廃寺という場所は、あまりに少数精鋭向きではない。

 敷地全体を受け持つというには些か広大過ぎる。()()でも何でも無く、真面目に索敵していたら夜になってしまう。

 

 無論、それはあくまで常人の話であり、神機奏者(ゴットイーター)ともなれば話は違ってくるだろう。

 だがしかし、無問題かと問われれば否であり──

 

 “こりゃ下手な戦力分散は命取りになるな。流石(さすが)に広すぎて、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 加え、積雪で足場が悪いのは確実で、通路も狭い。

 一歩でも間違えれば、荒神の攻撃を(かわ)し切れない可能性を秘めている。

 少なくとも、勝負をしていい場所ではないのは確かだ。

 

 “コウタには悪いが、今回の勝負、俺は降りさせてもらうぜ”

 

 それは事実上の敗北宣言。

 "勝利"に対する(こだわ)りがないわけではない。ただ、時と場合により勝利することよりも敗北を避ける必要があると考えただけ。

 

 『今回の任務は、中型アラガミのコンゴウが討伐対象となります。これまでのアラガミと比べ、格段に高い耐久性と攻撃力を持ち合わせています。

 携行品の使用ペースには、充分に注意して下さい。ご武運を!』

 

 同時に、ヒバリの声が途絶える。

 オペレーターとして、モニタを注視しているのだ。いくら、オラクル細胞のお陰で電子機器類が復活したとて、その性能は決して高くはない。

 エリックのこともある。恐らく、それを避けたい一心なのだろう。

 

 「よぉーし、頑張ろうぜ!」

 「ああ、行くか···」

 

 言って、二人は雪原に飛び降りた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

  6

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 今回の任務は、新兵二人でコンゴウという中型アラガミを討伐すること。

 廃寺に住み着いた三体のオウガテイルの討伐は、そのオマケのようなものだ。(えさ)として狙われている以上、放置する訳にもいかない。

 首尾よく三体目のオウガテイルを倒した瞬間、通信機に連絡が入った。

 

 『中型アラガミ、作戦エリアに侵入しました! 侵入地点のデータを送ります!』

 「分かった、対処するぜ」

 

 返答と同時に、携帯電話がデータを受信する。電子画面に映し出されたオラクル反応は、山の中腹にある広場を指している。

 半壊した本堂にいたコハクとコウタは互いに目を合わせ、前者は無言で後に着いてくるように指示を出すが、後者は二手に別れようと提案していた。

 

 確かに、コウタの言い分にも一理ある。だが、今回初めて来た場所で、今回初めて戦う敵を相手にするには、(いささ)危険(リスク)が高すぎる。

 だから、コハクは緩やかに首を横に振った。その意図に気付いたのだろう。それにコウタは一瞬だけ、ムッと(ほお)(ふく)らませた後、仕方なさそうに肩を(すく)める。

 恐らく彼自身、今回の任務における危険(リスク)を認識していたに違いない。

 

 「サンキュー、コウタ」

 「良いって良いって。さあ、早く行こうぜ」

 「ああ」

 

 そうして、二人は(きびす)を返して中型アラガミが侵入した場所へと向かう。

 足音を消し、息を殺す。本堂から広場に繋がる階段を駆け下りた後、すかさず高く積み上げられた石垣の影に身を潜めた。

 

 首だけを動かし、その影から広場を(のぞ)き込む。

 討伐対象の姿を探していると、視界の端にオレンジ色の巨体が映る。

 瞬時に視線を戻して確認すれば、(しょう)(ろう)のすぐ真下で、(のん)()に食事している中型アラガミがいた。

 

 「見つけた」

 「マジ?」

 「ああ。俺らに気づいてないのか、絶賛食事中だぜ。丁度いい。俺が奇襲をかけるから、コウタは後方から支援してくれ」

 

 と、言った刹那に。

 

 「えぇ〜ッ!」

 

 コウタからブーイングが飛んできた。

 

 「それだと、おれがお前に負けちゃうじゃん!」

 「お前な······まだ、そんなことに拘ってんのか」

 「そんなことってなんだよ! そんなことって! いいか? 男にはな、意地を張りたい時があるんだよ! 意地を!」

 「んなこと言われてもな、俺だって男だし···意地を張りたい時ぐらいあるし······」

 「だったら──······」

 

 分かるだろと続くはずだった言葉はしかし、コハクが口元に人差し指を立てたことで飲み込まざるを得なくなる。

 そして、彼は滑るように背後へ視線を向けた。

 

 近付く足音。既にオウガテイルは倒しているし、歩幅からして小型のそれではない。

 恐らく──いいや間違いなく、今回の討伐対象が二人の存在に気付いて襲いかかろうとしている。

 

 「なあ、コウタ」

 「──? なんだよ?」

 「ちょい、歯ぁ食いしばれ」

 

 言いながら、コハクはにこやかに微笑んで、コウタのマフラーを掴み上げる。

 訳も分からずコウタが首を(かし)げた──刹那に。

 

 「舌、噛むなよッ」

 「え? おわぁぁぁぁぁぁあああッ!!」

 

 コハクは背負い投げの要領で、同期の身体を投げ飛ばした。間髪入れずに、コンゴウと思しき中型アラガミが(ちょう)(やく)しながら空気弾を放ってくる。

 そのまま槍を振り上げ、空気弾を切断するコハク。だが、(ぎょう)(しゅく)された空気までは切断することが出来ず、切断と同時に爆風が吹き荒れた。

 

 「コハク! ッ、くそ」

 

 投げ飛ばされたコウタは瞬時に体勢を立て直し、銃の引き金を引く。

 サクヤとは異なり、アサルトライフルをモデルにした彼の神機は、一度の発砲で無数の弾丸を敵に撃ち込むことが出来る代物だ。

 

 プレスのように地面へ落ちていく敵影だがしかし、場所は空中。如何(いか)に荒神と言えど、身動きは取れない。

 大量の弾丸が直撃し、敵影の体勢が崩れた。その(かん)(げき)を決して見逃さず、巻き上がる雪煙の中からコハクが流星の如く敵に突貫する。

 

 「ギャアッ!」

 

 喉元を勢いよく貫かれ、中型アラガミから苦鳴が上がった。それを(いっ)()だにせず、コハクは容赦なく敵を地面に向けて投げ付ける。

 荒神により(なら)された雪原の固さは、アスファルト舗装と対して変わらない。子供に捕まった(かえる)のように雪原へ叩きつけられた中型アラガミに警戒しながら、コウタは言う。

 

 「こ、こいつか!?」

 「ツバキさんから渡された資料通りだから、間違いねーだろ」

 「ゴリラみたいな図体しやがって! 黒焦げにしてやるっ!」

 「実際に、ゴリラなんだが······」

 

 と言うよりも、猿か。

 筋肉質で巨大な身体を起こし、怒りで喉を鳴らす猿型の荒神。瞬間、それは身体を丸めて転がりながら、一直線に突進してくる。

 新兵二人は咄嗟に左右へ別れて回避し、続く追撃に備えようと警戒するが──

 

 「ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁ──ッ!!」

 

 再び上がる苦鳴。

 無論、二人は何もしていない。ただ見ていただけだ。

 コハクとコウタが自身の攻撃を回避したことも気付かずに、壁に向かって激突して雪煙を巻き上げるコンゴウの姿を。

 

 「えぇ······」

 

 と、コハクが困惑気味に()らし。

 

 「へッ、こんなの楽勝!」

 

 と、コウタが鼻で笑いながら(うそ)ぶいた。

 

 無理もない。通常、極東支部以外のフェンリル支部では、コンゴウが現れるだけでも大騒ぎだと聞く。

 ゆえに、二人はこう考えていた。極東では王道(メジャー)(アラ)(ガミ)だろうが、決して油断出来ない相手である、と。

 

 しかし、現実は違う。

 コウタの声に気付き、奇襲をしかけてくるほどの驚異的な聴力を持つ割に、視力が悪いのだろう。自分から転がり、突進してきたにも(かか)わらず、壁に激突して自滅している始末。

 これでは、せっかくの(かん)(ろく)が台無しだ。少なくとも、大騒ぎするほどの脅威は感じられない。

 

 ゆえに、これ幸いと銃撃を再開しようとしたコウタだったが、その直後に彼は自分がどれだけ相手を舐めていたのかを自覚させられた。

 

 「──ッ、コウタ!」

 「え?」

 

 不意に名を呼ばれ、思わず(とん)(きょう)な声が出てしまう。その刹那に、コウタの視界に映ったのは、殺気に満ちたコンゴウの顔。

 口端から白い息を吐きながら、狂気に血走る金色の(そう)(ぼう)が、獲物をぎらりと睨んでくる様は恐怖以外の何者でもない。

 

 「っ·········!」

 

 コウタは、攻撃を続けようとしたままの体勢で、反射的に身体を硬直させた。

 人間、いざという時に限って動けないものだ。特に正確な情報を得られない時ほど、動ける人間はそう多くはない。

 その逆も存在するが、少なくとも藤木コウタは行動に移せない人種であり──

 

 「·········っ」

 

 彼は無意識に息を詰め、思わず目を閉じた。

 コンゴウの巨腕に殴られ、全身を襲うであろう痛みに備えようとした──その時である。

 

 ガァンッという、(にぶ)い音が響いたのは。

 

 「············?」

 

 恐る恐る(まぶた)を開くと、そこには──

 

 「コハクッ!?」

 

 星と神の(ほのお)(まと)った同期の姿。

 無様にも尻もちをつくコウタを(かば)い、コンゴウが繰り出される攻撃を、タワーシールドで防ぐ背中がある。

 それは雄々しく、目を奪われるほど凛々しくて。

 

 「油断すんな、コウタ。

 お前になんかあったら、お袋さんと妹さんが路頭に迷うんだろう?」

 

 問われ、言葉を失う。

 ぐうの音も出ないとは、まさにこのことだ。

 

 「俺が前線で陽動する。お前は後方から支援してくれ」

 「で、でもよッ!」

 

 遠回りに守られてろと言われ、思わず異を唱える。

 確かに、それが正しい役割分担なのは理解しているが、藤木コウタは男なのだ。如何に守られて(しか)るべき役割にいても、男の意地と誇りがそれを許さない。

 ()()()()()()()()()()()()()()とも解釈できる役割に、彼はどうしても恥を覚えてしまう。

 

 女に戦いを任せることを酷く不格好に感じてしまうように、男と同じ土俵で戦えないことが、凄く不甲斐ないと思ってしまう。

 不要な無力感に(さいなま)れ、自分は相手と同じなんだと見栄を張り、格好良い所があるんだと叫びたくなる。ましてや、同性ならば尚のこと。

 

 ああ、だから──

 

 “今回の任務、どっちが多く倒すか勝負しようぜ!”

 

 だから、コハクに勝負を挑んで。

 

 “サクヤさんに、いいとこ見せてやるぜー!”

 

 それを素直に認めるのが嫌で、任務にいない女の名を口にして。

 

 “て、なにさりげなく勝負から逃げようとしてるんだよ、おまえッ”

 

 だけど、本音は変わらないから勝負に(こだわ)った。否、今もそれに拘ろうとしている辺り、自分はかなり面倒な人間なのかもしれない。

 ようやく自覚した己の本音に、コウタは別の意味で恥ずかしくなる。対等になりたいだけなのに、何を意地になっているのだと、思わざるを得ない。

 

 「なら、俺の背中はお前が守ってくれ」

 「えっ」

 

 指示に、再び頓狂な声が出た。

 カウンターでコンゴウの顔面を切り捨てながら、コハクは言葉を継ぐ。

 

 「聞こえなかったか?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──と、俺は言ってるんだぜ」

 「···············」

 

 確かに、新型神機は従来の神機とは異なり、一人で物事が完結する側面があるのは否定しない。

 神機で食い千切れた禍神体(オラクル)は、銃身形態に変えれば消費出来るし、仮にガス欠を起こしても近接形態に変えて荒神(アラガミ)を斬るなりすれば、簡単に補うことが出来る。

 加え、コハクは神機可変の際に生じる隙がほぼゼロに等しい。だから尚更、一人で何でも出来てしまうと思われてしまう。

 

 それでも、彼は人なのだ。当たり前に、一人では無理な事態に陥るし、一人で背負い切ることも出来やしない。

 実際、神宿コハクはコンゴウの攻撃を防ぎ、(さば)くことは出来ても、攻勢に出られていない。そしてそれは、断じてコウタが足手まといになっている訳ではなく、純粋な火力不足に因がある。

 彼の纏う焔は、かつて同じ技を使用していたとされる灰色の境界線や焔の救世主と、使い方が異なるのだ。

 

 彼等は精神的高揚を燃料とするのに対し、コハクは星辰体(アストラル)禍神体(オラクル)を燃料としている。

 感応可能な細胞・粒子ならば、恐らく何でもいいのだろう。それこそ、古都プラーガで観測されたという()()()()()()()()()()()()()()()()()に違いない。

 少なくとも、神宿コハクという人間は、()()()()()()()()()()()()

 

 神機奏者(ゴッドイーター)星辰奏者(エスペラント)が使用する星辰光(アステリズム)は、素養の大小で決定する。

 星辰体(アストラル)──神機奏者(ゴッドイーター)禍神体(オラクル)も含まれる──に対する感応性に恵まれた(てん)()の才を持つ者ほど、()()()()()()()

 つまり、より自分が望む、強力で運用性が高い星の異能(アステリズム)を引き当てやすくなるのだ。

 

 ゆえ逆説的に、素養の低い者ほど自分が望まぬ星に選ばれるということ。

 理想と現実の(かい)()。如何に理想の星を望もうと、現実に見合った能力しか手に入らない。それは、常人とて同じだろう。

 星に選ばれることなく、自らが望む理想と渇望を能力に押し上げるなど、さすがに神機奏者(ゴッドイーター)とて出来はしない。

 

 例外はあくまでも例外。

 どだい、精神力と意志力だけで能力を勝ち取るなど、鋼の英雄しか出来ない特権である。

 

 だから、彼は()()()()のことをコウタに告げた。恥だとも思わず、助けてくれ──と。

 

 「お、お、おうッ!」

 

 あまりに青臭いことを真顔で言われて、(ぼう)(ぜん)としながらも、コウタは慌てて返事をした。

 

 「じゃあ決まりだ。さっさと終わらせて、さっさと帰ろうぜ」

 

 言って、コハクがガメラのように回転ラリアットを始めたコンゴウに向かって走り出す。

 その大きくも自分とは変わらない背中を見詰めながら、コウタは独り納得する。

 

 “そっか···そうだよな······”

 

 守られてばかりが嫌なのなら。

 格好悪いと思うのなら。

 

 “おれがお前を、お前が俺を守れれば、そっちの方が格好いいもんな!”

 

 何より、自分の憧れるイサムのようで悪くない。

 それに──

 

 “俺がお前を守るから、お前が俺を守ってくれ”

 

 頼ってもらえるという事実が、どうしようもなく嬉しくて、誇らしい。

 

 「よっしゃぁぁぁぁああッ! 行くぞォッ!」

 

 俄然やる気が出てきて、コウタは再び銃を構える。

 そして、発砲。負けてなるかと、闘志を燃やすのだった。

 




 後半一つで終わらない、だと(`-д-;)
 まあ良いか、リメイクだし。表現したいことが増えれば、そりゃあ文字数増えるよね。

 最後に開示した、コウタの動機。
 Dies iraeや戦神館をプレイした後だと、「もしかしてコウタは、遠距離専門であることをダサいと感じてたから、カッコつけようとしたのかな?」と考えるようになったんですね。

 サクヤさんもいないのに、「いい所を見せてやるぜ」って、なんか矛盾するというか。男の子だからこそ、意地とか見栄とか張りたかったのかな? って。
 ほら、主人公の神機が神機ですし。キャラメイクによっては、女な訳じゃないですか。正田卿作品の特徴と、コウタの特徴から「あ、やべ、恥ずい」となるのは、目に見える訳ですよ。

 因みに、コウタ君は光のホモになりません!

 次回、コウタの星辰光(アステリズム)を開示。
 別作品の更新の後になるので、少し遅れるかも?
 それでは! | ・∇・)ノシ♪

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