Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】 作:フェルゼン
7
「創生せよ、天に描いた星辰を──我らは煌めく流れ星」
だから、自然と。本当に自然とした流れで、コウタが口にしたのは、星の光を解き放つ
「女神が育てた不死の蛇神。再生と増殖を繰り返す
誇るように、叫ぶように、
その反応は、一見して実に穏やかだった。本人の気性に反し、あまりにそつがなく、危険性などないかのように使用神機へと染み入り、生体武器を強化する。
「ゆえ、彼は求めた。難行にさえ同行する者、お前の力を貸してくれ。疾風の如く戦車を駆り、毒蛇を滅ぼす我が一助となって欲しい」
異変はたったそれだけだ。火も出なければ、闇も出ない。
風が吹き
「ああ、己は何を勘違いしていたのだろう。
だからこそ、恐ろしいのは
己の一部を押し上げて、コウタは神機という
「気付いたからこそ、応じる心に偽りなし。凡俗たる馬方が、必ず汝の旅路を導こう。たとえ詩神の掟を逆手取ろうと、我が命を
藤木コウタとは、そういう人間なのだろう。
仮に世界と大切な人を天秤にかけるならば、彼は世界も大切な人も
自分以外の何かに成り果ててまで、事を成そうなどとは考えないし、出来はしない。
ゆえに、それは
「
半神半人の英雄を運ぶ者。
天地奈落を駆け巡った人間の従者。
二頭立ての戦車を巧みに操る
「いっけぇぇぇえええッ!!」
──刹那、残弾など知らぬとばかりにコウタが猛攻を仕掛ける。自動小銃と汎用機関銃、二つの特徴を兼ね備えた銃身による連続射撃は絶妙で、まさに天衣無縫の鋭さに迫る。
と言っても、実弾を撃ち出す訳ではない。遠距離型神機とは、オラクル細胞をエネルギー弾に変換して撃ち出す装置なのだ。
当たり前だが、
コウタの使用する遠距離型神機モウスィブロウは、雷属性のバレットと相性が良く、相手よりも優位に立ちたいのなら、バレットを雷に切り替える方が良いだろう。
だが、今の彼はそれをしない。まるで、
コウタは
無論、一つのバレットに複数のエネルギー弾を仕込めない訳ではない。だが、それを戦闘中に行うなど絶対に不可能だ。
「──即時バレット編成、なるほど……それなら納得だ」
そう、それこそが藤木コウタの
たとえば今こうしているように、己と感応する
如何に
身体能力、反射神経、代謝の活性化による治癒力の上昇や、物質硬化の星を利用して肉体防御力の強化は見込めても、発動体の
ゆえに、コウタの星は単純ながらに非常に強力だった。
本人の無計画な性格とその銃身による
よって
防御面を高めることで、同期による誤射を確実に防ぐ方向へと舵を切った。
「が、あ……ああああぁぁぁぁぁぁぁ────ッ!!」
弱点である火と雷属性のエネルギー弾で表面の肉を
無線の向こうで、こちらの様子を観察していたヒバリから活性化の
もし仮に、
10m近い距離を──しかも弾幕射撃が引き詰める中を──瞬く間に詰めるなど、人間業ではない。
にも関わらず、やってのけたのである。この、
そして、寸分の
「ぎゅがあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
猿を
暴れる巨体に押し潰される寸前、コハクが後ろに飛び
その数、実にこの刹那で千発以上。自動小銃の規格を完全に逸脱しているが、何ら不思議なことではない。
元より対人用に造られた従来の銃身と異なり、コウタたち遠距離専門の
加え、
ゆえにこの時、
「ぐううぅ、がああああああああッ!!」
苦悶の咆哮を上げながら、突然コンゴウが後方へ飛び
同時に、胴体を風船のように
「コウタッ」
「おうッ!」
頭上から迫る空気弾を、コハクはコンゴウに追い
狙いの
結果、一気に視界が悪くなった。しかし、コハクはそれすら意に介さず敵の元へ肉薄していく。
それにコウタも気付いたのか。未だ空中に身を置きながら銃を構え、同期の援護をしようと銃声を轟かせる。
星の力を得たモウスィブロウに援護され、着地したコンゴウの目の前にコハクは自ら進んで
「があッ!!」
狙いもなければ、予備動作もない。ただ無造作に、力づくで獲物を排除しようと叩きつけてくる。しかし、コハクは下から払い上げた石突部分でその軌道を逸らした。
流れるように槍を後方に回転させ、強く右足を踏み込みながら、コンゴウの巨体を縦一文字に斬り上げる。
「……………………!」
声にならない絶叫を上げながら、コンゴウの体勢が大きく
「これで、トドメだぁっ!!」
駄目押しだと言わんばかりに、コウタはLLサイズのエネルギー弾3連発をコンゴウに叩き込んで──
「が、がああ……」
遂に、コンゴウの生命活動が完全に停止した。
鎮魂の廃寺に静寂が戻り、自然と沈黙が降りる。
背後にいるコウタから
これから行う作業を
新兵二人に、異形の死骸は黄色く
猿を思わせるその顔に浮かぶのは、憤怒の形相。生意気にも自身に抗う卑小な人間たちを許さぬ暴虐の
深い溜息を吐いて、コハクが死骸の前に歩み出た。
「
心底嫌そうな口振りで、しかし、その表情には任務中の時と同様、
肩に乗せた槍を気だるげに下げて、構える。その穂先は、既に息絶えたコンゴウに向けられており──ならばこそ、コハクは死体イジメと評したのだ。
確かに、
しかし、だからと言って、その尊厳を踏み
それを理解した上で、ゆえに──
「悪ぃな、俺らも生きる為だ。容赦してくれ」
言って、コハクは神機を捕食形態へと変化させる。
黄金に輝く穂より生まれた黒い獣の
肉を引き裂き、噴き出る体液を浴びながら
いつか、この光景も見慣れたものになってしまうのだろうな、と。
8
そして──
研究室に用意された床置きモニターには、ペイラー榊のなぜなに講座という、子供向け番組みたいな題名と共に、とてもファンシーな絵柄の榊とオウガテイルが表示されている。
あれ、榊博士が自分で描いたのかな、とか。今日の講義、早く終わらねーかな、とか。そんな割とどうでもいいことを考えながら、コウタは眠気眼で榊の話を聞いていた。
「
アーコロジーとは、“それ単体で生産、消費活動が自己完結している建物”を指す言葉でね。そう、実は
榊の右隣にあるモニター画面が切り替わり、ファンシーなタイトル画面が一転して、荒廃したフェンリル支部の写真が映し出される。
事実、その写真には壁のような建造物が映り込んでいた。
画面に向けられていた視線を新兵二人に戻しながら、榊は続ける。
「これって、極端な話、ある支部を除いた全てのフェンリル組織が滅んでも、残った支部は単独で生産、消費活動を行い、今まで通り生き残ることが可能ってことなんだよ」
そう言うと、榊は手に持っていたリモコンを操作した。モニターが切り替わり、今度は五枚の写真が挿入された説明書を思わせる映像だ。
「
それがフェンリルの支部であり、人類を守るために最適化された
強烈な睡魔と戦いながら、コウタが大きな
「ただ、そこにも問題はあって、それは収容可能な人口に
榊の口から、一瞬でコウタの中にある睡魔を吹き飛ばす言葉が飛び出したのは。
「キミたちも知っている通り、この極東支部の周囲には、広大な外部居住区が形成されている。しかし、彼ら
外周部に対アラガミ装甲壁を巡らすことが、今できる最大限の対処策なんだ」
でも、とコウタは思わず口走る。
二人の視線が自分に集まっていることも気付かずに、コウタは続けた。
「…それだけで足りるのかな。現に装甲は
「だからその為に、
意味がないと、言い終える前に榊が即座に反論する。
だがしかし、何かに気付いたのか。まるで、自分の言動を恥じるように、彼は軽く咳払いをする。
そして、コウタの方へ向き直ると、榊は誠心誠意を込めて謝罪してきた。
「いや、すまない。
コウタ君のご家族は外部居住区にいるんだったね。軽率な物言いを許してくれ」
「いえ、おれはただ……」
ただ、もう少し安全を確保することが出来ないのだろうかと、思っただけ。
せっかく対アラガミ装甲壁を巡らせているのに、物資不足で頻繁に突破されていては、宝の持ち腐れというものだろう。
何より、客観的な事実を述べていただけとは言え、より大勢の人が榊と同じ認識を持てば、それこそ
それだけは……
それだけは、どうしても避けたいと思うから。
コウタの真意に気付いているのか、いないのか。分からないが、どこか口惜しむように榊が内情を
「本当は、
だが、その計画は実行されることは無かった。
ここ極東支部には、旧暦の日本において神奈川県と呼称された土地と、ほぼ同じ活断層が確認されている。
一般的に、地下は地上より揺れが小さくて安全とされているが、建物の支柱が折れてしまえば話は別だ。容易に逃げられる場所ではない以上、内部居住区を増やしていくわけにはいかない。
「でも、その計画をより安全で完璧にしたのが、“エイジス計画”なんだよね!」
「そうだね」
問いに、返答はどこか冷めたもので。
「現状、極東支部の地下プラントの多くの資源リソースは、エイジス建設に割り当てられているんだ」
普段通りの明るさを取り戻しつつあるコウタとは裏腹に、今度は榊の顔に
「…その話は、また今度にしようか」
しかし、それも一瞬のこと。
いつも通りの
「いやー、今日はすげーやりやすかったよ!」
「そうか、そりゃ良かった」
「こう、コハクがさ、ザシュッザシュッって斬ったり貫いたりしてさ、後ろに引いた後に俺がズバババッて撃ち込んだ時あったじゃん?」
「そうだな」
「コンゴウの奴よろけまくってたよな!?」
「ああ、確かによろけてたぜ」
その後、互いの自室がある区画に戻りながら、コハクとコウタは談笑を交わしていた。
だがそれは、ほとんど一方的にコウタがコハクに語り聞かせているだけであり、コハクはそれに
「いや、本当にすげぇ! おれとあんたの見事な連携! 息ピッタリだったよな? ってか最強コンビじゃね?」
「かもな」
「こりゃあ、家帰ってノゾミに自慢できるぜ。地球の平和はおれが守る! ってさぁ!」
「ふっ…。頑張れよ、お兄ちゃん」
「やめろよ、その呼び方! 気持ち悪ぃ!」
別段、苦には思わない。
恐らく、変な所だけ先祖に似たのか。コハクは話すことより、人の話に耳を傾ける方を好む。
一種の聞き上手なのだろう。コウタの話を聞いている間に、自室のある新人区画の前に辿り着いた。
「じゃあ、また明日な!」
「ああ。おやすみ」
夜の挨拶を交わしながら、コウタと別れた後、コハクは先ほど講義中に見せた同期の暗い影を思い出す。
家族の為に──藤木コウタという人間の根底にあるのはただそれのみであり、それ以上でも以下でもない。
それが何故、対アラガミ装甲壁の話になった途端、危ういと直感的に思うほどの翳が差したのか。
そんな事を考えながら、突き当たりにある自室へ戻ろうと足を進めていた──刹那に。
『無理もない。
「────!」
いつの間にか当たり前のように受け入れていた内奥存在──11年前のあの事件以降、確固として存在するもう一人の何者かが、今朝の時と同様に語りかけてきたのだ。
“……どういう意味だ”
『言葉通りの意味だよ、
“………”
男の言う通り藤木コウタの原動力とは、家族に対するひたむきな想いだ。
しかし、今回の講義で肝心の存在意義が家族を愛する己ではなない。家族の安全を確保してくれる
もし仮に、エイジス計画が何らかの原因で
そして最悪の場合、エイジス計画の成功を信じた自分自身に対する憎悪と
“どうしたら良いんだろうな。あいつの想い自体、別に間違っているわけじゃねえ。希望を信じ、未来に進む心だって、とても当たり前で大切なことだろうが”
『ふっ…。なに、簡単なことだ。アレが迷い、悩んでいる時、相談に乗りつつ、共に支え合えば良い。丁度、今日のようにな』
要は、今まで通り当たり前のことを積み重ねていくしかないということ。
言外にそう言われ、思わずコハクはため息を吐く。その当たり前が、何よりも難しいことだと理解しているがゆえに。
だがしかし、だからと言って、それを怠れば最悪の結果を招くことになる。その事実を、コハクは誰よりも知っていた。
だから……
『その糸、決して手放してはならんよ』
“分かっている”
男からの忠告を、コハクは素直に聞き入れる。
それに満足したのか。男が微かに笑みを浮かべ、再び意識の深層へ戻ろうとしていく気配を感じ取った。
“あ、おい。ちょっと待て”
慌てて男を呼び止めて、はぐらかされ続けた疑問を口にする。
“いい加減、教えてくれ。あんた一体、何者なんだ”
刹那、男の気配が僅かに揺れた。そこから微かに感じ取れるのは、明らかな惑いと迷い。
心の底からコハクを想いやるからこそ、彼は今、片翼の疑問に応えるべきか否かと考えあぐねている。
無理もない。今までこの男は、名を尋ねられる度に、黄金の
こういう時、コウタの隣室に誰もいなくて助かると思いながら、コハクは返答を待ち続ける。
数秒近い
『ヘラクレス-
蝋の翼に手向けの花と捧げられた、救世主最後の人間性の塊だ』
長い時を得て、大義も裁きも怒りも削り落とされ、雷神の側面を持つに至った、新たな太陽……
英雄の一次感情を象徴する
そして、同時に神宿コハクは悟る。
どうやら自分は、とんでもない運命に巻き込まれたらしい。
何故なら、
終わったぁぁぁぁぁぁ!
やっと、やっと、終わったよぉっ(´;ω;`)
偏頭痛とコウタの詠唱に悩まされること、約二ヶ月半。ようやく、コウタを中心としたepが書き終わりました。
最後の最後でアルカが全部持っていくのは、リメイク前から既に決めていました(笑)
何せ、リメイク前はコハクに名乗るシーンすら描写していないという、酷い雑な感じでしたので( ̄▽ ̄;)
そこで、第一章の最後を飾るコウタとの合同任務後に名乗らせるかと、本編に至る。
黄金の
だって、アッシュの功績を鑑みれば、
後は、ヘリオスやケラウノス閣下のような名乗り口上をどうするか?
最初は普通に、ヘリオスのオマージュで行くのを考え出たんだけど、アルカの正体を隠す必要性がない上に、早く判明させないと深堀出来ないので、どストレートに名乗って頂いた。
余談だが、原始ケルトの太陽神は雷神も兼ねている。
では、話もひと段落した所で、コウタのステータス。オープン!!
| AVE | B | ||||||
| D | A | ||||||
| STATUS | |||||||
| 集束性 | A | ||||||
| 拡散性 | E | ||||||
| 操縦性 | A | ||||||
| 付属性 | A | ||||||
| 維持性 | B | ||||||
| 干渉性 | C | ||||||
モウスィブロウ イフィクレス
藤木コウタの
能力は、神機性能強化・即時バレット編成。
詠唱の元ネタは、イオラオスとイフィクレス父子と、ケルト神話のロイグ。
本来なら不可能な戦闘中でのバレット編成を即座に可能にする能力で、バレット内の属性を装填されたバレットに付属したり、集束性を利用することで貫通性能を高めることも可能。
ただし、拡散性が壊滅的に低いので、放射や爆発などの破砕系バレットを使用し、再干渉。更に広範囲に攻撃することは不可能。
反面、操縦性と維持性が高く、干渉性も平均的な為、広範囲に
総じて前衛で戦う
後に可変式神機が主流になることを考えれば、彼の
詠唱
創生せよ、天に描いた星辰を──我らは煌めく流れ星
女神が育てた不死の蛇神。再生と増殖を繰り返す
ゆえ、彼は求めた。難行にさえ同行する者、お前の力を貸してくれ。疾風の如く戦車を駆り、毒蛇を滅ぼす我が一助となって欲しい。
ああ、己は何を勘違いしていたのだろう。
気付いたからこそ、応じる心に偽りなし。
凡俗たる馬方が、必ず汝の旅路を導こう。たとえ詩神の掟を逆手取ろうと、我が命を