Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】 作:フェルゼン
・うp主は、喧嘩シーンのインプット量が少ないです。
・この為、玲愛√の蓮VS司狼を参考にしています。
・工夫はしてますが、ネタバレ&キャラ崩壊に注意してください。
3
瞬間、ソーマは背後の壁を殴りつけた。
同時に響くのは、耳を
力任せに殴打したのだろうか、その壁には巨大な
だが、そんなものに
「⋯ふざけるな⋯⋯ふざけるなよ、ルーキーッ!
「ふざけてんのはそっちだッ! いつまでもそうやって、逃げ続けられる訳ねえだろうが!!」
怒号が飛び交い、食って
獣のような眼光。先ほど、シュンに見せたものとは質の違う⋯⋯本気の怒り。
それはもうどうしようもない、二人の間に生まれた溝で。完全に互いの見ている地平がズレた、その証左だったから。
「
抑揚のない声で言われ、ソーマは思わず目を見開いた。コハクは続ける。
「ラリってるんじゃねえぜ、ソーマ。目玉磨いて、脳味噌丸洗いしてから周りをよく見てみやがれ。
お前の言う同行者は死んだ、エリックもだ。今更テメェが訳分かんねえ意地張ったところでなぁ⋯⋯もう何もかも手遅れなんだよ!
言ったろうが、他ならないてめえ自身が。とっととクソッタレた日常に慣れろ、それしかねえだろうがって⋯⋯ありゃなんだ? どういうことだ? 今のてめえの態度と比べてよ。
死んだらそいつに
今のお前は、落としたもんが石ころだろうが、宝石だろうが、何の区別もついてねえ。全部失っちまった後になって、大切だったことに気付いて、落っこちたもん片っ端から抱え込んでるだけのクソガキだ。
戻ってこねえよ、みっともねえ。
歯噛みし、睨みつけてくる激情が、痛い。
何よりも。押し潰されそうで、辛くて。
「そうさ死んじまったんだよ、もう二度と戻っては来ねえ。
なのに吹っ切れることもなく、死人みたいな理論いつまで垂れ流してやがるんだ、てめえはッ。悔しくねえのかよ、死なせたくなかったって吼え返してみろッ!」
「黙れ⋯っ。お前には、関係ない!」
反論に僅か敵意が薄れ、コハクは
「⋯⋯じゃあ、どうするんだ? いつまでもそーやって永遠と延々に、積み上がった
「違うッ!」
「何が違うんだよ。今だって、
「⋯⋯ッ!?」
思わず絶句したソーマの
「図星か⋯⋯お前、意外と分かり易い奴なんだな。少なくとも、俺にはお前がそう見えるぜ。
過去を引きずって、後悔ばっかして、いつも死を想ってやがる。だからお前は、生きてる奴を見ないんだろ? 大切に想えないんだろ?
馬鹿が。いい加減気付けよ、ソーマ。そーやって
確かに、彼の言う通りだった。
大切な人を失いたくないと想うのなら、怒りよりも、憎しみよりも、恐れよりも。他のどんなものよりも、いま目の前にある現実と向き合わなければならない。
その分、喪失した時の痛みは計り知れないが、まだ結末に納得して乗り越えることは出来るだろう。
少なくとも、まるで昨日のことであるかのように、
けれどソーマの理屈にとって、それは決して
「お前が⋯⋯お前こそ何言ってやがる、ルーキー。らしくなく、弱きじゃねえか」
震えそうな声で否定する。まるで、信じられないと言わんばかりに。
「俺のことなんざ気にせず、お前はただ
悲しいわけではない。痛いわけでもない。なのに心の底から激情が込み上げて、喉に絡まる。
それが表に出ないよう必死で
「偽悪的な態度なんかやめちまえ。言わせて貰うが、似合ってねえんだよ。お前の
スカしてカッコつけてるのはそっちだ、賢そうに切り捨てさせる算段なんざつけんな──ッ」
死神の噂を理不尽だと思うのなら、その原因ごとお前が焼き尽くしてしまえばいい。
その場にいた誰もが、ソーマの激しさに息を呑んだ。
対するコハクは、
驚愕で瞳が揺れ、次いで困惑。そして深い嘆息の後、小馬鹿にするように口角を吊り上げた。
「はっ、何を言い出すかと思えば⋯⋯お前それ、
「なっ⋯」
「悪いが俺は、鋼の英雄様でもなければ、焔の救世主様でもないんでな。
あの二人みたいに、決めたからこそ果てまで
刹那、視線を落としてくしゃりと歪むコハクの
気付いたソーマは、はっと息を詰める。初めて見る顔なのに、妙な既視感を覚えるのは何故なのか。
だが、その表情は一瞬で消え、再び剣呑なものに変わる。
「話を戻すが⋯⋯お前、またエリックみたいに、大切だと想える奴が現れたらどうするつもりだ?」
「それは──⋯⋯」
「エリックみたいに遠ざけて、拒絶して、それで終わりか? 馬鹿が。それじゃ駄目だ」
簡単に、それこそ呆気なく。考えていた言葉すら否定された。
「あの手の人種はめげることを知らねえからな、拒絶しても意味がねえ。例え手酷く罵倒されようが、ぶん殴れようが、お前の思い通りにはなってくれねえのさ」
むしろ、その逆。ソーマの言葉や態度の裏に見え隠れする
君は優しいな、仲間想いだなと。言われた本人からして、見当違いも
「その上で、だ──なぁ、ソーマ。お前一体、何がしたい?」
「⋯⋯⋯⋯」
再び問われ、ソーマは返答に
死神らしく仲間を見捨てるにしろ、しないにしろ。過程に重要なのは己の意志。
もうそれしかなくて、その選択しかないのなら。
この俺に、
「ま、そーいうこった」
先ほどまでと打って変わり、静けさを取り戻したコハクの声音は、聞く者に薄ら寒さを感じさせた。証拠に彼の背後に控えたコウタが、堪らず
一方のソーマは、眼前の新兵をきつく睨み返した。これほど彼が忌々しいと思ったのは、初めて共に任務をこなしたあの日以来である。
「で、お前は選びたくねえんだろ? だから俺が、嫌でもお前に選ばせてやるっつってんだぜ」
ついと、コハクは目を細めた。言い逃れなど許さぬと言うように。
「
極限まで追い詰められねえと、お前は戸口を開けねえトロイの木馬だ。八方美人しやがって、今だってきっちりかましてやがる」
冷たく響く声は淡々としていて、
そこにあるのは、確かな思いやり。ソーマにかつての己と同じ
難しいことは
コハクが伝えたいのは、とてもとても簡単なこと。そう──
「それが嫌なら、大切なことぐらい自分の心で選びやがれ! エリックの死を、無駄にすんなッ!!」
ああするべきとか、資格がどうとか、そんな
そんな激烈な活が、神託を告げるかの如き忠告と共に轟いた。
刹那に。
「──はっ、なんだそれは」
吐き捨て、ソーマは乱暴にコハクの胸倉を掴む。次いでぐいと、
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
しかしそれも、むべなるかな。ソーマとて理解はしているし、気付いてもいるのだ。何もかも、コハクの言う通りであることを。
けれど、無理なものは無理なのだ。彼は眼前の新兵みたく過去から学び、
認めよう。相手の方が余程、自身よりも先に進んでいたのだと。
闇の眷属だからだろうか。属性を言い訳にするつもりはないが、自分はいつまでもしがみついていた。今に積み重ねた喪失は、
けれど、ああそうだとも、
「ふざけるのも大概にしろ、ルーキー。目障りだ」
冷たい
加減などしなかったためか、思わず体勢を崩した彼が勢い良く床に
そもそも、おかしな話だ。いずれ現れるかもしれない大切なもののため、自分の意志で“勝利”を選べと言う割に、この青年は自分の存在を
恐らく、互いの属性を考慮した結果なのだろうが⋯⋯
忘れてはならない、闇の眷属とは得てして、理屈よりも感情が先に来る生き物だ。相手の属性など
そうした自身の特性を、ソーマとて無自覚なわけがなく。
「俺のことなんざ放って置け。無駄な手間をかけさせるな」
ゆえに拒絶する。選択肢など総じて邪魔だと
ああそうとも、こんなところで別の
手放したくないと、何故か強く思う目障りな一滴。
自分に関われば最後、エリックよりも容易く
「勘違いするな。お前が何を簡単に切り捨てようが、なに勝手に⋯⋯俺の許可得て馬鹿げたことやろうが、俺には関係ない。
いなくなるならいなくなるで、
お前を大切だと思うようになってしまう。
たとえ
そんなのはごめんだ。絶対に認めない。
お前にはずっと、それらしく──やり過ぎない程度に輝きながら生きて、馬鹿みたいに未来を目指してて欲しいんだ。
「だから⋯⋯お前は俺に関わるな。
価値なんてつけるか、優先事項なんぞ知るか、できるかできないかにも興味はない。守ってやるつもりなんざハナからねえ。
俺はお前に、関わるつもりはない。お前の存在に興味もない」
大切な存在だと思える可能性があるからこそ、その選択のどれかを選ぶわけにはいかなかった。
「⋯⋯⋯⋯」
ソーマの慟哭にも似た
何も言葉が出ない。返答もない。沈黙がおりる、数秒の永遠。
そうして息をついて、やれやれといった
「はっ──全く、この博愛主義者は」
その仕草からは険が取れていて、仕方なさげに髪を
「いつまでもペラペラ──甘ったれたこと抜かしてんじゃねぇッ!」
「──ッ、が!?」
刹那、暗転する視界。
意識さえ
──本気だ。
誰に言われるまでもない。ソーマに備わる闇の眷属としての本能が、もはや取り返しはつかぬと
「な⋯何やってんだよ、コハクっ!」
「お前はすっこんでろ。これは⋯⋯俺とこいつの問題だ」
慌てて止めようと駆け寄るコウタを、声で制した。
片膝をついた姿勢から見上げた先には、こちらを見下ろすコハクの姿。
「ルーキーっ、てめえ⋯⋯!」
「怒ったかよ、腰抜け野郎。どいつにもこいつにもいい顔して、あれは嫌だ、これは嫌だ、その上これまで嫌だってか」
彼の
「だから結局、最後は誰かに寄りかかるんだ。いい歳しておんぶにだっこか、笑わせる。そうやって何でもかんでもすぐ誰かに与えちまうから、そいつがアキレス腱になっちまう。
テメェ独りでどうこうしようとするのも、その裏返しだろ。誰かがいなきゃ立てねえから、そっちばっか見て、挙句テメェはそのざまか。
「⋯⋯っ、なんだと⋯⋯」
「違うのかよ」
ふらつきながら、上から目線で吐き捨てられる言葉へソーマは立ち上がる。
睥睨しているのが
叩きつける気迫など意に介さず、返る視線は涼しげだ。けれど呼応するかのごとくエントランス内へ満ちるのは⋯⋯紛れもない戦意の類。
同時、二人の脳裏に襲いかかったのは、雑音混じりの既知感だ。
かつて
なんだこれは? 全く訳が分からない。
辛うじて分かることと言えば、今まで静観していた
一方のコハクに、戸惑いは一切見られない。
恐らく、誰の差し金か気付いているのだろう。深い溜息を吐き、だがしかし──
「⋯こいよ、ソーマ。喧嘩しようぜ。
光だとか闇だとか、そんなの全部どうでもいい。俺とお前のケリを、今ここでつけようじゃねえか」
「野郎──っ!」
脳内に響いたのは、自分でも正体が分からない、糸の切れる音。
振り上げた拳に、一瞬の交差。
喉を迸ほとばしったのは、怒りの咆哮で。そして間違いなく⋯⋯悲鳴の亜種でもあった。
長いこと苦戦し続けて思ったのですが、光の眷属の中にも「できない人」っていますよね、多分。
ラグナロクの実況動画を見る感じ、ラグナは「できるけど自制してやらない」という印象を受けたのもあります。
なら、私の書くコハクはその逆にしようと考えました。ただ腐っても光の眷属なので、仮にできても長続きしないぐらいの塩梅です。
尚、実際にプレイはしていません。
なので、ラグナに対する認識が間違っている場合、ご指摘して下さると助かります。
それでは、また次回。