Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】   作:フェルゼン

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注意
 ・うp主は、喧嘩シーンのインプット量が少ないです。
 ・この為、玲愛√の蓮VS司狼を参考にしています。
 ・工夫はしてますが、ネタバレ&キャラ崩壊に注意してください。



第三話 軍配は──/Entscheiden 前編

 

 

   1

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「オォッ!」

「ぐ……ッ、は──()()けてんなよ、腰が入ってねえぞッッ」

 

 ソーマの拳が、突き刺さるようにコハクの鳩尾(みぞおち)に入った。

 遠心力と共に打ち出された衝撃に耐え、彼から返ってきたのは、脳と首を刈る裏拳──

 

「──が、ッ。効かねえな、寝ぼけてるんじゃねえか、テメェッ!」

 

 揺れる視界に、ぐらつく足。素早く立て直して放った前蹴りが胴を折り、互いの身体に痛みの熱を生む。

 流石のコハクでも(しの)ぎ切れなかったのか。よろよろと、二・三歩ほどエレベーターの方に後退(あとずさ)りした。

 当たり前だが、それで終わる彼ではない。

 ぐっと、力むように停止する足。次いで間を置き、再び構えて打ち合う体勢となる。

 

 視界はすでにどろどろだ。勘と意地だけで身体を支え、拳の応酬を続けていく。

 

 そこに誰かが入り込む余地はない。いや誰にもその資格はない、二人の喧嘩。

 だがしかし、明確な殺意すら伴って行うそれが、果たして健全と呼べるのだろうか。

 ──否である。

 

「何故、テメェがそうやってッ」

 

 勝手に怒っているのか。

 (ほお)を殴られて途切れたソーマの言葉は、しかし新兵へ伝わるには過不足なく。

 

「てめぇが、(ちげ)ぇのに否定しないから、だろうがッ」

 

 会話は成立する。互いを殴りながら、壊しながら、慟哭(どうこく)の代わりに打撃音を響かせて。

 

「そんなに腹立つことか!? こんな風に、こんな馬鹿げた真似までしやがって!」

「はっ。当然だろうが、大体てめえの態度は、見ててイライラすんだよ!

 事情通ですって澄ましやがって……正直思ったぜ、俺は。

こいつはどうかしてる

頭おかしいんじゃねえか?

 なんでこんな、独りで世界中の悲劇を背負(しょ)った気でいる馬鹿に、エリックみてぇなダチがいたんだろう──ってなァッ!」

「──ぐ、はッ!」

「丁度いい頭かち割って、中身どうなってるか見てやるよッ」

 

 一際大きく頭を殴られ、叫びながらまた殴り合う。

 あの日あの時感じた言葉が、心情が、とめどなく(せき)を切って流れ出す。

 

「それはこっちの台詞(セリフ)だッ。

 何故テメェみたいな物好きが、俺の近くに現れるんだ。何故こんな……どうかしてる奴がまだいるんだってな!」

 

 能天気な顔して、毎度毎度、適当な同行理由ばかり並べ立てるのが大得意で。

 それも噂の内容を承知の上で、自分のところにやって来て、任務に誘うものだから。

 

「ダチが欲しいなら他所(よそ)行けよ、決まって俺とつるもうとするんじゃねえっ」

「あ"ぁ? 人の交友にケチつけんじゃねえ、この、エセ虚無主義者(ニヒリスト)がッ!」

「テメェッ、どの口が言ってやがる──!」

 

 ──俺から見れば、テメェ(てめぇ)がそれだ。

 

 同じ感想を抱きながら殴り合う、殴り合う、殴り合う。

 衝撃で手足の骨は(きし)み、破れた皮膚(ひふ)が返り血と共に拳を染め上げていく。

 それでも、まだ止まらない。止められないから。

 

「────!」

 

 強烈な左フックが、ソーマの顎に炸裂した。

 続けて耳朶(じだ)を叩くのは、重く低いコハクの声だ。

 

「ああ、そうだぜ。決まって突っかかるのは、エリックみてぇな物好きさ。てめぇがなかなか素直にならねえもんだから、いつも苦労してたろうぜ。

 きっとうまく趣向を凝らしてよ、お膳立てまで整えて、最後に駄々こねる馬鹿を呼びに行って連れ出してたのさ。

 心当たりあんだろ、覚えがねえとか言わせねえ。そんなに嫌ならどっか行きゃいいのに、てめぇいつだってエリックのこと待ってたんだろうが!」

「誰が、あんな奴のことなんざ……っ」

「待ってたろうが、興味がないフリだけしやがって。見え見えなんだよッ。

 どうしたいのか気付いてながら、やりたくねえってほざいてばかり。ふざけんなッ。

 そんなに独りぼっちになりてえなら、部屋に閉じこもって膝抱えてろ! 目ぇ(つぶ)って耳塞げ、心臓動かすなボケナス!

 鬱陶(うっとう)しいぜ。それが一番いいって答えも、代替案も出せない癖に──」

 

 より一層、激しさを増す打撃音。

 

「てめぇがやること成すこと、やる前に値踏みすんな!」

 

 気合いと共に鋭くなる拳は、そのままコハクの感情と直結していた。

 その声が、その叫びが。いまの彼が抱く情動そのものだ。決して逃げてはならず、また向き合わねばならぬ精神の構図。

 

「答えが出てんのに(ちゅう)(ちょ)すんなっ、それっぽく振る舞ってケリがつくかっ、いい加減未来(うしろ)向きやがれこの逃避野郎……!」

「ぐッだか、ら……

 

 それは勘違いで、お前の気にすることじゃないんだと。

 

「ふざけるなっ──誰が選ぶか、そんなこと! 勝手に見切りつけたがる、テメェのことも!」

 

 全部、全部くそったれだと言っただろう。

 馬鹿と言いたければ言え、分かれよ、気付けよ。そっちこそ大切なものを見失ってるじゃねえか。

 俺はテメェの言う虚無主義者(ニヒリスト)なんだろう? なら、それらしくやってると思えばいい。

 たとえ俺の選択にろくな末路しかなくとも、子供じみた(かん)(しゃく)だとしても、それでも。

 

「もう一度言うお前は、俺に関わるなっ。だからテメェも、テメェで勝手に見切りつけようとすんじゃねえッ!」

 

 そうして、俺のような()()()は放って置けばいい。覚悟があって、このクソッタレな戦場に来たのなら尚のこと。

 お前は光で、俺は闇。少しでもすれ違ったら最後、致命的な破滅を周りにもたらすことぐらい、お前だって分かるだろう。

 だから、なぁ、こんなくだらねえことは今すぐやめちまえ。そういうもんだと納得しろ。

 でなけりゃ俺は、()()、お前を──

 

「だから、それがっ……

 

 その想い。必死に隠して、それでも声を張り上げた葛藤(かっとう)は、確かに伝わったはずなのに。

 

「逃げてるって言ってんだよ、この馬鹿野郎──ッ!!」

 

 間髪(かんはつ)入れず放たれた一撃に、平衡感覚ごと打ち砕かれた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「何やってんだ、お前らぁ!!」

 

 その時。突として弾ける男の怒号。 

 騒ぎを聞きつけたのか。声の主たるリンドウが、憤然(ふんぜん)たる(おも)()ちで昇降機から降りてきた。

 

 が、それで動きを止めたのは、コウタやタツミなどの第三者だけ。

 肝心の当人らは、リンドウの方を一顧(いっこ)だにせず、殴り合いの喧嘩を続行していく。

 思わず舌打ち。今の二人には、周りの人はおろか。その音さえ、ろくに見聞きできていない。

 

「これは──っ」

 

 理解と同時、姉のツバキが現れた。

 階段を駆け上がってきたのだろう。彼女は息を弾ませながら、愕然(がくぜん)瞠目(どうもく)している。

 無理もない。何せ視線の先では、今も血が飛んでいるのだ。

 そんな光景を前にして、驚くなと言う方が酷な話だろう。

 だが、その狼狽(ろうばい)も一瞬。ぐるりと、ツバキの瞳が動き──

 

「リンドウ!」

「分かってます!!」

 

 呼ばわる声に、即応するリンドウ。

 このまま(くだん)の二人を放置すれば、最悪の事態になりかねない。

 だから。

 

 昇降機側のリンドウは、コハクを。食堂側のツバキは、ソーマを。

 力づくでも制圧しようと、()を蹴りかけた──刹那に。

 

「駄目ですよ、お二方」

「そうそう、いま止めに入ったところで返り討ちに遭うだけだって」

 

 声が響いた。雨宮姉弟を制止する、二つの声が。

 

 反射で動きを止めて、声の方へと振り返る。

 いつの間に傍まで来ていたのか。昇降機を背にして、双子の片割れたるティナが立っている。

 一方のリンドウは、(すが)めた目で彼女を見返した。

 

……どういう意味だ?」

「言葉通りの意味です。

 ご覧の通り、今のコハクさんとソーマさんには周りが全く見えていません。下手に手を出せば、大怪我をするのはあなた方お二人でしょう」

「あれでも一応、本人たちは真剣だからね。ツバキさんたちの気持ちは分かるけど、今は(こら)えどきだと私も思うな」

 

 即答。少しの(しゅん)(じゅん)も見られない。

 ぎりっと、リンドウは知らず歯噛みした。淡々とした双子の口調が、いつになく(しゃく)に障る。

 無論それは、彼女らなりの誠意なのだろう。事実、こちらを見据えるティナの瞳は真剣そのものだ。

 

 ゆえ、リンドウは気付かない。

 近くにティセの姿──ツバキを説得している──がないにも(かかわ)らず、その声が聞こえるという違和感に。

 

「あのなぁ……

 

 (つぶや)き、リンドウは(おお)(ぎょう)に肩を(すく)めた。

 同時、深呼吸を一つ。(はや)る気持ちを鎮めつつも、剣呑と言葉を(つむ)いでいく。

 

「かと言って、放って置く訳にもいかんだろ。まさかとは思うが、あの二人のどっちかに死んで欲しいのか?」 

「いいえ、そんなことはありません」

「わたし達も鬼じゃないからね。殺し合いじみた喧嘩なんて、早く終わらせた方がいいと思ってるよ」

 

 再び、即答。双子は心外だと憤ることもしない。

 

「なら、どうして──」

「では、逆にお尋ねします」

 

 止めるのか──そう続くはずだった言葉はしかし、ティナの声により(さえぎ)られた。

 ()(げん)な顔をするリンドウに、彼女は問いかける。素知らぬ顔で、淡々と。

 

「今お二人が止めに入って、怪我でもされてしまったら、コハクさんとソーマさんはどう思うのでしょう?」

「ッ──」

 

 絶句と同時、リンドウは僅かに目を見開いた。

 コハクも、ソーマも。方向性が違うだけで、仲間想いであることに変わりはない。

 もし、ティナの言葉が現実となれば、彼らは間違いなく後悔することになるだろう。

 

 恐らく双子は、それを見越した上で雨宮姉弟に警告したのだ。止めるのなら、今ではないと。

 

「ご理解頂けましたか?」

………

 

 問いに、返す言葉もない。

 そしてそれは、食堂側にいるツバキも同じだった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

   2

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 喧嘩は続く。いや、続いてしまっている。

 

 他者の不理解、埋まらぬ溝。

 それを埋める為には、感じた想いをすれ違いながら吐き出すしかなく……

 

「──ッ、ぐ」

「づ、……ぉおッ」

 

 ゆえに、コハクとソーマの二人は殴り合う。腕が、骨が、健在である限り。

 それこそ、互いが壊れて動けなくなるまで、彼らは殴り合う。殴り合い続ける。

 

 喰らい、喰らわせた拳は、もはや三桁(さんけた)を越えていた。

 それよりも痛烈な呼び()けが(はい)()に轟き、コハクの(そう)()を打ち付ける。

 

 既に満身(まんしん)(そう)()だ。だが、心は違う。

 

 まだまだ、この石頭に言ってやりたいことがあって。

 こんな機会(チャンス)、二度と来ないだろうと思うから。

 だからコハクは、ソーマを殴るのと同時、その全てを胸の内から吐き出していく。

 

 苦鳴を上げているのか、噛み殺しているのか。

 想いは届いているのか、いないのだろうか。

 

 口下手の自覚があるからこそ、不安は尽きない。

 それでも自分と同じ(わだち)を踏ませぬ為に、今はただ、この殴り合いを──

 

「そういや、あの時もよ……お前はこんな感じだったなぁ、おいッ!

 殉職なんざ日常茶飯事とか抜かしてよ、その癖、いの一番にキレやがる。面倒くせぇ」

「それの、何が……っ」

「悪いんだよ。言ってることとやってることが破茶滅茶で、見ててイライラするッ。

 ガラクタいつまで抱えてやがる、なくしたんだよ。いい加減、死神(げんそう)にまでしがみ付いてんなッッ!」

 

 そうだ、それはガラクタだ。お前が身体張る価値なんざ、もう一つもない。

 

 諦めさせようとしてんだぞ。本気だぜ、俺は。

 そうなった光の厄介さ──お前、よく知ってんだろ。

 

「勝手に背負うな! 命賭けて、気張って、意地張るとこ間違いっぱなしなんだよッ!

 頼んでもねえのに、人の理屈に乗っかって来てんのは何処(どこ)のどいつだ、あ"ァ!?」

 

 だから、ほら、さっさと手放せよ。

 未練(まえ)だけを追って行けば、いつか破綻するんだって。

 そうなったらお前、また大切だと想った奴を失っちまうだろうが。

 

 言っただろう、お前が選んだ道に先はないんだ。それを、俺は過去に経験している。

 なら何が失敗の原因で、何を改善するべきなのか。大体の察しはつくだろう。

 弱い奴から見捨てたって、詰むのは当然だ。

 さっき口にしたデマカセが仮に真実でも、お前はいつか摩耗して、独り死にに行っちまう。

 

 そんなの俺は()(めん)だぜ。ああその通りさ、ソーマ。俺の十八番(おはこ)は、頭の硬さと頑固さだ。

 だからお前を、必ず別の可能性(みち)に連れて行ってやる。

 

「だってのに、お前はゴネて、ちっとも大人にならねえガキのままだッ」

 

 死なせたくないんだろ? 生きてて欲しいんだろ? その為に遠ざけてるんだろ? 仲間のことが、大切だから。

 なのになんで、他の連中を頭数から外してんだよ。

 いつまでも死んだ奴ばっか見やがって、過剰なんだ俺ら(こっち)向けよ……なあ、ソーマ。

 じゃねえとお前のダチも、安心してあの世に()けねえじゃねえか。

 

「この()(ほう)がッ、気合で何でも解決できりゃ、世の中宗教も法律も生まれてねーよ。大和(アマツ)喰神(アラガミ)も、光狂いもいるかッ!

 どうすりゃいいか言ったろうが、知ってんだろ、気付いただろ。ならいい加減、腹の一つでも男らしく(くく)りやがれッ。

 仲間に死なれんのが嫌なら、少しは開き直って手ぇ掴んでこい。失いたくないんなら、それぐらいやってみたらどうだッ。ええ、根暗ちゃんが!

 奪われたから奪わない、奪ったのは俺だって聖人かよ、このボケ。仲間守りたいんなら、俺が守ってやるぐらい言ってみたらどうだ!」

「ふざけるなと言ってるだろ、そんなやり方、俺は──」

 

 そうだよな、お前ならそう言うと思ってたぜ。分かってる。

 

「知ったことかっ、どれもクソッタレだッ!

 誰かを守るなんてな、()()()()()()()()絶対にやってやらねえ……!」

 

 だろうな。頑固だもんな、お前は。

 こんな俺の言葉じゃ、折れるはずねーよな。

 

 思わず苦笑。横面(よこつら)を殴られた返礼に、ソーマの額へ頭突きを見舞った。

 

「じゃあ何だ、どうすりゃいいか言ってみろォ!

 人の考えた案にケチつけて、てめえ……さっきからアレも違ぇ、コレも違ぇとそればっかじゃねえかッ!

 こちとらオウムに話かけてんじゃねーんだぞ、てめえの言葉ぐらい、一つや二つ吐いてみろ!」

「だから、それも言ってるだろうがッ。()()こきやがって、このニワトリ頭が」

 

 刹那、炸裂したのは鳩尾(みぞおち)を撃ち抜く裏拳。

 呻き、蹌踉(よろ)めくコハクの口内に、じわりと鉄の味が広がる。

 

 人を勝手に馬鹿にするな、馬鹿。

 けれど、それじゃ意味がないって言ってるんだ。分かれよ。そんで先に進もーぜ。

 

 そう思いながら、ソーマの胴に回し蹴りを叩き込んだ。

 防御が間に合わなかったのか。吹き飛ばされまいと、(てつ)を刻んでいる。

 そうして立ち上がる否や、射殺さんばかりにこちらを睨みつけ。

 

「俺は、誰も守らねえッ。

 適材適所だ。向いてねえことを、無理にやらせようとするな──ッ!!」

 

 (ようや)く出できた反論さえ、そんなもの。

 未だにああするべきとか、資格がどうだとか。()()()()()()()()で、その為に身体を張ることが当然だと思っている。

 

 気持ちは分からんでもないぜ。俺も似たよーなもんだし。

 けどなぁ、ソーマ。壊滅的に似合ってないんよ、そーいうの。

 何時までもカッコイイ台詞(セリフ)、真顔で吐くなよな。聞いてるこっちが恥ずかしいぜ、ホント。

 

「だからっ」

 

 そんな馬鹿だから、譲りたくねーのがもう一つあるらしくて。

 

「だから、テメェは俺に関わるなッ。

 どうでもいいんだ、鬱陶(うっとう)しい──そんなに誰かを守りたきゃ、テメェが守ればいいだろッ。違うか、このくそルーキーがッッ!!」

 

 ……こんな時でさえ、素直になれねえ大馬鹿だ。

 ソーマの右ストレートを頬に受けながら、コハクは胸中で独り()ちる。

 

 ああ、そいつは光栄だけど。

 こうする他にないだろうが、この馬鹿野郎。まして、てめぇから代案が出ねえなら尚のこと。

 何より俺は、間違いなくこれが最善手だと知ってるんだ。

 

「うるせえなぁ。それでどうにかならねーから、やめとけって言ってんだろうがッ」

「うるさいのはテメェだ、寝言かましてるのもそっちだ。俺はそんなの認めねえ、何度だって言ってやるッ。

 抱えて進んで何が悪い。俺にはできないことを、テメェがやれば丸く収まるだろッ!!

 今までも、今も、これからだってだッ。俺は俺の理屈で、それがいいと思って言ってるのが分からねえのかッ!!」

 

 痩せ我慢で、なのに確信の込められた言葉が刺さる。

 本気でそう思ってて……ああホント、俺以上に性質(タチ)悪ぃなぁ、こいつ。

 

 それで苦労すんの、誰だと思ってるんだ?

 お前が変わらず、あれこれ抱えるのを止めなけりゃ、毎度毎度こうやって俺が骨折る羽目になるんだが?

 ……冗談キツイぜ。

 

「テメェなら、守れるだろッ」

 

 振り絞って吐き出された言葉に、怒りを通り越して呆れてしまう。

 

 博愛主義者が、いい加減にしろ。別に、何でもかんでも後生大事に抱えんなとは言わねえ。

 だがなぁ、おい。その為に大切なモンを見落とすなや。

 生きてる奴もいるって、どうしてお前は気付かない。

 

「俺は死なすしか能がねえんだ。死なせたくなきゃお前が守れ、腹立つがそこに関しちゃ天下一品だ、そうだろッ」

 

 またそんな、確証のねえことをベラベラと……

 自慢するみたいに語るなよ、ホモ臭いし耳が(かゆ)い。鼓膜を捨てたくなっちまう。

 

「生きるんだろ? なんで勝手に死ぬとか言い出しやがる、逃げだろそれは。

 何度も言う。テメェは、俺に関わるな。欠員出したくねえならな、俺を同行させなればいい。

 そこのガキと、リンドウと、テメェらだけで群れてろ。そうすりゃ誰も死なない、失わない。

 それが……一番の最善手だろうが!」

 

 そうだな、そいつは()()()()()()だ。

 お前だけ仲間外れにして、欠員出さねえよー親しい奴らとだけ仲良しこよし。

 はっ、なんじゃそりゃ──()()()()()

 例えウィン・ウィンの関係だろうと、そこにお前がいなけりゃ意味がねーって言ってるんだ。

 

 何せお前……放っといても、勝手に死にに逝っちまうだろ?

 分かるぜ。俺にも心当たりがあるんでな。

 だから──

 

「どうやって、だよッ。だから案出せって、俺は言ってるだろうが!」

「知るか、馬鹿ルーキー。テメェが考えろ、期待の新型なんだろが──!」

 

 アッパーと共に叫んだのはそんなもの。

 他力本願と言うか、子供の癇癪(かんしゃく)みたいな理論。

 思わず嘆息(たんそく)して、エルボーで反撃。

 

 ……なんだそりゃ、こいつ、本物の馬鹿だ。

 根拠のない自信も大概にしろ。それは無理で、先がねえから別の可能性(みち)選べって言ってるんだぜ。

 後はそっちが実行するだけなのに、いつまで意地を張ってやがる。

 

 知ってるんだ、分かるんだ。こー見えて、見る目はあるんでな。舐めるんじゃねえ。

 

 ──ソーマ、お前はきっと、人を守ることに向いてるんじゃねえかと思ってるんだ、俺は。

 だからそんな、寂しいこと言うんじゃねえよ。

 

「考えろって、お前なぁ……

 

 ああもう、本当に世話焼けるぜ、こいつ。

 きっと()()()も、こんな気分だったんだろうな。

 呆れて溜息しか出てこない。自分の姉は、本当に物好きだったと痛感して。

 

「なにてめぇより階級の低い人間に頼ってんだ、飾りかその頭はよォ─────ッ!」

 

 他人にてめぇの望みを託すな、馬鹿。てめぇよりも他人を信じるな、馬鹿。

 その上、予想以上に買い被ってやがったなんて、まったく笑えねー馬鹿だから。

 

「ぐ──ッッ!!」

 

 より一層の力を込めて、ソーマの頬を殴り飛ばしてやった。

 喧嘩はまだ、終わりそうにない。

 

 





 お久しぶりです。言い訳はしません。
 投稿が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。

 未だ不慣れなシーンが続く為、次の投稿も遅くなると思いますが、ご理解・ご了承のほどよろしくお願いします。
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