Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】 作:フェルゼン
※注意
・うp主は、喧嘩シーンのインプット量が少ないです。
・この為、玲愛√の蓮VS司狼を参考にしています。
・工夫はしてますが、ネタバレ&キャラ崩壊に注意してください。
1
「オォッ…!」
「ぐ……ッ、は──
ソーマの拳が、突き刺さるようにコハクの
遠心力と共に打ち出された衝撃に耐え、彼から返ってきたのは、脳と首を刈る裏拳──
「──が、ッ。効かねえな、寝ぼけてるんじゃねえか、テメェッ!」
揺れる視界に、ぐらつく足。素早く立て直して放った前蹴りが胴を折り、互いの身体に痛みの熱を生む。
流石のコハクでも
当たり前だが、それで終わる彼ではない。
ぐっと、力むように停止する足。次いで間を置き、再び構えて打ち合う体勢となる。
視界はすでにどろどろだ。勘と意地だけで身体を支え、拳の応酬を続けていく。
そこに誰かが入り込む余地はない。いや誰にもその資格はない、二人の喧嘩。
だがしかし、明確な殺意すら伴って行うそれが、果たして健全と呼べるのだろうか。
──否である。
「何故、テメェがそうやってッ」
勝手に怒っているのか。
「てめぇが、
会話は成立する。互いを殴りながら、壊しながら、
「そんなに腹立つことか!? こんな風に、こんな馬鹿げた真似までしやがって!」
「は…っ。当然だろうが、大体てめえの態度は、見ててイライラすんだよ!
事情通ですって澄ましやがって……正直思ったぜ、俺は。
“こいつはどうかしてる”
“頭おかしいんじゃねえか?”
なんでこんな、独りで世界中の悲劇を
「──ぐ、はッ!」
「丁度いい…頭かち割って、中身どうなってるか見てやるよッ」
一際大きく頭を殴られ、叫びながらまた殴り合う。
あの日あの時感じた言葉が、心情が、とめどなく
「それはこっちの
何故テメェみたいな物好きが、俺の近くに現れるんだ。何故こんな……どうかしてる奴がまだいるんだってな!」
能天気な顔して、毎度毎度、適当な同行理由ばかり並べ立てるのが大得意で。
それも噂の内容を承知の上で、自分のところにやって来て、任務に誘うものだから。
「ダチが欲しいなら
「あ"ぁ? 人の交友にケチつけんじゃねえ、この、エセ
「テメェッ、どの口が言ってやがる──!」
──俺から見れば、
同じ感想を抱きながら殴り合う、殴り合う、殴り合う。
衝撃で手足の骨は
それでも、まだ止まらない。止められないから。
「────!」
強烈な左フックが、ソーマの顎に炸裂した。
続けて
「ああ、そうだぜ。決まって突っかかるのは、エリックみてぇな物好きさ。てめぇがなかなか素直にならねえもんだから、いつも苦労してたろうぜ。
きっとうまく趣向を凝らしてよ、お膳立てまで整えて、最後に駄々こねる馬鹿を呼びに行って連れ出してたのさ。
心当たりあんだろ、覚えがねえとか言わせねえ。そんなに嫌ならどっか行きゃいいのに、てめぇいつだってエリックのこと待ってたんだろうが!」
「誰が、あんな奴のことなんざ……っ」
「待ってたろうが、興味がないフリだけしやがって。見え見えなんだよッ。
どうしたいのか気付いてながら、やりたくねえってほざいてばかり。ふざけんなッ。
そんなに独りぼっちになりてえなら、部屋に閉じこもって膝抱えてろ! 目ぇ
より一層、激しさを増す打撃音。
「てめぇがやること成すこと、やる前に値踏みすんな!」
気合いと共に鋭くなる拳は、そのままコハクの感情と直結していた。
その声が、その叫びが。いまの彼が抱く情動そのものだ。決して逃げてはならず、また向き合わねばならぬ精神の構図。
「答えが出てんのに
「ぐッ…だか、ら……」
それは勘違いで、お前の気にすることじゃないんだと。
「ふざけるなっ──誰が選ぶか、そんなこと! 勝手に見切りつけたがる、テメェのことも!」
全部、全部くそったれだと言っただろう。
馬鹿と言いたければ言え、分かれよ、気付けよ。そっちこそ大切なものを見失ってるじゃねえか。
俺はテメェの言う
たとえ俺の選択にろくな末路しかなくとも、子供じみた
「もう一度言う…お前は、俺に関わるなっ。だからテメェも、テメェで勝手に見切りつけようとすんじゃねえッ!」
そうして、俺のような
お前は光で、俺は闇。少しでもすれ違ったら最後、致命的な破滅を周りにもたらすことぐらい、お前だって分かるだろう。
だから、なぁ、こんなくだらねえことは今すぐやめちまえ。そういうもんだと納得しろ。
でなけりゃ俺は、
「だから、それがっ……」
その想い。必死に隠して、それでも声を張り上げた
「逃げてるって言ってんだよ、この馬鹿野郎──ッ!!」
「何やってんだ、お前らぁ!!」
その時。突として弾ける男の怒号。
騒ぎを聞きつけたのか。声の主たるリンドウが、
が、それで動きを止めたのは、コウタやタツミなどの第三者だけ。
肝心の当人らは、リンドウの方を
思わず舌打ち。今の二人には、周りの人はおろか。その音さえ、ろくに見聞きできていない。
「これは──っ」
理解と同時、姉のツバキが現れた。
階段を駆け上がってきたのだろう。彼女は息を弾ませながら、
無理もない。何せ視線の先では、今も血が飛んでいるのだ。
そんな光景を前にして、驚くなと言う方が酷な話だろう。
だが、その
「リンドウ!」
「分かってます!!」
呼ばわる声に、即応するリンドウ。
このまま
だから。
昇降機側のリンドウは、コハクを。食堂側のツバキは、ソーマを。
力づくでも制圧しようと、
「駄目ですよ、お二方」
「そうそう、いま止めに入ったところで返り討ちに遭うだけだって」
声が響いた。雨宮姉弟を制止する、二つの声が。
反射で動きを止めて、声の方へと振り返る。
いつの間に傍まで来ていたのか。昇降機を背にして、双子の片割れたるティナが立っている。
一方のリンドウは、
「……どういう意味だ?」
「言葉通りの意味です。
ご覧の通り、今のコハクさんとソーマさんには周りが全く見えていません。下手に手を出せば、大怪我をするのはあなた方お二人でしょう」
「あれでも一応、本人たちは真剣だからね。ツバキさんたちの気持ちは分かるけど、今は
即答。少しの
ぎりっと、リンドウは知らず歯噛みした。淡々とした双子の口調が、いつになく
無論それは、彼女らなりの誠意なのだろう。事実、こちらを見据えるティナの瞳は真剣そのものだ。
ゆえ、リンドウは気付かない。
近くにティセの姿──ツバキを説得している──がないにも
「あのなぁ……」
同時、深呼吸を一つ。
「かと言って、放って置く訳にもいかんだろ。まさかとは思うが、あの二人のどっちかに死んで欲しいのか?」
「いいえ、そんなことはありません」
「わたし達も鬼じゃないからね。殺し合いじみた喧嘩なんて、早く終わらせた方がいいと思ってるよ」
再び、即答。双子は心外だと憤ることもしない。
「なら、どうして──」
「では、逆にお尋ねします」
止めるのか──そう続くはずだった言葉はしかし、ティナの声により
「今お二人が止めに入って、怪我でもされてしまったら、コハクさんとソーマさんはどう思うのでしょう?」
「ッ──」
絶句と同時、リンドウは僅かに目を見開いた。
コハクも、ソーマも。方向性が違うだけで、仲間想いであることに変わりはない。
もし、ティナの言葉が現実となれば、彼らは間違いなく後悔することになるだろう。
恐らく双子は、それを見越した上で雨宮姉弟に警告したのだ。止めるのなら、今ではないと。
「ご理解頂けましたか?」
「………」
問いに、返す言葉もない。
そしてそれは、食堂側にいるツバキも同じだった。
2
喧嘩は続く。いや、続いてしまっている。
他者の不理解、埋まらぬ溝。
それを埋める為には、感じた想いをすれ違いながら吐き出すしかなく……
「──ッ、ぐ」
「づ、……ぉおッ」
ゆえに、コハクとソーマの二人は殴り合う。腕が、骨が、健在である限り。
それこそ、互いが壊れて動けなくなるまで、彼らは殴り合う。殴り合い続ける。
喰らい、喰らわせた拳は、もはや
それよりも痛烈な呼び
既に
まだまだ、この石頭に言ってやりたいことがあって。
こんな
だからコハクは、ソーマを殴るのと同時、その全てを胸の内から吐き出していく。
苦鳴を上げているのか、噛み殺しているのか。
想いは届いているのか、いないのだろうか。
口下手の自覚があるからこそ、不安は尽きない。
それでも自分と同じ
「そういや、あの時もよ……お前はこんな感じだったなぁ、おいッ!
殉職なんざ日常茶飯事とか抜かしてよ、その癖、いの一番にキレやがる。面倒くせぇ」
「それの、何が……っ」
「悪いんだよ。言ってることとやってることが破茶滅茶で、見ててイライラするッ。
ガラクタいつまで抱えてやがる、なくしたんだよ。いい加減、
そうだ、それはガラクタだ。お前が身体張る価値なんざ、もう一つもない。
諦めさせようとしてんだぞ。本気だぜ、俺は。
そうなった光の厄介さ──お前、よく知ってんだろ。
「勝手に背負うな! 命賭けて、気張って、意地張るとこ間違いっぱなしなんだよッ!
頼んでもねえのに、人の理屈に乗っかって来てんのは
だから、ほら、さっさと手放せよ。
そうなったらお前、また大切だと想った奴を失っちまうだろうが。
言っただろう、お前が選んだ道に先はないんだ。それを、俺は過去に経験している。
なら何が失敗の原因で、何を改善するべきなのか。大体の察しはつくだろう。
弱い奴から見捨てたって、詰むのは当然だ。
さっき口にしたデマカセが仮に真実でも、お前はいつか摩耗して、独り死にに行っちまう。
そんなの俺は
だからお前を、必ず別の
「だってのに、お前はゴネて、ちっとも大人にならねえガキのままだッ」
死なせたくないんだろ? 生きてて欲しいんだろ? その為に遠ざけてるんだろ? 仲間のことが、大切だから。
なのになんで、他の連中を頭数から外してんだよ。
いつまでも死んだ奴ばっか見やがって、過剰なんだ
じゃねえとお前のダチも、安心してあの世に
「この
どうすりゃいいか言ったろうが、知ってんだろ、気付いただろ。ならいい加減、腹の一つでも男らしく
仲間に死なれんのが嫌なら、少しは開き直って手ぇ掴んでこい。失いたくないんなら、それぐらいやってみたらどうだッ。ええ、根暗ちゃんが!
奪われたから奪わない、奪ったのは俺だって聖人かよ、このボケ。仲間守りたいんなら、俺が守ってやるぐらい言ってみたらどうだ!」
「ふざけるなと言ってるだろ、そんなやり方、俺は──」
そうだよな、お前ならそう言うと思ってたぜ。分かってる。
「知ったことかっ、どれもクソッタレだッ!
誰かを守るなんてな、
だろうな。頑固だもんな、お前は。
こんな俺の言葉じゃ、折れるはずねーよな。
思わず苦笑。
「じゃあ何だ、どうすりゃいいか言ってみろォ!
人の考えた案にケチつけて、てめえ……さっきからアレも違ぇ、コレも違ぇとそればっかじゃねえかッ!
こちとらオウムに話かけてんじゃねーんだぞ、てめえの言葉ぐらい、一つや二つ吐いてみろ!」
「だから、それも言ってるだろうがッ。
刹那、炸裂したのは
呻き、
人を勝手に馬鹿にするな、馬鹿。
けれど、それじゃ意味がないって言ってるんだ。分かれよ。そんで先に進もーぜ。
そう思いながら、ソーマの胴に回し蹴りを叩き込んだ。
防御が間に合わなかったのか。吹き飛ばされまいと、
そうして立ち上がる否や、射殺さんばかりにこちらを睨みつけ。
「俺は、誰も守らねえッ。
適材適所だ。向いてねえことを、無理にやらせようとするな──ッ!!」
未だにああするべきとか、資格がどうだとか。
気持ちは分からんでもないぜ。俺も似たよーなもんだし。
けどなぁ、ソーマ。壊滅的に似合ってないんよ、そーいうの。
何時までもカッコイイ
「だからっ」
そんな馬鹿だから、譲りたくねーのがもう一つあるらしくて。
「だから、テメェは俺に関わるなッ。
どうでもいいんだ、
……こんな時でさえ、素直になれねえ大馬鹿だ。
ソーマの右ストレートを頬に受けながら、コハクは胸中で独り
ああ、そいつは光栄だけど。
こうする他にないだろうが、この馬鹿野郎。まして、てめぇから代案が出ねえなら尚のこと。
何より俺は、間違いなくこれが最善手だと知ってるんだ。
「うるせえなぁ。それでどうにかならねーから、やめとけって言ってんだろうがッ」
「うるさいのはテメェだ、寝言かましてるのもそっちだ。俺はそんなの認めねえ、何度だって言ってやるッ。
抱えて進んで何が悪い。俺にはできないことを、テメェがやれば丸く収まるだろッ!!
今までも、今も、これからだってだッ。俺は俺の理屈で、それがいいと思って言ってるのが分からねえのかッ!!」
痩せ我慢で、なのに確信の込められた言葉が刺さる。
本気でそう思ってて……ああホント、俺以上に
それで苦労すんの、誰だと思ってるんだ?
お前が変わらず、あれこれ抱えるのを止めなけりゃ、毎度毎度こうやって俺が骨折る羽目になるんだが?
……冗談キツイぜ。
「テメェなら、守れるだろッ」
振り絞って吐き出された言葉に、怒りを通り越して呆れてしまう。
博愛主義者が、いい加減にしろ。別に、何でもかんでも後生大事に抱えんなとは言わねえ。
だがなぁ、おい。その為に大切なモンを見落とすなや。
生きてる奴もいるって、どうしてお前は気付かない。
「俺は死なすしか能がねえんだ。死なせたくなきゃお前が守れ、腹立つがそこに関しちゃ天下一品だ、そうだろッ」
またそんな、確証のねえことをベラベラと……
自慢するみたいに語るなよ、ホモ臭いし耳が
「生きるんだろ? なんで勝手に死ぬとか言い出しやがる、逃げだろそれは。
何度も言う。テメェは、俺に関わるな。欠員出したくねえならな、俺を同行させなればいい。
そこのガキと、リンドウと、テメェらだけで群れてろ。そうすりゃ誰も死なない、失わない。
それが……一番の最善手だろうが!」
そうだな、そいつは
お前だけ仲間外れにして、欠員出さねえよー親しい奴らとだけ仲良しこよし。
はっ、なんじゃそりゃ──
例えウィン・ウィンの関係だろうと、そこにお前がいなけりゃ意味がねーって言ってるんだ。
何せお前……放っといても、勝手に死にに逝っちまうだろ?
分かるぜ。俺にも心当たりがあるんでな。
だから──
「どうやって、だよッ。だから案出せって、俺は言ってるだろうが!」
「知るか、馬鹿ルーキー。テメェが考えろ、期待の新型なんだろが──!」
アッパーと共に叫んだのはそんなもの。
他力本願と言うか、子供の
思わず
……なんだそりゃ、こいつ、本物の馬鹿だ。
根拠のない自信も大概にしろ。それは無理で、先がねえから別の
後はそっちが実行するだけなのに、いつまで意地を張ってやがる。
知ってるんだ、分かるんだ。こー見えて、見る目はあるんでな。舐めるんじゃねえ。
──ソーマ、お前はきっと、人を守ることに向いてるんじゃねえかと思ってるんだ、俺は。
だからそんな、寂しいこと言うんじゃねえよ。
「考えろって、お前なぁ……」
ああもう、本当に世話焼けるぜ、こいつ。
きっと
呆れて溜息しか出てこない。自分の姉は、本当に物好きだったと痛感して。
「なにてめぇより階級の低い人間に頼ってんだ、飾りかその頭はよォ─────ッ!」
他人にてめぇの望みを託すな、馬鹿。てめぇよりも他人を信じるな、馬鹿。
その上、予想以上に買い被ってやがったなんて、まったく笑えねー馬鹿だから。
「ぐ──ッッ!!」
より一層の力を込めて、ソーマの頬を殴り飛ばしてやった。
喧嘩はまだ、終わりそうにない。
お久しぶりです。言い訳はしません。
投稿が遅くなり、大変申し訳ありませんでした。
未だ不慣れなシーンが続く為、次の投稿も遅くなると思いますが、ご理解・ご了承のほどよろしくお願いします。