Dies irae 〜 Silverio Godeater 〜 【工事中】 作:フェルゼン
瞬間、
先程までとは、まるで比べ物にならない。
それは、
しかも、何故かエネルギーの発生と同調して、自身を追跡し続ける背後の少年がいる場所からも
その熱量。その
すなわち──
「まだ来るか──」
苛立ちと共に、女帝は大量の氷杭弾雨を射出する。
それらを
黄金と
それを手に疾走する姿は、死出の旅路へと
女帝は、思わず
「どうやら、死に急ぐのが趣味みたいね
その栄誉、感涙に
宣言と同時、ここに至り初めて女帝の意識がコハクに集中する。
相対しているだけで発狂しかねない極大の殺意──それは、今までの様な片手間ではない。排すべき相手だと定めたがゆえのものだった。
周囲の氷結速度が更に加速していく。街が凍り、大気が凍る。まるで、氷河期の如き世界へと塗り替えられていく。
創成にも等しい莫大な星が満ちてゆき──刹那。
「············ッ」
空間の四方から発生する氷杭。それが一気にコハクへと襲い
「······、ふ──ッ」
当たらない。斬り裂かれ、いなされ、
何より、素粒子そのものの流れを感じ取れるのが大きい。
元から備えていた素養か、或いは未覚醒の潜在能力か。どちらにせよ、今のコハクが有する
「ふむ、どうやら口先だけではないということか。先程までの貴様であれば、即殺するつもりで放ったのだが、しかし······」
女帝は余裕の態度を崩さぬまま、
コハクに対する一定の評価も、あくまで高みから見下ろしたが故の言葉を下す。
「高い感応性を利用し、素粒子そのものの運動に干渉を行い、こちらの星光、その素粒子が司る核エネルギーを破壊し、己の星光として
ある訳ないと言い掛けて、ハッと息を
素粒子を媒質に他の素粒子に干渉。光速を突破して行われる偏極現象。碧白い光に包み込まれた、
原理こそ解明されたものの、その現象を物理的に実現化することは出来ず、旧西暦時代のエネルギー問題と共に研究開発が中止された科学者達の
それを思い出した女帝は、コハクが操る星光に納得の声を上げる。
「
未知との遭遇に困惑するのも、むべなるかな。
だが、フランスの小説家であるジュール・ヴェルヌ曰く、人間が想像できることは、人間が必ず実現させるという言葉通り、科学の世界に
ましてやそれが、
流星の如きコハクの進撃は、
物理的な氷弾だけではなく、発生する星光の粒子に感応し無形の現象さえも消滅させ、己の星光として再利用していくのだ。
その様を、女帝はあくまで愉快そうに
「では、威力の強大さは?」
ならばとばかりに、コハクの頭上へ巨大な氷塊を創造し落下させる。
その規模は隕石にも等しく、発生を確認して避けられるようなものではない。言わば、巨人の一撃で小人を叩き潰す
だが、それも──
巨象に
物質を構成する原子そのものを、別の原子に
「ほぉ、これを防げるのか。ならば尚更、貴様の存在を放置する訳にもいくまい。
あの
「ッ、ぐぁッ······!」
宣告と同時、コハクの足元から発生した鋭利な樹氷がその身体を貫いた。
一切の予備動作なく、加えて此処まで見せたこともない
氷結し銀世界と化した足下を、鮮血が紅く染め上げていく。
限界まで己の運動性能を高めようと、行動に連続していた攻防を行うには、五体満足である事が必須の前提条件。ゆえ、こうして
「なるほど、範囲攻撃に対する
「さっきからペラペラ······マウントばっか取ってんじゃねえぜ······おい」
お前の勝手な解釈を押し付けるなと、凍結しながら
「ふん、好きに言うが良い。何故なら──」
まるで、愚かな罪人を天に
「貴様は此処で、望み通りに、数で圧殺するからだ」
「マジかぁ······ッ、────」
苦笑と共に諦めの言葉を吐いたと思われた刹那、旧暦の遺物である
触れれば
逃げ惑えないがゆえの必死、脚を止めての斬撃で辛うじて魔弾を撃ち落とし、
生きる、
「な、ッ────」
まさに王手と言わんばかりの氷結が──コハクの足元を
今までのような刺し貫くのとは違い、血肉そのものを停止にかけてきた。
機動性を有してさえすれば、
再現した炎翼加速さえ凍結し、完全に自由を奪われた状態は、一瞬で
「全てにおいて格上である私を迎え撃ち、その上で更に隙を生み出して、どうにかしようと目論んだか? 馬鹿馬鹿しい。そのような
弱きは強きに敵わない。水は上から下へと落ちる。意志の力? ああ、それで? 少々心を決めた程度で方程式が狂うなら、そちらの方が問題だろう。自然界の道理が狂う。
お前と私は、その時点でもはや勝負は決まっている」
鹿は獅子を殺さない。
「邪道は邪道にしかなれん。卑小な己を恥じなさい、
絶望、自棄、そのような感情に落とされても何も不思議ではない現状にて。
しかし──
「ふ、ふふ······」
刹那、弾けるような
先程までの
その微か一瞬、赤く染まった月光が碧の瞳を黄金に染めたような気がした。
「──ああ、悪ぃ。急にあんたが
瀕死とも呼べる状況を前にして、コハクは笑う。
表情は愛おしいモノを慈しむような色を宿し、まるで
死刑を待つだけである筈の存在が、まるで高みから群衆を愛でるような、その表情。激しく矛盾しているものの、目はまだ光を失っていない。
何一つ
「ああ、勘違いすんなよ。別に、あんたの事を馬鹿にしてる訳じゃないぜ。ただ、誤解してただけさ。まるで悪魔か死神だってな······。
それがどうだ、
そして実際、そうなっている。
弱者たるコハクを相手取り、力を見せつけて理路整然と勝利の芽を潰し、諦めない意識を追い込みながら刈り取ろうとした。それはもう、楽しそうに。
それは自然なことだ。当たり前のことだ。何も
よって、つまるところ──
「お前さ、実はそんなに大した奴じゃねえんだろ?」
そして、言葉を
目に映るもの全てが氷結してしまいそうな、極寒の怒りが張り詰めていた。
それはまさに
「ああ、そうさ。あんたの言ってる事は正しい。当たり前で、凄く“普通”なことだ。少なくとも、その心においては。怪物は自分の力を誇ったりしない。それを当然のように手段の一つとして使うのさ。だけど、お前はどうだ? 存在理由そのものにすら俺には見えるぜ」
強いから自分は上等で、強いから選ばれし存在だ。
強いから自分は特別で、強いから劣等だと
強いから自分は優勢で、強いから別格な力を誇る。
強いから、強いから、強いから······。
つまるところ、暴力に寄り掛かることで自己を構成しているのだ。力を頼りに見せつけている。それはとても当たり前な方程式。
獅子を食い殺す鹿ではないから、蜘蛛を捕食する蝶ではないから──狂ってないから怖くない。
「だから、神様に頭下げて、
言い放った刹那、女帝の力が一瞬で集束した。主の意を反映して凍結の深度を深めていく。
それを見て、ふと笑顔が消えて──
「おめでとさん。これであんたも俺と同じく凡人······光にも闇にも、ましてや理想の灰色にもなれない
そして、そんな姿に成り果てでまで特別であろうとしたあんたに、一つ真理ってもんを教えてやるよ。人の情熱は、時に世界の
だからあんたは、そんな奴らにすら決して勝てやしない。どんなに叩かれてもへこたれても、道を踏み外しても、倒れそうになっても、綺麗事だって分かってても、何度でも立ち向かう。周りの連中が立ち上がらせてくれる。そんな人間に、当たり前のように戦って、当たり前に敗北すんのさ」
「黙れよ、貴様ァッ────!」
決定的な言葉を口にした瞬間、最悪の絶対零度が空間へと吹き荒れる。
コハクを一瞬で氷の
······今まさに凍てつきつつある、彼の描いた思惑通りに。
「今だッ、やれッ!」
「了解した──さあ、再び羽ばたくが良い。
機が満ちたことを確認した
元より、コハクが使用する
即ち、感応性による
それは正しく、単純な光熱だけではない。内側から発生する衝撃と、他者の力を己の星光として取り込む性質が生み出した神業だった。
身体は全くの無事であり、自分でも理解し切れていない星光の本質を他人である
踏み込むコハクと、一歩引いてしまった女帝。
我が身を
そして──
寒々しいまでの冴えと共に、自らの首元へ迫る刃。その必殺性は確かであり、
そう、相手を殺すのに圧倒も
ただ一点、斬首さえ成せば全てはそれで済むのだから。
事ここに至り、待っているのは死であるからか、女帝は半ば呆然としていた。
戦場で見せるとも思えない表情──しかしそれは焦りではなく、一杯喰わされたことに対してという訳でもない。
死の危険が迫っているから? ああ、それでもなく。
徐々に徐々に、己へと肉迫してくる少年の姿。
疾走することで風に
真っ直ぐと相手と向き合うように見据えられる瞳は、
何よりも女帝は、若き頃の英雄を目撃したことがあった。
ゆえに──
「──
英雄と、目前の羊飼い······後者は若干、タレ目がちではあるものの、そこはかとなく似ている二人の面影を、思わず重ねて見たことが彼女の意識を凍らせた。
真っ直ぐと相手を見据える瞳。
その既視感に、ああ、なるほどなと独りごちて。
「天昇せよ、我が守護星──鋼の
次の刹那、憤怒の激情が女帝の内から燃え立った。
若き頃のヴァルゼライド閣下とは、六時さんが描いた、まだ
というのも、うちの子であるコハク君のヘアースタイルが、無印&BURSTではスタイル11。リザレクではスタイル5でして。
これを絵に描くとき、割とヘリオスの髪型が参考になるんですよ。で、試しに類似画像を検索したら六時さんの絵がヒット。
そこから思いついたネタです。
あれだけ憎悪してりゃ、女帝ことウラヌスことカナエ殿なら、若かりし頃の閣下を覚えているのでは? という考察の元、本編のような表現が産まれました。
では、またの次回| ・∇・)ノシ♪
オゾンより上でも問題なーい♪
(仲間との絆&クリアマインドの境地でor気合と根性で)