秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind-   作:流火

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幕間1 闇の中の闇

 

 

 

 

 

 

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人は皆、悪魔。我々がこの世に地獄を作る。

オスカー・ワイルド (アイルランドの詩人、作家、劇作家)

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 時は巻き戻り、【ゲーム】が始まる1月前

 どことも知れぬ闇。

 闇の中の闇の中で……

 ディーラーと呼ばれる役職の男が、他の黒服の人間達に資料を交えて話しだす。

 

 

「皆様お集まり頂きありがとうございます。では今回のゲームの最終確認……の予定でしたが。直前になって要注意人物のリストに興味深い人物がリストアップされまして。こちらの資料を御覧ください」

 

 

【川瀬進矢 職業:高校二年生】

戦闘力★★★☆☆

中学までは剣道をやっている。但し元々の身体が弱く、総合的な身体能力は並。

知性★★★★★

理論派。ネットでは都市伝説キラーを自称しており、情報整理及び矛盾や欺瞞を見抜くのが得意。直接対人でどこまでやれるかは不明。また、日常においてはアイディアマンとして頼られている面がある。ネット上の活動で、組織の一端に触れる可能性を考慮され、今回要注意人物にリストアップされた。

積極性★★★☆☆

ミステリー小説や都市伝説の検証、謎解きが好きで、未解決事件や詐欺の実地調査を行う等積極的な人物であり、スリルジャンキーな傾向もある。ゲームそのものには積極的になると思われるが、実際に殺人を行うかと言えれば疑問、能力を考えると直接的な殺人条件を与えるべき。

精神力★★★☆☆

特筆すべき点はない。一般家庭に生まれ、家庭環境も特別良くも悪くも無い。人生において大きなトラブルに巻き込まれた事はない。ネットで頻繁にグロ画像を見たりしている為、グロ耐性はあると思われる。

社交性★★☆☆☆

クラス等では、親友と言える人間はいないが、孤立しているというわけでもない。基本的な社交性・空気を読む能力はある。他人を尊重するタイプのオタク。ただし、自分から何かするタイプではなく、社交性は低め。

 

 

「ふーん、興味の方向性と好奇心が強すぎる所と頭が良すぎる所為で、知ってはいけない事を知って消されてしまうタイプの人間ね……でもこれだけ見れば、今回のゲームにねじ込む必要はあるのかしら? 次回でも良いのではないかしら?」

 

 

「はい、その通りです。ゲームマスター、此処で彼が選ばれたのは正直に言えば、顔採用という所です。顔写真を御覧ください」

 

 

 ゲームマスターと呼ばれた女性の意見に応え、ディーラーは顔写真を配布する。

 写真に写る顔は平凡な男子高校生ではある、だがここにいる人間にとっては特別な意味があった。

 ゲームマスターの女性は顔に邪悪な笑みを浮かべる。

 

 

「なるほど、ナンバーAとそっくり……解除条件はどうするの?」

 

「積極性を考慮し、ナンバー3【3人殺し】にしようかと……元々ナンバー3だった少年は、その積極性から殺人が必須ではない過激な条件にすれば問題無いでしょう。この変更で、他の参加者の解除条件も微修正はしていきます。【ナンバーAに恋人そっくりのナンバーQを殺させ、ナンバーAの恋人であるナンバー9に皆殺しを決意させる】という当初の大筋は変えませんが」

 

「恋人とそっくりの男が殺人を犯す所を見せて、ナンバー9に精神的ダメージを負わせるも良し。ナンバー3がナンバー9を殺害して、復讐鬼と化したナンバーAの暴走に期待するもよし……予想された本筋から離れてもエッセンスとして美味しいでしょうな」

 

 

 ディーラーの言葉に呼応して、企画部を担当している黒服が展開予想して話す。

 どう動いても問題無い、ゲームが停滞しなければ。

 しかし、ゲームマスターの女性は懸念点を述べる。

 

 

「ちょっと待って! でも逆に、ナンバー3がナンバー9と協力関係になる可能性もあるんじゃないかしら? 丁度互いの苦手分野を補うような二人だし、ゲームを止められたら少し序盤が辛いんじゃない?」

 

「その時はゲームマスター、いつものようにお願いします」

 

「この糞ディーラー……! 分かったわよ、でも頭脳派の人間だと、早期に警戒されてしまえば私も厳しいわ」

 

「その時はサブマスターにナンバー3を刺させる二段構えでいきます。団結したら、内側から潰す方向で」

 

「確か今回のサブマスターは……あー、うん。いけるかな」

 

「我々の思惑を全部打ち破る程のプレイヤーなら、それはそれで盛り上がるので問題ないです」

 

「それ現場が一番苦労する奴じゃない」

 

 

 ゲームマスターの女性は不満を述べつつ、コーヒーを飲む。とはいえ、彼女にとってはそうなってしまったら面倒臭いなレベルの代物ではあるが。

 

 

「では、次に他の修正する解除ナンバーと、入れ替えるプレイヤーに関してですが――」

 

 

 そして会議は続いていく……。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 そして現在に戻る。

 

 

「だから言ったんじゃないの! ゲームが鈍化しちゃってるじゃない!」

 

 

 バン! と女性が壁を叩きつける。

 ゲームマスターは激怒した。

 このゲームが終わったら、直前になって参加者を変更したディーラーをぶん殴ってやろうと決意した。ゲームマスターに人員選定の権利はない、ただしゲームメイキングの責任は大体ゲームマスターに降り注いでくる。査定やボーナスに影響しかねないのだ。現場責任者の悲哀である。

 

 

 そもそも、最初のルール交換とその後から想定から外れた展開になっているのである。あの場面でナンバー9を完膚無きまでに追い詰めて、正義をたたき折る必要があった。だが、ナンバー3とナンバー9にガンガン動かれるとゲームを動かす側としてはたまらない。たとえて言うのなら、ゲームを促進するゲームマスターとゲームを抑制するゲームマスターに別れて戦っているような気分になる。

 

 

 既に、ゲームへの積極性評価★★★★★だったナンバー4とナンバーKが全然ゲームに乗る気配はないし、他のゲームに乗っている人員も慎重な姿勢を見せている。既に人が1人死んでルールが本物だと分かった今となっても、誰だって最初に殺す人にはなりたくないのだ。別に自分でやってもいいのだが、あくまでゲームの参加者自ら、その一線を越えさせるという体裁を守りたいという事情もある。その動機を上手く与えるのが、ゲームマスターの手腕になるのだ。

 

 

 勿論、疑心暗鬼の種は今も複数撒き続けてはいる。

 だが、発芽するのは時間がかかり、時間を掛けてしまえば、既にJOKERを手にしたナンバー3に好き勝手動かれてしまい、彼の思惑通りに首輪解除者が大量発生する可能性がある。そうなった場合、逆方向でゲームの均衡が崩れ去ってしまう。

 過去のゲームで、そのような展開が無かった訳ではない。しかし、それはあくまで主催者側の幾重にも張り巡らされた悪意を乗り越えた末に許されるハッピーエンドである。なにより、顧客の賛同が必要となる。

 

 

「おっと、いけない。肌に影響が出てしまうわ……やっぱり、3か9のどっちかよね。片方だけならどうとでもなるから、この2人のどちらかに危機に陥って貰い、あわよくば死んで貰う。でも、あくまで今回のショーのメインディッシュはナンバー9の心を折ることだから、試練に遭って貰うのはナンバー3……となると、どうするのが良いのかしら?」

 

 

 思考する、まだ保存食の缶を投げられて若干痛みを感じる脚部を撫でながら。

 もし、余裕ぶっこいてハイヒールで参戦していたら、ナンバー3をナンバーAとナンバーQのいる地点まで誘導できなかっただろう。ゲームを止める方向に大胆に動いてくる知性派は本当に厄介だとゲームマスターは知らず溜息を吐く。

 だが、頭に過ぎった知性派という言葉が、次の展開を浮かび上がらせた。

 

 

「そうだ、やっぱり知性派への試練と言えば……圧倒的な暴力、よね? そのまま蹂躙されても、機転を利かせて乗り越えても、観客受けは良いでしょうし」

 

 

 観客に心地よく死んで貰う為、その死にはドラマが必要だ。例えば自分が頭良いと思っている人物に対して、その想定を上回る事態で計算違いを起こさせ殺す、というのは1つの絵になるだろう。

 丁度良い人材はすぐ近くにいる。

 3階に入って銃を手に入れ、更に探している二人組が。

 そして、ナンバー3とナンバーQは今3階を目指している。

 そうだと決めたら、PDAに耳を当て、ディーラーとの連絡役であるオペレーターに通話を始める。

 

 

「もしもし、3階の二人組に探知機能の追加ソフトウェアを渡して頂戴。種類はディーラーに任せるわ」

 

『了解、でも良いんですか? ワンサイドゲームになりかねないのでは?』

 

 

 現時点で銃を手に入れているのは組織側の人間を除けば3階の二人のみ。

 彼等が本来ならもっと上階にある筈の探知機能を手に入れてしまえば、一方的な展開になる事が容易に想定される。一方的蹂躙は、ギャンブルである事を考えればあまりよろしくない。

 

 

「それは、一人か二人が死んだ時点でエクストラゲームを始めて武装を平均化すれば問題無いわ。案に関しては、これから口頭で簡単に説明するから、細かい部分はディーラーに調整をお願いするわね」

 

『分かりました』

 

 

 ゲームの加速させる為、ゲームを崩壊させない為、パワーバランスを傾けるのは一瞬だけだ。

 幸か不幸か、3階に居る二人組は冷静で合理的判断ができる人物である。

 だからこそ、彼等はその誘惑をはねのける事は出来ないだろう。ゲームに乗る事が合理的な状態さえ生み出せば良いのだから、合理的な人間を動かすのは簡単だ。

 

 

「以上、お任せするわね」

 

『了解しました、初日なのに展開を急ぎますね』

「ふふふ……古参の顧客にも配慮しないと、ね。かつて2ndステージがあった時代のようにそれが起こる前と後には全然違う空気になるように。あとはサブマスターの根強いファンにも、喜んで貰えるかしら?」

 

 

 オペレーターに手短に説明を終えたゲームマスターは、よいしょっと立ち上がる。

 長沢が考察したように、このゲームは何十回も行われている。そして、このゲームマスターは古参も古参、ルールが全然違う時代から組織の人間として殺し合いゲームを運営してきた。だから、過去の積み重ねにより、大抵の事はなんとかなるのだ。

 

 

「それでも尚、生き延びて……このゲームを止めたいのであれば、我々は歓迎するわ。我々のやり方で、ね」

 

 

 そして、ゲームマスターは自分に向けられたカメラに向かって話す。

 どう展開が動いても良いように、観客へのサービスを欠かさない。

 なにせ、ゲームマスター自身にもどうなるか分からないのだ。彼女にできる事はただ、面白い展開になるような布石を撒くことと、既に進んでしまったゲームの方向性を修正することしかできないのだから。

 

 

「私って、本当に仕事熱心よね。あー、忙しい忙しい」

 

 

 既に一生遊んで暮らせる資産を持っている筈のゲームマスターは、自分の芸術品を構築するかのようにゲームに戻っていった。




組織側視点、
原作では桜姫優希の事故による参加者再設定デスマーチと色条優希を参加させてしまうトラブルの2点で、大幅に介入が弱体化していたという解釈があったりなかったり。
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