秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind-   作:流火

22 / 61
プレイヤー:カード:オッズ:解除条件
御剣総一 :A:5.9:Qの殺害
葉月克己 :2:DEAD:ジョーカーの破壊
川瀬進矢 :3:5.5:3人の殺害
長沢勇治 :4:4.8:首輪を3つ収集する
郷田真弓 :5:4.4:24ヶ所のチェックポイントの通過
高山浩太 :6:DEAD:ジョーカーの偽装機能を5回以上使用
漆山権造 :7:DEAD:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
矢幡麗華 :8:DEAD:PDAを5個破壊する
桜姫優希 :9:8.2:自分以外の生存者数が1名以下
手塚義光 :10:DEAD:2日と23時以前に首輪が5個作動している。
綺堂渚  :J:4.3:24時間行動を共にしたプレイヤーが生存
姫萩咲実 :Q:DEAD :2日と23時間の生存
北条かりん :K:3.1 :PDAを5個以上収集


第十七話 皆で作る物語

 

 

 

 

――――――――――――――

前を見ていても点と点は繋がらない。後ろを振り返って初めて繋がるのだ。だから信じるしかない、その点と点がいつか繋がると。

-スティーヴ・ジョブズ (米国の実業家、アップル社の創業者)

――――――――――――――

 

 

 

 

 人を信じられないという根拠は全員が持っている。

 そして、その記憶を俺が掘り返させた。だから、少し空気が重い。

 いじめたい訳じゃない、信頼に傾いてた皆の思考をフラットにし、真実に向き合う為の処置となる。

 俺だけでクリアできるなら皆を巻き込みたくない、これは散々一人で抱え込むなと言われた俺なりの誠意だ。 

 

 必要な事だが、全員の思考と心の整理の為に時間を置く。

 そして、俺自身も考える。

 

 ……俺は間違った事をしているのかもしれない。

 知りすぎた場合、このゲームから解放されるんだろうか?

 俺1人で推理して、解決策だけ提示するのが正しいのではないか?

 かりんにあんなに怒られても何度だって思ってしまう。

 俺のこれは……もしかしたら、皆を日常に返せなくさせるかもしれない。

 こんなゲームに参加してしまった時点で今更かもしれないが。

 

 沈黙を破るように勇治が口を開いた。

 

 

「これが、ショーなのは分かった。何度も行われているという証拠はある。ゲームが始まった時はそこまで考えてなかったけど、間違い無く人間がやってるというのも納得した。……で、何者がやってるかに関しては進矢兄ちゃんは当たりはつけてる?」

 

「当然の疑問だな。それに関しては想像はしてるけど、今考える必要はないと思う。具体的に言うのであれば、6階に配置されている武器を用意できる存在は何者か? で消去法で絞れるんだ」

 

 

 現時点であんまり良い想像ができないんだが、明言は避けておく。

 今まで信じていた日常が何だったのやら、今ではもう分からない。

 俺の中で社会に対する不信感がやばい。

 

 幸か不幸か、他の4人はそれよりも此処にある武器の事が気になるようだ。

 

 

『……3階で拳銃なんだろう? 6階の武器なんて、想像したくもないんだが……』

 

「凄い兵器って……1秒間で50発とか、そう言うやつ?」

 

 かりんが心配そうに言う。

 拳銃レベルならとにかく、本格的なミリタリー知識は専門外だ。

 思う存分破壊活動したら気持ちよさそうだな、と思ったのは秘密にしておこう。

 

『絶対、私達に扱えないでしょ』

 

「一瞬でミンチになる……核兵器のような相互確証破壊はこのゲームじゃ無理でしょうね。だから、低階層での決着を急いだんですが」

 

「相互確証破壊って何だ?」

 

「お互いにお互いを滅ぼし合う武器を持って、戦争を防ぐ冷戦構造の仕組みだよ勇治。撃たれても確実に相手を殺せるという状態になければ成立しないし、一歩間違えれば人類全滅するけどな」

 

 そんな世界情勢が俺達が生まれるすぐ前にあった。

 こんなゲームが存在してる時点で、俺の世界史知識も信頼できなくなってきたんだが。

 武器の危険性を考えると『Q』とか『J』のような、ゲーム終了ギリギリまで生き延びる解除条件の人は、最終階までに敵全員皆殺しにするのは十分ありな選択肢に思える。酷い話だが。

 

『私達に例えるなら、郷田さんとも渚さんとも早めに決着をつけたいところね』

 

「休んだ後にね。では、落ち着いた所で、そろそろ具体的な話をしましょう」

 

『実際問題、俺達全員で生き残る方法があるのか? 申し訳無いんだが、俺としては優希と合流してから、考えるつもりだったから……ノータッチだった』

 

「大丈夫……とは言えませんが、希望は提示できます。まずはおさらいから、ルール5・6を御覧ください」

 

 人差し指をこめかみに当てながら、自分の中で纏めた情報を整理する。

 これから行うのは、あくまで考え方の一つの例示だ。

 希望は所詮空想だ、形にするのは俺達全員で。

 

 

【ルール5】

侵入禁止エリアが存在する。初期では屋外のみ。進入禁止エリアに侵入すると首輪が警告を発し、その警告を無視すると首輪が作動し警備システムに殺される。また、2日目になると侵入禁止エリアが1階から上のフロアに向かって広がり始め、最終的には館の全域が侵入禁止エリアとなる。

 

【ルール6】

開始から3日間と1時間(73時間)が過ぎた時点で生存している人間を全て勝利者とし20億円の賞金を山分けする。

 

 

「全員が知ってる通り、進入禁止エリアが徐々に広がる仕組みになっています。『Q』と『J』の解除条件が『2日と23時間の経過』になる為、そこまでは6階は問題無いと考えられます。【2日と23時間】から、【3日と1時間】まで、極論、最長二時間進入禁止エリアを生き延びれば勝利者になれますね」

 

「お兄ちゃん。理屈は分かるけど、不可能な点に目を瞑れば……って奴じゃないかそれ?」

 

『そうね……少なくとも、私と川瀬君で最初の人を助ける為に、頑張ったけど何分も持ってないし……助かる仕組みになってないんじゃないかしら?』

 

「そう、まともにやれば生きて帰れないでしょう。ただし、【本当にルール通り】なら、俺は勝利者になる自信があります」

 

「進矢、それって本当!?」

 

 

 不審そうな表情を浮かべる勇治に、パッと明るい表情を浮かべるかりん。

 嘘はついてないけど、話は最後まで聞きましょう。

 でも、こういうところがかりんの良いところかもしれないので、複雑な気分だ。

 

 

「どういう流れで警備システムが作動するか考えてみました。桜姫先輩、最初の犠牲者――漆山権造氏の首輪の状況を覚えてますよね?」

 

 トントンと人差し指で首輪を叩いてみせる。

 尤も、PDAの向こう側には見えないだろうが、なんか格好良いのでやりたくなってしまった。

 身振り手振りを交えるのは推理の基本なので仕方ない。

 

『え、えぇ……確か赤いLEDランプが発光していたわね』

 

「つまり、ルール違反を行った場合、違反信号が首輪から発せられ、警備システムが作動。首輪から発せられている信号から、ルール違反者を認識する。警備システムがルール違反者を殺害する。ルール違反者の死により、首輪の信号が停止。以上、ルール違反が発生した場合の4プロセスだと考えられます」

 

「誤作動とかがあったら洒落にならないもんな。となると、進矢兄ちゃんの言いたい事が分かってきたかな」

 

「ほうほう、続けてくれ」

 

「プロセスの一番目か二番目、信号さえ抑えてしまえば事実上、ペナルティを抑えたのと同じってこと!」

 

「正解! 補足するなら、電波を吸収する金属は俺も詳しくないけど、【首輪探知機能】と併用して検証していけば、完全に遮断できると睨んでいる」

 

 得意げに話をする勇治に満足する。かりんも感心した表情で喜んでおり、安堵の溜め息がPDAの向こう側から聞こえる。

 これが俺のプランAだ。

 ヒントは【首輪探知機能】の存在。そこから、ペナルティの動線を考え、それを止める方法を割り出した。

 電波吸収体に関しては、そこまでの知識はないが、検証できるとは思っていたのだが……。

 

 勿論、これには大きな落とし穴が1つある。

 

『それで、ルール通りなら、という前置きはなに? 手塚の言う【このゲームのルールは絶対じゃない】ということと、何か関係があるのかしら?』

 

「まぁ、気付いちゃいますよね。何故、このプランが駄目なのか? それは、今までの話の流れを考えれば分かるはずです。ヒントはそのものズバリ、手塚の言葉なんですが」

 

 探偵というより教師か俺は、と心中で自分に突っ込みを入れつつ、皆の答えを待つ。

 ……手塚の言葉、か。

 もしかしたら、手塚は俺より踏み込んだところまで届いていたのかもしれない。

 そう考えると惜しい男を亡くしたものだ。

 一方で、あの男が素直に自分の考えを教えてくれるとも思えないのが難点だが。

 

 うーん、と勇治が悩んだ顔から、ゆっくりと言葉を発する。

 

「前にも似たような事を言ったような気がするな。簡単に生きて帰られると……つまらないから、とか?」

 

「端的に言うと、そう」

 

『……つまらないだって!?』

 

「そ、そんな理由で!?」

 

 御剣先輩とかりんの怒りの混じった驚きの声が聞こえる。

 まぁ、この2人はそういう反応になってしまうか。

 難しいな、主観を排し客観的に見ろって言っても、この2人だと持ち味殺してしまうかもしれん。

 いっそ、俺と勇治で考えて、二人には意見が暴走しすぎないように良心回路として動いて貰った方が良いかもだ。

 

『落ち着いて総一、私だって正直腸が煮えくりかえる位怒ってる。でも、今は生きて帰る方が大事よ、こんなふざけたゲームで死なないために』

 

 あ、桜姫先輩、表情が見えなくて言葉は落ち着いているのに凄く怒ってそうだ。

 そんなオーラをPDA越しに感じる。怖い。

 でも、場は引き締まった。桜姫先輩頼りになります!

 厳しい意見を言える人が俺だけだと割と辛いのだ。

 

 

「桜姫先輩、ありがとうございます。話を続けますと、この殺し合いゲームをショーと捉えた場合、凡作や駄作になる事が許されないということです。チートでズルして、全員生還。そんなご都合主義的な展開、絶対にありえないんですよ。だから、俺のプランで進めた場合、エクストラゲームの介入がある。または、首輪作動による警備システムを自動による殺害ではなく、手動による殺害に切り替えてくると思われます……某殺し合い映画みたいに、首輪が爆発するシステムなら、あるいは上手くいったかもしれませんけどね」

 

『じゃあ、絶対に皆で生き残る事はできないの?』

 

「そうではありません。このプランが駄目だと言うだけで、勝ち筋はあります」

 

 すぅ、と息を吸い込む。

 前置きが長くなってしまった。

 かりんを見る、勇治を見る。

 桜姫先輩のルール交換時における理不尽に立ち向かう姿を思い出す。

 御剣先輩の桜姫先輩がいる事をはじめて知った時の必死な姿を思い出す

 

 俺達は全員で生き残りたい。その願いを、自分の推理に載せる。

 部屋にある目立たないように偽装された監視カメラに向かって、宣言する。

 

「全員生存は……ドラマチックでなければならない! これが俺の結論です! 視聴者に全員生還する事を認めさせる、それが絶対条件です」

 

 部屋は沈黙に包まれる。

 上手く伝わっただろうか?

 あるいは、もっと良い方法がどこかに転がっていただろうか?

 いずれにせよ、望む望まないに関わらず、ゲームは盛り上がるように動く筈だ。

 その流れに逆らおうよりは、逆らわずに流されながら全員生存の芯だけを保ち続ける必要がある。 

 

「……館のシステムを利用する、追加ソフトウェアを利用する、ルールを利用する。あるいは、まだ見つけてない追加要素があるかもしれません。そして、郷田真弓と綺堂渚、スミスすらも……名作の全員生還展開を作るという意味では妨害者ですが、ある意味では協力者です。……大方針として俺はこうするしか思いつきませんでした。ここから先はこれから考えていきます。……もしかしたら、桜姫先輩の正義を汚すことになるかもしれません。申し訳、ありません」

 

 見えていないであろう、桜姫先輩に頭を下げる。

 

 全員生還する為に、甘んじて役者として踊りきるという選択。

 そして、ドラマチックであるという事は、イコール困難な道という事だ。

 今更、それに臆す事は無いだろうが、賛同を得られるかどうかが懸念事項になる。

 

「あたしは、最初から言ってる通り進矢を信じてるから!」

 

 横から跳びつくように、俺の腕を掴むかりん。

 信じてくれるのはありがたいけど……ここまで信頼されてると、一周回って罪悪感を感じる。

 これは、俺自身の自信の無さの現れなのかもしれない。

 

『どういう形であれ、私は全員で生き残る事を望んだ。そして、川瀬君はそれを現実的な所まで落とし込もうとしている。感謝しかないわ』

 

『あぁ、解除条件を満たさずに首輪を外す方法はいずれにせよ探すつもりだったが、正直、ここまで考えられなかったと思う。重ね重ねありがとう』

 

「お礼はお二人の生還で良いですよ。これからの道筋は皆でまた後で、考えていきましょう。で、どうした勇治?」

 

 PDAの向こう側の言葉に安心しつつ、今だ返事をしていない勇治の方を見る。

 何やら考え込んでいたので、何か理論に穴があったんだろうかと不安になってきた。

 何だかんだで、コイツは頭が回る方だ。精査しているのかもしれない。

 

 視線に気付くと、ハッとして勇治は答える。

 

「あ、いやさ。3人組を作った時に、進矢兄ちゃん言ってたじゃん。俺達の目標は【楽しんでゲームをクリアすること】【このゲームの真実を知ること】……で、状況に合致するから、やっぱり全ては進矢お兄ちゃんの手のひらの上だったんじゃ……」

 

「ふっ、バレてしまっては仕方な――ってんなわけあるかー! 偶然だぞ!」

 

 その時はその時で真面目に考えて話していたが、そういう意識はなかった。

 偶然にもメンバーの目的を束ねる事が、ゲーム攻略の最適解であるというのであれば、ある種運命的ではあるかもしれない。

 全員、合流が終わったら改めて皆の目標を結集しようと思う。

 

 微笑ましそうな桜姫先輩の声がPDAから聞こえてくる。

 

『ふふっ、本当にしょうがない二人ね。でも、長沢君も……思えば最初に会った時とは全然印象が違うわね』

 

「そう? あー、進矢お兄ちゃんの所為だね。桜姫のお姉ちゃんの為に協力して欲しいって頭下げられまくって……」

 

「さらっと事実を捏造するな!? お前、実は俺の事嫌いだな!?」

 

「でも、彼氏に嫉妬したって言ってたじゃん!」

 

「そこだけ真実言うのやめろ!」

 

 とんでもない事を勇治が言い出したので、慌てて止めようとするが、この場合大声で止めようとする方がアウトである。……反射的に出してしまったのが俺です。

 くっ、長沢勇治、14歳。未だ火遊びが好きなお年頃……絶対に許さねぇ!

 まぁいい、こちとら一度もモテたことがない陰属性。

 こういうのは、最初から一切期待してなければダメージは少ないと経験則から学んでいる。

 故に、自分の失恋すらネタにできる! 

 

 というか、桜姫先輩は今まで何人の男を泣かせてきたか気になるんだけど。 

 何を言おうか思考を纏めると御剣先輩の声が聞こえてきた。

 

『優希と付き合うって、ゲームで会ったばかりのお前には分からないけど結構大変――』

 

「御剣先輩! 恋人にそんな事言っちゃ駄目です! ちゃんと褒めてください! しっかり、捕まえてください!」

 

「なんか変なスイッチ入ったな兄ちゃん」

 

『あー、実はそうなのよ。総一ったら、結構口に出さなくても伝わってると思っちゃうタイプで、ハッキリ言ってくれないのよね。……ちゃんと伝わってはいるんだけど』

 

 やばい、話がグダグダになってきた。

 俺の言いたいことは大体言い終えたから問題無いといえば問題無いのだが。

 それに、二人には二人の愛の形があるんだし、俺が口出しするのも野暮な話ではある。

 それはそれとして、俺の嫉妬ポイントが溜まったので御剣先輩に攻撃は仕掛けるけど。

 

「あーそうだ! 今だから言えるんですが……このゲームがショーだと最初に思った理由って、出会う女性出会う女性、皆美人だったからなんですよね。御剣先輩もそう思いますよね!?」

 

『いや……なんで、そこで俺に振るんだ!? ……コホン、優希が居ると分かってからは、心配で心配でそれどころじゃなかったぞ』

 

『ふふっ、そういうことにしておいてあげる』

 

「むむむむ……」

 

 仲良い事はよきかなかよきかな、と思ってると不満げな声が聞こえる。

 至近距離な気がしたが、俺は言ってないぞ……と思ったら隣に居たかりんだった。

 まさか、かりんが嫉妬勢……?

 ちょっと意外だが、境遇が大変だったから満足に恋愛が出来なかったんだろう。

 頭をポンポンしておこう。

 

「大丈夫だ、かりん。お前は多分、現時点でクラスで2~3人の男子に好かれてるタイプ。女っ気ないと言われてるかもしれないが、かりんなら大体の奴は頑張ればギャップで落とせるぞ。俺みたいに、うっかり恋人持ちの人を好きにならなければな。頑張れかりん!」

 

 かりんが彼氏作ったりしたら寂しくなるが、苦労した分青春を取り戻すべき。

 勇治も難しいが女作れば変わりそうな気がする。

 まぁ成功体験ゼロの俺にアドバイス求められても、失敗例しか教えられない訳だが。

 

 なんて考えてると、かりんが膨れた表情で俺に寄りかかってくる。

 

「進矢は、やっぱり……何も分かってない……」

 

「これは、進矢お兄ちゃんが悪いな」

 

『あー……そういうことね』

 

「……???」

 

 桜姫先輩と勇治はなんか納得してるが、どういうことだ?

 ふむ、もしかして、かりんも恋愛で痛い目を見た事があるのかもしれない。

 それを突っついちゃったとしたら、俺にデリカシーが無いと言うことになるのか?

 うーん……俺の中の北条かりん像とその仮説は合わない気がする。

 

 出力される結論がおかしいなら、入力された情報に抜けか誤りがあったか?

 それとも、人間関係の経験値不足だろうか。

 分からないものは仕方ない、桜姫先輩と勇治が理解してるなら、必要なら教えてくれるだろう。

 

 かりんの頭を撫でながらとりあえず謝る。この距離感は少しずつ慣れていくしかないか。

 

「えー……察しが悪くて悪いな。……で、話を戻しますが、馬鹿みたいな着想点でも、点と点が繋がれば、本質を見抜ける事があるということです。もし、主催者側が全員生還を想定してなかったとしても、状況次第では道をこじ開ける事ができるかもしれません。だから、最後の一時まで考えて考えて考え抜きましょう。俺はここで点を提示しましたが、前提条件が全く異なる生還方法があるかもしれません。一度言いましたが、このゲームで最も大事なことは、諦めずに思考を止めない事です」

 

「……うん!」

 

『あぁ、勿論だ。俺が諦めるなんて、あり得ない』

 

 かりんは小さいながらも力強い返事を返しもたれかかる力を強める、御剣先輩も決意を固めてくれたようだ。

 一方で、勇治は複雑そうな表情をしている。

 ……俺の論理に穴があるなら言葉に出して欲しいんだが。

 

「なんで、そこまで頭が回るのに気付かないんだ……」

 

『そこは総一に似てるのね……』

 

 そして、呆れたような桜姫先輩の声。

 分からない事を分からないままにしておきたくないから、教えて欲しい。

 察するにかりんに聞かれたらまずい話っぽいので、後でそれとなく聞いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 という訳で諸々の情報交換は終了した。

 桜姫先輩と御剣先輩は、JOKERの偽装機能を5回使用した後、爆死した男の首輪を解除した後に合流する事になっている。情報交換で1時間経過して、JOKERが偽装可能になっていたので、実質後1時間だ。

 そして、それまでに俺達3人組でやらなければならない事は、休憩環境を整える事だ。

 かりんの首輪が解除される事で、戦闘禁止エリアはかりんに限り問題無くなった。また催涙ガスグレネードは時間経過で霧散している。それでも極力入りたくない場所である事には違いない。

 しかし、シャワーは浴びたい! ということで出入り口は1箇所の為、入口を抑え、且つエアダクトに廃材等を詰め込み封じ込めを実施する。あとは、戦闘禁止エリアの食事は外と比べてマシな為、調理等は戦闘禁止エリア内でやりたいという事情がある。

 

 ベッドはともかく、まともな掛け布団や枕を戦闘禁止エリア外に運び出し、防衛と撤退が容易そうな場所を探し出し簡単なバリケードを作って寝れる環境を整える。

 どんなに疲れてても、効率よく休む為の努力は怠ってはならない。なんて強がってみるが、かりんが一番頑張っていた。疲労で頼りにならない状態になっているのが、今の俺です。

 勇治? あいつは、俺の持ってた武器や郷田が落とした残弾僅かな拳銃に興味津々になり、俺とかりんで叱ってやったよ。

 

 それはそれとして先程の見逃しについて、それとなく勇治と桜姫先輩に聞いてみたのだが……

 

「あー……僕から言える事は何も無いかな」

 

『本当に必要なら北条さんから言ってくる筈よ』

 

 との事だ。

 二人がそう言うのであれば、知らなくて良い事なのかもしれない。

 殺し合いには直接関係ない事象だろうから、深く考える必要もないだろう。

 御剣先輩も分かってないみたいだしな。

 

「よーし! 一段落! 進矢兄ちゃん! 見張りしながら、エアガン撃つ練習してていいか!?」

 

 そして、大仕事をなんとか終えると勇治がテンション高めにエアガンを手にする。

 ……その為に頑張ってたんだもんな、お前。

 尚、射撃の体勢とかは伝授済みである。

 

「はいはい、そういう約束だったもんな。絶対人に向けんなよ! さて、シャワーだが、かりん。先に入るか?」

 

「あたしは、5人集まった時の為に料理の仕込みしようかなって。進矢、先に入っといて良いよ」

 

「なんか、気を使わせてるようで本当に悪いな。あと、俺と勇治も料理関係壊滅でスマン」

 

「気にしないで、あたしは他に役立てるところがあんまりないし」

 

「そんな事無いと思うけどな。じゃあ料理楽しみにしてるよ」

 

 料理と言えば姫萩先輩の事を思い出すな……あー、結構引きずっている。

 忘れようとしても、制服についた血がほぼほぼ姫萩先輩のものなので、忘れようがないという哀しみ。

 でも、ゲームが終わったらこの制服廃棄されちゃうんだろうか……それもそれで嫌だな。

 

 

 なんて、更衣室に入って鏡を見ながら考える。

 ……溜息、あんまり気分を落としてもよろしくない。

 くだらない事でも考えるか。

 

 このゲームがアニメであるなら、シャワーシーンが初手俺で『誰得だよ!』って視聴者に突っ込まれる奴だろうか。

 ふはははは、桜姫先輩とかりんのサービスシーンなんて絶対に流してやらないぜ! 

 ……ん?

 

 

 何か今、大事な事が頭に過ぎったような……?

 

 

「シャワー室に盗撮カメラあったらどうするんだよ!!!」

 

 ドン! 自分の馬鹿さ加減に一瞬呆気にとられた後、思わず壁を叩きつける。

 一瞬、戦闘禁止エリア内で大丈夫だろうか!? と心配になったが、壁を叩いた程度なら問題無さそうだった。命をかけたレッドゾーンチェックは流石にやりたくない。

 それよりもまずい、シャワー室は罠だ。

 命の危険はないが、人間の尊厳的な意味で罠だ!

 

 制服を着直して、俺は更衣室を出て調理の準備に入っているであろうかりんの元に走った。

 

 

「かりん! かりん! すまん、一緒にシャワー室に来てくれ!」

 

「え、えぇ!? いきなりなんなの!?」

 

「あ、すまん。言葉が足りなかった。シャワー室に盗撮カメラがあるかもしれないから、一緒に探してくれ!」

 

 最初に叫んだ内容で、かりんが顔を真っ赤に染める。

 焦りながら要件だけ口にするのは、誤解を招く奴だな。

 案件が案件なので、俺も少し冷静じゃなかった。反省している。

 

「え!? ……ほ、本当に趣味悪いね、このゲーム」

 

「大丈夫だ、かりん。俺が全ての盗撮カメラを見つけてみせる! ついでに言うなら、戦闘禁止エリア内だが、首輪が外れたかりんなら監視カメラの破壊が可能だ! この為に、首輪を外したと言っても過言ではないな!」

 

「進矢ならあたしの考えつかない用途を思いつくかと思ったけど……これは流石に予想外だよ!?」

 

「ははは……俺も想定してなかった」

 

 驚愕の表情を浮かべるかりんに、俺も苦笑を返す。

 このゲームでリアル探偵知識……【盗撮カメラの発見】を使うチャンスだ! どうして、はじめて実践する場面がこんなところなんですかね。

 複雑な気分もあるが、折角手に入れた知識だ。嫌悪感と同時に、高揚感もある。

 こんな俺だから、他人に理解されず、恋愛とか絶望的なんだろうが。

 さぁ、理不尽と戦おう!

 

「準備は良いか? いくぞ! かりん! このゲームの放送倫理は俺達が守る!」

 

「きゅ、急にテンション高くなったね……」

 

「兄貴は言っていた……『オタクには決して踏み越えてはならない一線がある』と!」

 

 かりんはひたすらに呆れた表情だ。

 殺人ゲームで、放送倫理を気にし出す男……それが俺です。

 普段は表現規制反対派なんだが、リアル女性のサービスシーンは許容範囲外となる。

 一日目の最後の一仕事だ!

 1つ残さず盗撮カメラを駆逐してやる!

 

 

 

 

 頭の冷静な部分は考える。

 ……俺の行動はもしかしたら、視聴者ウケは悪く、全員生還に不利に働いてしまうかもしれない。

 でも、これは仕方ないよな? 

 例え彼等の操り人形だとしても、俺達1人1人には尊厳がある。

 命の為に、魂を犠牲にするのは本末転倒なのだ。

 そこは、決して切り離せない……大切な一線だ。

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