秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind- 作:流火
御剣総一 :A:5.4:Qの殺害
葉月克己 :2:DEAD:ジョーカーの破壊
川瀬進矢 :3:5.0:3人の殺害
長沢勇治 :4:4.8:首輪を3つ収集する
郷田真弓 :5:4.7:24ヶ所のチェックポイントの通過
高山浩太 :6:DEAD:ジョーカーの偽装機能を5回以上使用
漆山権造 :7:DEAD:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
矢幡麗華 :8:DEAD:PDAを5個破壊する
桜姫優希 :9:8.0:自分以外の生存者数が1名以下
手塚義光 :10:DEAD:2日と23時以前に首輪が5個作動している。
綺堂渚 :J:4.9:24時間行動を共にしたプレイヤーが生存
姫萩咲実 :Q:DEAD :2日と23時間の生存
北条かりん :K:3.1 :PDAを5個以上収集
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時はすべての傷を癒すといわれているが、私はそうは思わない。傷は残るのだ。時がたてば正気を保つために皮膚は新しい組織で覆われ、痛みは和らぐ。だが傷跡は残る。
ローズ・ケネディ (104歳まで生きた、ケネディ兄弟の母)
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さて、隠しカメラはどこに隠すか。
まずは片方から覗くと鏡、片方から覗けばガラスになるマジックミラーを疑う。見分け方は、直接触って鏡の中の自分の指と直接触れ合えばマジックミラーだ。あとは部屋を暗くして、集中的に光を当てる……この場合はかりんの携帯電話のライト機能で当ててみれば向こう側が見える可能性がある。
……はい、アウト。割るのは面倒なので、テープで段ボールでも上に貼り付けておこう。
ついでに暗闇の中でライトを当てれば、レンズと反射してそこで発見できる可能性がある。また、どう考えても不要なグッズ等カメラが付いている可能性がある備品は全てシャワー室の外に出しておく。
また、設置場所の定番と言われている排水溝や換気扇から小型カメラを発見。シャワー室に火災報知器がついているのは……どう考えても、カメラが仕込まれてそうだが。少々場所が高すぎる。
どんだけカメラ仕込んでるんだ……。いくつのアングルを撮りたいんだ。高揚していた気分は大分落ちてきて、ドン引きだ。もう、シャワー浴びるの諦めるか???
弱気な気持ちになってくるが、こうなってしまえばもう自棄である。ここで負けていたら、ゲームの全員生還なんて絶対無理だろう。ついでに言うのであれば、俺が不安になってると、かりんに伝播してしまうかもしれない、気合いを入れ直す。
椅子の上からかりんを肩車して火災報知器をかりんに金槌で破壊してもらう。……ごめん、女子中学生の重量舐めてた。あるいは、俺の体力がもうほぼほぼ尽きているからだろうか、足の感覚が無くなってきている。万が一、ここで倒れたりするとまずい、全身全霊でかりんを支える。
「うおおおー! まだか! かりん!」
「も、もうちょっと待って! うん、終わった! 大丈夫!」
「OK! ゆっくり、降ろすぞ……!」
震えはじめる足をゆっくりと降ろして、かりんを降ろした後に力尽きて地面に四つん這いになり息を荒げる。
重い、辛い、重い、辛い、重い、辛い……俺は何をやってるんだろう?
知識として、カメラの設置場所の定番は知っていたが、マジで隠されているとは思わなかった。主催者達の悪意に涙が出そうだ、全部見つけ出せた自信が全くない。……幸い、数に余裕があるのでバスタオル巻いてシャワー浴びる事を徹底させるしかないか。
「ちょっと、進矢! 重いって聞こえてるよ!」
「……マジ? ごめん、疲れで本音が……ってあ」
「本音って何!? そんな事言ってるからモテないんじゃないの!?」
「返す言葉がねぇ……」
普段、コミュニケーション時には言葉を選ぶのに頭を大分使っている自覚があるが、今はもう脳みそ空っぽで喋っている気がする。なので失言が多いのは仕方無い……嫌われたらどうしよう。
いや、かりんを下の階に降ろさせるには嫌われた方がいっそ良いんだろうか?
「……あ! 今のはちょっと、アタシの方がデリカシー無かったかも! ごめんごめん!」
「あ、いや……こういうのって気を使われた方が地味に辛いというか……って、かりん?」
四つん這いでダウンしている状態の俺の頭が、温かいもので包まれる。何だろうと思えば、女性の良い匂いがしてきた。つまり、上半身の部分を正面から抱きしめられている。そして、頭を撫でられている。
……やばい、ドキドキしてきた。微妙に情けない気がしなくもないけど。
「進矢ってさ、何か見てるとアタシの妹のかれんを思い出すんだよね。一番辛いのは自分な癖に、周りには何でも無いように振る舞ったり、笑顔で大丈夫だって言ったり。弟ができたみたい」
「え、ちょ……姉目線!? 普通逆じゃないか!?」
「進矢なんて、出来の悪い弟で十分だよ! 何度言っても聞かないから。アタシはかれんにだって何時も思っている。弱音を吐いて欲しい、愚痴を言って欲しい、恨み言を言って欲しい……我儘を言って欲しい。全部受け止めるし、受け止めたいから。……それともアタシってそんなに頼りにならないのかな?」
「頼りにならない、とはちょっと違うと思うが……」
かりんの弱音を聞き、点と点が繋がった。
つまり、かりんは無茶を繰り返す俺を妹と同一視し、弟扱いしているという事だ。首輪が解除されても戦闘禁止エリアに行く事に同意しなかったのも、散々命を蔑ろにする俺に対して怒った事も、やたら俺にくっついてくるのも全部これで説明できる。 謎は全て解けた!
気付いたであろう桜姫先輩と勇治が言い淀んだのも分かる、俺だって言えない。こんな真実。
「心配させたくないっていうのは分かるの。言葉にしたって何も解決しないことも……アタシが何もできないってこと――」
「はい、ストップ。かりん、ストップ! 1人で考えを悪い方向に進めてるのはお前だ! 妹の方は伝聞でしか知らないが、俺が思うにお前達姉妹は似た者同士だよ!」
話の流れが悪い方向に進んでいるのを察知した俺はかりんの腕を引き離す。改めて向き直ると今にも泣き出しそうな表情をしているかりんと眼が合う。思わず眼を逸らしたくなるが、なんとか見つめ返す。
……思うにかりんは今自信を失っているのではないか?
頭脳担当は俺や勇治、桜姫先輩が担当している。
戦闘は、男性陣が頑張るだろう。
精神的な支柱という意味では、桜姫先輩が強いし、そんな桜姫先輩を御剣先輩が支えている。こっち3人は俺が担当。
考え直せば、チームにおけるユーティリティプレイヤーである俺の負担が重く、かりんが心配になるのも分かる。
決して蔑ろにしているつもりはなかったが……かりんの正義感や責任感を考えれば、もっと頼って欲しいと思うのも無理はない話だ。ゲームに役に立つかどうかが、人間の価値を決定する訳ではないが、俺が逆の立場だったらもっと気に病んでしまうかもしれない。
「かりん、俺はお前の事を尊敬している。大した姉貴だと思うよ。でも、全てを話してないのはお互い様だ。お前だってこのゲームは怖いだろう? いや、ゲームの前からそうなのか……両親を喪って病気の妹と二人っきり、そんな状況でお前は妹に弱音を吐いたか? 不安にさせないように気丈に振る舞っただろう?」
「それは……そうだけど……」
「かりんの妹だって、かりんの弱音を聞きたかった筈。はい、証明終了」
「むぅ……あたしは、間違っていたって言いたいわけ?」
膨れっ面を返すかりん。
偉そうな事を言っているが、そこまで思い詰めるような大切な家族がいないので想像でしかない。ただ、例えば俺が両親と兄を喪って、重病になった弟と二人っきりになったと考えれば、かりんのように気丈に振る舞えるだろうか? 答えは否だ。そこは自信を持って言い切れる。
人間として、或いは兄として姉としての話なら、圧倒的にかりんの方ができてるだろう。その気持ちを乗せて俺は喋る。
「ところがどっこい、そうでもない。立派な姉だよ、かりんは。……ただ、かりんが妹に抱いてるのと同じ感情を抱かれていただろうってだけ。はい、かりんにとって妹のかれんさんはどういう人?」
「……それは……世界で一番大切で、自慢の妹……だけど」
「そう……向こうもきっとそう思ってる筈。で……それでも気になるならゲームが終わって、病気が治った後にその辺また話し合えば良い。うん、ゲームが終わった後にやる事が増えたな」
「何か……丸め込まれた気がする」
「丸め込んだからな」
「あっ! 酷い!」
涙が零れそうだったかりんの瞳が、冗談めかして怒りを表す表情に変わる。……少し安心した。
今までの会話から考えるに、かりんはもしかしたら、自分が姉として頑張らないといけないという使命感で、2人ぼっちの世界を乗り切っていたのかもしれない。
そう考えると、精神的に一杯一杯になるこのゲームで、姉ぶろうとするのも分かる話だ。……弟扱いには納得いかないが、2日間くらいは我慢してもいいかという気持ちになってくる。
「そこまで言うんだったら、責任取って、あたしの弱音吐く練習に付き合って! あと聞く練習の為に進矢も弱音吐いて!」
「逃げ切れなかった……」
「やっぱり! 逃げるつもりだったんだ!」
「ははは、冗談だよ冗談」
どの道、かりんとは2人で話さないといけない事があったので、俺としては否はない。話す内容が重いので避けたかった気持ちはあるが、避けてはいけない話でもある。
お返しにかりんの頭を撫でる。
罪悪感が胸を満たす。そう思うのは複雑な理由があるが、少しずつ分かってきた。それを言うのは正しいのだろうか? 結局の所、俺はかりんの事を信じ切れていないのだ。彼女は最初から俺を信じてくれてるというのに。
向かい合うのに耐えきれなくなった俺は、壁に寄りかかって座ると、かりんは横に座った。
「ねぇ進矢、どうすれば、桜姫さんみたいに強くなれるのかな……」
「ブッ……!? 急にどうした?」
「だって、あたしって2人に守られてばっかりだけど……桜姫さんは進矢も頼りにしてるし、信じ合ってるのが分かるから」
「別に、かりんにはかりんの良いところがあるだろう? 良いところだけ吸収していけば良いじゃないか」
「……それは、そうかもしれないけど」
不満げなかりんの頭を撫でる。
かりんの気持ちは分かる。本質的に彼女は、正義感・責任感が強い人間だ。だから、少しでも力になりたいんだろう。
……その対象が俺というのはなんともむず痒い話ではあるが。
「大丈夫だかりん。それは皆が感じてる事だよ、もっと力があれば……俺だってもっと多くの人を助けられたかもしれない。でも、その悔しさは次に活かせ、今は……今持ってる物で戦うしかない。頼りにしてるよ、かりんお姉ちゃん」
「その言い方、逆に馬鹿にしてるように聞こえるよ」
「人を弟扱いするからだ」
「むむむ……本当に頼りにしてる?」
かりんの瞳から懇願の表情が窺える。
どうしてここまでやってくれるのやら俺には分からない。
かりんといるとどうにも……俺が悪い人である事を再認識せざるをえない。
「全く、大したお姉ちゃんだよお前は。それに、かりんが居なくなったら俺と勇治が暴走した時、誰が止めるんだ?」
「いや、それは自分で止まりなよ……」
かりんは表情を変化させ安堵と呆れが入り交じる。
真剣な表情をしたかりんといると、心が締め付けられ、逃げてしまった。
彼女の純粋さは、俺には辛い。
「で、進矢の弱音はなに?」
「誰かが死ぬことが怖い」
「あ、今……誤魔化したね」
無難に先程言った事を繰り返そうとするも、かりんはからかうような笑みを浮かべ見透かした。
「嘘はついてないんだけど」
前にも言ったようなこの台詞、明確に嘘をつくのを無意識レベルで避けているのは俺の癖のようなものだ。
「進矢は隠し事が下手なんだよ。かれんの方が上手いよ」
「俺、そんなに分かりやすい?」
「よく見たら、癖とかすぐに分かるよ」
マジですか……自分でも知らなかった哀しい真実。
普段、人とある程度一線を引いていた所為だろうか、自分でも知らない癖が沢山あったらしい。このままだと、俺より皆の方が俺の事に詳しくなる疑惑がある。
「凄く恥ずかしい、今後の教訓にしよう」
「次は上手く騙そうって!?」
「勘弁してくれ、俺だってできるだけ隠し事無しにしたいの!」
かりんの鋭い目線を受け止めつつ、なんとか眼を逸らさずに見つめ返す。
どうして、ここにいる女性は皆……俺と向き合おうとしてくるのだろうか。そんなに俺が、後ろめたい事を隠してるように見えるんだろうか……隠してるけど。
「分かった、信じるよ。それで、その話は私を何度かチラチラ見てたのと関係ある?」
「かりんの距離が近すぎるからだよ! というのもあるが……正解でもある」
一般的に社交的な人間な程、パーソナルスペースが狭く、男性より女性の方がパーソナルスペースが狭い傾向にあるらしい。そして、パーソナルスペースに侵入されると俺はバグる。具体的には、嫌でも自分と向き合ってしまう。
勿論、相手がかりんだから……というのもあるかもしれないが。
「へぇ、女の子扱いしてくれてるの?」
「お姉ちゃんが過保護過ぎて、反抗期になる弟の気分を味わってるんだよ」
「あたしが居ると負担ってこと!?」
かりんの表情にわずかに怯えが混じり、俺の服の裾を握られる。
だが、その言葉はある意味で確信を射ていた。
悪い意味だけではないのだが。
「負担ではあるけど、負担であるって事は悪い事だけじゃない。ここに来て始めて知ったよ、俺は普段……それから逃げていた。だから、本当に分からない事が1つある」
自立という言葉に逃げて、1人で生きようとしていた。
本当は1人が寂しかった筈だ、少なくとも今は寂しいと思う。
同時に、隣にある温もりを得た事による失う恐怖が常に俺を苛んでいる。
違う、それもあるが……もっと、別の恐怖だ。
「かりんがどうして俺を信じてくれるのか、幾つか考えてみた。それで、思ったんだが、もしかりんが俺の賞金分担案を起点とした信頼なら、俺はかりんを騙してる事になるんじゃないかと思って」
「え、なにそれ……そんな事で悩んでたの!?」
かりんの表情が驚きと呆れが混じった表情になる。
……俺だって、自分がどうしてこう思うか分からない。
かりんの信頼が、失望に変わる事が怖い。
それでも思わずにはいられないのだ。
――すなわち、かりんが信頼しているのは、かりんの中での想像上の俺であって、本当の俺ではないのではないか? ということに。
「だって、あれ位の事……誰だって言えるだろう? このゲーム中なら、桜姫先輩、御剣先輩、姫萩先輩……あとは、伝聞だけなら葉月さんって人も言えるだろう。当たり前の事だから、俺はかりんにそんなに信じて貰えるに値する人間じゃない。それを、最初にちゃんと言っておきたかった」
「……進矢って、やっぱり馬鹿でしょ」
「馬鹿で悪かったな」
「だって、そんなことで悩んでると思わなくて……」
かりんの表情が心配に染まるのを確認し、試し行動という言葉を思い出す。
子供が親の愛情を確認する為、恋人が愛情を確認する為にわざと相手を困らせたり試したりするという行動だ。これは、主に相手を信じてないから発生する行為である。子供から親に行う事は健全だ、でも恋人同士で試しすぎると多くの場合は破局の道まっしぐらとなる。
では、何故大人になって、試し行動を行うのか……?
それは相手を信じられないトラウマがあるからだ。
他ならぬ、俺自身に。
「かりん……根拠はそれだけじゃない。俺が最初に積極的に動けたのは、桜姫先輩に乗っかっただけだ。だから、桜姫先輩に会えなければ、かりんに会えなかっただろうし、もしかしたら見捨てていた可能性もある。殺し合ってた可能性もな」
俺は、桜姫先輩を助けたつもりだった。
だが、本当は融通が利かなくて、虐められていた小さい頃の自分を助けていた。
当時、誰も助けてくれなかった事の代償行為。自分の意志で動いてたつもりで、結局の所深層意識に行動を支配されていた。
そして、未だに俺は過去に囚われている。
だから、恐怖している。
隣の少女にいつか裏切られるなら、失望されるなら……せめて、今、失望されたいと心のどこかで本気で思っている。
「最後の根拠として、かりんは『外だと誰にも助けて貰えなかった』って言ってただろう? 俺だって、このゲームの中じゃないとお前を助けられない、外でなら助けようともしなかっただろう。だから、俺はかりんが外で出会った連中と何も変わらない。変わらないんだよ、かりん」
言葉を続ける内に、少しずつ息が荒くなり、動悸が激しくなるのを感じる。
かりんの表情を確認するのが怖くなって眼を伏せる。
昔と比べて強くなったつもりだった。
事実、推理力やら殺人ゲームのクリアとか要領よく生きるとか、そういう表層的な強さは昔と比べて段違いだ。
だが、人間としてはどうか?
誰かを死なせたくないから、自分の命が惜しくない? 本当に?
違う。
死ねばこれ以上、誰かに裏切られなくなる。
相手の中で、かりんの中で桜姫先輩の中で神格化され、失望される事もなくなる。
それは、死ぬよりも怖い事だと無意識レベルで感じていた、度し難いことに。
目を逸らしている間に、横にいた筈のかりんは正面に移動していた。
「……進矢ってさ、あたしの事嫌いだったりする?」
のぞき込むような眼で、感情を映さずにただ見つめてきた。
「嫌いじゃないよ」
短く答える。
かりんが何を考えているのか読めない。
「うん、分かった」
そして、かりんはゆっくりと近づいて俺の事を抱きしめた。
あやすように頭を撫でられる。
「……かりん?」
「あたしはさ、ずっと見てたよ。進矢の事。あたしたちを励ましたり、ずっと考えてたり、悩んだり。自分がボロボロのくせに助けに来たり……死んで欲しくないって言ったり。酷い解除条件を引き当てて、怖いはずなのに」
「……」
先程のかりんとはまた違った小さく、力強い声。
まるで妹か弟をあやすかのような声。
聞きながら、愕然とする……かりんの身体の小ささと、それと比較にならない力強さに。
「そんな進矢が、桜姫さん……に会うか会わないかで、大きく何かが変わるとはあたしは思えないよ。もっと、自分を信じてあげてよ。進矢が何に苦しんでるか、あたしには分からないけど」
……心が苦しい。
無意識に、かりんの身体を抱きしめる。
同時に、話をしていないのに、自分の心に気付いてくれる事が無性に嬉しかった。
「それに、進矢は外の大人と一緒じゃないよ。それとも、もしもこのゲームで賞金が出なかったとしたら……進矢はあたしを、見捨てる?」
「見捨てない……見捨てるわけないだろう」
「うん、だから……あたしは進矢を信じてる。もし、進矢が自分の事を信じられないというのなら、あたしが進矢の分も進矢を信じる。進矢は、間違えるし自分の命を大事にしないけど……何時も皆の事を第一に考えてくれてる。そこは信じてるから」
「――ぁ」
気付かない内に眼の中に涙が溢れている。
本当は、本当は……気付いていた筈だ。
俺はかりんの信頼が怖いと思うと同時に、その信頼こそが最も欲しかったものである、と。
なのに、俺が行った事は信頼を撥ね除け、かりんは事情も分からず気持ちを汲んでくれた。
この中で愚かな人間が居るとしたら、間違い無く俺であり
「……あれ、俺、なんで――」
「良いよ、進矢。喋ってくれて、ありがとう」
「あ……くっ、かりん……ありが、とう」
受け止めるかりんは、慈愛に満ちていた。
ずっと、ずっと……誰かの信じてるって言葉が聞きたかった。
誰かの為に戦う自分を、認めて欲しかった。
1人だけじゃなくて、皆で理不尽に抗いたかった。
その後、とめどなく感情があふれ出し、年下の女の子に小学生ぶりである大号泣をすることになったのであった。