秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind- 作:流火
御剣総一 :A:4.5:Qの殺害
葉月克己 :2:DEAD:ジョーカーの破壊
川瀬進矢 :3:4.1:3人の殺害
長沢勇治 :4:3.2:首輪を3つ収集する
郷田真弓 :5:6.4:24ヶ所のチェックポイントの通過
高山浩太 :6:DEAD:ジョーカーの偽装機能を5回以上使用
漆山権造 :7:DEAD:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
矢幡麗佳 :8:DEAD:PDAを5個破壊する
桜姫優希 :9:4.5:自分以外の生存者数が1名以下
手塚義光 :10:DEAD:2日と23時以前に首輪が5個作動している。
綺堂渚 :J:DEAD:24時間行動を共にしたプレイヤーが生存
姫萩咲実 :Q:DEAD :2日と23時間の生存
北条かりん :K:3.4 :PDAを5個以上収集
人数オッズ
6人生存:8倍
5人生存;4.5倍
4人生存:3倍
3人生存:3倍
2人生存:4倍
1人生存:10倍
全滅:300倍
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私の影響力の秘密は、それが常に秘密であること。
サルバドール・ダリ (スペインの画家)
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「――以上が俺と渚さんの戦いの顛末です。完敗して、このゲームを託されました。彼女が何者で何を背負っていたか知り得ない事ですが、彼女もまたゲームの被害者の1人だったという事でしょう」
かりんと手を繋いでいた事をからかわれつつ、別れていた間に起こった事を情報共有する。
勿論、その中には俺達が全員生きて帰る方法である、警備システムを生き延びる方法を含んでいる。このゲームにおける敵はもういない、存分にそれに集中できるというものだ。まだ1階も進入禁止になっていないが……その為に、俺達はこのゲームの決着を急いだわけだし。
「渚さんがそんな事を……そっか、うん……分かった、うん」
話を聞き終えた桜姫先輩が涙を浮かべ、それを御剣先輩を慰める。
あの渚さんの様子を見れば、助けたいという気持ちが湧くのは分かる。あの死に方が渚さんなりの償いだったとしても、それが正しい償いとは思いたくない。
だが、死んでしまった人間にそれ以上何も言える事はない。やるせない気持ちだけが胸中に広がる。
勿論、それは渚さんだけではなく、このゲームで死んでしまった全ての人を想っての事ではあるが。
「それにしても意外だなー」
「何がだ、勇治」
しんみりした空気になっていると、勇治がその話には興味なさそうな気のない様子で俺に言葉を投げてきた。
「皆で生きて帰る方法だよ、思ったより正面突破だった。納得もするけどね……そのためのRTAだったんだなーって」
勇治は斜め上の回答を期待してたのか、ちょっと不満げな表情である。
俺だってそういう回答があれば、遠慮無くそっちに走りたかったんだが、残念ながらそういう都合の良い方法は見つけられなかった。
せめて冴えた回答をしようと思考を巡らせる。
「そうか? 別に大した事じゃない。今思えば……着想を得たのは、桜姫先輩が皆で協力して首輪を解除して、解除条件を満たさずに首輪をどうにかする方法を探すって言った時だな。そこから逆算して、そうした時に”だけ”見えてくる光明があり、情報を拾い集めるにつれ仮説は確信になった」
「私……殆ど何もできてないのに、そんな事言われても納得できないんだけど……」
「1%の閃きと99%の努力の本当の意味が近いんですかね。エジソンの言いたかった事は1%の閃きがないと99%の努力は無駄になりかねないという意味なので」
もしも、人が集まった時に殺人条件引き当てた奴は死んで貰うしかないって論調になった場合は、お前達が生きる権利を行使するなら、俺も生きる権利を行使してやるよぉ! って逆ギレ(?)っぽい事をした可能性が高い俺である。本当にしたかは分からないけど、大なり小なりゲームに影響を受けていたかもしれない。
桜姫先輩は俺にきっかけを与えたかもしれないが、スタートの一歩は大事だったということだ。1%が無ければ、今の俺は無かったのだ。
「色々と複雑だけど……渚さんも俺達の生きて帰る事を願ってたんだな。だから、俺達も生きて帰ろう。川瀬の案は全員生存で辛うじて生きて帰れる……かもしれないという案だ。だけど、俺達はもう6人しかいない。単純計算でも……1人2倍は頑張らないといけないしな」
「結構大変だよね……ソレ」
御剣先輩は桜姫先輩を励ますように言い、かりんがやや青い顔でその言葉に応えた。かりんの不安げの表情は敵は居なくなったが、実際に俺達3人が生きて帰る事の難しさを実感したからかもしれない。
俺の理想だと、10~8人の首輪解除者の奮闘で殺人条件の3人を警備システムから守るというものだ。ついでに言えば、ゲームマスターの郷田真弓には首輪解除しないから、一緒に死ぬか生きるか選べ(強制)という二択を迫る予定だ。現実的に考えて、首輪を解除したかりんと勇治にかかる負担が重すぎる。
正直な心中を吐露すると先程の死闘で、判定勝ちにしてもらって主催者さん達に全員生還にして貰えないかなーと俺も願望を抱くところだ。ありえないことだけども。
……現実逃避しても仕方無いので、まずは議論を進めよう。
無理だと分かれば、望み薄だが残り時間で別の方法を探さないといけない。
「そうだな、かりん。ということで、本ゲームのゲームマスター様の裁定を仰ぎたいところです。 狸寝入りの時間は此処までですよ?」
「あら……気付いてたのね? 残念、隙を伺っていたのに」
「鎌かけです。残念でした」
「可愛くない子」
充血した瞳に、埃だらけで汚く濡れている高級服は痛々しく。都落ちという言葉を連想させる。
後ろ手に手錠をかけられた郷田真弓はそれでも、ギラリと視線を向けた。その眼はまだ死んでおらず、隙を見せる事を躊躇させる。
かりんの母親の直接の仇で、憎々しいこの殺人ゲームを執り行ってる組織の現場責任者。同時にヘイト役でもある。コイツが全て悪いと責めるのは簡単だが、それは同時にこのゲームの主催者の思惑通りという事でもあるのだ……残念ながら。
だから俺は苛立ちを若干表に出した声色で、丁寧に交渉を持ちかけた。
「選択肢をあげましょう。首輪を解除された上で俺達に殺されるか、俺達と一緒にペナルティの警備システムに抗うか、選択肢は2つに1つ。賢い返事をお待ちしています」
「さっきもそうだけど、よくも糞みたいな二択を用意してくれたわね」
「やだなー、話を聞くにさっきの郷田さんは見事に不利な二択を脱却して見せたらしいじゃないですか」
「……ケッ」
不機嫌そうに郷田は吐き捨てる。
正直、彼女に容赦する理由は何1つとしてなく、それでも運命共同体になってしまったという事実が面倒ではある。直接的な悪口を言うのは憚られるため、思いつく言葉は皮肉ばかりだ。
「貴方の案は甘いと言わざるを得ないわね。良いとこ、成功率は10%。だけど、私と渚ちゃんが協力すれば成功率は50%程度には引き上げれるんじゃないかしら?」
「50%ねぇ……ショーとして見たらそれくらいの数字が良いってことか?」
「賭けとしても、よ」
「うわ……」
郷田の言葉にマジか……という空気が全員に広がる。
俺達は命を賭けた競走馬のようなものだった……いや、プレイヤー側からの視点何かが変わる訳でもないのだけれど。むしろ、冷静に考えれば賭けである方が、ある程度のゲームの公平性が担保されるからありがたい......のか?
ただ、そんな悪趣味な事が裏で大規模に行われている事に対して、ドン引きはする。俺個人として言うなら暴くべき悪がそこにはあり、しかし大きすぎて手を出すと消される深淵がある。
嘘をつくときは大きい嘘の方がバレにくいとどこかで聞いた事がある。何度かそういう殺し合い関係の都市伝説を聞いた事も掲示板で見た事もあるけど、本気で受け取った事は一度もない。自分の節穴っぷりが嫌になってくる。
まぁ、良い。今は大事な事じゃない。
「このゲームがショーだとか、賭けだとか……そんな事はどうでもいいです。それを利用してどうするかが、この場において大事になってきます」
「あら、賢明な判断ね。でも、正しいわ……1つだけ善意で警告してあげる。このゲームから生きて帰ったら、このゲームの事は全て忘れなさい。ゲームの真実を追った者はもれなく……」
「もれなく?」
「拒否権のない次のゲームの招待状をプレゼント! 正直、貴方とはもう二度と会いたくないし」
「地味に、ゲーム側の人間としての最大限の善意あるお言葉っぽいのが分かるのが辛い」
「本人だけじゃなくて、関係者も呼ばれるかもしれないわね?」
「くっ……!」
誰を想像したのか、かりんが青い顔で郷田を睨む。
これがデスゲームでよくある? リピーター枠って奴か。
この殺人ゲームだと、ゲームから生き延びて尚、ゲームの存在を公にしようとする人物がもれなくリピーターにされてしまうようだ。今思えば……だが、ゲームの存在を告発しようとする都市伝説めいた掲示板での発言等は、頻繁に削除されてたり投稿者が消えてたりしていた。それを俺は自作自演だろうと思っていたが、こんな裏事情があったなんて想像できるか!
「どうします? かりん……と桜姫先輩、俺は俺なりに考えはありますけど」
「どうするも何も、今は生き残る事に集中よ。他の事は雑念と思った方が良いわ」
端的に返すのは桜姫先輩だ。
この人の考え方は基本的に真っ直ぐで好きです。
……恋愛的な意味では無くて。
「それは確かに、捕らぬ狸の皮算用ですもんね」
「目の前に捕まった狸はいるけどな」
「勇治、誰が上手いこと言えといった」
頷いた言葉に、勇治が補足する。
諭すような言葉を口では言うが、ちょっと面白かった。
完全に拘束した相手なら強気になれる……分かるよその気持ち!
ついでにいえば、ちょっと位足蹴にしても許されると思うよ! しないけど!
一瞬だけ勇治に共感して、手を握る力を強める口数の少ないかりんの方に注意を向ける。
何を考えているか分からないが、その顔はとても強張っているに感じた。
「……そう、だね。今は皆で生きて帰る事を考えよう、進矢に考えがあるなら……聞いておきたいし」
かりんの手を握る力を強める。
悩みがなんとなく分かった気はするが、解決できるかは分からない。
後でまた話し合うしかないな……かりんと目を合わせて頷き合った。
「納得してもらって結構、私も生き残った人には良い余生を送って欲しい……これは本音よ? 一応ね」
「どの口が……!」
かりんの目が怒りに満ちるが、それを抑える。
郷田もまた分かって言ってるのだろう。
捕まって尚ショーとしての演出を盛り上げようとしている、ギリギリのラインを踏み込んできているというか。
……話を変えよう。
「郷田真弓、貴方の善意も悪意も結構です。具体的な話をしていきましょう。現在時刻がゲーム開始から27時間とちょっと……つい先程、1階が進入禁止になった所です。キリが良い時間で考えれば、72時間目に全域が進入禁止になる……残り約45時間。1時間を生き延びる為にあんまり無駄にしたくないですね」
「具体的手段、ね。私が言えることは私はあくまでこのゲームのゲームマスターだということよ。だから、貴方たちの提案には乗るし質問には可能な限り答えるけど、私自ら貴方たちを導いたり指揮することはない……と前もって断っておくわね」
「おいおい……自分の命が懸かっている自覚があるのか!? いや、違うのか……順序が逆なのか? 自分の命を大切にできないから、人の命を大切にできないのか!?」
「あー……」
郷田の命がかかっている状態に対しても、ゲームマスターという職業を貫こうとする姿勢に御剣先輩が思わず突っかかる。何故かその内容に心が痛くなるような気持ちがしつつ、なんで昨日かりんに怒られたか客観的に理解できたような気がした。
「それはちょっと違うわよ、総一君。私は私として生きる為に、そうであらなければならないの……質問の答えにはなってるかしら?」
「そんなの……まるで歯車みたいだよ!」
「えぇ、私もまた組織の歯車の一人……高級歯車であると自負はしてるんだけどね」
「……っ!」
その言葉に怒ったのはやはり、かりんだった。
昨日の言葉で言えば、郷田は当時の俺の比ではなく歪んでいた。
修正不能な所まで、骨の髄まで組織に課せられた役割が染み込んでいる人間。
俺個人から見ても郷田は優秀な人間だと思っている……そんな人間を、殺し合いゲームの現場責任者として使い潰しているという異常な事態。考えれば考えるだけ、頭がおかしくなりそうな現実。
郷田の気迫に、かりんが圧し負ける。
そんなかりんの姿を見て、郷田は溜息をついた。
「でも、死ぬとしても組織に有用な駒である事を証明して死ぬとしましょう。1つだけ私から案を出させて貰うわ。私は最初から警備システムが解除されている部屋を1つ知っている。これはこのゲームをやってる組織すら知らない情報よ。あるテロリストが昔、この建物にこっそり細工をしててね……後でログで行動洗って怪しい部屋を独自に調べたらそうだった……って訳。その部屋を拠点にすれば良いんじゃ無いかしら」
「いや、殺人ゲーム会場に細工するテロリストって何だよ」
「だーめ、細かい事を聞くと危険が危ないわよ?」
「そんな頭痛が痛いみたいな……」
突っ込み所が多いが、拠点防衛に向いた場所は郷田の方で見繕い済みらしい。
深い話を聞いてみたいところだが、止めておいた方が良いのだろう。
得意げに郷田は言葉を続ける。
「私は他にも私独自の情報を沢山握ってるわ、切り捨てられたら、情報は全部闇の中……そうして有用性を示し続けるのがゲームマスターとして長生きする秘訣なのよ。……あー、1つだけと言ったけど良い案思いついちゃった。組織って身内には結構甘いところあるのよ……だから――」
「何か嫌な予感がしてきた」
「川瀬君、ゲームマスターかディーラーにならない? 身売りすれば生存率大幅アップよ。私も今の糞ディーラーよりは組織も新陳代謝して若い血を入れた方が――」
「ぜったいに駄目!!! 進矢もそんな話を聞いちゃ駄目だからね!」
俺が口を開く前に隣のかりんが凄い剣幕で止めた。
そこまで怒ってくれなくても、ちゃんと断るつもりだったのだが……アレか、皆の為に自分を組織に身売りするような人間だと思っちゃったんだろうか? 強気で否定できないが、少なくともかりんが居る限り絶対にそんな事はしないぞ。
……当たり前のようにここでかりんが出てくる自分にびっくりすればいいのか、かりんが居なかったら普通に選択肢に出てくる自分に呆れるべきなのかどっちか分からない。
早口にまくしかけてた郷田はかりんの剣幕に気圧され、残念そうに口を閉ざした。
先程と完全に逆の構図になっている。
「部屋の件だけ受け取っておきます。これからの流れですが、幾つかあるので紙にちょっと書き出していきますね」
①エクストラゲームに則りコントロールルームで一人の首輪を解除する
②かりんか勇治で手塚の首輪を解除しにいく
③拠点に武器と資材を集める
④拠点構築
⑤武器の訓練
⑥5個分の首輪を使用した警備システム破壊
6つの議題を箇条書きにしてみる。
こんなところか、こうしてみると45時間って結構短いかもしれないな……1つずつ話をしてみよう。
問題があれば適宜修正しつつ、あるいは議題追加すればいいわけだし。
①エクストラゲームに則りコントロールルームで一人の首輪を解除する
「首輪解除する人を決めないといけないですね……桜姫先輩に一票入れときます」
「あら? じゃあ私は川瀬君に一票で」
「俺も川瀬に一票だ」
「進矢に決まってるでしょ!」
「進矢お兄ちゃんで」
「……あっれー?」
「何この茶番」
首輪解除しようとしたら流れるように、4票という圧倒的な得票により俺の首輪解除が決まってしまった。……罪悪感を感じる。
「それだけ皆に生きて欲しいって思われてるんだから胸を張れば良いの、それよりも問題は自動攻撃機械だけど……私達にとっては前哨戦のようなものね。あんまり慣れたいものでもないけれど、万全の体制で行きましょう」
「……そうですね、先に武器をある程度集めて、時間としては二日目の締めにやるのが良いですかね」
細かい所はまた攻略する前に郷田に解説して貰うとして、大凡そのような方針におちついた。
②かりんか勇治で手塚の首輪を解除しにいく
「じゃあ僕――俺が行くよ、手塚の様子も見に……かりんの奴に行かせる訳にもいかないし」
「大丈夫なの? 一人で平気?」
「おいおい、子供のお使いじゃないんだからさ。ちゃちゃっと行って帰ってくるよ」
「一応、通話機能付きのPDAを持っていけ。それと扉開閉できるPDAを使ってできるだけショートカットしていけ。あと、罠探知のPDAも――」
「分かってるって!」
首輪解除しに行くのは勇治に決定。
手塚の死体が見たいのか、かりんに見せたくないのか……どっちも本音ではあるやつだな、これ。敵もいないわけだし、勇治に任せるのが吉……と。
③拠点に武器と資材を集める
「結構な肉体労働になりそうだが……拠点の位置が前もって決まってるだけ、楽……か? 台車とかないかなー、流石に手だけじゃきつい」
「6階にあるわよ? 台車」
「あるのかよ!」
「そりゃあるわよ……台車でしか運べない武器とか多いし」
「なにそれこわい」
台車でしか運べない重量級武器……本当に対人用じゃなくて対警備システムを想定していますよね!? という突っ込み待ち武器が沢山ありそうでわくわくもする。それはそれとして、実物を見るのが超怖くなってきたな。
④拠点構築
「やること自体は結構多いんだよね、防壁を複数にわたって作って第一防衛線、第二防衛戦、第三防衛線、最終防衛線を作ってタワーディフェンスゲームをしないといけないわけだし」
解説しよう。タワーディフェンスゲームとは、自分の領地に進入してくる敵を倒すタイプのリアルタイムストラテジーゲームのことである。ゲームの種類が頻繁に変わる殺人ゲームもあったものだ、特定のジャンルばかりやるゲーマーじゃなくてよかった。オールラウンダーがベストです。
「エアダクトを塞ぐことも忘れたら駄目よね。どんなに塞いでも爆破してこじ開けてくるでしょうけども」
「最悪の場合に備えて、逃げ込む用の第二拠点とか作った方が良いんじゃねーの?」
「マジで時間と資材の勝負だな……これ」
やることが多いというか、どれだけ手を尽くしてもやりすぎるという事はないというか……45時間あるが実際に拠点構築に使えるのは3分の1から半分が良い所だろう。
⑤武器の訓練
「なんか凄い武器を見つけたら郷田先生にお願いする。できれば全員居る所でやった方が良いから専用で時間を取るか、1回目が対コントロールルームへの通路チャレンジを兼ねて。2回目が首輪を使った警備システムの破壊を兼ねて、3回目が拠点防衛に……4回目をリハーサルとする。時間は怖いけど、配分としてはこんなもんか」
「結構楽しみなんだよなー、これ」
「なー」
「いや、その感想もどうなんだ?」
「御剣先輩が漢のロマンを分かってないよー、これは不味いと思わないか勇治」
「人生の半分を損してるよなー、進矢お兄ちゃん」
「なんか理不尽だ……」
武器の訓練の話になると一転、俺と勇治のコンビのテンションがちょっと上がる。実際撃ってみたいのだ……何故なら……男だから?
女性陣からどう思われようとも、男だから! 男だから! 中学二年生の回路を全開にしたい! 高校二年生だが、中学二年生の心こそが人生を楽しむ一番の秘訣だ!
「総一は行かなくて良いの?」
「いや、無理……」
「二人が楽しそうで良いなぁ」
「北条、頼むから染まらないでくれ……」
⑥5個分の首輪を使用した警備システム破壊
「この首輪の数ならもう1ヶ所は安全地帯を創れるわね。それが限界かしら?」
「創れる場所が1箇所なら、もう決まったようなものですね」
「……なるほど、ね?」
郷田と二人で地図と突き合わせながら、安全地帯兼第二拠点の場所を決定する。今選びうる中では最善を尽くせているとは思う。これで生存率50%……越えるだろうか?
どこまで進んでも、心の靄がはれる事は無い。
常に博打を打ち続けている状況は確実に精神を消耗させている自覚はある。
「あとは実際に武器を見つけて安全地帯を作る時に、コツなりなんなり教えて欲しいところですが」
「あら、私は渚ちゃんの出番を奪う程無粋じゃないわよ? 私から言える事は、移動式と固定式に着目する事自体は悪くない発想だと思うわ。精々、頑張って頂戴」
「おい、ペナルティ対象者」
「おっと、そうだった」
大丈夫かこいつ……という目線で郷田を見る。
俯瞰的に参加者を駒みたいに見る職業病なんだろう。
確執はあるが、それでもゲームで全員生き延びるという意味では仲間なのだ……複雑ではあるが。それも、ゲームを盛り上げる方向でなら信頼できるという実情がある……実際は何十~百人を死地に追いやった大罪人かもしれないが。
あるいはそれだけの人死に触れたからこそ、人を駒としてしか見れないのか。そう考えると憎いけども、どうしようもなく哀しい存在でもあった。
そこで俺は思考を打ち切った。これ以上、郷田真弓という個人に感情移入する必要はなく、あるいは逆に呑み込まれる事を危惧してものである。
「勇治は、手塚の首輪解除に移動。それ以外は拠点構築の為に武器と資材を集めていきましょう。では、作戦開始!」
1時間ほど話し込んだ後、次なる行動に向けて皆で動き始めた。
尚、郷田の処遇に関してだが桜姫先輩と手錠プレイ……もとい、手錠で繋がれながら移動する形となった。俺と御剣先輩でそれぞれ主張したが、その分肉体労働しろとの事であった。まさか、かりんにやらせるわけにもいかないし……そう言われると桜姫先輩が適任ではある。
手錠……ね。
ふと、繋がった二人を見て思う。
長いゲームの歴史、うっかり手錠が繋がれたまま鍵を無くしたうっかりさんとかいるんだろうか? それはそれで面白そうだ。ショーとしてみれば、外側からはドタバタコメディに見えなくも無い。
絶対に俺は嫌だけど。
ということで、鍵だけは絶対に無くさないように、所持している御剣先輩に強く言っておいた。