秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind-   作:流火

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第二十七話 匣の外の世界

 

 

――――――――――――

愛することは人の宿命。一人では見つけられない人生の意味も二人であれば見つけられる。

トマス・マートン (米国の修道司祭、作家)

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 数時間経過した。

 昼食を手短に食べた後、5階の武器、6階の武器をひたすらに御剣先輩と運搬する。

 その繰り返し……シミュレーションゲームとかではマウスやキーボードをポチポチしてればキャラクターが自動で拠点構築したりしてくれるのに、なんて愚痴を吐きたくなってくる。

 日頃の運動不足が祟ってくるのだ。

 ありがたい面も勿論ある。

 これだけ武器がないと、1時間警備システムの群れに持たない……正の面と負の面は表裏一体だ。肉体労働をしている間はネガティブな思考も若干薄れる。

 

「よし、いくぞ……ヨイショ……っと!」

 

 6階の倉庫にて、台車を首尾良く手に入れた俺達は二人で声を合わせて機関砲……? というべき重火器を持ち上げる。

 語彙力が無くなってきたが、なんかでかい砲弾を連続して撃つ装置だ。

 明らかに対人戦を優に上回るその兵器は対戦車でも考えているのかなと思う。

 ……警備システムに戦車っぽいものが現れてももう驚かないのだが。

 

「最初こそは熱が上がってきましたが、繰り返すと辛いですね」

 

「……確かに、気が滅入るな。これ」

 

 かりんと桜姫先輩と郷田の3人は俺達が運んだ重火器……主に設置型の武器を郷田の指揮の下で設置している。

 使えば人をミンチにする兵器が沢山ある、もし殺し合いが進んだ状況で6階に来た場合……冷静に考えてもサブマシンガンとかのが殺し合う分には良いな、うん。

 しかし、常軌を逸した武器は人の正気を奪うのは十分なのかもしれない。

 だからこそ、対警備システムに専念するという発想が生き残ってる内に団結をすることができて、良かったとも思う。

 

 それはそれとして、精神的に滅入るのは仕方の無い事である。

 さっきの勇治とテンションを上げた一幕?

 テンションが下がって冷静になったのが今です。

 重火器にはロマンがある、しかし熱は何時か下がる……クールダウンした俺が見るのは現実だ。

 そう、リアルだ……武器の出所何処だよという事を考えてしまう。

 

「……川瀬、一回休もう。俺ちょっと疲れた」

 

「そうですか? 分かりました、20分位休憩しましょうか」

 

 そして、テンションがおかしくなった時はペース配分が乱れる。

 御剣先輩に言われてようやく、自分の汗に気付いた俺は近くの木箱に座った。

 ペットボトルの水を飲み、水分補給に努める。

 やったことはないし、危険度はないだろうが軽作業や引っ越しのアルバイトとかこんな感じなんだろうか……炎天下じゃないだけマシか?

 なんとなく手で顔を仰いでいると、御剣先輩が話しかけてくる。

 

「こうして、二人だけで話すのって初めてだな。なんというか……新鮮だ」

 

「帰ったら家系図を見たくなりますね。幸い俺は母親似らしいので、ウチの親父が御免なさいという事態は無さそうです」

 

「普通におぞましい想像してくるな!?」

 

「冗談です」

 

 若干引いた顔をする御剣先輩に苦笑してみせる。

 顔がそっくりで最初に連想する言葉がそれなのは、普段見ている本やらの影響だ。

 住んでる所を聞く限り、地方レベルで住んでる場所が離れている為、そんなことはありえない訳だが。

 見れば見るほど鏡かなーと思う、兄貴と全然違う。遺伝子仕事しろ。

 

「何か話しましょうか? 残念ながら、こういう時に話す事が思い浮かばないんですが」

 

 思考を巡らせる……何を話せば良いんだ?

 普段学校では寡黙寄りな俺にとっては、一番難しい事だ。

 このゲームの事を除けば話題なんてあるんだろうか?

 ここはベタに天気の話……残念、ここは密室だった。

 趣味の話、絶対合わない。

 恋バナ……俺が恥ずかしくて死にます。

 ……無難に相手に合わせておこう。

 

「1つ聞きたい、何か抱え込んでる事はないか……もし、俺で良ければ相談にのるぞ」

 

「何ですか藪から棒に」

 

「察するにお前は抱え込むタイプだ。違うか?」

 

「どうして、俺が抱え込むタイプだと思ったんです?」

 

 急な話転換にびっくりするが、一先ずは乗る。

 思ったより御剣先輩がまじめそうな表情をしていたからだ。

 俺ってそんなに人に心配されるタイプなんだろうか?

 皆優しいというか、過保護というか……。

 少なくともウチの家族は放任主義というか諦められているので、やや新鮮ではある。

 

「それはだな……何度か『疲れてないか?』と質問した時にお前は平気だと強がって見せた。だが、さっき休もうと言った理由に俺が疲れたから休むって言った時、お前は同意した」

 

「あー……自分から言い出すのって難しいですよね。そういう風に言ってくれて、助かります」

 

 記憶を辿れば、作業中に御剣先輩に何度か言われた気がする。

 そして、冷静に考えれば体力面で俺は御剣先輩より下だ。

 ……強がるのは男の特権ではあると思うが、配慮されてしまうとなんとも締まらない。

 だけど、感謝はすべきだ。

 そう思ったのだが、御剣先輩から出たのは否定の言葉だった。

 

「そういう意味じゃない。なんと言えば良いか……一生懸命なのは良い事だよ。だけど、余裕を持つことだって同じ位大事な事だ」

 

「気を使わせて申し訳無い……と言いたい様な。手慣れてるんですねー、って気持ちになるような」

 

「まっ、酷い奴が何時も隣に居るから慣れてるってのは正解だな」

 

 ようやく、御剣先輩が真剣な理由が分かり、二人で苦笑しあう。

 酷い奴というのは勿論、暗黙の了解で桜姫先輩の事だ。

 今までの言動からありありと想像できる……御剣先輩も苦労してたんだなって気持ちが強い。一方で、大切な人がついてきてくれるからこそどこまでも頑張れるのだろうとも思う。

 その輝きに惹かれた以上、既に恋人持ちの人がモテやすい法則の理由が分かってしまった俺であった。

 

 なごやかに話を続けていたが、御剣先輩がふと気付いたように言った。

 

「そういえば、敬語なんて使わなくて良いぞ。学校じゃあるまいし、先輩なんて言われるとちょっとくすぐったい。北条さんや長沢の奴だってそうだし」

 

「いや、先輩は先輩なんで……今更変えても違和感あるんで良いです」

 

「俺が微妙に距離を感じるんだよ。川瀬って頭良いからさ、先輩面できる面がないし」

 

「あー、俺も御剣先輩とは仲良くなりたいとは思ってはいるんですけど……」

 

 どこかで聞いたそんな話、昨日かりんとちょっと言い争いをして仲直りして、苗字呼び止めようって言われたんだった。

 距離を詰めてくる……それを自然にやれるんだから、ズルいぞ。いや、俺がそのスキルを持たないだけで、普通の人は息をするように仲良くできるのかもしれないが。

 どうあれ、俺はその御剣先輩の意思に応える事は出来ない。

 ……口にするのも憚られるくだらない理由で。

 

 心なしかシュンとしている御剣先輩を見ると、口にした方が良いのかこれ? 

 って気持ちになってきたが。

 どの道、こんな話……話せるとしたら唯一御剣先輩くらいなのである。

 

「笑わないと約束してくれるなら、言います。あと誰にも言わないのであれば」

 

「笑わないし言わないけど、どうしてだ?」

 

「えーーーっとですね。はい。御剣先輩から先輩を外すとしたら、桜姫先輩からも外さないといけないじゃないですか、それが答えです」

 

「??? つまり、優希の事は先輩呼びしたい。俺はついで……どういうことだ?」

 

「…………もういいです」

 

 若干、顔に熱を帯びつつ勇気を出して唱えたその言葉の回答は疑問だった。

 脱力する。

 俺のその言葉ってこんなに分かりにくい言葉だったんだろうか?

 

 桜姫先輩を先輩呼びした時にはその自覚は無かったが今では自覚はある。

 桜姫先輩に彼氏がいると知った瞬間、俺は彼女と距離を取らなければならないと直感的に理解した。その時に一番都合が良かったのが、先輩+敬語だったのである。

 正直に言って、御剣先輩と姫萩先輩の敬語使用はその辻褄を合わせる為だ。

 

 それを今も適用し続けるのは俺もどうかと思うが、ちょっと波長が合いすぎるのが悪い。

 勿論、かりんが大好きだという言葉は偽らざる本音だ。そこに迷いはない。感情のベクトルが違うのだ。

 だから、今の距離を維持する事が一番問題にならないと思う。皆の幸せを壊したくないのだ。

 ……そこまで心の繊細な部分は流石に口にはできなかったが。

 

「まぁ、川瀬がそこまで言うなら、良いけど」

 

「……桜姫先輩、頑張ってください」

 

「どうしてそこで優希の名前が出てくるんだ?」

 

「……」

 

 ……溜息が出た。

 いざって時に頼りにはなってるし、頭の回転が悪い訳でも無いけどなんだろう……この鈍さは、さっき見せた鋭さはどこに消えたんだ。

 まぁ、これで桜姫先輩と長年幼馴染やってるのなら、上手くできてたんだろう。

 桜姫先輩の張り詰めた感じと、御剣先輩の緩い感じで上手く調和が取れていたのだ! 多分! きっと!

 下手に神経質なよりは精神的強度は強いかも知れないし、だからこそ深刻な話も相談しやすい面があるのかもしれない。

 

 数秒頭を抱え込んだ後、頭を上げて言葉を探す。

 御剣先輩の言う通り、一人で抱え込みたくない相談したい内容は実際にある。

 かりんにも、桜姫先輩にも、相談しにくい内容が……そして、長沢には多分、こういう話は本当に理解して貰えないだろう。

 

 

「話を戻しますが……抱え込んでる事ですね。ありますよ、こんな事はもしかしたら……心に余裕がある故の悩みかもしれませんが」

 

「心に余裕がある故の悩み? ゲーム自体の事じゃないのか?」

 

「えぇ、気が早い事に……ゲームが終わった後の事を心配しているんですよ」

 

 振り返るのは、儚く舞う綺堂渚の死に様だ。

 あの時に考えていた事は3つある。

 一つ目は……こういうのはアレだが、渚さんの強さへの感銘。

 二つ目は、警備システムの傾向と対策。

 そして、三つ目は―

 

「俺は、純粋に恐怖しているんです。今まで送ってきた日常が砂上の楼閣であったという事を……ヤクザの興業であれば、某国のテロリストであれば、どこぞのカルト宗教団体であれば、どれだけ良かったか」

 

 百を優に超えるの数の自動攻撃機械。

 拿捕したものの流用では説明がつかない。

 例えばサブマシンガンやアサルトライフル……機関砲といった部類であれば、テロリストであれば持っている。

 だが遠隔操作式の自動攻撃機械だけは別なのだ。

 俺もミリタリー0に詳しい訳では無い、だがあれは超大国アメリカの最新鋭の無人兵器の特注兵器である事は間違いない。

 つまり、大規模すぎるアメリカ軍からの横流しがあったと考える事すら、生ぬるく。元から繋がって取引している、又は大元と考える事が自然なのだ。

 

「どれだけ凄くても銃だけなら良かった、だけど使ってる技術が最先端過ぎる……断言しますが、敵は統治機構そのものです。そして、このゲームが日本だけで行われているとも考えにくい、つまり世界だ。真実の蓋を開けてみると、敵はあまりにも強大すぎる……」

 

 まだ纏まりきってない不安を、御剣先輩に対し1つずつ言語化していく。

 

 奇跡を何度重ねれば達成できるか分からないが、1つの確信に近い推測がある。

 もし、ゲームを大本から破壊できた場合の……被害についてだ。

 手元に資料がないので大雑把な計算になるが世界の超上流階級……世界人口の0.01%の人間がこのゲームに関わっていると仮定しよう。2010年世界人口が大体70億として、ゲームの運営に関わる関係者は約70万人。それも各業界トップや第一人者ばかり。ゲームの存在が公になった場合、フランス革命のようなギロチンラッシュから始まり、社会不安と統治機構の信用の喪失による秩序の崩壊。その被害は計り知れない。

 ……このゲームの規模はあまりにも大きすぎた。

 少なくとも俺にはどうすることもできない。

 理性的であれば理解できるからだ、ゲームの存続で流れる血とゲームの潰す事で流れる血を比較すれば潰す決断なんてできようもない。

 大切な人全てを失ってでも、世界がどうなってもいいという覚悟を持てない。

 犠牲になる人を見て見ぬふりすることしかできないのだ。

 

 ぽつりぽつりと不安と罪悪感のある告白を御剣先輩は無言で聞いている。

 こんなどうしようもない事を話してしまって良かったんだろうか?

 そんな思いもあるがもう止まらない。

 誰かを救えなかった痛みともまた違う、信念の折られた降伏宣言だった。

 それが悔しくて、声に涙が混じる。

 

 少なくとも、このゲームを生き延びれなかった人間にとっては贅沢な悩みだ。 

 だが、間違い無く俺の中での世界は崩れ落ちた。

 心のどこかではそうなる事を想像し、あるいは期待すらしていたのかもしれない。

 だが、身勝手にも俺はその結果に絶望している。

 

「……ここまで誰にも言ってなかったんですが、親父は警察官なんですよ。高卒で入って、今では捜査一課の警部。格好良いでしょう?」

 

「警部……所謂、現場からのたたき上げって奴か。それなら、皆に言えば――いや、違うのか。だから、苦しんでるのか」

 

「はい……希望であると同時に、絶望に裏返る可能性があり言えませんでした。このゲームを主催している奴らは俺が帰って【父親に通報しても問題無い】と判断している。何だったんでしょう? 少なくとも、親父は家族をないがしろにするレベルで仕事熱心に治安を守ってきました。……それに何の意味があったんでしょう? 俺にはもう、何も分かりません」

 

 俺にとって親父の事で思い出せる事は余り多くない。

 ただ、事件の事については積極的に聞いたり、警察内部の事情について機密に問題ない範囲で話をした事が主な交流だ。それでも、今思い返せば、幼少期の正義感は親父の真似事という面が強かったのかもしれない。

 あんまり家族に構ってくれず、仕事こそが本当の家族なんじゃないかと思える親父の事を――俺は嫌いで、それでも尊敬していた。

 

 だが、心のどこかでヒーローのように思っていた親父の生き方そのものが否定された事によって、帰ってからのビジョンを失ってしまったのである。

 元々は、このゲームが終わったら、どうやってこのゲームを潰そうかを考えるつもりだった。

 あまりにも楽観した意見だったと思う。

 6階の武器を見れば、大体の背景組織は予想できるとは言ったが、心のどこかでこうなる可能性を無視していたのだ。

 

「すいませんね、愚痴みたいになっちゃって。馬鹿みたいですよね、まだ生きて帰れると決まった訳でも無いのに、こんなことで悩んじゃって」

 

 謝罪する、休憩時間として定めていた20分を過ぎたか……話しすぎた。

 否定もせず、肯定もせず聞いてくれた御剣先輩には感謝しかない。

 俺もここまで自分で思い詰めているとは思わなかった。

 もう少し気楽に話すつもりだったのだが、思考を整理し言語化すると自然と涙ができたのだ。

 

 御剣先輩は気まずそうに頭を掻く、命がかかっている状態でこんな事で気を遣わせるとは本当に申し訳無い。

 気を取り直し、立ち上がろうとしたところで御剣先輩は口を開いた。

 

「別にそんな事はないと思う、戻るべき日常そのものを信じられなくなったって事だもんな。だけど、そうだな……えーと、なんと言えば良いか」

 

「無理に励まそうとしなくて良いですよ、俺もこれからは皆で生きて帰る事だけを考えて動きます」

 

 そう言って、そのまま作業を再開させようとしたが、思ったより御剣先輩は頭を悩ませている。

 いや、口にするのを躊躇っているようにみえた。

 間を置いて、意を決したように御剣先輩は俺に言った。

 

「そうじゃない! 俺が、言いたいのは……そう。ここだけじゃなくて、この世界そのものが腐った『ゲーム』なのかもしれない! それでも、そんな世界であっても優希の隣が俺の居場所だ。逆に優希が居なかったら、平和でゲームのない世界でも駄目なんだ」

 

「……っ」

 

 惚気か……と突っ込むには、御剣先輩の表情は真剣過ぎた。

 俺の考えていた事とはあまりにも方向性が異なるその回答――だが、何故か目から鱗が落ちる思いがする。

 そのまま御剣先輩は俺を真っ直ぐに見据えて問いかける。

 

「川瀬、お前は違うのか? お前にとって、北条さんはそう思える人じゃないのか?」

 

「……そう、思える人ですが……」

 

「それに、川瀬のお父さんの事は知らないけど、川瀬進矢を生んでここまで育ててきたのなら、十分意味はあるだろ? 皆、助かってる」

 

「……なんというか、そうなんだけど……凄く悔しい。御剣先輩ってズルわぁ……」

 

 立ち上がる気力を無くし、再び頭を抱える。

 沈んでいた心に熱い物を感じて、複雑な心境になる。

 桜姫先輩は今まで何人の男を泣かせたんだろう? と疑問を持っていたが、御剣先輩も今まで何人の女の人を泣かせてきたのか気になってきた今日この頃である。

 何が一番悔しいかと言われれば、御剣先輩の言うことが全て正しいと俺の心が思っている事である。

 

「なんというか、本当にすいませんね。情けない所を見せて」

 

「気にするな、遅かれ早かれ似たような悩みに直面する奴が近くにいるから、予行演習だと思ってる」

 

「桜姫先輩の予行演習扱いです!?」

 

 御剣先輩は誰とは言ってないが自然と誰だか分かった。

 横から聞いても気恥ずかしかったのに、本人にも似たような事言うのか……真似できない!

 そういう方向性では一生、御剣先輩には敵わないと痛感させられた。

 ということで、恋愛面において俺の中で御剣先輩は師匠扱いさせてもらおう。

 

「そもそも、幼馴染からのカップルと全然違って、俺とかりんはまだ会って二日目です。かりんは純粋すぎて、一緒にいるとなんか騙してるようで心が痛くなるような気がするんですが」

 

「積み重ねってのはどうしてもあるよな。騙してる気がするなら、答えは簡単だ。本当に幸せにすれば、騙してる事にならない」

 

「分かりました師匠!」

 

「……師匠!?」

 

 驚いた御剣先輩にしてやったりと涙を残した顔で笑みを浮かべて立ち上がる。

 さて、気持ちを取り直して、武器の運搬を再開するとしよう。

 こうして話してると、無性にかりんの顔が見たくなってきた。

 

「うーん、師匠じゃ駄目ですかね。兄貴は被るし、お兄さんとか……」

 

「どういうことだよ!?」

 

 なんとなく心の距離は少し縮まり、言葉を交わしながら二人で再び武器を運びはじめた。

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