秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind-   作:流火

36 / 61
プレイヤー:カード:オッズ:解除条件
御剣総一 :A:4.1:Qの殺害
葉月克己 :2:DEAD:ジョーカーの破壊
川瀬進矢 :3:4.1:3人の殺害
長沢勇治 :4:3.6:首輪を3つ収集する
郷田真弓 :5:3.2:24ヶ所のチェックポイントの通過
高山浩太 :6:DEAD:ジョーカーの偽装機能を5回以上使用
漆山権造 :7:DEAD:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
矢幡麗佳 :8:DEAD:PDAを5個破壊する
桜姫優希 :9:4.0:自分以外の生存者数が1名以下
手塚義光 :10:DEAD:2日と23時以前に首輪が5個作動している。
綺堂渚  :J:DEAD:24時間行動を共にしたプレイヤーが生存
姫萩咲実 :Q:DEAD :2日と23時間の生存
北条かりん :K:2.9 :PDAを5個以上収集


人数オッズ
6人生存:8倍
5人生存;4.5倍
4人生存:3倍
3人生存:3倍
2人生存:4倍
1人生存:10倍
全滅:300倍


第二十九話 実質チュートリアル

 

――――――――――――

子供が闇を恐れるのは無理もない。大人が光を恐れる時、本当の悲劇が訪れる。

プラトン (古代ギリシャの哲学者)

――――――――――――

 

 

 

 

銃撃の音が絶え間なく響き渡る。

手にしたアサルトライフルは最初のウチは重く、引き金を引いた際の反動に精一杯だったのだが、それも少しずつ慣れ銃の癖に意識を向ける余裕すらある位だ。

 こうして、砲台や超小型小銃を搭載した小型のキャタピラ等の無人兵器を倒していくわけだ。勿論、それだけではなく壁からの火炎放射器やサブマシンガンも1つずつ丁寧に壊していかなければならない。

 神経を使う作業を繰り返した結果、そろそろ初心者マークは卒業しても良いのかもしれない。初めて着る防弾チョッキの重さだけが、どうにも慣れないけども。

 

「へっへっへ! 何体でも何十体でもかかってこいんってんだ!」

 

「油断だけはするなよ勇治、少しずつ攻勢が激しくなるって言ってたろ。相手はまだスライムなりゴブリンだ、調子に乗るな」

 

「でもさ、進矢。相手が人じゃないってだけで結構気が楽だよね?」

 

「それは全くその通りで、経験値稼ぎ頑張ろうな」

 

 二日目も終盤にさしかかり、勇治が手塚の首輪を回収した後に、郷田による銃の指導を受け、中央制御室への秘密通路を俺達は進んでいた。

 主に俺と勇治とかりんの3人がメインで射撃をし、御剣先輩がライフル銃でカバーに、桜姫先輩が銃の交換等の補助、郷田が指導兼最終カバーを担っている。

 

 危ない時は郷田に爆裂手榴弾を投げて貰い、リセットしたりはするものの、特に大きな怪我などはなく郷田以外は何度か役割を交代しつつ進んでいるというわけだ。

 無理はせず安全マージンをしっかりとり、不測の事態に備えながらゆっくりと通路を進む。銃の重量と反動で腕がジンジン痛み、明日また筋肉痛コースかな? と思えるのが唯一の欠点だろうか?

 

 ……時間制限などがあれば緊張感もマシマシだっただろうが、命は懸かっているのは分かっているものの少々リラックスしすぎてしまう。

 そんな空気を感じたのだろう、御剣先輩が呆れ混じりの声を漏らす。

 

「……思ったより敵が少ないな、これじゃあまるで……突破される事を前提とした兵器みたいだ」

 

「実際、その通りよ」

 

 疑問を呈した御剣先輩にゲームマスターである郷田が解説するように答える。こうやってゲームマスターがプレイヤーの手に落ちた時、種明かしをすら仕事の内なんだろうなと……ふと思った。

 

「殺し合い映画を見るとして、団結したプレイヤーがクライマックスで黒幕と対決する……そういう展開の為に用意された場所なのよ、ここは」

 

「私達の必死の反抗さえも、全てはショーということね」

 

 怒りを抑えた声で桜姫先輩が答える。

 緩急を付ける為に中央制御室への秘密通路の道は、最初の的は易しめに少しずつ強くなっていくという設定が取られている。予備知識なしで挑んだとして、何となく体感できる程に難易度が上がっているのが分かる。そして、都合の良いことに、こちらの射撃の腕も上がって行っている気がする。ここは、そういう修練場のような場所なのだ。

 だから、見方を変えれば結論も変わる。

 

「プラス思考に考えれば、この通路の警備装置すら全員生存の為のパワーレベリング装置のように思えます。それにショーならショーで、賭博なら賭博で結構です。このゲームを見ている皆さんに、俺の生き様を見せつけるつもりで戦ってますからね」

 

「……それもそうか、世の中理不尽なんて沢山ある。文句を言うよりは、進んで闇の中に光を灯しましょう」

 

「貴方たちのような人間ばかりなら、私の今まで参加していた『ゲーム』は全く違うものになっていたかも知れないわね……感傷だけど」

 

 多分、郷田にだけは一番言われたくない言葉だと思うぞという言葉を呑み込み、自走兵器を蜂の巣にする。勇治とかりんの二人が取り逃がした相手だ、ちらりと二人に目線を向けるとすまなさそうな目配せが帰ってきた。まぁ、次は頑張れ。

 ……思う所は多々あれど、憎悪抜きでゲームの運営側の人間と話せる機会というのはそうはない。そして、今まで接してきて察した事なのだが、恐らくは郷田にとってこのゲームは空気のようなものなのだ。このゲームが自分の価値観であり、人生にすらなっている。……ある意味で、ゲームの加害者であり被害者であるのかもしれなかった。

 

「こうしたゲームを運営し楽しむのが人間の本質なら、こうして手を取り合って団結できるのも人間の本質。どっちかだけ見てれば、人間の本質を見失いますよ」

 

 あるいは油断しすぎだったのか、この時の俺は自走兵器から目を逸らさずに……しかし、間違い無く本音の言葉を吐露した。本で読み、歴史を調べ、調査して得た知識はこのような殺人ゲームを運営する人間には薄っぺらいかもしれない。だけど、それでも16年生きて出た性善説にも性悪説にも由らない、俺の人間に対する理解だった。フラットなだけとも言う。

 しかし、帰ってきた言葉は別の人物から帰ってきた。

 

「私も、川瀬君の言葉は正しいと思う。だけど、私は信じているわ」

 

 郷田と手錠で繋がれた状態の桜姫先輩の声だった。皆で使った銃器の弾倉の交換をぎこちない手つきで行いながら、はっきりとした意思を持って彼女は言った。

 

「皆が信じさせてくれてる……というべきなのかしら? 歴史がそうであるように人間は間違いを自覚して尚、間違い続ける程愚かじゃ無い。例え歪な理由でも、利益からであっても全体として正しい方向に進み続けるって。これだと……ちょっと他人事ね。私が必ずそうさせてみせる! 将来の夢が今決まったわ! 皆! 勝つわよ!」

 

 それは、ある意味でゲーム最初に多人数で集まった時よりも強い意思の光が芽生えていた。カリスマ性の発現とでも言うべきだろうか……彼女の言葉に皆が呆れを混じりつつも、確かに力強く頷き合った。

 

「若さって良いわね……見届けさせて貰うわよ。このゲームも、このゲームが終わった後も、ね」

 

 盛り上がりながら戦う俺達を、部外者であり敵である郷田はただただ見続けていた。

 

 

 

 

 

 

「――ハァハァ、自走兵器は、強敵でしたね……」

 

 それから数十分、疲労困憊状態で疲れ切った俺は壁を背にして、ひたすら息をし続けていた。これでもベストを尽くしたと思うのだが、肩に被弾一発、右腕に一発、胸に被弾一発……全部防弾チョッキ越しなのが救いか。威力の低い口径だったから、多分大丈夫。骨が折れてるとか罅が入ってるとか、そういうのは後でお医者さんに見て欲しいけども。

 

「悪いな川瀬……危ない部分を任せっきりにしてしまって」

 

「あー、良いんですよ御剣先輩は桜姫先輩の最後の砦ですからね。死なない程度に被害担当になるのも俺の役目です」

 

「全く……進矢って痛いの好きだったりする? わざとやってる?」

 

「やってないわー! あー、タンク役ってこういうのが仕事の内なんで、はい」

 

「もう、無茶しすぎだよ」

 

「ごめんなさい……」

 

 安全と思われる場所まで退避した後に、かりんからの説教を受けながら防弾チョッキを脱いで治療を受ける。

 結局の所、前評判通り後半になってくると4人の銃撃では完全に防ぎきる事ができず、一番フル防御モードだった俺が一番危険な位置に立ち続けて戦ったということだ。いけるかと思ったからいってみたが、反省すべき場面は多いのかもしれない。もうすこし、慎重に行けば被弾ゼロだったかもしれないし。

 

「一人の尊い犠牲があったけど、次が最後の関門よ。さっき見えた扉の先にある部屋の奥に下への階段があって、『中央制御室』への扉があるわ」

 

「そうですかそうですか、自分の立場が分かってないようですね。郷田さん。手錠外してあげるから、次の部屋一番乗りとかどうですか???」

 

「……仕方無いわね。嘘は言ってないんだけど、ゲームで例えるなら次の部屋が魔王部屋よ。多分、武装が万全であっても私ソロだったら死ぬわね」

 

「げっ、普通に入ろうとしてたぜ……危ねぇ危ねぇ」

 

 桜姫先輩と交代で手錠を付けて、くっついた郷田と俺である。

 軽口をたたき合う俺と郷田にかりんから微妙な視線が来ているのを感じつつ、先程無警戒に部屋へ入ろうとしてた勇治がホッとしているのを見守る。止めて良かった。

 

「つまり、部屋に入る前に回復してゲームデータはちゃんとセーブしとけって事ね」

 

「進矢、そういうのは無いからね?」

 

「モノの喩えだから……真面目に言えば、扉を爆弾で吹っ飛ばして破壊された扉の先に炸裂手榴弾を投げ込む。部屋の中からロケットランチャーなり、手榴弾が返ってくる事を警戒して簡易的なバリケードは欲しい、そんなところかな……」

 

「オッケー! 僕――俺準備してくる! 結構武器使っちゃったしな!」

 

「あっ、長沢君! こら……いっちゃった、追いかけてくるわね」

 

「分かりました、御剣先輩は扉の方の警戒をしておいてください。向こうから奇襲してくる可能性も無いとは言えませんので」

 

「俺はまだ余裕あるからな、分かった。ゆっくり休んでいてくれ」

 

 長沢と桜姫先輩が足りなくなった武器を補充し、御剣先輩には警戒を依頼する。慌ただしく人が居なくなり、休憩の為に俺とかりん……郷田が残った。

 あれ、もしかして……成り行きとはいえメンバーミスった?

 心の焦りを知ってか知らずか、郷田はなんともない顔で話しかけてきた。

 

「今、心の底から部屋で待ち受ける魔王役をしなくてよかったと思うわ……」

 

「やだなー、人が居たら催涙ガス弾とスタングレネードに変更しますよ。それとも、唐辛子水鉄砲の方が良いですか?」

 

「――フン」

 

 ホッとしている様子の郷田に皮肉を浴びせかけ、笑いかける。と同時にフリーになった手でかりんを抱きしめ、郷田との間に俺が入る。確執はある、だが無駄に憎悪しすぎるのも目が曇ってしまう。難しいなと思うが、2日間、我慢をかりんに強いているのが申し訳無いとは思う。

 そんな俺の心情が分かっているのか分かっていないのか、人の心が分からないような冷徹な声で郷田は続けた。

 

「真面目に言うなら、ペナルティによる最後の1時間はさっきの数倍は敵がいるし、休憩時間もない。この程度で怪我をしているようじゃ、先が思いやられるわ」

 

「それは確かに耳が痛く――」

 

「……勝つよ」

 

「かりん?」

 

「進矢は絶対に勝つ。皆で絶対に生き延びる。気にくわないけど、アンタも死なせない。どんな障害があったって、絶対にこんなゲームに負けない!」

 

 庇おうとしたかりんが、いつの間にか前に出て郷田と向き合う。止めようかとも迷ったが、何かしら考えがあるのか強い意思を感じて止めた。少なくとも、そこに憎悪は感じられなかったし、かりんが強い女性である事は他ならぬ俺がよく知っているからだ。

 

「中々言うじゃない。勿論……私も貴方達が勝つ事を望むわ。そうじゃないと、生き延びられないもの。で、貴方はそれで良いの? かりんちゃん?」

 

「良くないよ。ねぇ、アンタは……このゲームで生きて帰ったらどうするの?」

 

「そうねぇ、このゲームが終わったらまた次のゲームに、勿論……組織が今回の私の失態を許してくれるなら、だけど」

 

「そこだよ! 折角、命が助かるんだよ!? どうして、こんな事を続けるのさ! このゲームが大きすぎて止められないのはアタシだって分かるよ! だけど、アンタは止められるじゃない! 折角、助かる命をこんな事に使う事……それをアタシは許せない!」

 

「……っ!?」

 

 かりんの剣幕に郷田は初めて驚愕の表情を浮かべる。まるで、その発想が無かったかのように。そして、俺自身も驚いている。”それ”が生きる根幹となっている彼女にそう説得するという発想が無かった、あるいは無理だと無意識に諦めていた。

 だけど、その真っ直ぐさこそが北条かりんらしい正義感なのかもしれない。

 彼女の言葉は少なくとも……

 

「そう、ね……考えた事もなかった。まさか、ゲームの参加者に……かりんちゃんにそんな事を言われるなんて、思ってもなかったわ」

 

 郷田の心には届いたようだ。

 かりんの手が震えている事に気付いた俺は、かりんの手を握ってやる。今のかりんに言える事は何も無かった、せめて横にいることだけが俺の使命であると感じたからだ。かりんは俺の手を握り返すと、言葉を辿々しく続ける。

 

「今でも許せないけど……さっき優希さんが言ってたように、過ちは正せるものだとそう思う。強制はできないけど、折角命が助かるのなら、人の命を弄ぶ仕事は辞めて欲しいんだ。沢山悩んだけど、それがアタシの気持ちだから……!」

 

 途中で言葉に詰まることが何度かありつつも、目に涙を浮かべて……それでも郷田から眼を逸らす事なくかりんは言い切った。……かりんの綺麗な真っ直ぐさは危うげさえ感じる、だから好きだ。心が凍りついた人間の説得なんて、俺にはできない……表面的に会話するのが精々だ。自らの正義感で、他人にぶつかる事ができるのは彼女の美徳に違いなかった。

 

「……今回のゲームで学ぶべき事が多かったのは認めるわ。でも、今は私じゃなくて、自分達が生き延びる事に集中しなさい。これが、私のゲームマスターとしての忠告よ」

 

「口を挟むつもりは無かったんですが、1つ聞きましょう。ゲームマスターで無くなった貴方は何者なのですか?」

 

「……分からないわ」

 

 野暮だと思いつつも口を挟み、郷田は言葉少なく返した後は口を閉ざした。

 かりんは自分の中の感情に整理がつかないようで、涙を堪えながら郷田を見つめ続けている。

 俺も郷田に対して思考を巡らせるが、結局の所、自分を救えるのは自分自身だ。俺の基本スタンスがそうなので、誰かの心を動かすというのが基本的に難しい。

 郷田は少し化粧で隠されていた皺を額に寄せて思案し、答える。

 

「仮の話をしましょう。例えば私が急に人間としての良心に目覚めたとして……それでも、このゲームマスターという仕事を止める事は無いわね」

 

「それは、何故なの?」

 

 女性同士のにらみ合い……かりんの剣幕に対して、郷田もまた殺意にも似た威圧感を返す。正直に言って、ここまで来たら俺に言える事は何も無いだろう。なんというか、役者不足だ。もし、どっちかが一線を越えようとするなら止めるが。

 

「分からないの? 私はこのゲームで数十回ゲームをしてきた。多くの人を死に追いやった。法で裁かれる事が無くても、他の生き方なんてないの……ゲームマスター・郷田真弓。それが私よ。今更、人としての良心に目覚めたら……そうね。このゲームでの死を選ぶわ。貴方達のような正義感の強い人達に殺されれば、ゲームも盛り上がるんじゃないかしら?」

 

「この……ふざけないで……! アタシは真剣にこんな事を止めろって言ってるのに!」

 

「私も真剣よ。私はこのゲームで生きて、このゲームで死ぬの……だから、どうしても止めさせたいなら、私を殺しなさいな」

 

「……っ!!! このっ……!」

 

「かりん、そこまでだ」

 

 手が出そうになりつつあるかりんと、挑発する郷田の間に立つ。

 結局の所、二人の意見はおそらく平行線だ。価値観だとか住む世界が違いすぎる。……郷田を殺すのが、正しい、か。法で彼女が裁かれる事は無い、ここで生かせばまた次のゲームに……俺達の生存率を考えれば、郷田には生きて貰っていた方が得。合理抜きにしても、自分に人を裁く権利なんてあるのか――色々と頭の中で理屈は過ぎるが、モヤモヤとした感覚は抜ける事はない。かりんがはっきり言ってくれた事もあるが、俺も似たような心情はあるのだ。

 

「……郷田さん。俺は貴方に言える事は限られてますが、本当にゲームマスターになるしかなかったんですか? かりんや俺の年齢の時に、人の人生を弄ぶ仕事をするのが貴方の夢だったんですか? 何がきっかけで、どういう心境でこんなゲームに関わる事になったか、このゲームから生きて返ったら一度振り返ってはくれませんか? 不躾ながら、これが俺の願いです……せめて、一緒に生きて帰る者として、ね」

 

 強い感情は向けない、努めて理性的に俺は郷田に訴えた。

 何が正しいかなんて、俺にも分からない。だけど、せめて正しくあろうとは思う。そう自然と思えるのは、かりんが後ろにいるからでもあるし……このゲームで共に過ごした仲間達の影響もある。

 

「……中々、痛いところをついてくるわね。若者って、本当に嫌いだわ」

 

 郷田は顔を俯かせ、俺から顔を背ける。もしも、手錠が無ければ逃げていたかもしれない、そんな反応。俺達にこれ以上言える事は何も無かった。後は、郷田自身の人生だと思う。そもそも、郷田の人生を詳しく聞き出すには、残されたゲームの時間はあまりにも短く余裕が無かった。

 

「おーい! 進矢お兄ちゃん! 色々武器持ってきたぜー!」

 

「おう、よくやった勇治。早速、やるか!」

 

「おう!」

 

「……なんで、こんな男共はテンション高いのやら……あら、かりんちゃんどうしたの? 大丈夫?」

 

「う、うん……大丈夫! アタシも、頑張るから!」

 

「あぁ、頑張ろうかりん。それと、ありがとな」

 

「ううん、感謝するのは私の方だから!」

 

 俺とかりんのやりとりに、勇治と桜姫先輩は疑問の表情を浮かべるが、まぁいいかと武器の準備に取りかかった。

 こうして、中央制御室の手前の部屋は爆破され、次々に投げ込まれる爆裂手榴弾により内部の兵器は粉々になった。爆発オチなんてサイテー。

 

 

 

 

 

――ピロロロ ピロロロ ピロロロ

 

『おめでとうございます! 貴方は見事にエクストラゲームをクリアし、首輪を外す為の条件を満たしました』

 

――カシャン

 

 中央制御室には、巨大なコンピューターがあり、また監視カメラの映像と思われるディスプレイが整然と並んでいた。そのコンピューターのパスワード画面に自分のPDAナンバーを打ち込んだ結果の音声が響き渡る。

 何度か見た緑の発光ダイオードと共に、俺の首元がすっきりする。

 手元には外れた首輪……うーん、現実感がない。

 

「やったー! おめでとう進矢!」

 

「やったな川瀬」

 

「良かったわね川瀬君」

 

「楽勝だったな! 進矢兄ちゃん!」

 

「こ、こんなのチュートリアルのクリア報酬だから……本番は明日だからな!?」

 

「全く進矢は素直じゃないなぁ」

 

「悪かったな」

 

 皆に祝福されても、素直に喜べない俺である。

 褒められ慣れてないというかなんというか……いっそ開き直りたいが、中々難しいね。それに、本番はここじゃないというのも本当だ。焦点を当てるべきは、最後の進入禁止になった1時間なのである。

 どうするかと思案していると、コンピューターにひっついている異物を発見する。

 

「ところで、郷田さん。このコンピューターにひっついてる爆弾はなんだ?」

 

「あ、それ? 追加機能の遠隔操作で起爆する爆弾よ。貴方達がジョーカーで念の為起爆させていたら、この中央制御室が爆破されてたってわけ。面白いでしょ?」

 

「……なんだと!? エクストラゲームでそんな事してしまっていいのか!?」

 

 冷淡に返す郷田に対して、御剣先輩が驚愕の表情を浮かべる。俺も中央制御室に入った時は無警戒で、まさかコンピューターに爆弾が仕掛けられているとは想定外も良い所だ。俺のミスで全員死亡があり得たと考えればゾッとしない話だ。

 

「『私達が』中央制御室を爆破するのは勿論駄目よ、だけど『プレイヤーが』破壊する場合はその限りじゃ無いわ」

 

「戦闘禁止エリアの件といい、オバサン達ほんっっっとうにに性格悪いな!?」

 

「ある意味筋が通っているのが、一番酷いな」

 

 勇治の文句も尤もだが、観客に対する言い訳という体裁は整っている。今回のエクストラゲームは、サブマスターが『中央制御室のコンピューターを守り切れるか?』又は『首輪を解除したプレイヤーを殺害できるか?』の二択だった。今回、結果として双方がほぼガン無視していたが、ジョーカーで未使用で場所不明の遠隔爆弾を発見したら、まぁ……押したくなるという気持ちも分かる。そして、それこそが罠で、プレイヤー自身がコンピューターを破壊して自分の生存の道を狭めましたー! というオチは、多分……ウケるだろう。 苦労して中央制御室に行って、そこにあったのはコンピューターの残骸という骨折り損である。

 

「ここがそういう悪趣味な場所なのは分かってるけど、過ぎた事は仕方無いわ。今はせめてこの爆弾を有効利用しましょ?」

 

「優希さんの言う通りだよ、それに……進矢からこれからどうするか聞いておきたいし」

 

 思考の海に入りかけた所を桜姫先輩とかりんの言葉で、、現実に引き戻される。こういう時に女性が強いというのか、目標に対して真摯というべきなのか、ともあれ……俺も本題に戻ろう。

 

「今日はもう寝るというのは置いといて、明日――最終日の話か」

 

 正直、ここまでの攻略で頭一杯一杯だったので、そこまで深く考えてなかった。

 一応、考えはあるといえばある。

 本当に上手くいくか不安なので、思考を整理する時間が欲しい……と考えていると郷田が口を挟む。

 

「先に言って置くけど、このコンピューターは首輪の解除をしてから操作を受け付けなくなったようね。少なくとも、私に割り振られたパスワードじゃ操作できないわ」

 

「大丈夫だよ、オバサンには最初から期待してないし」

 

「長沢君、貴方にだけは銃器の使い方はもう教えてあげないわ」

 

「どうしてだよ! ケチ!!!!!」

 

 ゲームマスターでも、一応生物学上女性として分類されており、年齢に関する話題はナイーブらしい。勇治が食って掛かっているが、スルーしておこう。そこをフォローする義理を俺は持ち合わせていなかった。

 

「明日の朝目覚めたら銃器を少し鳴らして、首輪のペナルティを使って安全地帯の作成……バリケードの強化。そして、最後の作戦があります」

 

「作戦!? 良いねぇ! そういうのを待ってたんだ!」

 

「流石に耳聡いな、そこは」

 

 作戦という言葉に、勇治は敏感に反応して俺に笑いかけた。

 郷田をはじめとした、他の皆も苦笑している。相変わらずだが、悪い気はしない。

 

「俺はできるだけ秘密主義は避けようと思っていたのですが、作戦はゲーム終了7時間前……ペナルティ開始6時間前くらいに発表しようと思ってます。理由は、今の話を聞かれてこのゲームの主催者に対策されたら困るからですね」

 

「えー……折角聞きたかったのになぁ」

 

「ゲームマスターとして言うなら、それが賢明ね。どういう類いの事を考えているか分からないけど、今からならどんな物資でも調達するでしょうけど、6時間となれば調達できる物資は限られる……まぁ、今この建物にある兵器でなんとかするしかないでしょうね」

 

 自分で提案する事は殆ど無いが、助言としては的確な郷田である。このゲームの主催者連中の裏事情を知らないので、複雑だが正直ありがたい。……それが、ゲームを盛り上げるために必要な行為だったとしても、だ。

 ……俺も観客の方々にサービスした方が良いのかなぁ、あんまり媚びたくはないけどなぁ。

 

「1つだけ言えるのは、昨日【チートでズルして全員生還は無理】だって言ったけど、申し訳無いがあれは嘘だった……という事ですね。大事なのは観客の納得とウケを両立させれば良い。昨日はドラマチックと表現しましたね。それを達成する妙案があります。だから、ここで川瀬進矢は宣言します! 絶対に6人全員で生き残ってみせる! とね」

 

 諸刃の剣だが、ハードルを上げる!

 こうすることで、観客の注目度を上げ、主催者に俺の秘策を妨害されにくくするのである。それにどれだけ効果があるか分からないが……やった方がマシだと判断した。やる気を出した主催者が警備システムを強化してくるとか知らない。

 

「まぁ、俺の秘策は完全に防げない可能性もありますので、基本方針としての警備システムの迎撃準備は万全にお願いします。あ、と……念の為、勇治も他に良いアイディアがないか考えて置いてくれ。こういうのはアイディアを出し合っていくべきだろうしな」

 

「そいつは当然だな、分かった! 進矢兄ちゃんに負けないアイディアを考えれば良いんだな!?」

 

「頼んだ。勿論、他の皆も何か思いついたら相談してくれ。そして……今日は、そろそろ眠く、なってきたな……」

 

 勇治のにんまりとした勝ち気な笑顔を見届けつつ、欠伸を耐える。

 さてさて、上手く行くだろうか……正直、負けても悔いはない程度に頭は使っていると思うが、大切な人の命が懸かっていると話は別なのである。

 答え合わせの配点命で、不敵に笑う名探偵ってマジで尊敬する……俺には無理だ。好きな人の前では、勿論虚勢を張らせて貰うが。

 

 自分の中で浮かんだ秘策を脳内で検証しつつ、俺達はゲームの二日目を終えた。




スミス「やぁみんな! 申し訳無いけど賭けのベッドの期限は次話投稿までとするよ! そこで期間限定で新しい項目を追加してみたから予想してみてね!」


1.ハンサムな川瀬進矢の秘策により見事に全員生還する 2.5倍
2.優秀な仲間が助けてくれる。2倍 (個人名まで当てた場合15倍、但し郷田は除外)
3.秘策無効。素直に警備システム1時間耐久レースしろ 1.1倍
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