秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind- 作:流火
この話は夢オチです!
本編に関係ありそうで、割と関係ありません!
それでも許せる方はどうぞ……!
ぶっちゃけ、ただの考察回です。割と雑です。
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悪とは常に凡庸で、常に人間的なものだ。それは我々の寝床や食卓に潜んでいる。
W・H・オーデン (米国に帰化した20世紀最大の詩人の1人)
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「そういえば、昨日桜姫先輩が世界史に絡めた話をしていて思ったんですが、現代社会や日本史と絡めて考えればこのゲームを運営している組織の輪郭が見てくるかもしれませんね」
「急にどうした? 進矢お兄ちゃん」
「なんか思いついたんで、話したくなった」
「お、おう……」
食事が粗方終わって戦闘禁止エリアにて団欒中、ふと俺にある閃きがあった。
このゲームの攻略には関係無いが、このゲームそのものの正体に対するある発想だ。
クリアには関係なくても、ゲームの背景を洗っておきたい。
一応、俺の普段のゲームプレイに対するスタンスなので、このゲームにも適応された訳だ。
俺の言葉に呼応して、勇治……そしてかりんが反応する。
「また面白そうな顔してる、何思いついたの?」
「うーん、面白いというかちょっと難しい話なんだけどな。このゲームは数兆~数十兆円……あるいはそれ以上の金が動いていて、そこに相応の働く従業員がいて顧客がいる。そして、金の流れがあるって事は、表の世界の経済や政治と切っても切り離せないんじゃないかってこと」
「むむむ……確かに、アタシには難しい話かも」
隣のかりんが頭を悩ませるのを見て、新しい一面が見れて可愛いとおもう。
ごめん、できるだけ分かりやすく説明したかったがこれ以上は無理だった。口に出したら、それはそれで不機嫌になりそうなので内心で謝っておく。
中学生にはちょっと早い話だったかも知れない、高校生でも多分早いけど。
「かりんちゃんが困ってるわよ。私達は最近受験勉強で、日本史や現代社会の勉強もしてるけど、ゲームの影も形も無かったと思うけど……」
「……俺も色々勉強させられたけど、確かに無かったな」
「総一はもっと自発的に勉強して欲しいわ」
「二人のイチャイチャはおいといて、考えてたのはゲームの存在からの逆算ですよ。帰納法って言えば格好良いですかね。多くの人が関わっているということは、このゲームには発祥があり歴史がある。……強制参加者としては反吐がでますが、裏舞台で苦労してる人もいる。それだけ大きければ、絶対隠しきれません」
イチャイチャしてる2人を尻目に、考えを進める。あんまり詳しくない、詳しくないのだが……まぁにわか知識で良いか。俺の学校の歴史の授業の先生みたいに、できれば皆に楽しく聞いて欲しいので分かりやすい言葉を意識しよう。
どれだけ非日常的な箱物であったとしても、実在する以上は何か大きな流れの中で作られた筈だ。
「この建物1つを例にしましょう。土地に関しては場所が分からないから省略するとして、設備の多さからこのビルはゲームの為だけに作られた物というのは分かりますよね? で、ビルを作るには土台の基礎工事、鉄筋やコンクリートの材料の運搬と組み立て、同じく内装や外装、水と配線、監視カメラ……をこれだけの広さに施す必要がある訳です。あぁ、隠し通路とか落とし穴、罠やペナルティを隠す場所も必要ですね。工期もかかるし、必要人員も多い……大金はあるとしても課題は多そうだと思いませんか?」
「あー、進矢お兄ちゃんの言いたいことなんとなく分かる。僕――俺も、ゲームは好きだけど、ゲームを作るソフトを買った時はすぐに投げたもんね」
「それは俺も投げる。で、どうやってそれを満たしたかを考えたら、そういうのが全部安くて人が余っていた時期があったなと思いまして」
「あ、川瀬……言いたい事がなんとなく分かったぞ、俺達が生まれた頃の話だが――バブル崩壊か」
「えぇ、御剣先輩。その通りです」
要素を並べていくと、御剣先輩が自分と同じ答えに辿り着く。
この推理が正しければこの建物は1990年代前半に施工開始され、築十数年ということになる。その割にはボロい気がするが、そこは建物管理が殆どされてないことと戦闘でスクラップビルドされているから、劣化具合はそんなものじゃないかなって気がする。
「えーっと、ごめんなさい。聞いた事はあるんだけど、バブル崩壊って?」
「バブル崩壊っていうのは、私達が生まれる前に起こった経済的な問題ね。私も高校までで習った範囲しか知らないんだけど、お金の取引で株価や土地の値段が上がり続けて、持っているだけで大儲けできる時代があったの。だけど、その値上がりは熱に浮かされた人の持っている幻想で、中身がないのに大きく膨張しているからバブルと言われる。そして政府の引き締めの結果、泡が弾けるように株価や土地の値段が下がったからバブル崩壊って言うのよ……うーん、ちょっと分かりにくいかしら」
「分かるような、分からないような……」
「すまん、ぶっちゃけ中学公民だから、中学3年生の範囲だ。物の価値ってのは一定じゃない。一般論として、欲しがる人が多ければ高くなるし、少なければ低くなる。で、時代の勢いっていうのがあって、土地とか株を欲しがる人が増え過ぎた……だが熱ってのは何時か冷めるって話だ……ん? 待てよ」
「どうした? 進矢お兄ちゃん」
中学生の二人になんとかバブル崩壊を説明しようとするが、流石に教科書のない状態で口頭で伝えるのは難しい。教科書? 奴は、武器や食料品と引き換えに1階に置きっぱなしだよ。
頭を捻らせた結果、別の方向のアイディアが湧き出してきた。
つまり、歴史っていうのは一面だけ見ても分からず、全体の流れを理解する必要がある。
バブル崩壊があるって事は、その前にバブルがあるって事で――
「ちょっとずつこのゲームの歴史の流れが分かってきたぞ。このゲームの始まりは分からないが、このデスゲームが本格的に活性化したのがバブルの時で、バブル崩壊のタイミングを見計らってこの建物を作った……そういう流れなんじゃないかな?」
「ちょっと話が飛んだな、どうしてそういう結論になるんだよ。進矢お兄ちゃん」
「根拠は防犯カメラのカラー撮影が1980年代バブル期真っ最中だったということ、あとこの建物のコンセプトと思われるダンジョンRPGも発祥は大体1980年代初頭だからな。元々は前身のローマの剣闘士のような殺人ゲームはあったのかもしれないが、防犯カメラで遠隔で見れるというのは安全上大事で、カラーである方が臨場感がある。あと、バブルってのは成金が多いからな……そういう人間に支えられて、このゲームは大きくなったんじゃないかと想像するよ」
「……言われてみればそんな気はしてきたけど、あんまり知りたくなかった殺人ゲームの歴史ね……」
「現状こじつけですが、言葉にするとそれっぽいですね」
俺達にとっては生まれる前にバブルがあって、生まれた直後にバブル崩壊なんだから全然現実感がないが、親世代は経験しているから完全に縁が遠いという訳でも無い。我が家は公務員だから、バブル関係ノータッチだろうが。
だが、バブル崩壊期に建設されたって事はそこそこ自信ある。人員や材料の余剰がないとこんな巨大建造物は建てれないし、雇用の為に政府も黙認したのかもしれない。……主導かもしれないが、それは置いておく。
「でも、そう考えてみると、結構このゲームやってる連中ってしみったれてるよな! スーパーの安売り日とか待ってるみたいだ」
「歴史上、夢も希望もなく切実だな! って事はよくある。有名所なら黒船来航かな、日本に衝撃を与えたソレは、アメリカ海軍視点に立つと予算の問題で苦労していた……とか、歴史の授業で聞いた」
「……良いなぁ、僕――俺のところの歴史のセンセーなんて、子守歌だぜ?」
「先生による当り外れってあるよな」
こうして、何故かうちの先生は大当たりだの、大外れだのという話に移っていく。
教える側も人間だから、しょうがない面はあると思うが、教師も大変だな。教師といえば、今回のゲームには教師はいない……最近のデスゲームものだとよくいるイメージだったのだが、まぁそれは良いか。
……ハッ! あの先生は良いとか、あの先生は悪いとか、そんな会話をするなんて、まるで陽キャみたいじゃないか……!
いや、今のは滅茶苦茶偏見ではあるけど。
「話を戻しますが、今まで話していてペナルティや中央制御室までのルートに出てきた自動攻撃機械の出所は分かってきましたね」
「1つや2つなら、まだ戦場で拾ってきたって希望はあるけど、あそこまで数があれば確定だよな……」
気を取り直して、このゲームを運営している連中の考察に戻る。
以前、俺の弱音を聞いてくれた御剣先輩は何を話したいか察したようで、言葉を濁した。
俺も正直、この話題に踏み込むには勇気が要る。それでも、ゲームの主催者の正体を明かしたかった。何故なら、幽霊とは戦えないからだ。真実を見極める、それは俺の仕事だ。
「進矢お兄ちゃん。ぶっちゃけ、アメリカ以外あるの? 他のどんな国でも、あんなに作れないだろ?」
「勇治……俺はお前が羨ましい! じゃなくて、アメリカだろうな」
「紛争地帯で似たような物をテレビで使っているのは私も見た事あるわ……まさか、自分で戦う事になるとは夢にも思わなかった」
「アタシはあんまりテレビは見ないけど、凄くにハイテクだもんね……映画や小説の世界に入り込んだような気分だったけど、進矢の話を聞いてると現実なんだなぁって思ってきたなぁ」
裏にアメリカ軍が居るという結論を出すのに凄く勇気が居たという俺に対し、勇治はあっけらかんとその結論を口にした。重要な事が分かっているのかいないのか、あるいは俺が気にしすぎなだけなのか。
女性陣の方は逆に自体を重く受け止めているようで、やや沈痛な顔を覗かせている。
とはいえ、ここまでは御剣先輩に話した通りだ。勇気を出してさらに一歩踏み込んだ推測をしてみよう。
「より現実感が出るというか、さもしい話をすると、2000年代初頭から始まったテロとの戦いって儲からないらしいです」
「そりゃ戦争なんて儲からないだろ、人や物が死んで傷ついていくだけだ」
「あー、そういう話じゃないですよ御剣先輩。武器を作る側、軍産複合体の話です。冷戦時のような軍拡競争からの大量生産とは無縁で、ソフト面ばかりの向上ですし技術ばかりで数は要求されない。……そこで考えたんですが、このゲームを主催している連中はそこにつけ込んだんじゃないでしょうか? ゲームに協力すれば金が手に入る、無人兵器の実験場にもなる……良い事ずくめです。人権にさえ目を瞑ればね」
「そこは一番目を瞑っちゃいけないところだろ……」
「でも、こうやって繋げていけるってすげーな! 進矢お兄ちゃん! 帰ったら色々勉強したくなってきた!」
「ふっ、面白いだろ? 歴史ってのは究極的には現代に繋がってるからな……それが分かるまでの勉強が辛いのがたまに傷だが」
勇治とだけ盛り上がりつつ、考察を進めていく。
人体を実験に使えば科学技術はより進歩するとかなんとか……長期的に見れば悪影響の方が大きいらしいが、気付かれなければ良いんだよ! という精神だろうか?
そう考えると、裏社会では人体実験とかも普通に行われてそうで怖いんだが、あえて言及しないでおこう……少なくともそういう証拠が出てきたわけでもないし。
「勉強っていうのは確かにそういう一面があって素晴らしいと思うけど、この応用方法は私としては何か違う気がするわね……」
「よく分からないけど、進矢の頭が良いってことは分かった!」
呆れた様子の桜姫先輩と、思考停止した様子のかりん。
女性陣に引かれてて少し哀しいです。
……まぁ、俺も最初に思いついた時は思考停止したから、うん。
大体、今でている情報から思いつくのはこんなところか……割と当てずっぽうが多くて、推理と言えない代物だったかもしれないが、一体どこまで正解なのか――
――パチ、パチ、パチ、パチ
「郷田!? 何故ここに!? お前はベッドに拘束していた筈じゃ!?」
「ふふふ、面白い話が聞こえてきてね。混ぜて貰おうかと思って」
いつの間にか郷田が部屋の中に現れ、拍手の音で気付く。
冷徹な笑みを浮かべた郷田に驚く俺達だったが、更なる展開に目を見開いた
――ピロリン、ピロリン、ピロリン
『ざ~んねんでした! 君達は知りすぎた! 処分させてもらうよ!』
「なっ、どういうことだよ!?」
「言葉通りの意味よ、進矢君……組織の事は深追いするなって、私は忠告した筈よね?」
御剣先輩ご桜姫先輩の首輪から赤いLEDの発光がなされる。
同時にPDAからスミスの嘲笑の声が聞こえ、周囲の壁が開き自動攻撃の機関銃が4機銃口を覗かせてくる。
「あの世でも仲良くね、皆」
「くっ、か……かりん!」
「進矢!」
逃げ切れない、そう判断した俺はせめてかりんを庇う為に無意味だと知りつつ抱き寄せようとする。
そして、かりんも同じ判断だったのかこちらに飛びついてきた。
――――ダダダダダダダダダダダダダダ!!!
そんな俺達に無慈悲な音が聞こえてくる――。
「ひっでぇ……夢見た」
死の瞬間、思わず飛び起きる。
久しぶりの悪夢だが、なんだかんだ冷や汗でびっしょりである。
まだゲーム中である事を自覚し、同時に生きてて良かったと心から思う。
夢の中とはいえ……あの死に方は正直無いな、御剣先輩にあんな弱音を吐いたのは本音が8割で残り2割が主催者に抵抗の意思がないことを示し、俺含めた皆に危害がむかないようにする為のものだし。
……計算込みで情けないという気持ちもあるが。
あるいは、こんな夢を見たのは未練があるのかもしれない。
真実の追求を捨てて皆との幸せを選んだ自分だが、完全に真実捨てきれない……という所か。
うーん、夢の中で俺が話した妄言……大体合ってそうで怖いなぁ。
しかし……やれやれ、我ながら度し難い。
皆の命には代えられないというのに。
さて、寝直すか。
本作の舞台設定はシークレットゲームコンシューマー版発売年の夏(2008年)と設定しています。2008年ではまだ出てきてない概念をうっかり、進矢が話したり思考で出てきたりするかもしれませんが、『この世界ではそうなってるんだよ!』と思ってください。完璧な時代考証は無理です……。
でも時代考証は好きです、世界観が広がるので。
しかし、リベリオンズが丁度10年前の1998年と考えれば、中々プレイヤー視点大変ですね。まだ、某殺し合い小説すら出てないので、デスゲームものっていう概念がほぼないのでは?
まぁシークレットゲームの世界だと、デスゲームものはリアルからの逆輸入って事になるんでしょうが。闇が深い。