秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind- 作:流火
御剣総一 :A:CLOSED:Qの殺害
葉月克己 :2:DEAD:ジョーカーの破壊
川瀬進矢 :3:CLOSED:3人の殺害
長沢勇治 :4:CLOSED:首輪を3つ収集する
郷田真弓 :5:CLOSED:24ヶ所のチェックポイントの通過
高山浩太 :6:DEAD:ジョーカーの偽装機能を5回以上使用
漆山権造 :7:DEAD:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
矢幡麗佳 :8:DEAD:PDAを5個破壊する
桜姫優希 :9:CLOSED:自分以外の生存者数が1名以下
手塚義光 :10:DEAD:2日と23時以前に首輪が5個作動している。
綺堂渚 :J:DEAD:24時間行動を共にしたプレイヤーが生存
姫萩咲実 :Q:DEAD :2日と23時間の生存
北条かりん :K:CLOSED:PDAを5個以上収集
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海は危険だ。凄まじい嵐も吹き荒れる。だが、そうした困難があるからといって船出を思いとどまったことはない。
フェルディナンド・マゼラン (ポルトガルの航海者、探検家)
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「デスゲームというのは生き残る為には何でもしないといけないし、手段を選んでられないわけだ。そして、今俺は最高に悪い事をしている気がする!」
「その何でもの中に、小麦粉と水を床にばらまく事が入ってるとは予想してなかったし、確かに悪い事だけどこれじゃない感が凄いよ! でも、アリだね進矢お兄ちゃん!」
戦闘禁止エリアの中を見ると出るわ出るわ、25kg入りの業務用小麦粉の袋が幾つも……確かにこんなものがあったら疑問に思うかスルーする。『粉塵爆発用かっ!?』とネタで言ったら、『いや、粉塵爆発は意図的に起こせないよ』と冷静な突っ込みを勇治から受けてしまった……哀しいな。まぁ、簡単に起きたら小麦粉が超危険物質になってしまうけども。
急ぎで6階の別の戦闘禁止エリアと、首輪が解除された組で5階の戦闘禁止エリアの一室から小麦粉の袋を確保する。とはいえ、許された時間は6時間しかなく……根こそぎとはいかない。
十分な量とは思うが、正直幾つあっても足りないという本音はあるし、地面を伝わずに殺しに来る手段がないとも限らない。
それでも敢えて言おう。
「ドロドロで足を取られる小麦粉の山に沈むが良い……!」
爆破しても一向に構わない、何故なら障害物を破壊するのに爆破は便利だが、足場を取られているような状況で爆破は微妙だからだ。
キャタピラ型なら、それでも抜けてくるかもしれないがスピードは遅いので落ち着いてライフル等大口径の弾で対処したいところだ。
タワーディフェンスとしての体裁は整ってきたな……。
実際問題どれくらいの自動攻撃機械が襲ってくるのだろうか。
中央制御室に行った時はこっちが攻める側だったから、守る側なら同数でも楽勝。
渚さんに一斉に襲ってきたレベルの数なら1時間対処可能だろうが、向こうにも準備する時間というものが会ったためそれだけではないだろう。
可能な限り勝機は積み上げた。
文字通り人事は尽くしたと言える。
後は天命を待つだけ……なのだが、不安は尽きない。
安全に絶対は無いのだ、当たり前の話だが。
という事で、不安を紛らわす為に某エナジードリンクを2缶目キメておいた。
普段は過剰摂取なんて絶対しないからね、良い子は真似しないでね。
「いざ、時間が近づいてくると結構緊張してくるわね……」
「そうだな……でも大丈夫だよ、ここまで頑張ったんだからな」
まだやりたい部分は数多いが、既に進入禁止エリアになるまでの時間はほぼ残されていない。
時間も残り少ないので、最終防衛ラインの奥の部屋に全員集合している。
首輪がついている桜姫先輩と御剣先輩は流石に不安なのか、手を繋いで慰め合っている。
無理な話とはいえ、完全に不安を払拭させる事ができなくてすまないな……という気持ちになる。
とはいえ、決めたのは死ぬ覚悟ではなくて最後まで生き抜く覚悟だ。
だから心を鬼にして頑張らせて貰おうじゃないか。
「申し訳ないですが、最後に作戦会議です。警備システムが襲いかかってくるのは3方向まで絞りました。その内、固定式の警備システムを排除した進入路が一箇所だけなので、桜姫先輩と御剣先輩と郷田さんにお願いします。もう1つが、勇治とかりん。最後の1つは俺が担当する。全体指揮は桜姫先輩で、PDAはJOKERと混線する事が判明しているので、1時間はバッテリーも持つので常時通話可能状態にしておきます」
「やっぱり、進矢の負担大きいんじゃないがな……? 大丈夫なの?」
「そうは言うがなかりん。これが多分ベストな配分なんだ……あとこういうのは、発案者が危険を受け持たないと誰もついてこないって大原則がある」
「今更それを気にする人が居るとは思わないけど……首輪問題がなかったら、二人一組で守れるのにね」
「まぁ、なんとかしますよ。色々と考えはありますしね……既に仕込みもありますし」
「みんなビビりすぎなんだよ! ここまで準備したんだから楽勝だって!」
ここでつきまとってくるのは、やはり首輪問題だった。
首輪をしている人間はどうしても、行動可能範囲が狭くなってしまう。設置型の警備システムの破壊できた箇所は少ないからだ。
ちなみに、郷田に渚さんがやったような、「強引な警備システムの回避・破壊できる?」って聞いたら、「若い子と一緒にしないで」という回答を頂いた。まぁ、可能だったとしてもあんなリスクのある行動は流石にお願いできないけども。
「俺は長沢に賛成かな、不安は勿論あると思う。だけど、ここまで一緒に頑張ってきた仲間を信じる事にする」
「もう……総一は楽観的過ぎよ」
「良いんじゃないですか? 気にしすぎても仕方無い時だってありますよ。一人だと、ここまで来れなかった訳ですし、俺も賛成です」
「アタシも、此処まできたら皆で生き残るしかないと思うよ……でも、進矢! 危なくなったら、ちゃんと言ってよね! 助けに行くから!」
「……ハハハッ、そりゃ勿論。最終防衛ラインまでくれば、他が守り切れても俺から突破されたら洒落にならない」
「そういう意味じゃなくて、進矢が心配だって言ってるの!」
「分かってるよ、大丈夫大丈夫」
不安も大きいが、なんとか皆で慰め合う。
かりんの力強い声を聞いて、ここまで頑張ってきて良かったと思う。
せめて1時間一緒に居てやれればとも思うが……人物配分的に仕方無い。
かりんを任せようと勇治の方を見ると、勇治は悪戯っぽく俺に笑いかけた。
「なんなら、俺が一人でもいいけど?」
「勘弁してくれ、かりん……勇治の事を頼む」
「危なっかしいのは二人共だからね……分かったけど、進矢も絶対に無茶しちゃ駄目だよ?」
「まぁそうだな、このゲームが終わったら彼女を不安にさせない強い男になれるように努力する」
「そうだけど、そうじゃなくて……」
流石に無茶をしないという約束はできないので、若干誤魔化す形になってしまった。
それが分かっているのかいないのか、かりんはあからさまに不機嫌そうな顔になってしまう。
申し訳ないが、それはそれで可愛い。
何て言えば良いか考えていると、しょうがないなと言いたげな表情で勇治が言った。
「まぁ、話す事は話したし? 邪魔者は退散するか、僕は先に準備しとくからかりんは後で来て良いぜ」
「え?」
「それもそうね、総一……行くわよ」
「あ、ああ」
「この状況が分かってるのか分からないのか……全く」
そして、勇治の言葉を発端にどんどんと人が消えていく。
数十秒もしない内に部屋には俺とかりんだけが残された。
それじゃ俺も……と逃げ出したいと一瞬思ったが、万が一これが今生の別れということもあり得る。
勿論、死ぬ気はないのだが、心持ちと現実は異なるからだ。
ここで二人っきりにしてくるとか、やっぱり皆の心は邪だな……という恨み言は吐きたくなるが。
かりんの方もこの急展開に困惑しているようで、何を話せば良いか分からないようだ。
『弱音を吐いて欲しい、愚痴を言って欲しい、恨み言を言って欲しい……我儘を言って欲しい』……か。
一昨日、他ならぬかりんが涙ながらに俺に訴えていた事を思い出す。
そして、俺は知っている……かりんの小さな身体に秘める心強さと正義感を。
格好付けて元気づけるのが正しいのかもしれないけど……俺って本当に不甲斐ないかもしれないな。
「本当の事を言えばだな……俺は怖いよ。俺が死んで、かりんを哀しませるのも怖いし……かりんが死んだら、どう生きていけば良いか分からなくなると思う」
「進矢……」
悲痛な顔をしたかりんが、俺の手を握ってくるのでそれを握り返す。
結局の所、かりん相手に強がって見せたところで、どうせ彼女は俺の本心を見抜いてくる。
だから、本当に申し訳な――というより、情けないが……甘えさせて貰う事とする。
時間は少ないから、手短にという事になるが。
「アタシだって、そうだよ……進矢が居なくなったら、どうすれば良いか分からないもん……絶対に居なくならないで……」
「分かってる、分かってるよかりん」
だが、かりんからの反応もまた恐怖と怯えだった。
考えてみれば当たり前だ。かりんはまだ中学三年生で、今まで気丈に振る舞ってきてもただの少女に過ぎないのだ。
そして、俺は彼女の前で何度も死にかけてる……それがトラウマになってても不思議ではない。
それでも、彼女と別れなくてはならなくて――せめて前を向いて欲しかった。
あと別れる時はかりんの笑顔が見たかった。
「だからかりん、取引をしよう」
「……取引って?」
「俺の勇気をかりんに渡す、だからかりんの勇気を俺にくれ」
「勇気って……うん、分かった」
昨日似たようなシチュエーションがあったからか、それだけで理解し合う。
約束できる事は何も無く、ただ彼女に対する大切だという想いを乗せて、かりんにゆっくり近づいて行く。
そして、撫でるように唇を合わせる。
かりんは緊張からか目を閉じているが、俺を受け入れ為すがままだ。
柔らかくて短い髪をゆっくりと撫で、その身体を抱きしめた。
そうすることで、かりんの温もりの大切さと小さい身体で如何に大きな物を背負ってきたかが分かる。
だから……守りたい、と自然とそう思う。
長い間そうしていたような気もするし思ったより短い期間だったかもしれない。
名残惜しいがかりんの身体を離した。
今のかりんの恥ずかしげな表情を一生忘れないように刻み込む。
「……約束する。かりんが嫌って言うまで、俺はかりんの傍にいる。ずっと一緒にいるから」
「うん……アタシも約束する。何があっても、ずっと進矢の隣にいる、進矢を支える」
お互いに覚悟を決めたのか、自然と言葉が出てくる。
死んだとしても、生きていたとしても、どちらでも通じる約束をする。
結局のところ、こんな事しか言えないのが情けなかった。
「かりん、そっちは任せるから」
「うん、進矢こそ……アタシが居なくても泣かないでね」
「ブッ、なんだそれ」
割と洒落にならない事を、かりんを赤らめた顔で笑いかけて言った。
それでも、元気が戻ってくれたようで良かった。
俺もかりんから貰った勇気があって、1時間戦えそうだ。
哀しい事に、もう日常も含めてかりんが居ないと駄目になってしまったようだ。
……これ以上は未練だな。
「じゃあ俺は行くけど、かりん……好きだよ」
「……ッ。もう、アタシも……好き、だから……」
まだ、ちょっと動揺を隠せないかりんは可愛かった。
これ以上不安を抱えても仕方無いし、かりんだって強い女性だ。
だからもう大丈夫な筈だ。
そう信じて振り返って進もうとしたところで、かりんが口を開いた。
「進矢……返ったら、またしようね!」
……完全に調子戻ったようだな!?
かりんの赤みが差した満面の笑みを見てそう思う。
おい、全く……安堵したような呆れたような。
勿論、そういうところも好きだから末期って言えるんだけども。
「勉強頑張ったらな」
「進矢のケチ~!」
かりんの不満そうな声を聞きながら、決戦の場所に移った。
……やれやれ、結局締まらなかったな。
それで丁度良いのかもしれないが。
『貴方のいる場所は進入禁止エリアです。退去しない限り15秒後にペナルティが執行されます』
そしてついに運命の時刻が始まる。
今手元にあるのは『Q』と『2』のPDAだ。
何故、『2』を持っているかは後に回すとして、『Q』のPDAの通話機能をON状態にしている為、向こうの首輪の警告音が聞こえているという訳である。
……やれやれ、結局最後まで姫萩先輩の力には頼らないといけないわけだ。
頼むぞ全く。
15カウント……ペナルティ執行開始か。
「こちら川瀬、異常無し」
『こちら桜姫、異常無いわ』
『こちら長沢、異常無し』
最初の確認は、固定型の警備装置が発動するかどうかと自分達の立っている場所周辺に移動式の警備装置が出てくる入口がないかどうかだ。安全地帯は作っているし、今の俺に首輪はないが固定型の警備装置が襲ってこないとも限らないのが1つ。移動式の警備装置が出てくる隠し入口があっても問題ないように、コンクリート壁下部を念入りに機関砲で抉っておいたが、完全に安心しきれなかったのが1つ。
だが、直接バリケードが横から破壊されるという事態にはならなかった第一関門はまず突破だ。
本命と戦えずして終わりとなると流石に哀しいからな。
さて、次だ……俺の受け持つ通路の第一防衛ラインの先には曲がり角がある。その角に、風呂場にあったマジックミラーを設置しているので、曲がり角の先もよく見える。ここを俺がワンマンで担当できているのは、敵が来る方向が一方向だけだからというのも勿論ある。勇治・かりんはT字路担当、桜姫先輩・御剣先輩・郷田は十字路担当と……人数による優劣はそこまでないと思う。
集音器を耳につけているが、音が聞こえてきたのでそろそろはずそう……まずは小手調べ、最初に見た漆山権造を殺したあの追跡ボールが十数は見えてくる。中央制御室に行った時と同じか、最初はスライムで最後に魔王という流れ……やっぱりチュートリアルだったな。
「追跡ボール確認、挨拶代わりだ!」
携帯式のグレネードランチャーを発射し、L字路の角の向こう側に榴弾を飛ばす。
小麦粉の山兼沼はL字路のこちら側にあるのだが、わざわざそこまで来させてやる道理は無い。
絶対の防御ではないのだから、できるだけ時間を稼がせて貰う。
念の為伏せて、爆発音を聞き届ける。
『こっちも挨拶代わりだ!』
『絶対違う。こっちも交戦に入るわ』
そして次々に通話機能越しに連絡がはいる。
後方から爆発音や銃撃音が聞こえてきた。
とはいえ、気にしてもいられないので、状況確認……マジックミラーが割れてて見えない……。
なので、次の手を打たせて貰うか。
「自動攻撃機械君発進……さぁ、良い子だから頑張ってくれよ?」
俺は一人ぼっちの防衛戦だが、小麦粉の山の向こう側にはPDAの拡張機能で操作可能な自動攻撃機械が居た。勿論、この戦いにおいて自動攻撃機械の出番は殆ど無い……何故なら火力が低すぎるし命中精度も悪いからだ。
遠隔操作可能な起爆装置はガムテープでくっつけているので自爆はできるがそれはおいておく。
本戦いにおける自動攻撃機械の一番の出番はこれからだった。
(よし、十全に見えるな……敵は全滅するも、再度追跡ボールの襲来……別の射撃型も混じってきてるな)
ちょっとずつ難易度が上がってきている事を確認しながら、PDAを通じて自動攻撃機械君の視界を確認する。要は観測手の役割だ。人が見えないところは機械に視界を確保してもらい、俺自身は適切なタイミングで攻撃する。最初の数分はこれで稼ぐ。……そして、限界を迎えたところで自動攻撃機械君には自爆してもらう……すまんな。
「勇治、弾は無駄にせず……ガンガン撃て!」
『矛盾したオーダーだな!? 分かってるって!』
『敵の攻勢も本格的になってきたわね、暫く通信できないかも!』
どこも厳しいようだ。
俺も厳しいとは思う。
だけど、俺達はやはり絶対に死ぬわけにはいかないし、その為に戦い抜いてみせる!
10分経過……グレネードランチャーと自動攻撃機械の足止めでは止められない量の警備装置が襲いかかってくる。
自動攻撃機械君は立派に自爆した。
20分経過……設置型の重機関銃で、小麦粉沼に足止めされている警備システムを破壊する作業だけなら良かったのだが、徐々に空中から爆弾なりを搭載したラジコンヘリが襲来し撃ち落とす作業が追加された。
30分経過……空中の敵が飽和してきて、こちらも重機関銃が弾切れ。
サブマシンガンで応戦するも、小麦粉沼が突破されはじめる。第一防衛ラインを敵の警備システムごと爆破し、第二防衛ラインまで下がる。
40分経過……通路の半分は埋め尽くすであろう、小型戦車が現れる。
マジか、中ボス戦かよぉ!?
と突っ込みながらライフル弾や手榴弾を撃ち込むも全然効かない、そして第二防衛ラインに機関砲はない。
軽機関銃しかない、頼みの綱の小麦粉山も軽々と乗り越えてくる……チートだ。
やむを得ず、郷田お手製のダイナマイトを使用して、小型戦車の破壊に至る。
だが、第二防衛ラインもダイナマイトで半壊状態なので実質相打ちである。
50分経過……このペースならギリギリなんとかと思ったが……
『こちら、川瀬……第三防衛ラインまで交代!……くっ、なんだこれは!? 煙幕か?』
『ちがうわ! 催涙ガスよ! 本気で殺す気みたいね!』
機関砲で警備システムを少しずつ抉っている最中に、通路の向こう側からゆっくりと視界が遮られているのを目撃して叫んだ俺は、郷田からの余裕の無さそうな声を聞く。
参ったな、ガスマスクはあるといえばあるが、視界を遮られている状態では警備システムの攻撃は止められない。
考えている間にも真綿で首を絞めるかのような速度でガスがゆっくりと近づいてくる。
『皆、最終プランよ! 川瀬君、長沢君、北条さんは持ち場を放棄して、こっちに来て!』
『『『了解!』』』
そして桜姫先輩の一声で、思考を切り替え持ち場を離れる。
最終局面に入ろうとしていた。
……さて、最終プランの説明をしよう。
といっても難しい話でもない、最終防衛線を守り切れなくなるというのは俺も想定の範囲内だった。
だから、逃げ場が必要というだけの話だ。
そして、その逃げ場というのが同じ6階では駄目だったというだけの話……このゲームでは既に何度も行った事ではあるが、つまり床への開閉ドアを使用して5階に降りてしまえば良い。今回は毒ガスだったが、例えば炎上した場合は酸欠や一酸化炭素中毒を考慮して大きく場を離れて仕切り直しする必要があるからだ。
そして、その床への開閉ドアが丁度、御剣先輩・桜姫先輩・郷田が防衛しているラインの場所にあるのだ。
集まったら、お互いにボロボロで硝煙の匂いを漂わせていたのは苦笑するしかないが、それでも軽傷程度で良かった。
挨拶している余裕もなく、簡単に5階の安全確認を済ませて、布団をまず5階に落としてから俺とかりんで飛び降りた。
「川瀬、異常なし」
「北条、異常ないよ」
背中合わせになり、かりんの体温を背中で感じつつ銃を構えるが5階はまだ何も無い。
これから襲いかかってくるんだろうが、あと8分ほど……なんとか生き延び無ければならない。
『こっちは3方から焼夷弾が放たれたみたいね……もうちょっと粘るから準備しておいて、先に長沢君に武器を落としてもらうから』
「了解」
ガスマスクをつけているからか、微妙にくぐもった桜姫先輩の声が聞こえる。
クライマックスはここからか!
そこから数秒で、サブマシンガン等と手で持てる銃器が落ちてきて、そして勇治が飛び降りてくる。
落ちてきた武器の内、手榴弾を取り出して……少しずつ動いてきた追跡ボールを吹き飛ばしておいた。
「本当……キリがないよね」
「正直言えば、どれだけの金が飛んだか考えたくもない」
「楽勝なゲームより、これくらいのが丁度良いって……ケホッ! ケホッ!」
俺達より長く6階に留まってガスマスクをしていなかった勇治は咳き込む……ガスマスクをする時間を惜しむ状況でもあったが、無茶しやがって……。
とはいえ、ゴールは既に見えている……ここまできて負けるなんてあってはならないのだ。
『20秒後に降りるわ! 3人共……準備お願い!』
「了解!」
もう一回手榴弾を用いて、3人が駆け抜ける方向の進入路にいる追跡ボールを排除する。
勇治の方はサブマシンガンを構えて、かりんは俺の背後の敵をサブマシンガンで迎撃していた。
付け焼き刃とはいえ、二人共なかなかサマになっている……今の状況じゃなければ見とれるくらいだが、俺もショットガンを構える。
『じゃあ、いくわよ!』
「はい! 俺が右、勇治が左、かりんは後ろで頼む!」
「おっけー!」
「わかった!」
そして、桜姫先輩、御剣先輩、郷田の3人が飛び降りてくるとほぼ同時に壁が開き銃器が飛び出してくる。
……ッ! スマートガン攻撃システム! 4機の銃による同時攻撃かッ!
銃声が響く。
俺のショットガンは無事にスマートガンを一機破壊する。
勇治とかりんのサブマシンガンもそれぞれ一機ずつ破壊する……が、まだ足りない。
そしてもう間に合わない。
更に銃声が響き渡る。
「全く、これだから素人は嫌なのよ。詰めが甘い……さ、行くわよ」
最後の1機を郷田は大型の拳銃による早撃ちで破壊し、そのままガスマスクを外しライフル銃を拾い駆け抜けていく。
それにならい、御剣先輩と桜姫先輩もガスマスクを外して銃器を拾い……郷田に続いた。
役割分担は簡単だ。
首輪を解除してない3人で走って道を切り開きながら、撃ち漏らしの処理やサポートは首輪解除済みの3人で行う。
そして、ゴールはそう遠くない。
昨日、身を以て固定式の警備システムを全て破壊した綺堂渚が亡くなった場所だ。
結局の所、俺は……俺達は最後まで誰かに頼りっぱなしだったのかもしれない。
もしも出会い方が違えば……彼女ともわかり合う事はできたんだろうか?
IFの事を考えても仕方ないが、どうしてもそう考えてしまう。
1つだけ言える事は、結局最後の最後まで渚さんのお世話になりっぱなしだったということだ。
……彼女の命が礎となり、俺達に勝利をもたらしたのだ。
このシナリオを考えた主催者の上の連中は趣味が悪いと思う。
まさに彼女の死が最後の最後で俺達の運命を分けたのだ。
――ピロリンピロリンピロリン
『ゲームの終了時刻となりました』
『只今をもちまして、全日程を終了させていただきます。参加者の皆様は、大変お疲れ様でした』
『今回のゲームの勝者を発表いたします』
『ナンバーA 御剣総一』
『ナンバー3 川瀬進矢』
『ナンバー4 長沢勇治』
『ナンバー5 郷田真弓』
『ナンバー9 桜姫優希』
『ナンバーK 北条かりん』
『以上、6名の方となります』
『壮絶な死闘を戦い抜いた勇敢なるプレイヤーたちに盛大な拍手を』
『この3日間の経験が、プレイヤーの皆様の人生の糧になりますことを切にお祈り申し上げます』
『それでは皆様、またのご来場を心よりお待ちしております』