秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind-   作:流火

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川瀬進矢:A:9.1:Qの殺害
葉月克己:2:6.4:JOKERの破壊
綺堂渚:7:4.9:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
御剣総一:J:6.7:24時間行動を共にしたプレイヤーが生存
矢幡麗佳:Q:5.5:2日と23時間の生存
長沢勇治:K:6.2:PDA5個以上の収集
色条優希:?:DEAD:???
手塚義光:?:5.1:???
漆山権造:?:9.9:???
郷田真弓:?:3.3:???
???:?:?:???
???:?:?:???
???:?:?:???



幕間1 逃げ道の使い方

 

 

 

 

――――――――――――

人は自ら迷い、自ら救われる。自由に生きるも囚われるも、己次第だ。

アンゲルス・シレジウス (17世紀ドイツの神秘主義敵宗教詩人)

――――――――――――

 

 

 

 

 総一と麗佳のゲームにおける旅路は、問題なく進んでいるように思えた。

 拳銃を1個だけ発見した時も特に諍いを起こす事はなく、ぎこちなくも連携を取りながら二人は動いていた。

 2階にも上がり、食事やその他の物資も十分といって良いほど備蓄できていた。

 だから、二人の認識が致命的にズレている事に気づいたのは、一人の参加者に会ってからだった。

 

「何やってるんですか、麗佳さん!!」

 

――パァン!

 

 映画で聞くような発砲音とは簡素な発砲音と、火薬の匂いを二人は感じる。

 麗佳は、中学生位の短い茶髪の女の子を見つけた時、迷わず発砲した。

 麗佳にしてはやや軽率と言えるかもしれないその判断であるが、一応ちゃんとした理由がある。

 

(このまま温い行動ばかりしてたら、きっと私は楽な方向に流されてしまう)

 

 麗佳のこれまでの出会った人物は、漆山権造・手塚義光という特段の危険人物を除いては特別悪い人間は居なさそうに見えた。

 だが、それはまだ本当のこのゲームの恐ろしさを理解していないが故である。 

 

 このゲームの行きつく先は疑心暗鬼からの血を血で洗う戦いである事を、頭が良い麗佳はしっかりと認識している。

 そして、それ以外の特別な能力を持ち合わせていない麗佳には分かるのだ……あくまで、麗佳自身はその事実に他の人より少しだけ早く気づけただけで、誰もが遅かれ早かれ気付ける事実である事を。

 そして、全員が気づいた時がこのゲームの本番だろう。 今は銃が一つだけしかないが、遠からず誰もが銃を手にする事となる。 誰もが覚悟を決めた時、麗佳に勝ち目はあるか?

 

 ――否、だ。

 

 だからこそ、麗佳は……今はまだ何の罪を犯していない年下の少女を撃たなければならなかったのだ。

 しかし、その銃撃は同行しているプレイヤーである御剣総一に防がれ逸れてしまい……少女に当たる事は無かった。

 

 ――やれやれ、安全な解除条件というのも困りもの、ね。

 

 総一から見せてもらった彼のPDAの解除条件は【J】……解除条件だけ考えれば麗佳を裏切る心配は薄そうではある。

 だが、麗佳から見た彼は危機感の足りない男という印象が強かった。

 

 それだけなら別に構わない。

 危機感という面で言えば、それが足りている川瀬進矢の方がよほど同行するに心穏やかでは居られないからである。

 むしろ、いざという時の盾役や囮等の保険としての価値を麗佳は見出していた。

 

(逆に言えば、その価値がないのであれば殺してしまっても問題ないわよね?)

 

 しかし、いざという時に邪魔されるのではその限りではない。 覚悟を決める為に撃った、しかし外してしまった以上……その目的は邪魔した男に責任を取ってもらえばいい。

 

(どうせ、御剣にとっても私は次のパートナーを見つけるまでの唯の繋ぎ兼保険だろうし)

 

 麗佳にとって、誰かと組むというのはどちらが先に裏切るか――そのチキンゲームに過ぎない。

 そう考えれば、御剣総一は既に十分以上その役割を果たし……これ以上は害悪とも言えた。

 

「麗佳さん! やめてください! どうして、そんな事をするんですか!?」

 

 麗佳が思考を巡らせている間に、総一に銃を奪われる。

 そして、先程狙った少女は銃声という威力に怯え、そのまま逃げ去っている。 一時銃を奪われるがそれは問題ない。

 

 麗佳は隠し持っていたナイフを取り出し、すぐさま横薙ぎでで総一の右腕を斬り裂いた。

 

「れ、麗佳さん……どうして……!」

 

 総一は警戒していなかったのか、それを直に受ける。

 制服を斬り裂き、鮮血が舞う。

 

 そして、取り落とした拳銃を麗佳は拾い……距離を取って、総一に向けた。

 

「御剣、貴方ってなにも分かってないのね」

 

「……っ!?」

 

 身体は熱くても、頭はクールに……それを麗佳は意識しながら、できるだけ冷たい思考で麗佳は総一に話しかける。

 銃を突き付けられた総一は、血が出た右腕を左手で抑えながら硬直する。

 麗佳は総一を見下しながら、それがあり得たかもしれない自分であると教訓にしなければならないと考えた。

 

「どうしてって、生きて帰る為に決まってるじゃない」

 

「そ、そんな事したって……! 帰れるわけ、無いじゃないですか……!」

 

 麗佳は深呼吸するが、拳銃を持つ手の震えが止まらない。

 どうやら、麗佳自身……まだ覚悟は決まり切らないらしい。

 

 麗佳が思い出すのは今まで出会った友好的なプレイヤーだ。

 それが、麗佳の殺意の刃を鈍らせている。

 

「人を殺して帰ったって、今までの日常に帰る事なんて、できないんですよ!」 

 

「知ったような事を……!」

 

(何なのよ、コイツ……斬ったのよ? 銃向けてるのよ!? 恨み言を言いなさいよ、命乞いをしなさいよ……!)

 

 引き金を引こうとする麗佳だったが……指が震えて上手く動かせない。

 深呼吸するが冷や汗は止まらず、全身に鳥肌が立っているような心地を覚える。 茶髪の少女を撃った時は躊躇しなかったのに、何故だろう……そんな疑問を抱くが、麗佳が導き出した答えはシンプルだった。 総一は目を逸らさずに、麗佳を見据えている……だから、麗佳は撃てないのだと。

 

(身体が弱いだけじゃなくて、心まで弱いなんて……本当に自分が嫌になるわね)

 

 ここまで来て、覚悟が決まり切らない。

 そんな自分を麗佳は嫌悪する。

 理性ではどうすれば良いかなんてわかり切っているのに、本能がそれを拒絶している。

 

 麗佳としても、例えば総一が反撃するなり恨み言を吐いてくれればそれを口実に撃てたかもしれない。

 だが、無慈悲に撃つには総一は無防備で誠実過ぎた。

 

 (……一人目さえ殺せば、後は躊躇する事なんてない筈。それなら――殺さざるを得ない状況を作る。これでいく)

 

 

 このままでは撃てない……冷静でなくても、麗佳は頭脳明晰だ。

 葛藤して総一に隙を作るよりは、自分の逃げ場を無くして、撃たざるを得ない状況を作る事を選ぶ。

 

「本当に鈍い男ね、御剣……日常に帰る帰らない関係なく、私は貴方を殺さないとそもそも帰れないのよ?」

 

「な、何を……」

 

「私は【JOKER】の初期配布者、【Q】と偽り……貴方を殺す機会を伺っていた、【3】のプレイヤーなのよ」

 

 麗佳はわざわざ自分に不利な情報を明かす。

 これは所謂、『ここまで話してしまったからにはお前はもう生かしておけない』という陳腐な状況を自ら作り出す為だ。

 ドラマや映画で、悪役が主人公に対して殺す前に長々と説明口調で話す事がある理由を少しだけ理解する麗佳であった。

 

 良心の呵責という弱い心を今ここで捨てるのだ。

 麗佳は引き金にあてた自分の人差し指の力を強める。

 総一は絶望したのか、項垂れている。

 

 下手に抵抗されるよりはそれでいいと麗佳は感じ――

 

「本当にごめんなさい、麗佳さん……」

 

「――え?」

 

 だから、麗佳は次に総一が発した言葉の意味が全く分からなかった。

 脳の理解が及ぶ前に、総一の言葉が続けられていく。

 

「……ずっと、一人で苦しんでたんですね。気づいてられなくて、本当に――」

 

「――さい」

 

 何を言っているのか分からない。

 ただ、自分の頭に血が昇っている事だけ麗佳にはある。

 目の前の男の口を早く閉ざさなければ……自分は手遅れになる事を麗佳は自覚した。

 

 排除しなければならない、麗佳の論理を……世界を破壊するこの男を……

 

「――うるさい!!!!!」

 

「麗佳さ――」

 

――パァンパァンパァンパァン!!!!!

 

 そして、麗佳は感情の赴くままに拳銃の引き金を引いた。 何度も、何度も――

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉう、怖い怖い。坊やは、これが攻撃のつもりなんでちゅか~、カワイイでちゅね~」

 

「うるせえ! 俺を馬鹿にするな!!!」

 

「長沢君! あの男には敵わない……兎に角逃げるんだ!」

 

 場所が変わって、同じく2階通路では3人の男が追いかけっこしていた。

 長沢は金髪の男――手塚義光に牽制を兼ねて、投擲用ダガーを投げるが軽く回避されてしまう。

 

 勝てない――今はまだ。

 

 長沢は心の中で、苦々しく自分の敗北を認めつつ……今はただ逃げるのみだった。

 他にもナイフや角材等は見つけていたが、鉄パイプを持つあの金髪の男には勝てないだろう。

 その事実は揺るがず、今の勝ちに拘る必要はない。

 

 長沢は激情的な少年ではあったが、その一点に関しては徹底する程度には利口ではあった。

 3階にはもう近い、3階に行けばもっと良い武器がある筈だ。

 

 例えば――銃とか、それに類する武器があると長沢は期待している。

 

(それさえあれば、あの野郎なんて――!!!)

 

 しかし、そんな淡い希望を打ち砕くのが大人の悪辣さである。

 

「なっ!?」

 

「道が、通れない!?」

 

 長沢は現実逃避気味に地図を見直すが、地図にはその場所には何もないはずだった。

 現実はどうだ。 ワイヤーが編み物のように張り巡らせて、通路がふさがれている。

 

 茫然としてる二人の後ろから、手塚は余裕綽々な様子でゆっくりと近づいてくる。

 

「ざぁ~んねんでした、此処から先は通行止めですよっと」

 

「このルートを通る事まで計算通りって事かよ……!」

 

「そゆこと、お勉強になりまちたね。坊や」

 

「うっせ――」

 

「待ってくれ、長沢君」

 

 状況も相まって、手塚と戦う覚悟を決めようとした長沢だが、葉月の言葉で正気に戻る。

 カッとなって、葉月に口答えしかけた長沢だったが、葉月が思ったより険しい顔をしていて勢いが削がれてしまう。

 

「な、何だよ……葉月のおっさん」

 

「よく見ると、このワイヤーには歩ける位の穴がある。僕が奴を足止めするから、その間に逃げてくれ!」

 

「い、良いのかよ……それは、葉月のおっちゃんが危なくないか?」

 

「勿論分かってるよ。君がワイヤーの向こう側に言ったら、ナイフで僕を援護してくれ。その隙も、向こうに行くから!」

 

「そっか……なるほど、分かった!」

 

 葉月の真剣な表情に押されてか、長沢も真剣な表情で頷いた。

 確かに、そうするしかなさそうに思える。

 

 ならば葉月の生存率を高める為にも、長沢は急いで通路の向こう側に行かなければならないのだ。

 葉月は震える手で角材を手に持ち、手塚に向けて構える。

 攻撃ではなく、抗戦の構えだ。

 

――そこまで、手塚に思考が誘導されている事にも気づかずに

 

「全く、反吐が出る程……人間が出来てるねェ、オッサン」

 

 

 

 

 重ねて言うが、長沢勇治は利口な少年だ。

 もし、ここまでの道筋で罠についての情報を得られていれば、『それ』に気づけていただろう。

 情報が無くても、時間があれば、『それ』を考慮し検証することができただろう。

 

 だからそう、今日の彼は……ツイてなかった。

 と言うのは、そのように誘導した手塚に失礼かもしれないが。

 

(よし、行くか……! 絶対に生き残るんだ、僕と葉月のおっちゃんで――!)

 

 長沢は意気揚々と足を進め――地面から鉄の鋏が長沢の左足を包み込んだ。

 

――ガシャン!!!

 

――グシャ!!!

 

「うわあああああああああああああああああああ!」

 

 鮮血が周囲に飛び散る。

 あまりの痛みに、脳は熱として認識できず、しかし足の制御を失い長沢はワイヤーに倒れこむ。

 

 鋼鉄製のトラバサミが深々と長沢の足に喰い付いていた。

 

「な、長沢君……そん、な……がっ!」

 

「はい、隙あり! と」

 

 そして、その結果に茫然とした葉月に対し、手塚は突撃して飛び蹴りを放ち、葉月もバランスを崩し、ワイヤーに倒れこむ。

 

 戦闘不能……まではいかなくても二人に大ダメージを与える事ができた。

 

 

「これで3人っと……勝利の女神様に愛されすぎて辛いねぇ」

 

 

 下手人――手塚義光は皮肉げな笑みで二人に笑いかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……生きて、る?」

 

 銃声が何度も鳴り響いてから暫くして……総一は茫然とした様子で呟いた。

 

 よろよろと立ち上がり、床を見ると弾痕が4発分……そして、総一自身に傷はない。

 結局の所、麗佳は銃を撃つ事はできたが、それを総一に向けて引き金を引くことができなかった。

 

 それでも、あの乱射で一発も当たらなかったのは運が良かったのかもしれないし、或いはそれすらも麗佳のギリギリの意志なのかもしれない。

 総一にそれを知る由もないが。

 

 しかし、総一にとって、今はそんな事はどうでもよかった。

 

「俺の、馬鹿野郎――」

 

 銃を乱射した麗佳は、そのまま総一から逃げるようにして逃走した。

 総一はそれを茫然と見送ってしまったのだ。

 

「銃なんかにビビってる場合じゃなかっただろ……!」

 

 もう、銃弾は残っていないだろうし、丸腰で精神不安定な麗佳を一人にするわけにもいかない。

 それでも、銃弾を何発も撃たれて、縮こまってしまったのである。

 

 普通の男子高校生である総一がそうなってしまったとして、責める人間はどこにも居ないのだが、少なくとも総一はそれを恥じるべきことだと強く感じた。

 

 総一は自分の荷物を拾い上げ、麗佳が向かった方角に走る。

 

 リスクを負って麗佳の名前を叫びながら、追いかけるも――時、すでに遅しである。

 




スミス『ハイ皆ー! このゲームのマスコットキャラクターのスミスだよー! よろしくね!』

スミス『思うんだけど、なんかエピソードⅡってボクの出番が少ないような気がするじゃない? みんなのアイドルであるボクが出れないって、観客席から大ブーイングがあると思わない? 皆もそう思うよね!?』

スミス『そこで思ったんだけど、このゲームの醍醐味ってやっぱりギャンブル。誰が生き残るかクイズが必要ってわけだよ! でも、現状だとフレーバー要素でしかないよね?』

スミス『折角アンケート機能があるわけだし、5択までしかできないけど……使ってみるのも良いかなって思ったんだ! ボク天才?』

スミス『実際、アンケート機能を使えばどのプレイヤーが人気とか人気じゃないとか作中でネタにできるかもしれないしね。観客視点でゲームに介入できれば、それはそれで面白そうけど……まぁそこは原作の主旨に反するからできないかな?』

スミス『問題無さそうなら次回からお試しでやるねー!』
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