秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind-   作:流火

58 / 61
川瀬進矢:A:6.8:Qの殺害
葉月克己:2:5.8:JOKERの破壊
矢幡麗佳:3:6.1:3名以上の殺害
高山浩太:4:4.0:首輪を3つ収集
北条かりん:6.4:JOKERの偽装機能を5回以上使用
綺堂渚:7:4.6:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
漆山権造:9:9.9:自分以外の全員の死亡
御剣総一:J:6.3:24時間行動を共にしたプレイヤーが生存
姫萩咲実:Q:8.3:2日と23時間の生存
長沢勇治:K:DEAD:PDA5個以上の収集
色条優希:?:DEAD:???
手塚義光:?:5.1:???
郷田真弓:?:3.2:???



第十五話 姫萩咲実の絶望と希望

 

 

 

 

――――――――――

父親が何者であったかはどうでもいい。問題は記憶に残る姿だ。

-アン・セクストン (米国の詩人)

――――――――-――

 

 

 

「……強引ですね」

 

「時に強引に物事を押し切らなければならないときもある。あ、後ろ向いてますので準備できたら、言ってください」

 

 背中を怪我している女性が微妙に涙ぐみながら睨みつけてくるが、そこから視界を外し、周辺警戒に移る。

 特に足音等は聞こえない。

 一応、銃声が鳴り響いた為、呼び寄せられる他参加者がいるんじゃないかと警戒もしてみたが、何もなさそうだ。

 

 拳銃の弾数は残り4発……節約しないと、先程の少女の時みたいにいざというときに弾切れとなったら命取りだ。

 尤も、3階で拳銃なんだから……4階以降は弾数管理に気を遣う必要は無くなるかもしれないけども。

 

 服擦れ音を聞きつつ、そんな事を思った。

 ……女性の体と思ってちょっと意識しそうだが、正直に言ってそんな余裕はない。実際に応急処置なんてしたことはないし、負傷の度合いによっては今後の動きが変わるかもしれないのだ。

 救急箱を開いて、包帯や消毒液の準備をする。鎮痛薬もあるが……眠気も伴うみたいだ。……彼女の疲労度合いとこの階層の進入禁止エリアになる時間を考慮に入れれば多少は眠ってもらっても問題ないだろうが。

 

「すいません、脱ぎました……」

 

「こっちも準備おっけーです」

 

 ゴム手袋を装備した俺は、後ろから女性の背中を見る。

 ナイフは既に抜けてはいるが、傷口は素人判断だとそこそこだ。

 もしも、病院に運ばれていた場合は縫合処置等が取られてるんだろうが……材料もスキルもないし不可能だ。

 一応警察官を志す身ではあるが、グロ画像や実際の遺体を見るのと応急処置するのでは別のプレッシャーを感じる。

 俺がゴクリと息を吞んだとしても、それはそのプレッシャーの所為で女性の背中を見た事は一切関係ないと言い訳させてください。

 

「俺の保険体育知識からの確認ですが、水で傷口を洗い流しガーゼで圧迫して止血を確認後に包帯巻きますよ。OK?」

 

「は、はい……」

 

「では、キャッチフレーズは痛いのは生きてる証拠ということで、よろしくお願いします!」

 

「え、えぇっ!? ちょっと……!? 痛みに対するフォローは、無いんですかぁ!?」

 

 後ろ姿しか見えてないので、彼女の表情は伺えないもののなんか怯えてそうな印象を受ける。

 元気づける為だったのに……構わず俺は治療を開始した。

 拙いかもしれない治療ではあったが、幸運にも彼女の止血は無事成功した。

 万が一、致命傷だったら介錯を……という事が頭に過らなかったというのは嘘になるが、杞憂で済んでよかった。

 尚、彼女の悲鳴や喘ぎ声とかで俺の中で新たな扉が開きつつあったかもしれないが、それは御愛嬌ということでスルーさせてください。

 

 

 

 

 

「……ありがとうございます。助かりました」

 

 改めて着替えなおして、女性は俺に頭を下げる。

 とはいえ、背中を刺されたので動きはややぎこちない。

 ちょっと空気が重い……というか、綺堂渚と暫く一緒だったせいか、彼女の発するオーラに慣れてしまったのか。

 なんとか、明るい空気にしなければと口を開く。

 

「いえいえ、ご馳走様でした」

 

「恥ずかしいので忘れてください……」

 

 俺も恥ずかしかったので対等……とは流石にならないな。

 AEDや人工呼吸もそうだが、人命は全てに優先するのでやむを得ない部分はあるけども。

 まぁ、恥ずかしがる元気があるだけマシかもしれない。

 

 ……一応、場を和ませる冗談のつもりだったが……もしかして、セクハラに該当したりする?

 

「じゃあ、これで貸し借り無しって事で行きましょう。血も止まった事ですし、このゲームから生きて帰る気力は湧いてきましたか?」

 

「助けてもらって申し訳ないのですが、冗談で言った訳じゃありませんよ……」

 

 真面目な話に戻すと、彼女は顔を伏せてそう言った。

 勘弁してほしいと思うが、目の前の女性は生を儚んで『A』に殺されたいらしい。

 ……俺自身の解除条件は一先ず伏せるべきだな。

 

 このゲームを運営している【組織】はある程度恣意的に人員を選んでいる事は想定の範囲内だが、【Q】にそういう人間を配置するのはよくないと思います!

 と声を大にして言いたいが、そこは我慢する。

 

 落ち着け……俺の隠れた特技である人間観察をフル稼働だ。

 

「俺は解除条件【A】の持ち主は知っています」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 ばっ、と女性は目を上げて教えて欲しそうに俺を見つめる。

 その解除条件【A】って俺の事だけどな!

 まぁ、理由を聞き出すのに多少のハッタリは必要だろう。

 

 「ただ、流石に貴方の事情を知らない限りは貴方を【A】の事を教えてあげられないですねぇ」

 

「うっ……それも、そう、ですね……」

 

 そう言うと、女性は再び俯き……そして、顔を上げて俺と向き合った。

 彼女としても足は重いが何かしらの使命感があっての動きのように思える。

 つまり、自信はなさげだが、目は真剣なのだ。

 

「わ、分かりました。お話します……誰かに話すのは、初めてですが。その代わり、【A】の持ち主の事を教えてくださいね」

 

「まぁ、悩みでも誰かに話せば気持ちが軽くなるかもしれないですし……良いですよ」

 

 そして、俺は嫌な予感がした。

 彼女の事情を知ることで、何かしらの深みに嵌まってしまいそうな気がしたからだ。

 ……もう手遅れか、腹を括ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女――姫萩咲実はそこそこ裕福な家の出だ。

 優しい両親に、一人っ子だが友人にも恵まれていたらしい。

 だが、その平穏が壊されたのは小さい頃に彼女の父親が大がかりな詐欺にあってからだ。

 

 元々、自営業を営んでいた父親はそれで破産――一家は離散した。

 つまるところは夜逃げしたらしい。

(消息不明なら、【ゲーム】に参加している可能性もあるが……その場合の結果は想像がつくので言わぬが花だろう)

 

 その後は親戚をたらいまわし、どの家でも余所者だった為、肩身の狭い思いをしてきたという。

 

「だから、私を待ってる人なんて誰も居ないんです。このまま、時間制限で死ぬなら……せめて、【A】の人に殺されようと考えたんです」

 

「……」

 

 やばい、俺の嘘発見センサーが全然反応してくれない。

 この話を聞いた【A】として、俺はどうすればいいの!?

 くっ、雰囲気的に同情を誘ってる風というよりは、早く【A】に殺されたいって雰囲気を纏ってる。勘弁してください!

 

 もしかしなくても、俺は彼女の想定で最悪レベルの【A】所有者だろう。

 何せ、俺視点でも最悪レベルの【Q】所有者だからな、間違いない。

 

「それで、【A】の方を教えて頂けますか……?」

 

「その前に、このゲーム内でどういう流れでそういう思考になったか教えて頂けますか?」

 

「恥ずかしいですけど、分かりました……」

 

 少なくとも、自分が【A】だとバラしてしまえば満足に情報交換できる暇が無くなりそうな事を察知したので、その前に彼女のゲーム内の動向を聞こうとする。

 

「私がこのゲームが始まった時に出会ったのは、北条かりんちゃんと高山さんです……3ゲーム開始から9時間経過後位でしょうか、3人でエントランスに到着しました。そして――女の子の遺体を見つけたんです」

 

 良し、順当に残りの参加者の情報をゲットだ。 北条かりんというのが、先程の銃を持った女の子だろう。妹が入院していて、心配だから早く戻りたいと何度か主張していたらしい。話を聞く限りでは、良くも悪くも普通の女の子な印象だが……あのようになってしまったのは、ゲームの性質上仕方ないか。説得は難しそうだ……【JOKER】があればそれを取っ掛かりに交渉はできるかもしれないが情報が足りない。

 

 高山浩太という人間は強そうで……ドライな人間らしい。冷静に二人を導いていたようだ。姫萩咲実曰く、悪い人ではないが良い人でもないとのこと。直接会わないとなんとも言えないが、話を聞く限りは同感だな……スタンスを決めかねていたのだろうが、中立的と言えばそんな印象だ。

 

「女の子を見つけた後はあんまり覚えてないんです……確か、エントランスに走って行って、完全に封鎖されているのを確認しました。そし……ずっと、へたり込んでいたと思います」

 

「へたり込んでいた?」

 

「は、恥ずかしいですけど、その……茫然として……諦めていたんだと思います。私はどうせ生き残れない、これが夢なら覚めて欲しい……と」

 

「……あー、別に恥ずかしがる事ではないと思いますけどね」

 

 殺し合いに適応できない――そういうタイプの人間もいるだろう。

 というか、今の平和な日本で完全に無作為に人を選んだとして、結構な割合でそういう現実を受け入れられないタイプの人間がいるのでは無かろうか。

 そうならない為に、このゲームを運営している【組織】はある程度、動機や人の性質を鑑みてプレイヤーを厳選している事は想像に難くない。

 

 ……そもそも、目の前の姫萩咲実は逆にゲームに適応できない人間だからこそ、このゲームに呼ばれた可能性が高いような気もするが。

 

(俺は、メインターゲットじゃない……気もするが)

 

 俺と姫萩咲実に接点はないように思える……だったら、自然と俺にそっくりなある人物が脳裏に浮かぶものだ。

 

「それに、時間はかかったけど貴方は立ち上がった……違いますか?」

 

「えぇ……ふと、目に入ったんです。入口に張り付けられたメモが……そこには、ルールの5番と、【A】の解除条件が書いてありました」

 

「あー……そんなものもありましたね」

 

 記憶喪失中の俺が書いた奴だ。

 記憶喪失中の俺の記憶は悪夢を見たかのように鮮明であり、自分であったのは間違いないが、自分じゃないような気もしてくる不思議な感覚を受ける。

 ただ、所詮は夢なので、普通に記憶を思い出すよりは難しい……思い出した。

 

 記憶を取り戻した俺がどっち側か分からないから、どっちに転んでも良いように一先ず【Q】を保護する方針だったな。

 その一環で、【Q】に警告する意味合いであの張り紙をした気がする。

 

「そこで思ったんです。私が、このままエントランスに居てルール違反で死んでしまえば、【A】の人を巻き添えにしてしまうのではないか、と」

 

「……」

 

 そう言って、姫萩咲実……訂正、姫萩先輩は俺を見た。

 そういう用途でそのような事をしたわけではないので、若干の気恥ずかしさを感じる。

 何も言えなくなった俺は、黙り込んで目を逸らした。

 

「だから、私は立ち上がって此処までこれたんです。助けてもらって申し訳ありませんが、お願いします……私に【A】の事を教えてください!」

 

「えーっと……」

 

 彼女は真摯に頼み込み、そして頭を下げる。

 ……そこまで言われると、恐縮というか居たたまれない。

 だって、俺……あの置き書き書いてた時に確か綺堂渚の事ばかり考えてた気がする。

 姫萩先輩が一世一代の覚悟を決められたという心情はダイレクトに伝わってくるのだが……罪悪感しか湧いてこない。

 

「お名前はお聞きしてませんが、貴方が良い人だって事は分かります! でも、私決めたんです」

 

 悩み沈黙していると、すかさず姫萩先輩は続けてくる。

 えぇい、このままだと埒があかない。

 彼女の覚悟に比類する何かを俺は持ち合わせていないかもしれないが、なんとか軌道修正を試みよう。

 

「ストップ! ストーップ! なんで死ぬ前提で話をしてるんですか!? ほら、姫萩先輩まだお若いですし、人生諦めるのは早いですよ! こほん、失礼……川瀬進矢と申します。高校二年生ですよ、せ・ん・ぱ・い!」

 

「年齢は若いかもしれないですけど、私はもう生きる希望を持てなくて……それに――」

 

 姫萩先輩の言葉を聞きつつ、俺はデジャヴを覚えていた。

 希望を持てない時期が俺にもあった。

 昔、俺の融通が効かなかった頃にいじめられた時……多分、そんな感じで半ば引きこもりだった。

 嫌な記憶だったから蓋をしていたが、彼女を復帰させるためその時の経験をなんとか利用せねばならない……!

 えーと、兄貴にゲーム漬けにされて、危機感覚えて復帰って感じだったか……参考にならねぇ。

 

 「最期になってしまいましたが……川瀬さんのような、良い人に会えました。だから、もう思い残すことはありません」

 

 そして、姫萩先輩は俺に向けて一生懸命笑顔を作る。

 俺の少ない女性経験の中でトップクラスの美しい笑顔だ――って、見惚れてる場合かー---っ!?

 

「勝手に! 納得しないでくださいぃ!?」

 

 まずい、普通のアニメやドラマとかだと『決意は固いようだな』とか『何を言っても意見を曲げるつもりはないみたいだな』とか言いかねない場面である。

 頭痛い……うっ、彼女――姫萩先輩を正攻法で説得するのは難しそうだ。

 何故なら――

 

「何も考えなかった訳ではないです。私なりに一生懸命考えました。こうするしか、無いんですよ。……私を助けて頂いた川瀬さんには、本当に申し訳ないと思っています」

 

「いや、そういう問題じゃないですけどね」

 

 万が一、姫萩先輩を殺した時の事を想像してみる。

 家に残した母親と、兄と弟……死別したであろう父親。

 

『殺し合いゲームで、「殺して欲しい」って懇願した女の子を殺して生き延びたぜ!』

 

『よく言った。地獄に落ちろ』

 

 超要約すると、こんな感じの展開が予想できる……色々な所に顔向けできない。

 逆に、俺の家族がそういう女の子を殺して生きて帰ってこられても反応に困るし……。

 最低でも半殺しコースかも……。

 いや、情けなくてカミングアウトすらできないだろうけど。

 

――あの手で行くか、許せ親父

 

 あんまり使いたくないし、俺に向いてない手段だが……使うしかないか。

 彼女の意見を翻させる為に発動する……『偽証』を!

 

「えーとですね、【A】の持ち主はとっても悪い人なんです! 姫萩先輩が命を懸けるに値する人物ではないと思います!」

 

 うん、嘘はついていない。 綺堂渚に対して空手形の約束をしたり、姫萩先輩を騙して希望を刈り取ろうとしたりしてる。女の子――北条かりんさんにもスタンガンをぶっぱなしたりしたな。とっても悪い人だ、間違いない。

 命を懸けるに値する人物ではないというのも本心である。

 

「そうなんですか……それは良かったです。私を引き渡せば、その分川瀬さんの危険が減るという事ですね」

 

「……そんな後ろ向きなプラス思考初めて聞いたよ!?」

 

 しかし、手ごたえは無かった。

 姫萩先輩はキマっているとはいえ、良くも悪くも一般人(の筈)。

 賞金の為に殺して回る人物がいるとは想像の範囲外なのだろう。

 もっと、組織の人間は人選を考えた方が良いと思う。

 

 次の手を考えなければ――。

 兎に角、彼女の想いの源泉を知らなければ話にならないな。

 俺は根負けしつつある雰囲気を出しつつ、呆れたように口を開いた。

 

「分かりました、次で本当に教えます。でも、どうして……姫萩先輩はそこまで頑ななんですか? 俺からすれば姫萩先輩の方が良い人に思えますよ」

 

「私は……良い人なんかじゃ、ありませんよ」

 

 俺の質問に姫萩先輩は目を伏せる。

 そしてそのまま、力なく微笑みながら……彼女はぽつりぽつりと、呟いた。

 

「私が【A】に殺されたいのは、私の為です……私はドンくさくて、どこに居ても役立たずで……迷惑をかけてばかりで。でも、最期に……誰かの為に自分の命を使えるんです。そうしたら、私でも……天国でお父様、お母様に胸を張って会えると……そう思うんです」

 

 彼女の言葉は小さく、弱々しい。

 それでも、俺は口を挟めず……何とも言えない胸の痛みに苛まれながら彼女の言葉を聞くだけだった。

 

(前言撤回、姫萩先輩はちゃんと俺をターゲットにした人選だった。ここまで、俺が狙い撃ちにされてるなんて……俺のプロフィールとかどこまで抜かれてるんだろう? 怖い)

 

 静かに聞きながら、思い違いを悟る。

 俺が記憶を失うのは想定外だったとしても、ここからが俺の本当の意味でのゲームスタートなのだ。

 

「まだ、亡くなったと決まった訳じゃないんじゃ……」

 

「分かりますよ! お父様も、お母様も強い人じゃないですから……私のように親戚を頼らないってことは、もう……」

 

 姫萩先輩は口調を強める。

 家族にしか分からない何かがあるのだろう。

 俺の口が挟める領分ではないと判断し、そこは口を噤む。

 口先だけの希望を言っても、彼女には何も響かないだろう。

 

「あ、ごめんなさい……。でも、これ以上、私に優しくしないでください。もう、良いんです。全部、私の為なんです……私の、我儘なんです」

 

 そして、姫萩先輩は瞳に涙を浮かべる。

 こういう動機なら、不本意だが俺が頑張るしかないか。

 論理的に諭すのは不可能、偽証して誘導するのも難しいとなると……。

 

「姫萩先輩の事情は分かりました。それでは、約束を守りましょう――」

 

 我儘には我儘で返す、これで行く。

 姫萩先輩の事情だけを聴いた以上、こちらが何も言わないのも不公平(?)だからな。

 俺はPDAを取り出し、右手で高々と掲げた。 姫萩先輩は驚きで、目を見開く。

 

「……!?」

 

「川瀬進矢、解除条件は【A】。クイーン殺しのエース。亡き父の復讐の為にこのゲームに参加している、来年警察官試験を受ける予定でした。そして――」

 

 正しさとは特に残酷な事もある。

 俺もそう思う。

 悪夢から目を覚ましたと思えば、もっと糞ったれで絶望的な現実だったのだから。

 

 そして、今度は無力で絶望している女性にそれでも歩けと俺は言わなければならない。

 閉じた眼を開き、この不条理な世界を見据える事を強制するのだ。

 

「――君を殺す気はない。そんなことしたら、あの世の糞親父に殺される」

 

「か、川瀬……さん?」

 

「とまぁ、そういう訳なので……死ぬのは諦めてください。姫萩セ・ン・パ・イ!」

 

 最大限の力を込めて、姫萩先輩に呼びかける。

 

――嘘つき

 

 と俺の理性のどこかで言った。

 だってそうだろう?

 今回、俺が【A】で姫萩先輩が【Q】だからそうなってるだけだ。

 逆だったらどうしてた?

 答えは――厳密にはそういう状況にならないと、なんとも言えないだろうが、それでも。

 

 俺は、正義というベールに包み隠して自分の我儘を押し通したのだろう。

 

 正しくなくても良い、最善を尽くそう。

 

 このゲームに対して、【組織】に対して、俺がどこまで通用するか分からないが……やれるだけの事はやってみるか。






スミス『1回目のベッドは閉じるよ! 投票してくれた皆はありがとう!』

スミス『男性陣の次は女性陣のベットのターンだよ!』

スミス『女性陣は~全員かな。ヒロイン外すか迷ったけど、問題ないかな』

スミス『奮ってBETしてね!』


矢幡麗佳:3:6.1:3名以上の殺害
コメント:この後に及んで迷いは禁物だと思うけど、出会いが悪かったね

北条かりん:6:6.4:JOKERの偽装機能を5回以上使用
コメント:かれんちゃんの為に頑張って欲しいね。今の偽装回数は秘密だよ☆(最低1回)

綺堂渚:7:4.6:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
コメント:彼女の今の心境や如何にだね

姫萩咲実:Q:8.3:2日と23時間の生存
コメント:女性陣の大穴枠だけど……進矢君と出会って倍率落ちるかもね

郷田真弓:?:3.2:???
コメント:ゲームマスターが死ぬわけないだろ!


スミス『1回目のギャンブルは葉月さんが一番人気、ゲーム舞台上では二番人気が葉月さん、一番人気が進矢って事になるよ』

スミス『長沢君を犠牲にしてしまった葉月さんが、これからどうなるか……乞うご期待だね!』

この中で生き残るのは?(女性編)

  • 矢幡麗佳:  倍率:6.1
  • 北条かりん: 倍率:6.4
  • 綺堂渚    倍率:4.6
  • 姫萩咲実:  倍率:8.3
  • 郷田真弓   倍率:3.2
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。