秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind-   作:流火

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プレイヤー:カード:オッズ:解除条件
川瀬進矢: 3 :4.0:3人の殺害
長沢勇治:4:7.2:首輪を3つ収集する
桜姫優希:9:10.2:自分以外の全員の死亡
北条かりん:K:5.1:PDAを5個以上収集
矢幡麗華:?:4.8:???
郷田真弓:?:4.1:???
手塚義光:?:3.7:???
DEAD:7:DEAD:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
???:???:???:???
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第六話 はじまりは突然に

 

 

 

 

 

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子供は大人の言葉ではなく、人となりから学ぶ。

カール・ユング(スイスの精神科医、心理学者)

――――――――――――

 

 

 

 

 

北条さんが泣き止んだ後、少々休憩を挟み……しんみりとした空気を変える為に叫んだ

 

「では、改めて……仲良し3人組結成ー!」

「川瀬のお兄ちゃん、もっとマシなチーム名無いの!?」

「……センスの良い名前が思いつかなかったし、考える時間が勿体ないから仕方なかった」

「少し前まで殺すか殺さないか迷っていたあたしは一体……」

「馬鹿だな」

「……い、いや……そ、そうだけど……!?」

 

 色々と引きずってそうな北条のフォローを考えた。

 彼女の場合は視野が狭くなっていたのがある、つまり視野が広くなるように幾つかの考え方を教えてあげれば問題ないはずだ。

 

「真面目に言うなら、北条さんは間違っていない。というか正しい。しかし、人間というのは自分が正しいと思っている時こそ、一番残酷になれる生き物と言うことを忘れないでいてくれれば良い」

「うぅ……確かに、そうかも」

「ついでに言えば追い詰められていたから仕方ないけど、俺が考えるにそこまで思い詰める必要は無かった」

「え!? でも……こんな殺し合いのゲームに報酬を分けてくれる人がそう多く居るなんて、やっぱり思えないよ」

「俺が北条さんの立場なら3パターンの展開を想定してたかな」

 

 はい、川瀬先生のスマートな今回のゲームにおける3億8000万円回収ルート講座を北条さんに行います。箇条書きにすると

1.13人協力して、最大多数の首輪が外せるような展開になれば2、3人くらいは報酬面で協力してくれる人がいる。

2.殺し合いが本格化してしまった場合、1人信頼できるパートナーを見つければ問題ない。

3.信頼できるパートナーが見つからないような殺し合いゲームなら、わざわざ自分で殺しに行かなかったとしても生存者は勝手に5人以下になる。

(言いながら思うのだが……桜姫先輩があの場にいなかったら3ルート濃厚だったんじゃないかこれ? 居なかったら、多分俺様子見してただろうからな……その場合長沢と北条さんもゲームに乗って……こわっ、3人殺し不可避じゃん)

 

「こんな感じで臨機応変に3億8000万の報酬を手に入れる! 中庸の精神万歳!」

「むぐぐぐ、悔しい……。人を騙してPDA番号を聞き出すだけのことはあるよね」

「他人のPDAを、さも自分のPDAを扱ってる風にルール交換もやってたんだぜ?」

「ハハーン……さては君達、割と根に持ってるな???」

 

 なんか上手くやれそうだからやった。反省は少ししている。

 弄られるだけでは面白くないのか、反撃する余裕があるならもう大丈夫だな。

 空気は回復したし改めて情報交換を開始しよう。ルール交換が終わった以上、あとは遭遇した人物情報だけなのだが。

 

 

 

 

 少し離れた通路を3人で歩きながら、北条が見つけたという人物を探す。

 戦闘禁止が解除される前に、ワンチャンを狙ってもう1人位誰かと会えないかと探しているが、そこまでの運は無かったようだ。

 

「体格ががっしりしている、強いオーラを持った短髪黒髪の成人男性がこの辺を歩いていたんだな?」

「う、うん……怖かったら、話かけられなかったけど」

「まぁ、ルールあっても、そんな人が歩いてたら普通は怖い。見つけられないのが残念だが、俺達視点で9人目の参加者だな。残り4人か」

 

 北条さんは1人だけ一方的に確認したが、それ以降は誰とも会っていないらしい。

 どうやら、最初にいきなり1人の犠牲者を確認して、多人数と遭遇した俺達は相当運が良い方のようだ。

 北条さんと逆の立場だったら、悪い考えを拗らせてしまうところだったかもしれない。

 戦闘禁止解除まで数十分。

 解除直前に他の参加者に出会ったとしても、会話中に戦闘禁止された場合無用な混乱を生み出しかねない。

 残り時間は、今までの情報の整理と作戦会議にあてよう。

 

「さて、現状信頼できるのは桜姫先輩、北条さん、長沢。最低限警戒が必要なのが、俺と郷田社長。最警戒が必要なのが、手塚と矢幡さんってところだな」

「なんで川瀬お兄ちゃんは自分を警戒側に置いてるのさ」

「……自慢じゃないが、俺だって死ぬのは怖いってことだよ」

 

 初手で予防線を張るのは俺自身どうかと思うが、怖いものは怖いので念の為、自分自身を警戒側に置く。

 今は良いだろう。だが、例えば正当防衛であっても誰かを殺してしまった時、首輪解除に必要な殺害人数が3から2になってしまえばどうか? 1になった時に、その誘惑を抗えるか?

 今は初日だ。だが最終日ならどうか、最後の1時間なら、10分前なら……俺が仲間を殺しにかからないと言い切れるのか???

 自分自身、人生でそこまで追い詰められたことはない為、それ以上は観測しないと分からない。

 

「だから、早めに北条さんの首輪を解除し、PDA8番の為に俺のPDAを破壊するのがベスト。道が閉ざされれば、誘惑が無くなってその分思考に費やせるからな」

「大丈夫だって! あたしは、川瀬さんのこと信じてるから!」

「!?!?!?!?」

「いや、なんでそんな凄い反応するの?」

 

 北条さんが俺に対して純粋な笑顔を向ける。

 凄い不意打ちを受けた……落ち着け俺。

 信じてるからな! って言って、裏切るのに罪悪感を持たせる作戦か何かだ。……こんなことを考える俺は心が穢れているのだろうか?

 どうあれ、ダイレクトに信じてるって言われるのはとても恥ずかしいことが分かった。

 

「あ、いや……えー、北条さんは自分の生存を最優先して頑張って?」

「じゃあ、こう言えばいいかな? 川瀬さんには、生きて帰ってあたしに報酬を分けて貰わないと困るんだよね」

 

 悪戯っぽく北条さんが微笑んだ。

 よし、こっちの方が俺好みの回答だ。

 そういうので良いんだそういうので……手玉に取られたりしないよな?

 

「ほーう? 言うようになったな。先ほど提示したプランを考えると俺に固執する必要はないんだぞ」

「そういえばそんなこと言ってたね、でも助けられるだけだとあたしが納得できないから」

「うっ……良い心がけだな。そんなこと言ってたら首輪外れても酷使するからな!?」

「うーん、川瀬さんの作戦なら信用できるかな?」

「もう少し疑って!?」

 

 ほんのちょっと前までは、どうやったら信じて貰えるか考えていた筈なんだが、立場が逆転してしまったような気がする。これは……もしかして、日常生活で今まで発揮してこなかった……俺の人徳!?

 なんて現実逃避は止めよう。

 ……えーと、何の定義もなしに普段全然関わらないタイプの人間とコミュニケーションを取ろうとしたから俺が混乱してるんだな。となると、この2人との距離感は仲の良い従兄弟レベルの親戚程度だと考えておこう。

 

「確かに――僕、いや俺もお兄ちゃんがどんな悪巧みでペナルティ突破するか楽しみなんだよね」

「人聞きが悪い!? くそう、見てろよ……二人共生きてたら見せてやるよ、俺の完璧な作戦を」

 

 2人の中の川瀬進矢像が気になりつつ、色々自棄になりながら答える。

 完璧な作戦? 存在しないという欠点を除けば完璧だよ?

 ……さて、信頼されること自体に悪い気はしないのだが、真面目な話だ。真面目な話。

 

「あー、畜生! かわいいなー! お前等、よしよし……絶対に生き残るぞ! さて、じゃあ……このチームで行うフォーメーションを説明する」

「おー! フォーメーション!」

「と言っても難しい話じゃない。近接戦闘なら俺はそこそこ強い、小中で剣道やってたから素人には負けないと思う」

「マジかよ兄ちゃん! 完璧じゃん!」

「俺が6年剣道やって分かった事は、俺に剣道の才能はさっぱり無い事なんだけどな」

 

 具体的には弱小校で辛うじてレギュラーは行けるが大会は負けばかりだ。負け癖がついて、割とトラウマだ。

 元々身体が弱いところを剣道で鍛えまくって、ようやく平均レベルになった感じだ。

 実戦経験はゼロだし、木刀持ってヨーイドンした場合、手塚と戦って勝てる自信が全くない。

  

「確かに、川瀬さん……あんまりスポーツの人って雰囲気じゃないもんね」

「将来の職業の選択肢の1つが警察官だったから、惰性でな」

「川瀬のお兄ちゃんが警察官になるとか大丈夫か???」

「どういう意味だ長沢!?」

「確かに川瀬さんがお巡りさんになったら……他のお巡りさんが可哀想だよね?」

「それは、事件をガンガン解決して仕事を奪っちゃうという意味だよな?!」

「不良刑事になって、川瀬はどこだ!? って何時も上司に追われるんだよな」

「ギャグ漫画展開じゃねーか!?」

「あ、分かるー! 川瀬さん、悪い事して実演しただけって言い訳するんだよね?」

「ブルータス……もとい、北条……お前もか」

 

 やばい、話が逸れまくってる。

 緊張感がなさ過ぎるのも良くないぞ、尚突っ込み側に回ってる俺が言っても説得力がない。

 まだ、ギリギリ戦闘禁止になってないから良いんだが、終わったら気を引き締めさせることを決意した。

 

「さて、真面目な話……万が一戦闘になったら、俺がメインで戦い長沢が援護、北条が周辺警戒しつつ敵の隙を伺ってくれ。万が一、別方向から更に敵が来た場合は北条と長沢の2人で当たれ」

「りょーかい!」

「分かった」

「で、勝てないと思ったら撤退は俺が指示するんで、2人は逃げろ。俺は殿を務める」

「「え」」

「え、じゃない。負ける時は上手に負けるんだよ。で、逃げる為に伝えることが2点ある。1点目は合図とそれに合った撤退場所を細かく決めて行くんで、覚えてくれ。覚えろ。最悪バラバラに逃げないといけない可能性もあるしな」

 

 正直、俺の判断で俺1人が死ぬ分に関しては自分自身の責任で諦めもつくのだが、俺を信じて着いてきてくれる2人が死んでしまったら、ちょっと立ち直れないかもしれない。

 だから、考える。生き延びる為にどうするべきか、俺達3人組は、人数としては多くても直接戦闘能力に関しては大したことない。あと、不覚にもこの2人に情が移った! 持ってる手札は全て使ってやるよ!

 

「はい、2点目。こちらの部屋にはエアダクトがあります。なんと、このエアダクト、移動しながらそれとなく確認してたけど部屋同士で繋がってたりする。部屋に追い詰められたらこれで逃げろ、俺以外は体格的に有利が取れるはず」

 

 部屋にあった机の端に移動させ、机の上に乗り目立たないように隠された蓋を外してみせる。そこには、大人でも這って通れそうな通路があった。まさか、第一犠牲者を助けた時に発見した時が、割と便利に使えそうな切り札に化けるとは、【情けは人の為ならず】とは馬鹿にならないものである。

 

 

「おぉ! すげぇ! 隠し通路じゃん!」

「……言われてみればそうだな」

「隠し通路ってことは、もしかしたら隠し部屋とかもあるんじゃない!? レアアイテムとか入ってる奴!」

「はしゃぎすぎだ長沢。だが、一理あるのが悔しい……」

 

 俺は生存優先で考え、長沢はエンジョイ勢だから思いつく方向性が全然違うから当然なんだが。視点が複数あるのは何だかんだで助かる。隠し部屋なんてイレギュラー一直線だ、単純に潜伏場所として良さそうだし、強い武器もそうだが、解除条件とは関係無くペナルティから逃げる方法とか欲しい。

 などと考えていたら、北条さんが少し困ったような顔をしていた。

 

「ごめん、あたし……ゲームとかよく分からなくて」

「マジか、すまん。帰ったら布教しようか?」

「いいの? でも、ウチ……お金ないから」

「大丈夫だ、金なら出す……長沢が」

「僕かよ!?」

「なんだよー、北条さん妹いるんだから4人プレイできるぞ。俺アクション系下手くそだから、長沢先生にご教授願いたいな」

「川瀬のお兄ちゃん、僕――いや、俺を持ち上げればなんでもしてくれると思ってない!?」

「あ、バレたか」

「ブッ」

 

 北条さんが吹き出した顔を見て少し安心する。

 やばい……なんだかんだで、自分も話を脱線させてしまった。

 北条さんが曇った顔をあまり見たくなかったので、つい口を出してしまった。

 あれ……俺ってもしかして、殺し合いゲーム向いていないのでは?

 

「話を戻すが、ゲームと違ってやり直しが効かないから俺不在時に判断に迷ったら、自分の命を最優先して構わない。死ぬ気で生き延びてくれ」

「分かった」

「川瀬お兄ちゃん心配性だな」

 

 さらっと矛盾したことを言いつつ、北条さんは真剣に、長沢はやれやれと言った調子で返答する。

 俺の考えた作戦はここまでだ。あとはそれこそ出会ってない人と出てない情報次第と言える。

 勝負とは始まる前から始まっているを実践するように6時間経過前から全力で考えたが、はてさて……上手く行ってくれるだろうか。

 

「このゲームはルールも解除条件も本質の一部でしかない。隠し要素も推理要素も、いくらでもある筈だ……逆に言えば不確定要素こそが、俺みたいな解除不能組にとっては希望でもある。何かあれば北条さんもガンガン意見出しを頼む」

「流石に、川瀬さんの話聞いてたらあたし……自信無いけど」

「視点が違うってだけで十分だよ。俺と長沢は、ゲームという先入観に囚われているけど、ゲーマーだからこそ気づけないこと、引っかかってしまう罠も逆にあるかもしれないしな」

「分かった、頑張ってみる」

 

 真剣な顔でかりんがうなずく。

 伝えられることは全て伝えきっただろうか?

 

 

「このゲームで最も大事なことは、諦めずに思考を止めないことだ。諸君、健闘を祈る」

 

 ――ピロリン、ピロリン、ピロリン

 言い終わると同時にPDAから音が鳴り、画面を確認する。

『開始から6時間経過しました! お待たせいたしました! 全域での戦闘禁止の制限が解除されました』

 ナイスタイミングだ完璧に決まった。

 

「川瀬のお兄ちゃん、もしかしてタイミング合わせてた?」

「……上手く決まったと思ったのにオチつけてくるの止めろ長沢!」

「ちょっと格好良いと思ってたのに、川瀬さん狙ってたの……!?」

「やっぱりな」

 

 緊張感は大事だが、戦闘禁止解除で過剰にピリピリしない為に、タイミングを上手く合わせたが長沢に見抜かれてしまらない結果となってしまった。

 一同、顔を合わせて笑い合う。

 こんな始まりも悪くないのかも知れなかった。

 

 

 

 

 

 

「誰も……居ない」

「ふぁ~、もう皆2階に行っちゃったんじゃないの?」

 

 そして、2時間が経過した。

 飽きっぽいのか、長沢は欠伸をしながら返答している。

 北条さん分の食料を確保したこと以外は、何の成果も得られていない。

 集中力と緊張感というのは長く続かないもので、今の状況は正直まずい。

 ……方針を変えるか。

 

「予定より早いが、【進入禁止エリア】のルールも十分に撒き終えたと判断して、早めに2階に上がって休憩するか」

 

 この距離とペース配分を考えると、休む時間は増やすに越したことはない。

 何故なら、最終日は休み無しで動かないといけないかもしれないのだから。

 ……なんて考えていたのが悪かったのだろうか、戦闘を歩いていた俺が気付いた時は、何かを踏んづけてしまったようだ。

 

「……ちょっと、待て。今、何か踏ん――!」

 

 ――ガラガラガラ……!

 

 足下に目をやったタイミングで、上から音が聞こえる。

 すかさず、上を見るがそこから鉄の何かがが落ちてくるのが見える。

 スローモーションで自分の頭上に落ちてきている……だが、身体の方が動いてくれない。

 

「……え?」

 

 ……え、まさか……これで終わ――。

 

「危ない!」

「うお!?」

 

 背後から北条の声……そして、衝撃、視界がぐるっと回る。

 強かに床に身体を叩きつけた。

 

 ――ガシャン!

 

 と何かが床に衝突する衝撃音。

 辛うじて受け身が間に合ったが、何があった? 

 

「川瀬さん、大丈夫!?」

「び、びっくりした……うわ、もしかして罠か?」

「アイタタタ……何があったんだ」

 

 ゆらりと立ち上がりつつ、ぱっと見、鉄格子が降りてきて俺が他の2人と別れてしまった状況までは把握した。

 位置関係的に考えれば、鉄格子の真下に居て潰れるルートに居た俺を、北条が突き飛ばしたことが分かる。

 見た目通り、反射神経が良かったんだろう。俺と長沢はまともな反応が出来なかった。

 仲間の大切さを理解する殺し合いゲームですね!?

 

「あー、俺に関しては問題ない。それより、床にスイッチのような出っ張りがあり、それを俺が踏んでしまったようだ。ダンジョン物だと分かっていたのに、罠という発想が出なかったのが、悔しくてたまらない」

「そこかよ! まぁ、大丈夫そうだな……」

「北条もありがとな、このゲームを一番舐めてたのは俺だったかもしれない」

「気にしないで、これからも川瀬さんに頑張って貰わないといけないんだし」

「はいはい、受けた恩は返しますよ……分断系罠か、ちょっと待て合流地点を検討する」

 

 PDAを取り出すと……『罠』の項目が追加されている。

『踏み板やトリガーワイヤーで起動する罠の1つ。参加者の殺傷よりも集団の分断を目的としたもので、直接死亡する例はまれ』……死にそうだったんですが、それは。

 なんて内心突っ込みを入れつつ、地図を見る。

 うーん、割と遠回りになりそうだ……まぁ近くで合流できたら、分断罠の意味は無いだろうから仕方ない。

 となると、取るべき手はエアダクトによる抜け道探しか?

 思考に入った俺に前から長沢の大声が聞こえてくる

 

「っ!? ……川瀬のお兄ちゃん、横に跳んで!?」

「はぁ!?」

 

 また何かあったのか!? 咄嗟に横にジャンプすると、その真横に後ろから何かが凄い勢いで通り過ぎる。その何かは、鉄格子に当たりそのまま長沢と北条さんの間を通り過ぎ、床に突き刺さる。

 ――何だ、矢か!? 

 めまぐるしく動いていく状況に、一気に身体全体に緊張感が走る。

 

「あのオバさん! このゲームに乗りやがった! ルール交換時に見せていたあれは全部演技だったんだよ!」

「マジで!? ……郷田さん!?」

「……あの人がっ!」

 

 後ろを振り向くと、クロスボウ……?を構えたルール交換時以来の郷田真弓その人が居た。

 既に次の矢を装填しているらしく、その手に迷いは見当たらない。

 ――慣れすぎだろう!? 経験者か何かか!? 

 もう、これは問答無用といった空気だ。交渉の余地は無さそうだ。

 1つだけ言えることは、郷田が居たのはこちら側で良かった……という事だ。

 

 息を吸い込み……大きく叫ぶ

 

「……二人共! 逃げろォ!!!!」

 

 

 ――ヒュン

 俺の叫び声と同タイミングで無慈悲な風切り音がして二射目が長沢の元に吸い込まれていく――

 

 

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