秘密遊戯 -I must be cruel, only to be kind-   作:流火

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プレイヤー:カード:オッズ:解除条件
御剣総一 :A:5.1 :Qの殺害
川瀬進矢 :3:4.8 :3人の殺害
長沢勇治 :4:7.2 :首輪を3つ収集する
漆山権造 :7:DEAD:開始6時間以降に全プレイヤーとの遭遇
桜姫優希 :9:10.2:自分以外の全員の死亡
姫萩咲美 :Q:7.5 :2日と23時間の生存
北条かりん:K:5.1 :PDAを5個以上収集
矢幡麗華 :?:4.2 :???
郷田真弓 :?:4.1 :???
手塚義光 :?:3.7 :???
???  :?:??:???
???  :?:??:???
???  :?:??:???



第九話 殺し合いの均衡

 

 

 

 

 

――――――――――――

闇の中を友と歩むのは、光の中を一人で歩むよりいいものだ。

ヘレン・ケラー(米国の教育化、社会福祉活動家)

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 念願のJOKERを手に入れていた事が判明した俺達は、2階に上がって部屋を物色していた。探すと出るわ出るわ、スタンガンにコンバットナイフ、そして先ほど殺されかけたクロスボウさんだ。

 階層が上がる度に武器が過激化するという長沢仮説は大当たりだったらしい。ここから更に上の階層に拳銃等があれば、折角JOKERを発見したのに、JOKER解除条件の人と敵対してしまえばコミュニケーションを取るだけで一苦労になってしまいそうである。

 

 

「うーん……微妙。あ、姫萩先輩はスタンガン持っておいてください」

 

「この武器を見た感想が微妙、というのもどうかと思いますが……」

 

「あー……俺はナイフより、木刀の方が欲しかったし、クロスボウって威嚇にも牽制にも向いてないんですよね……連射できて人が死なない分エアーガンのが良いかな。一番良いのがスタンガンですが、ちょっとリーチが足りないのでね……」

 

「そういう意味の微妙……ですか」

 

 

 呆れたような顔をしている姫萩先輩にスタンガンを押しつけ、思考する。

 郷田社長はやはり、2階から武器を回収したようだ。そして2階にクロスボウがあるのであれば、3階か4階にいよいよ実銃が現れる可能性が高いだろう。

 その場合、5階と6階が色々とお察し状態になる為、やはり早期首輪解決が望ましい。望ましいんだが……やっぱり武器は必要か。

 幸か不幸か、ここから1Fへの階段と3階への階段の距離を比較すると、3階の方が近いため、3階に寄った後に1階への階段に移動し、長沢・北条・桜姫先輩・御剣先輩の合流待ちという方針が望ましいだろうか。上手く行けば北条さんの首輪はそれで外せるんだが、楽観視はできない。

 

 

「使う気は無いけど、クロスボウは持つだけ持って行こう。……どうしました、姫萩先輩?」

 

「あ、すいません。色々探っていたら、食料類の下にこんなものが……」

 

「はい?」

 

 

 ……どれどれ、箱の中を覗くと、そこにはマッチ箱程の大きさと厚みのプラスチック製の板が転がっていた。記憶を辿れば、1階で何度か見たことある気がするが、気にもとめなかった。箱の底にあったらしい。

 姫萩先輩が取り出し、掌に載せて眺めている。『tool:player counter』

と書かれたそれは、側面から端子が覗かせており、たとえて言うのならカセット型のゲームソフトのようであった。

 

 

「つーる、ぷれいやーかうんたー?」

 

「ちょっと待ってください先輩、確かPDAに……はい、ビンゴっと」

 

 

 ポケットからPDAを取り出し、接続口を確認する。側面にあるコネクタはバッチリと嵌まりそうだ。用途不明で、あんまり気にしていなかったがもう少しこのコネクタの存在理由を考えておくべきであった。

 

 

「こんなものをPDAに差してしまって、大丈夫でしょうか? その、ルール違反……とか」

 

「このPDAは厳密に言えば、俺のPDAじゃなくて初期配布者も死んでいるのでルール違反でもセーフです」

 

「……そういえばそうでしたね」

 

 

 その辺の事情は全て話しており、漆山の事を思い出してしまったのか、ちょっと嫌な顔をしている姫萩先輩である。……今のはちょっとデリカシー無かったかも。反省……! 反省します!

 なんか気の利いた言葉を考えたが思い浮かばなかった所に、PDAが鳴り響いた。PDAに項目が追加されている。一瞬、姫萩先輩と目を合わせた後に読み進めた。

 

 

『このツールボックスをPDAの側面コネクターを接続することで、PDAに新たな機能を持ったソフトウェアを組み込み、カスタマイズすることが可能です』

『ソフトウェアを組み込めば、他のプレーヤーに対して大きなアドバンテージとなりますが、強力なソフトウェアは起動するとバッテリー消費が早まるように設定されています』

『使いすぎてPDAが起動しなくなり、首輪を外せなくなる事がないように注意しましょう』

『なお、ひとつのツールボックスでインストール可能なPDAは1台のみです。どのPDAにインストールするかは慎重に選びましょう』

 

 

 

「なるほど、PDAを強化するものなんですね……川瀬さん、どうしました?」

 

「うっ……何度か似たようなものを見つけた筈なのに、滅茶苦茶大切なものを見落としてた……!? 凄く大事なものじゃないか……!? 俺の注意力低すぎ……!?」

 

「お、落ち着いてください、川瀬さん……!」

 

 

 全てを読み終えた、俺は酷い脱力感に襲われた。

 俺は自分が思ったより探偵適正が低いのかもしれない。場合によっては、命を左右しかねない大切な情報を見逃していた。そして、それを能力が低いと勝手に見ていた姫萩先輩に発見されたのだ。これは、思い上がりも甚だしいというべきか。

 とはいえ、落ち込んでばかりもいられない。

 

 

「ふっ……俺は今、ようやく無知の知に到達しました」

 

「『自分は無知である事を知っている』……ですか。だ、大事な事ですね? ……十分、引っ張って貰ってるとは思いますけど」

 

「フォローが身に染みます……」

 

 

 多分、アレなんだよなぁ。状況証拠から考えて郷田社長は、少なくとも、罠かシャッターを操作する機能(操作できるのなら、罠の位置が分かる機能を併用している可能性高)、条件は不明だが周囲の人間の位置が分かる機能、最低この2つを持っていたのだ。これだけ広い建物なのだから、他のプレイヤーの位置が分かる機能がどこかにあるというのは道理なのだが、ゲームに乗ったプレイヤーが一方的に持っている状態は望ましくない。

 

 

 

「気を取り直して、使ってみましょうか。姫萩先輩、どうぞ」

 

「……え? 良いんですか?」

 

「こういうのって特別な理由がない限りは見つけた人に優先権があるんじゃないかなって思って」

 

「……川瀬さんって、そういうの気にするんですね」

 

「俺はこれでも、対等な条件で仲間になったつもりなんですー」

 

「すいません、そうでしたね」

 

 

 わざとらしく、むくれてみせ和やかな空気で、QのPDAに差し込んでみる。説明書きを読むに残り生存者の数を表示するツールらしい。気になるけど実用性を考えると、外れな奴だ。【消費バッテリー:極小】なのは、まぁそうだろうなって感じはある。

 …………姫萩先輩がインストールしますか? の部分で『はい』『いいえ』の選択で『はい』を押すと、インストール中の画面が表示される。よくある、バーが伸びてきて0%から100%まで待つタイプのようだ。

 え、100%になったら今の生存者数が表示されるの? ……

 

 

「うわっ……これ心臓に悪い」

 

「い、言わないでくださいよ……!?」

 

「生きてる人数表示されるだけって、悪い想像ばかりする奴じゃないですか」

 

「ですけど……知らない訳にはいかないですよね」

 

「そうなんですよねー……」

 

 

『インストールが完了しました。ツールボックスをコネクターから外してください』

 

 

 ……姫萩先輩がやや震えた手で、ツールボックスをPDAから外す。画面は、初期画面に戻っている。ゲーム開始から約10時間経過、そして……

 

 

――残り生存者数 12名

 

 

 

「よっしゃー! セーフセーフ! 無駄に心配してしまった」

 

「良かったです……」

 

 

 桜姫先輩、長沢、北条さん、御剣先輩……ついでにその他諸々生存確認!

 二人でほっと息を吐く。いやー、こんな緊張要らなかった。

 もし生存者8人とか言われてたら、最悪の事を考えたプレッシャーで暴走していたかもしれない。

 

 

「誰だって、最初の一人にはなりたくないだろうから。まだ殺し合いの均衡が崩れてないようで何より」

 

「殺し合いの均衡……ですか?」

 

「ゲームに乗った人は現在二人確認してるけど、それでも、誰も殺してない状態と誰かが既に殺人を起こした時点だと心理的ハードルが全然違うだろうってことです。日本人的に言うなら、『みんなやってるからやる』の悪い版というべきかな」

 

「あぁ、割れ窓理論……とか、そういう話ですか」

 

「そう、誰かが死んだら均衡が崩れるように一気に展開が進んでしまう気がするんですよね。皆がちゃんと生きているのも救いですが、まだ始まってないのは助かります」

 

 

 現時点で、殺し合いに乗ったと思われる人物は郷田社長と手塚。そのいずれも、だれも殺せていない。つまり、この二人さえ無力化できれば、自分と桜姫先輩御剣先輩カップル以外の生還に関しては何とかなる可能性が高い。むしろ、ゲームに乗らないと決めた以上、そこがスタート地点ととらえた方が良いのかもしれない。

 

 

「でも、私としては、少し安心しましたね。川瀬さんも、ちゃんと仲間の事を心配してたんだな……って」

 

「え、それは流石に酷すぎじゃないです?」

 

「ふふ……冗談です。これで心起きなく、桜姫さん、長沢君、北条さんの3人に会ってみたいと思えます」

 

「一応、置き書きで開始12時~18時頃は2階に上がってすぐの部屋で休む予定にしてるんで、トラブルが無ければそこに集合なんですが……懸念事項としては悪意のある人間に置き書きを読まれた場合ですね。という事で3階行きましょ3階」

 

 

 3階に上がりたい旨を伝えると、姫萩先輩がジト目になる。

 暴力とかそういうのが完全に縁が無いか、嫌悪感を抱いてるタイプの反応だ。

 ……これは、隠された俺の欲望がバレてるな。

 男女間の思考の溝を感じる。

 姫萩先輩があきれた様子で口を開く。

 

 

「……つまり、武器が欲しいんですね」

 

「そんな…! 別に3階の武器に興味があるとか、格好良い武器ないかなとか思ってないです! 信じてください!」

 

「ハァ……これを、語るに落ちるって言うんですね」

 

「真面目に言うなら、スタングレネードや催涙弾が欲しいですね。あとは特殊警棒とか」

 

「そ、そうですね……誰も傷つけないのが一番ですから。……本当にそう思ってますよね?」

 

「……男のロマンを置いといて、実用性だけで言うなら」

 

「……男の人のそういうところは良くわかりません」

 

「悲しい」

 

 

 本気半分、冗談半分の言葉は置いといて便利な非殺傷武器が欲しいのは本当だ。だが、流石に、殺し合いゲームで非殺傷武器を求めるのは難しいのは理解している。違法に改造されたエアーガンとか威力どれくらいなんだろうか。

 武器談義はさておき、俺は、3階の武器が一つのボーダーラインだと思ってる。すでに2階の武器がある程度回収されたから……というのもあるが。そこから先は、制御できない範疇になると……俺の直感が囁いているのだ。

 

 

「冗談はさておき、このまま犠牲を出さずに終わるために、3階の武器を回収して手塚と郷田を一気に無力化しましょう」

 

「分かりました、頑張ります…!」

 

「くれぐれも無理はしないでくださいね」

 

 

 危険人物をどうにかしようという思考だけは一致しているみたいで、長い迷宮へと足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ……俺たちの移動速度、遅すぎ?

 

 

 

 というペースで2階から3階への階段前ホール手前に到着する。

 階段ホールは静かで誰かがいる様子はない。

 

 ここまで1時間経過、クロスボウの警戒を含めた周辺警戒及び罠警戒に思ったより時間を喰ってしまった。ここまで歩いて罠らしきものは1個しか見つけていないので、罠自体はほとんどないのだが、だからこそ油断したころにやってくる性格の悪い奴だ。運が良ければ、3日間罠に気づかずゲームをクリアするプレイヤーが出てもおかしくないレベルである。

 移動優先でほとんど探索に時間は費やしていないが、物欲センサーが働いてしまったのか、此処まで追加のソフトウェアは無し。1階で数回見逃してしまったことが、非常に重く感じる。

 収穫と言えば、投擲用のナイフを十数本手に入れたことくらいか。クロスボウさんはこれにて廃棄となりました。

 

 

 さて、2階にいる俺たちだが実は階段の昇降を未経験である。

 下のホールには待ち伏せはなさそうだが、上のホールに待ち伏せがないとは限らない。2階に遠距離武器であるクロスボウがあったのだから、3階はクロスボウ以上の何かがあると構えた方が良い。そんな悪い想像しかできない状態で、どうやって3階に上がればいいのだろう?

 

 

「よし、作戦会議! 作戦会議しましょう」

 

「あ、はい!」

 

 

 というノリで、休憩を兼ねて近くの部屋に移動した。

 長時間の緊張で、少々テンションがおかしくなった気がする。

 

 

「あー、中々疲れました。この殺し合いゲームって、ルールだけ分かってるトレーディングカードゲームをやってるような気持ちになりますね。ルールは分かるけど、進行は考察するしかなく、相手の持ってるカードの効果をお互いに知らないまま戦っているというか」

 

「カードゲームは従兄弟に何度か教わった事あるんですけど……私は、ちょっと上手く覚えられませんでしたね。そう考えると、やはり此処は私には向いてないのかも」

 

「姫萩先輩がいないと、俺は追加機能について死ぬまで気付かなかったかもしれないので十分役に立ってますよ」

 

「あれは運が良かっただけですよ…」

 

 

 姫萩先輩が目を伏せて答える。

 先輩のタイプだが、自己肯定感が低いタイプというのが正確な所なんだろうか。

 暗いから虐められる。虐められるから暗くなるそんな悪循環に嵌まってしまった感じで。

 突っ込んだ話はあんまりしたくないが、顔採用以外だとそういう理由があってこのゲームに御招待されてしまったのだろうか?

 ……うーん、どうしたものか。ちょっと探ってみよう。

 

 

「姫萩先輩……唐突ですが、趣味はなんですか?」

 

「え? 突然なんですか?」

 

「いや、なんというか。話が全然合わないので、せめて共通の話題がどこかに転がってないかなーと」

 

「趣味…うーん、料理とか、お裁縫とか」

 

「今、我々は分かり合えないことが判明いたしました」

 

「すいません……」

 

「いえ、家事力ゼロな俺が悪いんです」

 

 

 大体、家事関係は母親任せにしてしまっている弊害が出てしまった。

 奇妙な縁……というか想い人の縁? で、殺し合いゲームの協力関係になっているが、姫萩先輩は日常じゃ絶対縁がないタイプ故に距離感がちょっと掴みきれないのである。

 こういう時に甲斐性のある男性がなんて答えるのか全然分からない。

 御剣先輩のような初対面の女性に名前呼びできるようなイケメン力が欲しい。顔は一緒だけど。

 そんなことを考えていると、少し考え込んでいた姫萩先輩が言う。

 

 

「あ、でも部屋にあったガスコンロと保存食で簡単な料理位ならお作りできますよ。良かったら作りましょうか?」

 

「え、あんな食材で料理を!? あー、それならむしろ教えてほしいですね。大学に行ったら一人暮らししたいんですけど、現状すべてインスタントと学食で食いつなぐ算段だったので」

 

「それは流石に栄養バランスが悪いのでは……でも、流石に一朝一夕では私も教えられませんよ?」

 

「望むところですね。このゲームが終わったら、北条さんと妹さん、長沢君を誘って、ゲームする予定なんですよ。桜姫先輩と御剣先輩も誘ってオフ会しましょうオフ会、その時に料理も教えてください。俺の察するに、北条さんも長沢も料理ダメ勢と見ました」

 

「そうですね……皆が無事に帰る事ができれば、それも良いかもしれません」

 

「それを目標にして頑張りましょうか」

 

 

 まだ生存が上手くいくか分からないところで、うっかり未来の話をしてしまった。

 微笑む姫萩先輩は綺麗であると同時に儚さを感じる。大丈夫? 生還が無理だと思ってない? とは流石に聞けない。

 信頼関係はある、仲が悪いというわけではない。

 ただ、陰属性二人だと間を持たせるのが難しいのだ。俺も陰属性で、多人数の中で独りぼっちになる事は余裕なんだが、二人っきりの時に気まずい空気が流れるのは避けたいタイプだ。ここは他力本願だが、北条さんと長沢の若くて明るい中学生パワーが必要だと考える。そう、何もかも自分だけで解決しようとするのが間違いなのだ。

 

 まぁ、そんな馬鹿な考察をしつつ、階段を上がるときの案は思いついた。

 

 そう、やりたいことがあったんだった。

 男なら誰もがやりたいシリーズ。北条さんは持って無さそうだったが、姫萩先輩なら多分持ってるだろう。 

 

 

「そうだ、姫萩先輩……手鏡とか持ってないですか?」

 

「手鏡、ですか? 持っていますけど、何かに使うんです?」

 

「突然ですが、特殊部隊ごっこをしたくなりまして……ほら、手鏡で顔を出さずに、部屋の中を確認したり、通路の角を確認したり。そう……こういう事態になれば、男なら人生に一度はやってみたいかもしれない奴!」

 

「本当に突然ですね!? ……安全以外の部分はよく、理解できませんけど」

 

「男女間の意識の差を感じます……。良いでしょう、このゲームが終わったら男のロマンのすばらしさをたっぷり教えてあげます。むしろ、実演して良さを分かってもらうべきですかね?」

 

「き、期待して待ってますね? 私も格好いいと思う気持ちは無いわけじゃないんですけど……こう、真似できないな、と」

 

「ハハハ……お気遣いどうも。真面目に言えば、ここから先に銃がありそうな気がするので、顔を出して先を確認したくないというか。念の為ですよ。半分はやってみたいからですが。よし、行きましょう」

 

「だ、大丈夫なんですか?」

 

「何も無いよりは良いんじゃないでしょうか。あ、姫萩先輩はホールで後方警戒お願いします。俺が先に3階に上がって、問題無ければ呼びますので」

 

「分かりました」

 

「では、作戦会議終了ということで……ミッションスタート!」

 

 

 

 姫萩先輩から手鏡を受け取った後、部屋を出て階段前ホールに特に異変が無いことを確認する。

 

 

 

 

 特に音もない、静かなものだ。正直、警戒のし過ぎという奴だろうと俺も思う。

 ただ、遊び心がなければ、この命懸けのゲームで精神が持たないとも俺は思うのだ。

 その遊び心を理解してもらえないのが非常に悲しいところなのだが……いや、姫萩先輩は心に余裕があるからこそ遊び心があると誤解しているのか? その辺、意識の違いがあるなら後で話し合おう。

 

 

 さて、手鏡を使い、階段を確認する。

 

 

――誰もいない。

 

 

 ホールで姫萩先輩が警戒していることを確認し、足音を立てないように静かに階段を上っていく。人生で一番緊張感のある階段登りだなと、なんとなく思う。

 

 

 手鏡を出して、3階階段前ホールを確認する。

 

 

 ……おっと、人影が二つ。知らない体格の大きい男の人、そして見覚えのある金髪の女性が、それぞれ黒い何かを構えて――

 

 

 

――パァン!!!

 

――パリーン!

 

 

 

 手の先に衝撃を感じ、持っていた手鏡が砕け散る。

 

 

「は……?」

 

 

 …………どうして?

 いや、冗談半分だった懸念が、本気であったという事実なのは分かる。だが、認識が脳まで到達するのに、時間が少々かかってしまった!

 怖い! 普通に顔だししてたら、俺の脳天がこの手鏡の運命を辿っていた! ヤバい! ヤバい!

 

 

「逃げるぞぉ!!! 撤退、てったいーーー!!!」

 

 

 正気に戻った俺は全力で階段を駆け下る。

 同時に、姫萩先輩に向けて叫ぶのであった。

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