金髪の幼女がここを離れて一時間近くが経過しただろうか。後、二時間もすれば貝木との約束の時間になる。まだ予想以上に時間があるために僕は適当に町を徘徊してみる事にした。
だが、貝木が僕に相談をするなんて事があるとは……貝木は自分の事を人に話す事をあまり好まない人なのに僕に相談をしようとするなんてこれは大きな変化だ。
これは良い変化と言うべきか…それとも悪い変化と言うべきか。まあ、どちらにせよ貝木が態態、僕に話すような内容だからかなり面倒な案件なのは聞かなくても確定と考えるべきかもしれない。
そんな事を頭で考えながら僕は町を徘徊していた。
前から中学生らしき女子の二人組がこちらに向かってきている。その二人の女子の内、一人には見覚えがあったがどこで会ったかは思い出せない。あんまり物覚えが良い方ではない僕だから仕方ないかもしれない。
「それでね…公園で会った人がね……」
「そうなのか…」
すれ違いながらそんな事を話しているのが聞こえてきた。声を聞いても誰だか思い出せないのだから見覚えがあるというのは僕の見間違いかもしれない。
「あの…」
後ろを振り返るとさっきすれ違った女子のうち一人の女子が立っていた。やっぱりこの子、どこかで見覚えがあるな…さっきは気の性だと思っていたけどやっぱりどこかで見たことがあるんだよな。
「何だい?」
僕が威圧をしてしまったのか…なんか少女は言葉を詰まらせている感じがあった。
「あの……公園のベンチでお会いした方ですか?」
「公園のベンチ………あ、あの時、彼氏を待ってた子か。どうりでどこかに会った事があると思ったんだ!」
「やっぱりそうだよね。どこかで会った事があると思ってたんだよね」
急にため口のような口調になりだしたが……僕はそこまで彼女と親しいわけではないんだけど。今の若い子はこんな感じなのか……恐れを知らないとはこの事を言うんだろうな。君は不死鳥で僕は吸血鬼。絶対に相容れない者同士が今、ここに相容れている。
「もう一度会うとは僕も思っていなかったよ。それで態態、話しかけてきたという事は何か僕に用があるのかい?」
「ううん。そういうわけじゃないんだけどお兄さんともう少しお話してみたいなと思って」
この子はもうちょっと警戒心というものをもった方が良い。このまま成長していくと思うと恐怖すら抱いてしまう。
「……僕は別に良いけど……」
「それじゃ行こう!!!」
少女は片手をあげて僕の前を歩いていく。本当に第一印象と違って……わんぱくな少女だな。僕一回ため息をついて少女の後に付いていくことにした。
「お兄さんは仕事でこの町に来たの?」
「まあ、そうかな」
「そうなんだ」
「君の方こそ彼氏とはあの後、うまくいったのかい?」
あそこまで楽しみにしていたのだから、聞かなくても楽しかっただろうけど聞いてみる事にした。
「……うん……まあまあかな…」
なんか歯切れが悪いような感じだと思ったけどそれを口に出すのはマズイと思い口に出す事はなかった。
「そうか………それで君はいつも話したことあると思った人に今日みたいに声を掛けるの?掛けているんだとしたらそれは長年生きている僕からのアドバイスとして止めた方が良いよ。この世には色々な人がいるからね」
「…今回が初めてだよ。それにさすがに誰にでも声を掛けるわけじゃないよ」
「それで僕に何を話したいの?君が僕に興味を持つようなところは無かったと思うんだけどな」
記憶を思い返したとしても心当たりが全くと言って良いほどない。
「これと言って決まったことを話したいわけじゃないよ。私は只、お兄さんともう一度お話がしてみたかったんだよ。あの時はほとんど会話が出来なかったからね」
何でもう一度話したいと思ったのか僕には全然分からない。でも、前を歩いている少女はどことなく笑みを浮かべているように見えた。
何故、笑みを浮かべているのかは分からないが………笑顔はやっぱり良いと思った僕だった。
この中で一番出番を多くして欲しいのは誰ですか?
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忍野忍
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臥煙伊豆湖
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貝木泥舟
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忍野メメ
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神原駿河
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阿良々木暦
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影縫余弦
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羽川翼
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阿良々木火憐
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阿良々木月火
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ス―サイドマスター