原神の世界に転生したので自由に生きたい 作:ヘルメットのお兄さん
暑い夏の日、俺は冒険者として呼ばれ西風騎士団本部に来ていた。依頼内容も知らずに来たので着くなりディルックが何やら大人数を集めているのを発見し眺めていると。
「よう、どうやら扉に引っ掛からないで来れたようだな」
「ガイアか、今日は何の用で西風騎士団に呼んだんだ?」
「一週間前に神殿が見つかったみたいでな、結構大規模かもしれないって事で西風騎士団総出で探索に出るらしいぜ」
「大規模な神殿ねぇ……それで俺は何を?」
「この探索には騎士団の他にも何人かの冒険者を呼んでる、お前さんはそのうちの一人って訳だ、ここが目的地だな」
ガイアから印の付いた地図を受け取るとどうやら明冠峡谷と風龍廃墟の中間辺りにあるようだ、だがゲームではこんな場所に神殿や秘境があった知識など無いし嫌な予感がする。念の為今ではすっかり俺よりもモンドに詳しくなったダダに見せても
『知らない、秘境はあまり本がないけど、それでもここにあるのは初めて』
というので本当に未知の神殿だそうだ。ディルックの方を見ると馬車が複数台用意され始めているのを見る限り準備は整ったのだろう。
「それで行くのか? モンドの巨人さん?」
「行かせてもらうよ、ここで行かなかったら冒険者じゃないだろ?」
「そうこなくっちゃな」
俺とガイアも最後尾の馬車に乗ると未知の神殿に向けて西風騎士団と冒険者達を乗せた馬車がモンドの街から出発する、道中で詳しい話を聞くと冒険者の調査員が既に入口付近を探索したらしく、それによると迷路のように入り組んでいて、更には中に大量のヒルチャールが住んでいるらしい、ふと気になったことをガイアに聞く。
「そう言えば神殿が見つかったのは一週間前だったよな? どうして見つかったんだ?」
「冒険者の一人が雨宿りに入った洞窟が偶然神殿の入り口だったらしい、だが洞窟とは言ってもお前じゃ入れないくらい小さかったらしいぜ。今は穴を広げたから入れるとは思うが俺でもかがまないと入れないくらいだったらしい」
そうして昼に差し掛かるころには目的の神殿に到着した。俺が最後に馬車を降りるとディルックが何やら指揮を執っている。
「第一部隊は簡易野営地の準備、第二部隊はここ一帯の警備に、偵察部隊は冒険者達と共に先んじて探索を……」
どうやらここの探索は数日かけて行うらしい、彼が各部隊への指揮が終わると俺とガイアに気づいたのかこちらに向かってくる。
「やあ、君達は最後尾だったのか。ガイア、君は偵察部隊から取ったデータを頼む、セスは偵察部隊と共に探索を頼んでもいいかな?」
「探索だな、わかった」
「それじゃあ俺はお前たちが戻ってくるまで椅子でくつろいでいるとしようじゃないか」
二人と離れて神殿の入り口前に行くと既に全員集まっているようだ、俺が向かうとそのうちの一人が俺に話しかけてきた。
「おお、セスじゃないか。お前も探索に行くのか?」
「アンバーの祖父さん、そういえば隊長でしたね」
「お前が加わってくれるなら探索は安心だな、高所は任せたぞ?」
彼と会話した後他のチームにも挨拶していく、俺の噂はかなり広まっていたらしく全員が俺の事を知っていた。若い騎士や冒険者たちにもみくちゃにされた後いよいよ探索に行くことになった。
「いいか、あくまで俺たちの目的は探索だ、無理に戦闘を行う必要はない。ヒルチャール程度なら訓練通りに行動すれば消耗は抑えられる。だが暴徒や遺跡守衛の様な大型が出たらすぐに撤退して報告する、いいな? 冒険者は各々の慣れた動きで構わない、だが大型に出会ったらすぐさま撤退してくれ」
彼の言葉を聞きながら俺は冒険者として最後尾にいる、ここなら全員の状況を把握しやすいしいざという時入り口に全員転送できる。
「よし、行くぞ!」
そうして突入した神殿の印象は荘厳だった、素人でもわかる程に精工な建造物が俺達を囲っている。皆が圧倒されている中冒険者の一人が何かに気づいたようで
「見ろ! あそこにヒルチャール達が……!」
そう言われ彼の指した方向を見ると確かにヒルチャールが居た、どうやら暴徒はおらず小さいヒルチャールしかいないようだ。
「全員戦闘準備……慎重に行くぞ」
俺達が武器を抜くとヒルチャール達も気が付いたようでバラバラに叫びだして襲ってくる。
「いいか! 無駄な消耗は避けろ! 確実に倒せ!」
隊長であるアンバーの祖父がヒルチャールの棍棒を躱すと素早く剣を横なぎに振るい一撃で倒す、他の騎士達や冒険者も二人以上で固まって一体一体を相手している。
「@*#&%!」
「おっと」
俺の方にも一体襲って来たがリーチの差は例え暴徒でも俺には勝てない、相手の範囲外から蹴り上げて棍棒を吹き飛ばすと素早く槍を突き刺しヒルチャールを倒す。
もう一体を薙ぎ払った所でヒルチャールは全員倒され若い騎士たちは肩を叩きあっている。
「全員怪我はないな? 少し休んだら先に進むぞ」
そうして5分程休んだ後俺達は神殿を進んでいくが今度は炎を吐き続ける装置だったり雷元素でできた回路だったりとギミックがかなりあった、それに加え複数の部屋に分かれていたりまたヒルチャールが居たりでおそらく中間地点であろう場所に辿り着いたころには全員が結構な体力を消耗していた。
「かなり進んだっすね……まだゴールじゃないんすか?」
冒険者の一人がそう愚痴をこぼす、確かに他の神殿ならもう終点でもいい頃合いなのにまだ先が見えない、どれだけ深いのだろうか。
「仕方ない……一度戻るぞ、ここまでの経路を本隊に報告して、明日またここから探索するぞ」
「了解です……そう言えばこの神殿って不思議な場所ですよね、なんか壁にも落書きとかあるし」
「何?」
騎士の一人が言ったことに俺だけでなく隊長も声を上げる。
「その落書きはどこにある?」
「え、ええっと……結構いろんな場所にあったんですよ。あ、ほら、そこにも……」
そう言って彼が指した先には確かに落書きとしか言えない絵があった。
「本当に描いている……」
「これ、何描いてるんすかね? なんか……龍? それにこっちは……人?」
なるほど、確かに見て見ると大きな龍のような絵に小さな棒人間のようなものが集まっている絵がある。
「太古の龍退治の絵とかか?」
「何にせよこれを報告しない訳にも行かないな。誰かこれを記録に……」
俺は彼らの会話を聞いている時ふと違和感を感じた、この絵の棒人間達の中にやけに大きい棒人間がいるのだ、ただの描き方の問題ならそれでいいのだが……何か感じる。
俺がふとまだ探索をしていない先の部屋を見ると何か音がした、思えばこの時彼らに報告すればよかったのだが俺は何故か一人で奥に向かってしまった。
不思議と彼らは先に進んだ俺に気づかず未だ会話をしていた、俺が部屋に入り周囲を見ると俺の立つ床から四メートル程の高さに更に空間が見えた、謎の音もそこからする。俺は手を伸ばしてふちに手をかけると一息で登り、空間……もう一つの部屋に入った。
「……なんだこれ」
そこにあったのは穴だった、まるで銀河の色に塗られたブラックホールとでもいうべき異質な空間はあらゆる万物を吸い込まんとしているかの様な雰囲気を放っている、俺は正気に戻りすぐさま報告をしようと後ろを振り向くと
「@*? /#%$!」
俺の目の前を火を纏った矢が通り過ぎる、ヒルチャールのボウガンによる攻撃だろうが思わず下がってしまったのが悪かった。
「ッ!?」
俺は抵抗もできずに穴に吸い込まれるとまるで銀河の海を漂うような感覚と共に意識を失った。
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先んじて発見された神殿を探索していた偵察騎士部隊及び冒険者達は神殿の半分ほど探索し終えると一人消えていることに気づく。
「よし、では撤退を……セスはどこに行った?」
「あれ? おかしいな、あれだけ大きかったら気づくはずなんすけど……」
「とにかく帰還する前に探すぞ、幾ら彼といえども集団で囲まれたらただじゃ済まないだろう」
そうして捜索が開始されたが既に消耗が大きかった彼らはその日セスを見つけることが出来ずに帰還したのだった。
その後ディルック主導の下最短での神殿攻略が行われた後徹底的なセスの捜索が行われたが見つけることが出来たのは彼の持っていた巨人の槍(仮)のみ、数か月後冒険者協会にはセスという名の下にモンドの巨人と書かれた捜索依頼の貼り紙が貼られていた。
話がようやく進みます、今まで短編集みたいな感じでしたが次回から明確に原作に絡んでいくと思います。多分。
セスが銀河色に塗られたブラックホールと言っていたのはイメージとしてはマスク焦に行くためのアレです。私はあれが公式では何なのか結局よくわかっていないんですけど何なんですかねあれ。