原神の世界に転生したので自由に生きたい 作:ヘルメットのお兄さん
1 どうやら死んだらしい
ここはどこなのだろうか。
気がついたら奇妙としか言いようがない空間にいた、上を向いて見れば空を覆いつくす程の木々が生い茂り下を見ればまるで宇宙のように真っ暗な床から星らしき光が瞬いている。そして自分の感覚が正しければ地に足がついておらず、浮遊している。
「気が付いたか?」
そして今、俺の目の前では王の玉座と言ってもいい程の煌びやかな装飾が施された椅子に座っている男か女か分からない中性的な顔立ちをした人物が頬杖をついて座っていた。
なぜ自分がここにいるのか、そもそもここは何処なのか、気になる事はあるが今真っ先に確認したい事がある。
「はい……あの、俺は誰なんですか? それにここは……」
そう、今現在自分の中に色々な知識はあるが記憶はない。何故わかるかと言うと例えば地球の歴史や勉学などはある程度知っているが何処で身に着けたのか、そもそも自分の生まれも名前も思い出せない。
「記憶が欠落してるのか……あの馬鹿め」
目の前の人物は舌打ちをするとこちらの目を見て溜息を吐いた。
「一度に言っても混乱するだろうから一つずつ説明していこう、まず私は君たちが言うところの神だ。神と言ってもいろいろいるが私は神々同士が下手な諍いを起こさないように管理する立場にある。名前っぽく言うなら管理神かな」
神などと言う目の前の人物の言葉は俺をからかっているのかと一瞬思うが同時に妙な納得感もある、さもなければこんな奇妙な空間など現代技術でも早々作れないだろう。
「私は表に降臨したりしないから神話に載ることは無いだろうな。そして次に君についてだが、元々は普通の人間で、それなりに名の知れたエンジニアだった。だが自動車の整備時に車体を上げるジャッキが壊れ圧死させられた」
自分は死んだのか、しかしそれだけだったら何故この場所に自分はいるのだろうか。圧死させられるのはそれ程神の興味を引いたのか。
「この説明だけならただの事故、私も君を呼ぶ理由がないが問題は君の死が神々に原因があるという事だ」
「神々に?」
「先程も言ったが私の仕事は神々の管理だ、神同士で争いがあったら私が仲裁しそれでも争うならばルールを定め世界に悪影響が及ばないように抑えるのが私の仕事だ」
ということはこの目の前の神はかなり上の立場にいるのではないだろうか。
「あぁ、自慢という訳ではないがこれでも最高神の次点に位置する立場にある。それで君の死だが、私のあずかり知らぬ所で勝手に神同士が争っていたらしく、私が奴らを沈めた時には地球に様々な災厄として影響が残ってしまったのだ……」
そう言った神の顔は溜息をついた、おそらくその争った神達に向けられたものだろう。
「災厄についてだが影響も大小様々で、世界を揺るがす大地震だったり津波や火山の噴火などの大災害もあれば誰かの気に入っていた物を失くしたなどの小さなものまである、その一つが君の事故だ」
ということは俺は神の争いに巻き込まれたという感じだろうか、しかし地震だとか噴火とかの大災害を聞くと自身の死がなんとなく小さい方だと感じてしまう。
「大災害については多くは発生前に予兆が分かりやすいから殆ど止めたが小さな影響は予兆も小さく分かりづらかった。だから君の死後に気づく事しかできなかったのだ」
その神の顔からは罪悪感が感じ取れたが、俺自身としてはこの神はむしろ災厄を止める側だったのだし責める理由が思いつかないのもあってこっちが申し訳なく感じてしまう。
「俺は気にしていませんから、それに影響を止めてくれている側としてはむしろ感謝しますよ、死んでしまったけれどこうして呼んでくれたんですから」
「そう言ってくれると助かる、そして君のこれからについてだが」
ふむ、知識として死後の世界は宗教的に色々あるがなんとなく日本の知識が多い辺り生前は日本人だったのだろう。ならばこのまま輪廻転生とかだろうか。
等と思っていると
「神同士の下らない争いに巻き込まれた者はこの世界とは違う世界……所謂異世界に転生させることに決めている。特に君は直接の災厄の影響によって死んだ、そのせいでまた地球に転生しても災厄が惹きつけられ被害を受ける可能性が高くなる。故に災厄が惹きつけられない程遠い世界に転生させようという訳だ」
どうやら輪廻転生らしい、しかし地球ではないとなるとどんな事になるか想像もつかない。どうせ記憶も生まれ変わるのだろうし関係ないがせめて人間に生まれ変わりたい。
「それと君自身に記憶はないだろうが君はかなり若くして亡くなった、それもあって記憶を、というよりはここでの記憶か……それを保持したまま転生させようと思う」
なんと記憶を保持したまま転生させてくれるらしい、今知識として思い出したがこういうのを小説のジャンルで異世界転生というはずだ。
「一通り説明したがどうする、早速転生するか?」
かなり気軽な感じで問われた気がするが特に聞きたいことも思いつかないしこのまま転生させてもらおう。
「よし、では転生させるが何か要望はあるか? こちらが転生させるのに何もなしで放り出すのも悪い。ある程度は融通を聞かせよう」
そう言われると何か貰うべきだろうが何を要求するべきか……
「……あ、では転生先の事を教えて下さい」
事前に世界の事を知っていれば困ることは減るだろう、タコみたいな化物が実はその世界の人間だった、等があってもおかしくないだろうし。
「ふむ……原神というゲームは知識にあるか?」
原神、知識としてはかなり新しいゲームで世界を旅する兄妹主人公が謎の神によって片方が囚われ片方がテイワット大陸に力を奪われた状態で落とされ、兄妹を助けるために旅をする。と言う話だったはずだ、ストーリーやシステムもそれなりに知識にある辺り前世はそれなりにやりこんでいたのだろう。
「えぇ、どうやらあるようです」
「なら話は早い、災厄の影響化から逃れ尚且つ一番環境が安定した世界がその原神の世界だ、どんな世界か把握しているなら手っ取り早い、そこに転生させようと思う」
全く未知の世界だと思ったがゲームの世界ならある程度有利に立ち回る事ができるだろう、その点に関しては感謝する事だろう。
「では他に要求は……特にない? 、……流石に要望が説明だけだと私の顔が立たない、何かこう能力とかを要求してくれ」
過度な遠慮はむしろ相手に悪いとは言うが才能を望むのもそれはそれで過度な要求ではないのだろうか。だが実際要求されているのだからもう少し我儘な注文をしてみよう。
「……では神の目を、元素は何でもいいので。それと……あ、樹脂が簡単に入手出来たりはしないですか?」
原神では操作キャラ達は皆(例外あり)神の目というアイテムを装飾品のように服装のどこかに所持している。この神の目を持つことで風を生み出したり炎を纏ったりできるのだ。これを俺も手に入れることが出来れば自衛にもなるし冒険者として稼ぐこともできるだろう。
樹脂については所謂ソーシャルゲームなどで言うのスタミナのようなもので秘境と呼ばれるダンジョンや特定のボスなどで樹脂を消費すればそのダンジョンの報酬を手に入れることが出来る。これが簡単に手に入れば力を付けるのも容易になるだろう。
「ふむ、それなら全ての元素を操れるようにして……樹脂も無制限に使用出来るようにしよう」
なんかとんでもないことを言い出した気がする。しかしやけに楽しそうだし今更やめてなどと言うのも……
「よし、それでは目を閉じていれば転生出来る。少しだがゆっくり休んでくれ」
もう今更だと目をつぶるとゆっくりと意識が薄れていくのを感じる。次に目が覚めたら転生するのだろうか……
完全に意識が消える直前、奇妙な笑い声が聞こえた。
主人公:死んだ際災厄の影響で記憶が欠落した。思い出とかもなくなったのであまりショックは受けて無い。エンジニアだったが明確な機械があまりなさそうなので多分原神世界ではそこまで役に立たない。
神::他の神同士の喧嘩を止める人、基本的に神を手を差し伸べるのが仕事だと思っており暴れたがりの神たちに辟易している。最近の日課は胃薬を飲むこと。