原神の世界に転生したので自由に生きたい 作:ヘルメットのお兄さん
「……知らない場所だ」
目が覚めるとそこは草原だった、寝ぼけた頭が徐々に覚醒していくと自分が死んで、管理神の計らいで原神の世界に転生したという事を思い出す。
「ここは……星落としの湖?」
周囲を見渡すと目の前には七天神像らしき物が湖に囲まれていた、その先に見える風車の見える街らしき場所はモンド城だろう。
「本当に転生したのか……」
実際に目の前にある七天神像を見ると原神の世界に転生したと感じる、ある種の感動を覚えながら七天神像を観察していると
「ん?」
違和感を覚える、やけに七天神像が小さく見えるのだ。ゲームではこの像は大まかだが4、5メートルはあるはずだ、しかし俺の目線は七天神像の三分の一程の高さにある……嫌な予感がして湖に映る自分を見ると
「な……なん……これ……!?」
思わず絶句してしまう、何せ今の自分はどう見ても3メートルはあるのだから。
……冷静になるのに大体30分は経ったか、取り敢えず落ち着いた俺は改めて自分を見る。顔立ちは黒髪黒目の至って普通の日本人顔、体格は薄っすら筋肉がついてはいるがやや細めだろうか。服装は茶のロングコート……のような服にジーンズ。腰にポーチが付いている。……神の目が見当たらない? 確認はしたいがそれよりも問題は身長と体重である。ここまででかいのなら一度測りたいがどうしようと首をひねっていると……七天神像のそばに黒電話が落ちてきてけたたましい電話音が鳴り出したのだ、思わず耳をふさぐが意味がないと分かると受話器を取り、耳を傾ける。
「聞こえるか、セス」
管理神の声が聞こえた、安堵すると同時に聞きなれない言葉を聞く。
「聞こえます……けれど、セス?」
「君の名だ、付けるのを忘れていたからな。悪くないだろう」
「えぇ、悪くはないです。……あの、聞きたいのですが」
「その体についてだろう……簡潔に説明するから聞いてくれ」
言う前に当てられ思わず口元を押さえてしまう。読心術でもあるのだろうか
「君をテイワットに送る直前私が一度粉微塵にした神が嫌がらせをしてきてな……君の転生時に妨害され転生先の身体や能力が滅茶苦茶にされた。本来はどこかの子として生まれ変わらせるつもりだったんだが咄嗟に君を成長させて転移と言う形にした……詳しい説明はいるか?」
粉微塵にされた神についても気になるが今は後回しだろう。
「……お願いします」
「よし、まず体格だが今の君は290㎝、60㎏と極端な高身長低体重になっている。健康に影響はないから直ぐに病気になったりはしないだろうが……」
充分問題な気もするが取り敢えず話を聞くことにする
「……しないだろうが?」
「……奴のせいで神の目を手に入れる才能が破壊された、つまりこの世界で君はこの先神の目が手に入ることはないし元素視覚も使えない」
その言葉に視界が絶望に染まった、一生神の目が手に入らない……? 俺が思わず受話器を落としかけると
「だから別の才能を与えた、私の得意とする空間術だ」
「……はい?」
今度は別の原因で受話器を落としかけた。
「あの……どういうことですか」
「神の目を手に入れる才能は奴に酷く破壊されたからな、私でも修正が出来なかったが君をそのまま送るわけにもいかない。だから代用として私が最も得意とする魔術……空間術の才能を与えた。これで少なくとも簡単に死ぬことは無いだろうな」
空間術とは、原神の世界にいるのに別のゲームの話になっては無いだろうか。
「いや……それはありがたいんですけどその……空間術ってどうするんですか、俺使い方とか全く分からないんですけど」
「まぁ、そうだろうな。だから……隣に本が落ちてるだろう?」
言われてみると辞書並みに分厚い本が落ちていた、
「開いてみてくれ」
受話器を耳にしたまま言われた通りに片手で開いてみると脳に直接情報が送り込まれるような感覚に襲われる。思わず本を取り落とすが次の一瞬には頭の中で空間術についての知識が浮かんでくる。
「……これは」
「今から律儀に勉強しても何年もかかるだろうからな、少々ズルをさせてもらった」
頭の中の情報を整理してみると……数年どころか常人なら一生かかっても習得出来るか怪しい、それほどの知識を一瞬で理解できるのだからむしろ神の目より凄いのでは。
「ありがとうございます。……でもいいんですか? これだけのものを……」
「なに、君の要望に応えられなかった分これくらい安いものだ」
ここで拒否するよりもありがたく受け取った方が良さそうだ。それにこのまま貰わず先に進めばヒルチャールに勝てるかすら怪しい。
「じゃあ……ありがとうございました。今度は死なない様に頑張ります」
「うむ、すぐ死なれても困るからな。あぁ、それと本来は赤子として転生させるつもりだったからな。今は所謂ストーリー開始から10年程前だ、今のうちに関わりを作るなり戦い方を身に着けるなりしておいた方がいい」
確かに空間術は今身に着けたが喧嘩などしたこともないし知識すら乏しい。戦いにおいては素人同然の今自己流にせよ自衛は出来るようにしなければ。
「それでは……改めてありがとうございました」
「うむ、汝の今後に幸運を」
そういって受話器を置くと受話器は消えてしまった、しかし魔導書はそのまま残っていたので早速覚えた空間術でポーチにしまい込む。その場から立ち上がりモンド城を見据えると俺は歩を進め始める
「……よしっ」
原神の世界に来たのだ。今度はこの世界で自由に生きよう、そう決意するとモンド城に向けて走り出した。
……10分後、俺はヒルチャールに追われていた。
「@*「¥#%’!!!」
事の発端は5分前までさかのぼる。
俺はゲームの時のマップと照らし合わせて道を進んでいたらはぐれていたヒルチャールと出会った、どうやら周りの仲間を探している雰囲気だったしこのまま素通りしてしまおうと忍び足で進んでいたらヒルチャールと目があった。
「……」
「……」
互いに硬直するが暫くするとヒルチャールが弾かれたように俺とは逆方向に走り出す。今考えたら3メートルはある人間と出会ったら誰だって逃げ出すだろう、怖いし。
そうして戦闘にならずホッとしていたら後ろから何人もの足音が聞こえてきて、嫌な予感と共に振り返ると何人ものヒルチャールが棍棒を振り回しながら襲ってきたのだ。
「うおぁあああああ!!?」
そうして逃げ出してから今に至る。後ろを見るとまだ追いかけて来るがよく見たら数は増えているし巨大なヒルチャールであるヒルチャール暴徒まで追いかけてきていた。
今はまだ足のリーチがあるお陰で追いつかれてはいないがスタミナもそれ程ある訳ではないし時間の問題だろう。
「くっ……何とか逃げる方法は……」
そう言って思いついたのは先ほど覚えたばかりの空間術、しかし一度本を仕舞うのに使えたとはいえ土壇場でまともに発動できるだろうか。そう考える間にも徐々に距離が縮まってくる、体力が底を尽き始めていた。
「もうなるようになれだ!」
そういって空間術を発動する、一瞬元素とは違う力が俺を纏うとまるで最初からいなかったかのように消滅する。ヒルチャール達は消えた敵を探すがついぞ見つけることは出来なかった。
「……いたた、何とかなったのか……」
そう呻く俺は巨大な木の上からヒルチャール達を見下ろす、いつの間にか風立ちの地まで逃げていたようで七天神像の傍にある巨木の上に瞬間移動していた。
「あいつらがいなくなったら降りよう……」
しかしヒルチャール達がいなくなるころには夜になっていたのでこの日はこのまま木の上で一夜を明かすことにした。
……誰かの視線を感じながら
空間術は物を仕舞ったり瞬間移動したりと万能ではありますが元素反応を起こすことは出来ないのでアビスの魔術師とかどうするんでしょうね(他人事)