原神の世界に転生したので自由に生きたい 作:ヘルメットのお兄さん
季節は春、天気も良くぽかぽか陽気で最高の環境だ。こんな日は日課の
鹿狩りでは蟹を使った新作料理を作りたい、という訳で俺は今、地図で言う望風海角と星拾いの崖の間にある浜辺に来ている。ここはゲームでは主人公のスタート地点でもあり少し特別な場所だ。
目の前で逃げる蟹を空間術で捕獲していくと浜辺の隅っこにヒルチャールがいた。
他に群れはいないしはぐれかと思いつつ、最近作った巨人の槍(仮)を構え接近するとこっちに気づいたのか手を振り
「待ッタ! 止メテ!」
思わず手を止めてしまった、まさかヒルチャールがテイワット語で喋るとは思わなかった。
「お前、喋れるのか?」
「少シダケ、オレ、人間ノ言葉勉強シテル!」
よく見るとこのヒルチャールは仮面に何も模様が描かれていない、それにこいつの後ろを見ると沢山の本が置かれている。
「ええと、何で人間の事なんか勉強してるんだ?」
「オレ、元々群レニ居タ、アノ大キイヤツ気ニナッタ。デモアソコハ人間ノ住処、ダカラ人間ノ事勉強シタ」
「あそこ……モンドの街か、なんで一人なんだ? 他のヒルチャールはいないのか?」
「オレ、勉強バカリシテタラ皆オレヲ変ナヤツッテ言ッテ追イ出シタ……」
落ち込んでいるようだ、しかし追い出されたか……ヒルチャールは確か外部の人間を敵視すると聞くし、自ら外と関わろうとするのは異端なんだろう。
「これからどうするんだ?」
「オマエ、人間ダヨナ?」
「人間だよ」
ちょっと背がでかいだけで。
「オレ、モット人間ヲ勉強シタイ! 連レテ行ッテクレ!」
そんな気はしていた、どうもこのヒルチャールが異端だというのは人間好きと言うだけでもなさそうだ。
ヒルチャールは基本、知能が低い。故に社会と組織はかなり原始的だが、このヒルチャールはかなり知能が高そうな気がする。根拠としては弱い気もするが本読んでるし、理解も多分出来ているんだろう。
連れて行ってもいいと言うと
「本当カ!」
と飛び跳ねている、とりあえず人前に出すのもまずいので空間術でヒルチャール用の空間を創り出してそこにヒルチャールとこいつが読んでいた本を入れ込む。ついでになんとなく和室をイメージして空間を作った。
「人間ハコンナ事モデキルノカ……」
「いや俺が特別なだけだ、所でお前、名前はないのか?」
ずっとヒルチャールだったら呼びづらいことこの上ない。聞くと何やら本を漁り始めるとこっちに本を持って戻ってきた。
「ダダダ! 俺ノ名前ハダダニスル!」
ダダダ……じゃなくてダダか、本……というか持ってきた地図を見る限りダダウパの谷が元か。
ヒルチャール改めダダを空間に入れると入口を消す、だが消す直前にダダに
「街二着イタラチョットダケ開ケテイイカ……?」
と言うので空間……ダダの部屋に俺の視線とリンクさせて外が見えるようになるテレビっぽいものを作った。これで街に入っても誰もダダに気づくことはないだろう。
現状できそうなことをやり終えると街に戻る、途中群れのヒルチャールがいたから倒したがダダ自身は違う部族だからか人間の事ばかり考えてるからか気にしていなかった。
「オレ、本が沢山読メル場所ニ行キタイ!」
鹿狩りでの依頼を達成した後沢山の人を見たからか興奮しているダダにこんなことを言われた、俺としてはまだ昼だしやることもないので構わないのだが問題は本がある場所がこの街では一つしかないという事、しかもその唯一が西風騎士団にあるのだからどうしたものか。一冊や二冊なら借りるのに問題ないだろうがダダの期待からして絶対十冊でも足りない、あとダダを見て討伐なんかされたら目も当てられない。とはいえ外に出さなければいい話だが。
取り敢えず考えてても仕方ないので西風騎士団の皆に挨拶をしながら西風騎士団本部に入る、図書館の場所はゲームでも何度も行ったし迷う事はない。頭を低くしながら図書館に入ると
「おや、セスじゃないか。君がここに来るのは初めてじゃないかい?」
何やら資料を持っているディルックがいた、後ろには彼よりも多くの本を抱えた眼帯の男……まさか
「お前が噂の巨人か? ディルックから聞いているぞ」
「あぁ、君にはまだ紹介していなかったね。僕の友人のガイアだ、仲良くして欲しい」
……やっぱりガイアだ、まぁあの眼帯と特徴的な声を聞けばわかるに決まっている。
「よろしく……それでディルックは何か調べ物か?」
「うん、最近ヒルチャールの動きが活発化しているからね、せめて原因がわからないかと昔の資料を掘り返しているんだ」
「へぇ、頑張ってるんだな」
「何かあってからじゃ遅いからね、西風騎士団としてモンドの街は絶対護らないと」
「……そうだ、モンドの巨人ならヒルチャールの動きについて何か知ってるんじゃないか?」
突然ガイアが口を開いたと思ったら……確かに何度も外には出ているが最近は討伐任務も(ウェンティが嫌な顔するので)ほとんど行っていないしヒルチャールの変化なんてわかる訳もない。
「いや俺は……」
「……僕からも聞いていいかな、セス。君は冒険者だ、僕たち西風騎士団と違って自由に動ける君なら僕らが気が付いていない事も知っていると思うんだ」
……転生してから数ヶ月たった今、なんだかんだディルックとはそれなりに会って話している、それに何度か依頼を受けたり手伝ってもらったりと結構仲は良好な自信がある、是非とも力になってあげたいが……
ちらりとガイアを見下ろす。
「どうした?」
ガイアがなぁ……いや、ガイアを悪く言うつもりは全くない、彼も彼なりにこの街を護ろうとしているのは知っているしゲーム時代の事もあってガイアは嫌いではない……けどなぁ……
「こいつと話すとボロ出そうなんだよなぁ……」
「……? 何か言ったか?」
「いや、引き受けようって言っただけだよ」
思わず口に出てしまったが身長のお陰で聞こえなかったようだ、取り敢えずテーブルに移り二人から資料を見せてもらう。
「ここ一か月でヒルチャールの群れが増えているんだ、それぞれの強さはそれほどでもないが一つの群れにいるヒルチャールの数がかなり増えている」
「加えて一つの群れに暴徒が二体以上いるのも増えてきている、討伐に向かったウチの者も返り討ちにあってるって訳だ」
資料を見る限り一年前のヒルチャールの数と比べて明らかに増えている、この街の近くだけでも十か所以上の群れが確認されているようだ……? ダダがやけに騒がしい、俺の目を通してさっきの会話も把握しているだろうし何か言いたがっているのか? 二人にバレないよう俺の耳のごく近くに空間を開けダダの声が聞こえるようにする。
「(おい、どうした?)」
『アイツラ、好肉族ダ』
「(好肉族?)」
『オレ、好肉族ニ居タ、アイツラ最近イノシシ沢山集メテル』
「(集めてるって……なんでだ?)」
『アイツラ食ベルノ大好キ。ソレトアソコハ王ガ仕切ッテル』
二人に熟考するふりをして詳しく聞き出すと王と呼ばれるヒルチャールは本来群れるのを嫌うそうだ、だがダダが居た集落の王は積極的に群れを率いていたそうな。好肉族は食べるのが好きらしく、モンドの食料も減っているのではないかと言われて二人に最近の肉類の流通を確認してもらうと
「確認したが……毎月ほんの少しづつ、分かったうえで見ないと気づかないレベルで減っていた、よく気が付いたな?」
「ガイア、大団長に報告してヒルチャール討伐を提案しよう。今は「まだ大丈夫かもしれないがこのままだと群れが増えて商人が危ないんだろ? それに肉も減って鹿狩りの値段が高騰しちまう」……うん、そういうことだ」
二人が話している間に更にダダに聞くと、おそらく最近増えているという群れ全てが好肉族かもしれないという事、王が指揮をして複数のグループを作らせモンド中の肉を集める気ではないかと。それを幾らか怪しまれない様に誤魔化しながら二人に話すと慌てた様子で出て行ってしまった。追いかけた方がいい気もするが人が完全にいなくなったのでダダを出して思う存分本を読んでもらう事にする。
「イイノカ? アイツラ追ワナクテ……」
「いいよ別に、喧嘩別れじゃあるまいし。それにこれ以上話したらお前のことがばれて討伐対象にされるかもしれないだろ」
そういうとダダは身震いして本を読みに向かった、まぁあの二人なら事情を話せば剣は収めてくれそうではあるが。
そうして夜になるまでダダは本を読みふけり満足そうに空間を通ってダダの部屋に戻っていった、「これで人間のことをもっと知れそう」と言ってまた来たいと言うので俺の日課に午後に図書館に行くことが追加された。
三週間後、ディルック率いる騎兵隊がヒルチャールの王を討伐し群れの数も一気に減らすことが出来たらしい。ディルックからは「君のお陰で事前に街を護ることが出来た」と嬉しそうに言ってくるがガイアは俺がやけにヒルチャールに詳しかった事について怪しんでいるらしい、面と向かった時は遠回しに感謝されたが。
ダダの台詞書きにくいんで多分次から普通になります、彼にはテイワット語頑張って貰います。