原神の世界に転生したので自由に生きたい 作:ヘルメットのお兄さん
この世界に転生してから一年が経った、時間が経ちすぎだと思わなくもないがダダの件以降目立ったことがなかったので仕方がない。それと今日は記念すべきウェンティからの聖遺物集め禁止令が解禁される日なのでまた無相の風でも狩って行こうかと宿を出ると宿のおばあさんから呼び止められた。
「あらセスちゃん、今日はアンバーちゃんが待ってたわよ? 今は鹿狩りにいるんじゃないかしら」
「アンバーから? わかった、ありがとう」
『アンバーって誰だ?』
「赤いウサ耳つけた女の子、ダダも見たことあるだろ」
『チビ達がお前を潰していた中にいたな』
アンバーとはあれからも何度か会っている、大体は他の子供達と混ざって俺に登りに来るが。
宿を出て寝ぼけているウェンティと鹿狩りに向かうとアンバーと彼女の祖父が待っていた。
「おお、来たか。待っていたぞ」
「おはようセス! ……と、そっちの子は誰?」
「僕はウェンティだよ、子っていうけどこう見えて僕は君のおじいさんより……」
「あー、今日は何かあったんですか?」
俺は彼女の祖父に確認を取ると。
「実はな、この子が君の冒険についていきたいと言うんだ」
「はぁ……冒険ですか」
廃人と呼ばれることならしているが最近は特に冒険と言われると微妙である。
「本当は私も同行したいが西風騎士団の仕事でこの街から動けなくてな……それに君は私より戦いに慣れているだろう、できればこの子に自衛の術を教えてあげて欲しい」
「それは構わないですけど……いいんですか?」
「……一度外に出たこの子を君が保護してくれただろう」
結構前の事だが覚えている、初めてアンバーに会った日でもあるしな。
「過保護気味な自覚はあるがあれから暫く外に出ることを禁止していたのだ……それがストレスにもなったのだろうな、最初は私の部隊の訓練を熱心に見ていたがここ最近は外に行きたいとずっと言っていてな……」
かなり心配しているのだろう、元より断る理由もないし構わない。
「いいですよ、アンバーは俺が責任を持って守ります」
「ありがとう……この件は依頼としてお願いしておこう、冒険が終わった後は西風騎士団本部に来てくれ」
「ええ、わかりました……ウェンティ、不貞腐れてないで行くぞ。アンバーも行こうか」
「えー、僕まだご飯食べてな……うわわ、せめてリンゴだけでも食べさせて!」
「うん! 冒険だ!」
ということでちゃんと朝食を取ってからアンバーの祖父と別れて昼、今は清泉町に来ている。
「セス、ここで何をするの?」
「モンドで配達依頼受けてきたからそれの運搬、ついでにここって狩人がいるしアンバーに弓を教えられるんじゃないかなって」
「セス、アンバーって弓を使うの?」
「前にどんな武器が好きか聞いたらかっこいいから弓だって、剣もおじいちゃんが使ってたから好きだけど、だってさ」
清泉町は狩人の町と言ってもいい程に狩人が多い。最初はアンバーを連れて何か討伐でもしようかと思っていたのだが将来の偵察騎士とはいえアンバーはまだ神の目も持っていない、アンバー自身は何もできないし守りながら戦うのも不安が残る、それなら狩人達の話を聞いてみたり教えてもらったりした方が危険も少ないしアンバーにとってもいい経験になるだろう。ここまで歩いて疲れたアンバーを背負ったままウェンティと共に依頼主であるドゥラフに会いに行く、ゲームでは狩人達のリーダーだったがこの頃から若きリーダーとして活躍していたらしい。
「お前が依頼を受けた冒険者……か……?」
「あー、身長に関しては気にしないでください。はい、これ依頼の物です」
「あ、ああ……助かる、それじゃあ報酬を……」
「あ、その報酬ですけど代わりにお願いがあるんです」
「? それは構わないが何をするんだ?」
俺はアンバーに弓を教えてあげて欲しいという旨を伝えるとドゥラフは難しいといった顔をする。
「この子に弓を教えたいと……難しいな」
「そうなんですか?」
「弓は弦を引くのにかなりの力がいる。俺達が使っているのは取り回しがききやすい短弓だがそれでも子供にとってはかなり重い」
ほら、と言いながらドゥラフはアンバーに一般的な弓を渡す、ウェンティなら膝裏程の長さだがまだ小さいアンバーにとっては身長よりも大きい弓だ、持つのも苦労している今ではとてもじゃないが引く事はできないだろう。
「お……重い……」
「ううむ……しかしせっかく弓を習いたいと言っている訳だし俺としても教えたいが……ああそうだ、子供のお遊び用の弓があるからそれを使ってみるか、ろくに飛ばないが構えの練習にはなるだろう」
幸運にもドゥラフは子供用の弓を持っていたそうでわざわざ持って来てアンバーに渡してくれた、嬉しそうに軽い弦を引いているアンバーを横目に俺が礼を言うとドゥラフは
「狩りの仕方も教えていいか? 俺たちの弓術には狩りとしての動きも含まれている、それも教えておきたい」
「ええ、勿論」
「それじゃあセス、後でね!」
話は終わりドゥラフがアンバーに教えている間、ウェンティは新しい詩を狩人たちに聞かせていて俺はやることがなくなっていた。
どうしようかとサイズの合わない適当なベンチに座っていると
「暇だな」
『セス、だれか見てる』
「?」
ダダに言われて周囲を見渡すと俺の視界の隅に三毛猫耳がついた幼女が凄く見ていた、かなり上手く隠れているが俺の身長からでは耳が見えている。俺がそちらを見ていると相手も気づいたのかとてとてとこっちへ走ってくる。
「あなた、パパとお話ししてたけどどういうかんけい!?」
「……えっと、君は?」
「あたしはディオナよ! 今日はパパとあそぶやくそくしてたのにパパはあのうさぎ耳の子と何かしてるし! あなたはすっごくおおきいしどういうことなのにゃ!」
最期に関しては俺が聞きたい、だがディオナだったのか……キャッツテールのバーテンダーだというのは知っていたがドゥラフの子だとは知らなかった。
「えっと、ごめん。君がパパ……と約束してたのは知らなくて」
そういうとディオナはむすっとした顔のまま
「もういいわよ……それよりもあなたすっごくおおきいけどどうしたらそうなるの?」
「え?特に何もしてないけど……」
「そうなの? それじゃあ何かとくべつなごはんとか……」
「それも特に…普段は沢山肉を食べて夜に酒でも飲んだり……」
そう言うとディオナの目つきが猛禽類のように鋭くなって
「あなたまで酒を飲むの!? あの人を惑わせて、人の頭をおかしくさせる悪魔の飲み物を!」
凄い剣幕で近寄ってくる、言ってから思い出したが彼女の嫌いなものは酒だった。バーテンダーなのに。
「い、いや……たまに飲むくらいだから、だから近いから!」
「ハッ……ご、ごめん、あたし酒は大っ嫌いなの、パパはあたしの尊敬する人! なのに酒を飲んだパパは……ああもう!」
ここにはない酒を恨んでいるのか空を睨むディオナ、これ以上話すと怒りのあまりアカツキワイナリーにでも突撃しそうなのでさっさと別れようと席を立つと
「あなたはお酒は飲んだらダメだからね!」
と言われた、正直あそこまで嫌悪してるとは思わなかった。もう夕方になっていてそろそろ帰る時間になってきたので歌い終えて狩人から色々貰っていたウェンティを回収してからドゥラフの所に行きアンバーの訓練の様子を見に行った。
「あ、あそこじゃない?」
ウェンティが見つけた先には小さめの木の上から的に矢を命中させているアンバーの姿があった。木の下にいたドゥラフに近寄り
「ん……ああ、もうそんな時間か」
「アンバーはどうです?」
「かなり筋がいい、あの歳であそこまで当てられるのは俺たちの中にも中々いなかっただろうな」
見ると的には5本ほど刺さっていてその周りには10本以上の矢が散らばっていた。
「そんなに凄いんですか?」
「ああ、基礎を覚えて背も伸びて、俺達と同じくらいになるころには狩りの名手にもなれるだろう」
「へぇ……あ、そういえばディオナって子が怒ってましたけど」
そういうと顔を真っ青にして
「すまないが今日は終わりにさせてくれ!清泉町に来てくれれば誰かが教えてくれる。それじゃああの子は任せたぞ!」
と言って凄まじい速さで去っていった。
「あれ? ドゥラフさんは?」
「あの人は急用が出来たからまた今度だって」
「そうなんだ、あ……もう暗いね」
アンバーが空を見ると太陽は半分しか姿を見せなくなっていた。アンバーに肩車をせがまれたので素直にしてあげると
「やっぱりセスって大きくて最高ー!」
「それは良かった、それじゃあウェンティも帰るぞ」
「ねぇ、僕って今回来なくてもよかったんじゃない?」
「……」
「もしもーし、セスー?」
「アンバー、帰ろうか!」
「セスー!」
モンドの街に帰ると人はまばらになり始めており、空は星空が見え始めていた。西風騎士団の本部に着くとアンバーの祖父がすぐそばで待機していた。
「おじいちゃん!」
「おお、お帰り……その弓は?」
「これはね、ドゥラフさんからもらったの!」
彼がこちらを見るので細かい説明は俺が代わりにすると
「なるほど……清泉町で。アンバー、次またあそこに行きたい時は私か彼らを呼ぶんだ、それと弓の練習は私の庭でなら大丈夫だろう、街では使ってはだめだぞ」
「うん、わかってる!」
「いい子だ……今日は助かった、ありがとう」
「いえ、こっちも息抜きできたので楽しかったですよ」
「それならよかった、もし君が良ければまたこの子を連れて行ってあげて欲しい。勿論、君の行ける時で良い」
「ええ、喜んで」
そうして二人と別れると俺とウェンティは今日もエンジェルズシェアでアルコールに浸る、頭の片隅に猫耳とちょっぴりの罪悪感を思い出しながら。
主人公の身長要素どこ…?