部長達に扱かれた翌日…。
今日から7日間だけ、五条先生が考案した特別修行メニューを行う事になった。朝の8時30分に来るようにと言われた部屋に入ると、部屋には五条先生の姿は無かった。
呼び出された部屋の中は修行する様な環境では無く、ソファー、テーブル、テレビ、冷蔵庫だけが置かれているシンプルな部屋だった。テーブルの上には数十本ある映画のDVDが山の様に積み上げられ、ソファーの上にはボクシンググローブを両手につけている、ブサカワな熊のぬいぐるみが一体座っていた。
「いや〜待たせてごめんね一誠」
何時もの軽い感じで五条先生はドアを開けて、部屋に入ってきた。
「そこまで待ってないんで良いんですけど…俺の修行って何するんすか?」
「まあまあ、説明するから焦んなくても大丈夫だよ」
部長達が外で修行をしているのに、一番修行しなくちゃならない俺は部屋の中でじっとして居られなかった。
焦っている俺は、修行メニューについて五条先生に早急に説明を求めた。そんな俺を五条先生は頭をクシャクシャと撫でてソファーに座らされた。
「レッスン1、赤ちゃんレベルの魔力量を底上げする修行だよ♪」
「脱・赤ちゃん魔力とおさらば出来る修行メニューは一体!?」
「それは──映画鑑賞だよ♪」
部長の眷属悪魔になってから悩んでいた赤ちゃん魔力量を解決してくれる修行メニューが映画鑑賞と聞いた瞬間、唖然とした。唖然としている俺に、五条先生はソファーに座っていた熊のぬいぐるみを投げ渡してきた。
「なんすか、このぬいぐるみは?」
「そろそろ動くから見てな」
五条先生がそう言った瞬間、手に持っていたブサカワな熊のぬいぐるみがひとりでに動き出した。動き出した熊のぬいぐるみは、俺の左頬に真っ直ぐな左ストレートをお見舞いしてきた。プロボクサー並の左ストレートを食らった俺はそのままダウンした。
「痛てぇ!!何なんすかこのぬいぐるみ!」
「そのぬいぐるみは一定の力を込め無いと、今みたいに襲って来るよ」
「それを先に言ってくださいよ…。このぬいぐるみと映画鑑賞で、どうやって魔力の底上げ修行になるんすか?」
「今日は他の修行メニューの説明があるから映画一本だけで、明日からは六時間このぬいぐるみに魔力を流しながら、ぬいぐるみと一緒に映画鑑賞をしてもらう。映画のジャンルは恋愛映画からホラー映画まであるけど、どれから見る?」
映画を観なくても、この熊のぬいぐるみに一定の魔力を流しながら修行したらいいんじゃないかと思った。その事を五条先生の言うと、五条先生は感情と力の関係性について話し始めた。
「神力、魔力、光力、霊力、妖力等の力は感情によって大きく変わってくる。テンションが高い時、怒った時には力が昂る、夕麻の一件で経験してるから分かるでしょ?」
五条先生の言う通り、夕麻ちゃんに対して怒りの感情しか湧かず、気づいたら
「色んな状況下に置かれると、さっき言った力は感情によって左右される。だから一誠は、ハラハラ、ドキドキ、ワクワク、胸糞悪い展開の映画を観ながら、そのぬいぐるみに一定の魔力を流してもらう」
「でも…本当に魔力量上がりますか?」
「上がる。分かりやすく[ドラグ・ソボール]で例えると、空孫 悟とその息子が、セリとの戦いが行われる日まで、一定の気を流しながら日常を過ごして、気のコントロールと気の量を増やす方法と同じだよ」
俺は早速、五条先生が考案してくれた修行メニューに取り掛かる為に、数ある映画の中でホラー映画をDVDデッキに入れて再生した。五条先生は映画一本を無傷で見る様にと、一言言って部屋を出ていった…。
〇
1時間30分後…。
1本の映画を見終わっている頃に、僕は念の為にアーシアを連れて一誠の修行部屋に向かっていた。修行部屋の前まで来ると、中からエンディング曲が流れているのを確認してから部屋の中に入った。
「ご、ごびょうベンべぇ〜」
「イ、イッセーさん!?」
部屋の中に入ると、一誠は顔をパンパンに腫らしながら床に沈んで居た。床に沈んでいる一誠の横には拳を上にあげて、勝ち誇った顔をしている熊のぬいぐるみが立っていた。念の為に連れてきたアーシアが役に立ち、パンパンに腫れていた一誠の顔を治療してもらった。
「次はレッスン2。ドキドキ!命懸けの逃走中!」
アーシアが一誠の治療を終えてから、アーシアと一誠、堕天使チームを集めた。次のレッスンは、堕天使チームに一誠を追いかけ回してもらう。
「命懸けの逃走中って…」
「言葉の通りだよ〜。普通の修行じゃ、スタートラインに立てないからね…だから、このレッスン2は、迫り来る四人の堕天使達が光の剣 又は 光の槍で追い掛けて来るから全力で逃げる事!制限時間は3時間だからね♪」
一誠が全速力で山道を走って行った…。
一誠が走ってから1分後、堕天使チームに逃げた一誠を追いかけ回せと指示を出した。一誠の肉体、戦闘力、戦闘センス、全てが10段階評価でオール1の一誠が皆と同じ様な修行をしても無意味だ。
「よし、1分経ったから一誠を殺すまではいかないけど、重症させる勢いで追いかけ回してきてね〜。手加減したら…分かるよね?」
〖イ、イエッサー!〗
一誠が山の中を逃げ回っている間、修行を頑張っている生徒達の為に五条特製昼飯を作って待っている事にした。冷蔵庫の中を物色しながら、昼飯の献立を考えていた。
「昼だし…中華にしようか」
棒棒鶏、油淋鶏、エビチリ、青椒肉絲、回鍋肉、白湯スープ、デザートに杏仁豆腐を昼飯メニューに決定した。現在の時刻は11時、2時間半後には全員が別荘に腹を空かせて戻ってくる。調理に取り掛かると、誰かに料理を作るのが久しぶり過ぎて少しテンションが上がった。
〇
2時間半後…。
リアス達は腹を空かせながら午前中修行を終えて、別荘に戻ってきた。空腹状態のリアス達は、五条翔が作った中華料理の匂いにつられて広間に集まった。
「五条先生が御一人でこの量を作ったのですか?」
「まあね、育ち盛りの君達なら食べられるでしょ?さあ、手を洗ってから召し上がれ」
リアス達は速攻で手を洗いに行き、五条翔が作った昼飯を食した。五条翔の料理はどれもが絶品で、リアス達は箸を止める事無く食べ続けていた。特に一誠は堕天使チームに光の剣や光の槍で、足場の悪い山道で三時間も休み無く追いかけ回され、死ぬかもしれない修行をさせられ、誰よりも空腹状態だった為、五条翔の料理に涙を流しながら食べていた。
「一誠、レッスン3について今から話すけど、食べながら聞いてね?レッスン3は、悪魔の力が上がる時間帯…夜に僕と戦ってもらうよ」
「五条先生と戦うってマジですか…」
五条翔が考案した特別修行メニューの最後が、五条翔と戦うことになるとは思わなかった一誠は動かしていた箸を止め、五条翔に再度、本当に戦うのかを確認した。
「マジマジ、大マジ。無茶な修行じゃないと、一誠は戦いにおいて、邪魔にしかならないからね」
五条翔に邪魔にしかならないと言われ、一誠は悔しくて強く拳を握った。五条翔に言われなくても理解をしているが、改めて面と向かって言われ、一誠は悔しがっていた。
「俺を…強くしてください五条先生」
「それは一誠次第だよ。今日は修行メニューの大まかな流れを説明したから、午後からはリアス達と合流してね。明日から7日間、レッスン3以外の修行時間は自分で管理してね」
「はい!」
五条翔からの話が終わり、一定は再び箸を動かした。自分が作った料理を美味しそうに食べているリアス達を見ている五条翔の顔には、優しい笑みがこぼれていた。
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