第一話 非日常への入り口
生徒達が元気良く駒王学園へ登校している姿を、僕は校門前に立って見守っていた。生徒達は僕を見ると、清々しく元気な声で挨拶をしてくれる。生徒達の元気な挨拶で、僕は今日一日を乗り越える為の元気をもらっている。次々と生徒達が登校する
中、一人だけトボトボと元気が無く歩いている生徒が居た。
「おはよう一誠♪」
「五条先生...」
一誠の気配が、相談に来た時とは明らかに変わっていた。相談に来た時の一誠は微弱だが
(やっぱり...昨晩に何かあったみたいだな)
昨晩、何者か──ハッキリ言うと堕天使が広範囲で忘却の魔法陣を展開したのを感じ取っていた。この町で何の行動も起こしていない堕天使が、広範囲に忘却の魔法陣を展開するのはおかしいと睨んでいた。そして僕の考えた結論は、一誠に近づいた堕天使が犯人だと思っている。
「今日の昼休みに五条先生の所に行ってもいいですか?」
「構わないよ?僕は生徒指導の先生だからね!生徒の悩みなら何時でも聞くよ!」
一誠が昼休みに生徒指導室に来る事が決まった。遠くから、俺と一誠のやり取りを見ている鬱陶しい視線を我慢しながら、一誠を教室に向かわせた。一誠がこの場から去ると、鬱陶しく僕ら...いや、一誠を見ていた視線は何処かに消えていった。
〇
昼休み...。
僕は昼飯を食わずに、生徒指導室で一誠が来るのを待っていた。昼休みになってから2.3分後に、ノックをして一誠が入って来た。一誠の表情は朝と変わらずに暗く、何かに思い悩んでいる雰囲気を纏わせていた。
「待ってたよ一誠」
「時間作ってくれてありがとうございます...」
「とりあえず、飯でも食いながら話そうか」
一誠も此処で昼飯を食う為に弁当を持ってきていた。お互いに弁当をテーブルに広げてから、僕は生徒指導室に完備している冷蔵庫の中から二人分のお茶を取り出して、一本は一誠に渡してからソファーに腰掛けた。
「さて、話を聞かせてくれるか?」
「実は...」
一誠は日曜日に彼女である天野夕麻とデートしていた筈なのに、何時の間にか家に帰っていて、自室のベッドで目が覚めたみたい。ベッドで目覚める前に、天野夕麻が黒い羽を生やしてエロい格好になり、光みたいな物で槍を作り出し、彼女に刺し殺されたという胸糞悪い夢を見たと話してくれた。一誠の話を聞いて、僕は思わず強く拳を握った...。
「彼女に殺された夢か...」
「はい...かなりリアルな夢でした。まあ、夢の話より此処からの話が本題です」
一誠は自室のベッドで目覚めてから、傍にあるスマホに手を伸ばして操作していたら信じられない事が起きたみたい。信じられない事とは、彼女の連絡先、彼女とデート中に撮っていた筈の写真が綺麗に消えていたらしい。彼女の連絡先、彼女とデート中に撮っていた筈の写真が消えた事に、今までの事が自分の妄想なのかと考えた一誠は変態仲間である、松田と元浜に彼女の事を聞いたみたいんだけど、彼女の名前、一誠に彼女が出来た事を知らないと二人は答えたみたい。
「五条先生は、俺に彼女が出来た事を覚えてますか?俺、相談したの覚えてませんか!!」
「落ち着きなよ一誠。君に彼女が出来た事、彼女の名前、彼女の姿は覚えているよ」
「ほ、本当ですか!?」
一誠の彼女を覚えていると答えたら、一誠は少し興奮気味になり、ソファーから立ち上がって、本当に覚えているのか少し興奮気味に確認をしてきた。もう一度、一誠の彼女の事を覚えていると答えたら、一誠は安堵の表情を浮かべてソファーに座った。
「やっぱり...俺の妄想じゃ無かった」
「話を聞いてあげる事しか出来ないけど、頑張れよ」
「話を聞いてくれてありがとうございました!お陰で少しだけ、心にあるモヤモヤ感が取れました!」
一誠の彼女話はそこで終わった...。
残りの昼休みの時間は、お互いに弁当を食いながら軽い雑談と女子生徒を困らせている事に対しての説教をして過ごした。一誠が生徒指導室から出る時には、暗かった表情に少しだけ明るさを取り戻していた。
〇
放課後──。
夕麻ちゃんの事は何が起こっているのか分からずじまいで、放課後になった。元浜に松田の家で紳士のDVD鑑賞をするから来いと言われて行ったんだが、途中で気分が乗らなくなり松田の家を出た。
「やっぱり体がおかしい・・・朝はだるかったのに夜に近づくと力が湧いてくる」
体に違和感を覚えていると突然後ろから嫌な気配を感じると見知らぬスーツを着たおじさんが立っていた。何でこんなにこの場から一刻でも早く逃げたいと思っているのだろうか。
「これは数奇なものだな」
怪しいおじさんはそう言いながら俺に1歩近づくと俺は反射的に後ろに下がった・・・
「うお!ちょっと下がったつもりなのに!」
「逃げ腰か」
何かわかんねぇけど逃げなきゃやべぇ!俺は全力で走り逃げた・・・逃げていると空から黒い羽根が舞い夕麻ちゃんが頭に浮かんだ。
「夕麻ちゃん・・・」
「これだから下級な存在は困る」
さっきのやつに追いつかれてしまった
「主の気配無し、仲間の気配無し、魔法陣の展開もしないとなるとはぐれか・・・ならば殺しても問題あるまい」
俺を追ってきたおじさんは夕麻ちゃんと同じ槍を出して俺に狙いを定めていた。
「夢ならこんなオッサンよりも美少女の方が!ガハ!」
い、痛てぇ!夕麻ちゃんの時より痛てぇ!痛みに堪えながら槍を抜こうとしたが熱くて抜けなかった。
「悪魔には光が猛毒、触れれば焼けてしまう」
そう言うと腹に刺さった槍がまたオッサンの所に戻っていき、再び狙いを定めて俺へと投げた。こんな所で死ぬんだろうかと思っていたら──
「絶体絶命そうだね一誠?」
「五条...先生?」
今日の昼休みに夕麻ちゃんの事で、真摯に話を聞いてくれた五条先生が槍を砕きながら現れ──俺の意識はそこで途切れた...。
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