シャブ漬け少女のストライクウィッチーズ   作:文月フツカ

17 / 53
2021年3月8日:明日の20時に予約投稿して終わり、解散!
2021年3月9日:あれ、今回感想無いな……面白くなかったかな
2021年3月10日:評価も動かないかー
2021年3月13日:ふぁ、よく見たら投稿されてへんやんけ!?
同日:確認する→予約投稿日が2027年3月8日!?!?!?!?!!!?


うせやろ?
後6年は投稿されない予定だったってマ?


最果ての渡り鴉

1

 

 

 楠里が急遽率いる事となった飛行隊には、様々な国籍のウィッチが居る。

 扶桑、カールスラント、スオムス、オラーシャ、ガリアの五カ国のトップエースらを擁するこの部隊は、即席の急ごしらえ部隊とは思えない程の戦力だ。

 

「いやー、本当はリーネとシャーリーとルッキーニの3人も来る予定だったんだけどねー」

「グリゴーリが攻撃を受けている影響か、全戦域でネウロイが活発化してるってサ」

「稼働戦力に余裕無し、現有戦力で対応せよってさ。私とエイラだけでも来れたのはミーナの根回しがあったからだね」

 

 XS-1への追撃の為、有効射程内まで飛行中のウィッチ達が作戦会議を行っている。

 

「それで津家~、作戦は?」

 

 楠里が野戦服のポケットから手帳型ケースを取り出しながらハルトマンに応える。

 

「いつも通りで―――」

「おおっと、手が滑ったワン」

 

 ハルトマンが手帳型ケースを楠里の手から簡単に奪い取ると、中に入っていた注射器を躊躇なく地上へと捨てた。

 全部捨て終わると、器用にも楠里のポケットに手帳型ケースを差し込んだ。

 

「……いつも通りで―――」

「手が滑ったんだナー」

 

 袖の内側に隠してあった予備の特殊強心剤を取り出したところ、隣のエイラが器用に奪って地上に捨てた。

 

「貴方は何をしているのよ」

 

 ロスマンの呆れは正しい。

 部隊長だというのに即行で薬物を使おうとした楠里の方が間違っているのだ。

 

「お2人は……はぁ。エイラさんはロスマン曹長と共に中距離から遊撃支援を、ポクルイーシキン大尉はルマール少尉と共に近・中距離から射撃による回廊を形成してください」

「ん、私は?」

 

 ハルトマンは首を傾げて楠里に尋ねた。

 すると珍しく口元を吊り上げた楠里がハルトマンに振り返った。

 

「私の直掩をして頂きます。私の特殊強心剤を破棄したんですから、最後まで付き合って貰いますよ」

 

 ハルトマンは一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、直ぐに獰猛な笑みを浮かべた。

 

「上等だよ。そっちこそ途中でへばらないでよ?」

 

 2人は少し見つめ合ってから、同時に前を向いた。

 

 

「あの、サーシャさん。津家さんってハルトマン中尉やユーティライネン少尉とお知り合いなんでしょうか。部隊の指揮も直ぐに熟せているし……」

「あぁ……津家さんが前に居た本来の部隊はね、501統合戦闘航空団なのよ」

 

 話を聞いていたロスマンも補足を足した。

 

「だからフラウ(あの子)やエイラさんとも戦友ですし、502のメンバーとは比べ物にならないチームワークを発揮するでしょうね」

「で、でも、だったら何でその事を最初から言ってなかったんですか?」

「大尉になってしまったからもう隠す事も難しいでしょうね。ましてや地上にも兵士が沢山いる中での野戦任官だもの」

「その辺はもうラル少佐にお任せしましょう。津家の秘密を知りながら大尉に任命したのはあの人ですし、監督責任とかはあの人にあります。ええ決して経理関係を押し付けられた恨みなどは!」

「……ほら、もうすぐ交戦が始まるわよ」

 

 後に楠里の秘密を知らなかった人たちは、何故教えてくれなかったのかと詰め寄った……サーシャに。

 その事でサーシャが私に言われてもと怒るのは別の話である。

 

 

「全機、有効射程内に到達しました」

 

 サーシャがそう伝えると、楠里はハンドサインを出しつつ指示を出した。

 

全機(All Aircraft,) 交戦を許可(Cleared to Engage.) 散開(Break.)

了解(Copy) 交戦開始(Engage.)

 

 その言葉と同時、当初の予定通りのメンバーが次々とバディを組んで別れる。

 余りにも大雑把で漠然とした作戦だが、それを十全に理解して遂行できるメンバーであるのも事実だ。

 

 なお、一部の地上兵が作戦記録を保存する為にカメラを回している。そしてフレイアー作戦戦域の全無線もしっかりと記録されている。

 この作戦終了後、その2つと脚色が合わさった映画が作られる事を当人たちはまだ知らない。

 

 巣への特攻や野戦任官、部隊結成から先程の号令まで。余さず記録されているのだ。

 

 そしてソレを知った楠里本人と扶桑司令部は揃って嫌そうな顔をするのである。

 

 ともかく、そんな未来など知る由も無い楠里達は、作戦通りに動き出した。

 

 近距離でハルトマンと楠里が追い詰め、中距離でエイラとロスマンが支援、その少し後ろでサーシャとジョゼが逃げ出せない様に射撃で牢獄を作る。

 

 予知能力があるエイラこそ近距離ではとサーシャからの意見具申もあったが、エイラ自身が『それはムリダナ』と言った。

 

 エイラ曰く、如何に完璧に未来をしても、機体が対応できるかは別との事だ。

 ましてやエイラは普段のユニットではなく、近くの基地から拝借したカールスラント製のユニットなのだ。

 

 普段のユニットであればまあ出来なくもないのだが。

 

 対してハルトマンはサン・トロン基地から自分のユニットで来たためにいつも通りの動きが出来る。

 それでも多少の疲労はあるし、そもそもドッグファイト向きの機体ではない。

 

「少し、見ない間に非常識な動きをおおっと!?……あっぶな」

 

 ハルトマンは少し慌てながらも必死で敵と楠里の機動に喰らい付く。

 

「こんな動きを迫られる程、501は脆くなかったので」

 

 楠里の動きを模倣したXS-1は、楠里当人も苦戦をするほどだ。

 

 なんせ向こうは重力やら航空力学やらを一切合切無視する謎金属である。

 先程まで追いかけていた筈が、超急減速で後ろに回り込まれるなど当たり前である。

 

「うわやば、これもやばッ。お、コレ当たるじゃん……外れたー!」

 

 必死にビームを躱し、這う這うの体で射線を確保して撃つ。

 だがその銃弾も虚しく外れるばかりである。

 

―――バギィン!

 

 唯一効いている攻撃と言えば、エイラの予知とロスマンの技術から放たれたフリーガーハマーぐらいである。

 XS-1もこの包囲網を抜け出す為に逃走を図るが、サーシャとジョゼの牽制射撃で包囲の中へと押し戻されている。

 

「私はそこまでの機動は―――チッ」

 

 特殊強心剤と固有魔法を使わない楠里など、所詮は三流止まりである。

 魔法力は飛行に回す分で手一杯なので、固有魔法へと回す余力など全くない。

 

 頼みの特殊強心剤はハルトマンとエイラに捨てられた。

 

 故に、この様にまた脇腹にビームが掠ってしまうのも仕方ないのだ。

 

「少し保たせるからさっさと帰ってきてよー?」

 

 楠里は短く礼を言うと、出せる速度でジョゼの元へと急いだ。

 

 

 

 

 ダラダラと流れる血を抑えつつ、何とかジョゼの元へと辿り着いた楠里。

 

「大丈夫ですか!? 今治療します!」

 

 ジョゼが固有魔法で治療を施す中、傍に居たサーシャが尋ねた。

 

「勝率は?」

 

 楠里が残弾少ない機関銃を見ながら答えた。

 

「相手に知性がある以上は何とも……ルマール少尉、可能であれば地上で注射器を見つけて貰えませんか」

 

 楠里が唯一理由を知らないであろうジョゼにお願いをした。

 

「え、注射器?……そう言えばさっき取り上げらてたけど」

「貴方、あの2人の厚意を平然と溝に捨てるのね」

「私の行動など感付いてますよ。真に使わせないのならその場で壊してますよ」

 

 買いかぶりである。

 

 ハルトマンとエイラもまさか拾いに行かせるなどとは微塵も予想していない。

 

「はぁ、もう。ヴィルケ中佐も苦労人ですね……私が取ってきます」

 

 サーシャはその固有魔法で、特殊強心剤がどの辺りに落ちたのかは覚えている。

 故に、直ぐに取って戻ってきた。

 

「治療終わりました……あの、激しく動くと傷が開きます、よ?」

「分かりました」

 

 動かないとは言ってないと心で宣いながら、サーシャから特殊強心剤を受け取った楠里。

 

「貴方のような自己犠牲精神旺盛な人を壊れた人形とでも言うのかしら」

 

 サーシャの呟きは楠里やジョゼには聞こえず、ただ虚しく寒空の中に溶けていくのであった。

 

 

 

 袖に特殊強心剤を隠しつつ、楠里は前線に復帰した。

 

「はぁ、はぁ……一定距離外からの攻撃はほぼほぼ通らないよ」

 

 楠里が呑気に治療を受けている間も、ハルトマンはXS-1と肉薄しながら情報を得ていた。

 

「少しでも銃弾が掠ると回避一辺倒になるようですね」

 

 脇腹の痛みを抑えつつ、楠里も自分の戦闘機動と比較しつつ分析している。

 

 無論この様に喋りながらではあるが、変態機動の真っ最中である。

 

「一撃で装甲とコアを消し飛ばすか、対装甲ライフル並みの攻撃を正確かつ素早く連射で当てるか」

 

 ハルトマンの推察を聞きながら、いよいよ使わないと行けないかと思い始めた楠里。

 

「ッ、危ない!」

 

 XS-1が牽制に放ったビームが、未来予知に集中していたエイラとロスマンへと向かった。

 

 だが咄嗟にハルトマンと楠里が間に割って入りシールドを展開する。

 

「ぐ、この威力はマズ―――」

 

 ハルトマンはシールドで受けきるのは無理と判断し、手で楠里を射線から退避させつつシールドの向きを変えた。

 

 戦車などの装甲において、避弾経始と呼ばれる装甲技術を応用し、シールドを傾けてビームの威力を逃がす技だ。

 

 何とか防ぎ切ったハルトマンは、眼前のXS-1に対する戦力評価を数段階跳ね上げた。

 

「私のシールドでは抜かれていました」

 

 荒い息を上げながら、楠里はハルトマンの横に着いた。

 

「……どうする津家。逃げようとしてるなら逃がしてもいいんじゃない?」

 

 正直言ってハルトマンもこれ以上は無理できない。

 

 これが501であれば様々な戦術でどうにも出来るのだが、今はただの急造部隊である。

 エースとは言え、出来る事は限られている。

 

 その様に悩む中でも、XS-1は徐々に離脱しつつあった。

 

 サーシャ達も射撃をして阻止するが、如何せん効果が薄くなりつつあった。

 

『撤退や見逃しは許可できない。逃がせばベルリンがあの個体で埋め尽くされる』

 

 楠里は頭の中で様々な事を考えていた。

 

―――機関銃では取り回しに時間が掛かる。

―――固有魔法を使わずに立ち回れるか―――否。

―――やらなければ、皆が危ない。

 

「……ルマール少尉はハルトマン中尉の傷を治療してください。ポクルイーシキン大尉はユーティライネン少尉とロスマン曹長と共に時間稼ぎを」

「何する気?」

 

 楠里はハルトマンに睨まれるが、平然と答えた。

 

「仕事ですよ」

 

 

 

 ジョーゼット・ルマール少尉は普段の言動とは裏腹に、ガリアでも有数のエースウィッチである。

 自信なさげな態度だが、その戦闘技術はしっかりとしたモノである。

 

 そして治癒魔法という貴重な固有魔法を使いこなす為、人と関わる事も多い。

 

 そんな人間観察に長けたジョゼは、仕事と言い切る楠里の背中に嫌なモノを見た。

 

「アレは……アレは、死に行く人の背中」

 

 ガリア撤退戦で幾度も見た、味方の為に死に行く兵士の姿と重なった。笑って敵に向かった兵士もいれば、罵詈雑言を叫びながら立ち向かった兵士もいた。

 

 その誰も彼もが等しく、ネウロイのビームの前に消し飛んだ。

 

 1人でも多くの民間人を逃がす為、愛する家族を守る為に身を奉げた兵士達。

 

 ジョゼには、どうしてもその兵士と今の楠里が重なるのだ。

 

 ハルトマンの治療を行いつつも、ジョゼは楠里の方を見ていた。

 

 こうしている間にも、エイラとサーシャとロスマンが必死に足止めをしている。

 楠里はそれを見つつも落ち着いて作業をしていた。

 

 右手でホルスターから1911を取り出し、左手で懐から出した銃剣を1911に装着する。

 

 安全装置を外して、スライドを引いて初弾を薬室へと送り込んだ。

 

 少ない魔法力を銃剣の刀身に縫わせ、強度を高める。

 

 

 その時、エイラが通信でハルトマンに叫んだ。

 

『ハルトマン、津家を止めろォ!』

 

 その言葉と同時、ハルトマンが津家に手を伸ばすも、それは一瞬遅かった。

 

 

 左の袖に隠していた特殊強心剤を取り出し、楠里は何の躊躇も無くその首へと打ち込んだ。

 

 

 

「ば、馬鹿津家!」

 

 ハルトマンは楠里に掴みかかるも、楠里は優しくそれを解いた。

 

 そして自分の額をハルトマンの額にこつんと当てると、鼻も当たる距離でこういった。

 

「行ってきます。委細の直掩をお任せします」

 

 

 その瞬間、その場に突風が吹き荒れた。

 

 どこにそんな魔法力があったのかと錯覚する程の速度で敵に向かった楠里。

 

 

 エイラ達の間を強引にすり抜けた楠里は、因縁の相手に肉薄した。

 

 

―――1発目。

 

 交差したその瞬間、銃剣付き1911を振るってXS-1の右主翼を根元から切り裂いた。

 そのまま即座に後ろへ向き直り、切り裂いた部分へと照準を合わせて改造魔法力弾を撃った。

 

 凄まじい音と共に撃ち出された銃弾は、再生途中であった右主翼を完全に消し飛ばした。

 

 

―――2発目

 

 右主翼が生えていた場所に対して照準を定めて発砲した。

 

 風の影響を受けない魔法力弾は真っすぐ目標へと近づいて、更に敵の装甲を食い破った。

 

 

―――3発目

 

 その銃弾に末恐ろしい危機感を抱いたらしく、最早逃走一択を選択したXS-1。

 

 だが自分が最高速度に達する前に、次の銃弾が着弾した。

 

 XS-1は咄嗟に回避行動を行ったのだが、この回避行動が裏目に出る。

 

 

―――4発目

 

 XS-1にとっては不幸にも、楠里にとっては幸運にも。

 

 楠里の以前のユニットが取り込まれている部分を曝け出してしまった。

 

 楠里はそれを逃がさずに撃ち抜いた。

 

 

―――5発目

 

 1911から異音が鳴った。

 

 魔法力弾は当初コアを露出させていた部分付近に着弾して、コアの一部を曝け出した。

 

 XS-1はその部分を有り得ない程の速さで修復を始めた。

 

―――6発目

 

 先程よりも大きい異音が1911から鳴り、どこかトリガーが軽くなった。

 

 再生を始めた装甲だが、その銃弾に耐えきれずに消し飛ばされた。

 

 そして遂に、翼を捥がれたXS-1のコアが露出した。

 

 

 度重なる高威力の銃弾に再生が追いつかず、徐々に速度と高度を落としていく。

 

 

―――7発目

 

 発砲と同時、1911が凄まじい音を立てて爆ぜた。

 

 爆散した1911は、楠里の手をその破片でズタズタに切り裂いた。

 

 血が噴き出て破片が飛び散る中、魔法力弾はコアへと真っすぐ飛ばなかった。

 

 

 爆発と負傷の衝撃で楠里の手元が狂い、照準がブレたのだ。

 

 2度とあるかも分からないこの機会を前に、楠里は歯噛みした。

 

「あと、少しなのに」

 

 

 その少しが限りなく遠く感じる楠里。

 

 だが。

 

 

悪魔()が望むのは、ネウロイ(お前)心臓(コア)だ!」

 

 その瞬間、突如として吹き荒れた強烈な突風が銃弾の軌道を修正し、的確にコアを撃ち抜いた。

 

「あ……誰ですか、エーリカさんを悪魔だなんて呼んだのは」

 

―――私の目の前には、心優しい天使しか見えませんねえ。

 

 楠里はそう思いつつも、案の定あった真コアへと目を向けた。

 

 1911が爆散する直前、力技で回収した銃剣を握るが、脳内麻薬術式の反動で力が入らずに落としかける。

 

 だが奇跡はまだ終わらなかった。

 

「これが正真正銘最後の足掻だよ、マジックブースト!……かーらーの、ひかりちゃん、ゴー!」

 

 いつの間にかジョゼから治療を受け、エイラ達から技術を教わっていた雁淵ひかり軍曹が、ヴァルトルート・クルピンスキー中尉のマジックブーストで加速して投擲された。

 

「津家さあああん! 手を!」

 

 楠里はそれを見て口元を吊り上げると、無事な方の手でひかりの手を掴んだ。

 

 そしてそのまま勢い良く引っ張られ、真コアの目前へと迫った。

 

 

 ひかりが大切に持っていたお守りで真コアの一部が砕かれ罅が入った。

 

 それを楠里が見逃す筈も無く、傷だらけの手で銃剣を握りしめて最後の力を振り絞った。

 

 

 

「―――ッ烈風穿!」

 

 

 

 

 1945年、3月。

 

 オラーシャ地方を覆っていたネウロイの巣『グリゴーリ』の完全消滅が確認された。

 また同時期に出現し、ペテルブルグ基地に被害を齎した特異個体XS-1も撃破された。

 

 巣を破壊した英雄の部隊『ブレイブウィッチーズ』

 巣に匹敵する特異個体を撃破した異色の魔女達『ワタリガラス飛行隊』

 

 

 その雄姿は、地上に居た多くの将兵に見届けられた。

 

 

 その活躍は、後世に畏怖と敬意を持ってこう語り継がれている。

 

 

―――勇敢な魔女達と、最果ての渡り鴉に栄光あれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、めでたしめでたしで終わらないのが津家楠里である。

 

―――ガッシャァァァン!

 

 楠里はペテルブルグ基地のハンガーでハルトマンに顔面を思いっきり殴られていた。

 

 その勢いは生半可なものでは無く、ハンガーの隅に積まれていたジャンクの山に楠里が突っ込む程だ。

 

「ちょ、ハルトマンさん何してるんですか!?」

 

 ひかりがハルトマンを止めようと駆け寄ろうとするが、エイラがひかりの肩を掴んだ。

 

「やめとけひかり。アレは津家の自業自得だ」

「ひかりさん。世の中にはやって良い事と悪い事があるの。楠里ちゃんのアレは自業自得よ」

 

 傍に居たサーニャでさえも楠里を助けようとしない。

 

「あの優しいエイラさんとサーニャさんまで!?」

 

 

 グリゴーリとXS-1を撃破して戻ってきたまでは良かった。

 

 楠里もああ何とかなった良かったと気を抜いていた所に、突如として殴られたのだ。

 

「はーっ、はーっ……今はコレでいいや。津家、人間って真に怒ると笑うんだよ」

「……そうですね」

「で、その怒りが最高潮に達して一周するとどうなると思う?」

「また笑い出すとかでしょうか」

「表情が一切動かない無表情になるんだよ。あらゆる罵声や怒声が頭に浮かんでくるけどね、不思議と口に出ないんだ。そうなるといよいよ本格的に危ない。嵐の前の静けさって言うよね、アレだよ」

「……」

「ミーナが今その状態だからね。私は庇わないよ」

 

 

 ここまで聞いて、楠里は無表情で顔を青くした。

 

「あのラル少佐、やはり私は502に―――」

「すまんな津家。もう転属変更の書類に判を押した」

 

 

 その後、502で楠里や孝美の送迎会が行われた。

 

 楠里の経歴を知った孝美らがまた驚いたりなどあったが、それはまた別の話である。

 

 

1,fin.

 

 

2

 

 

「私は心配したの貴方が本当に突然ラルに掻っ攫われたからね。話を聞いた直後は食事すら喉を通らなかったわよまた激戦区で戦いを強いられているって思うと睡眠すら怪しかったわだけど私がそう簡単に動けないのを知っているわよね知っていないとおかしいのよこれでも司令職を拝命している身ですからねそういった制約がある中で必死に貴方の無事を方々へ確約するために根回しなども頑張っていたのよそれなのに貴方と来たら手紙の1つも寄越さないってどれだけなのよ催促の手紙を送って漸く来たかと思えば首が物理的に吹き飛びかけただの使い魔が死んだだの何をどうすればそういう事になるのよ私やトゥルーデやエーリカがどれほど心を痛めていたのか貴方は知っているのかしら知らないでしょうね知っていたらこんな阿呆な事は出来ない筈ですから自分の命を一体何だと思っているのよ挙句には502のメンバーにさえ多大な迷惑を掛けて別にラルはどうでもいいけど兎も角こっちがどれほど心配したのかも知らないでよくもまあ1回は止めたエーリカの前であの薬を使ったわねどういう神経してるのよ真面では無いとは分かっていたけどあの場には各国のエースが居たのよ貴方一人が変に体を張る必要性なんて無かった筈よね戦果なんていらないって言ってたじゃないどういう神経でそんなの使って前に出たがるよ大体あなたは―――」

 

 

―――止めてください。

 

 必死にバルクホルンとハルトマンに助けの視線を送るが、2人は小さく指でバツ印を作った。

 

 

「……おいハルトマン。もう半日経ったぞ」

「予想では2時間ぐらいで収まると思ってた」

 

 怒号、笑顔、無表情、涙、笑顔、怒号。

 

 まるで壊れた人形のように楠里を叱るミーナは、もう半日も楠里に正座を強いていた。

 

「ミーナの目に光が……」

「扶桑から一旦帰国命令が出てるの知ったらまた荒れるよ」

「ハルトマン、お前言っておけよ」

「あ、ずるい」

 

 結局、呪詛の様に吐き出されるお説教は陽が暮れるまで続いた。

 

 

 

 次の日。

 

「扶桑司令部が楠里さんを一旦帰国させるようにと言って来たわ。美緒も噛んでるみたいだから大丈夫よ……次はちゃんとここに戻って来るように」

「ハイミーナサン」

 

「なあ、アレって」

「見ざる聞かざる言わざるだよ。そのうち元に戻るよ」

「……そうだな」

 

 

2,fin.

 

 

 

夢現の世界線,ED.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ひかりちゃん相手に先輩風吹かしてイキリちらした薬漬けには、本編2期でそれ相応の制裁を受けて頂く予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。