シャブ漬け少女のストライクウィッチーズ   作:文月フツカ

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今回は長い後書きがあります。

しかし薬漬けが記憶を失うと予想出来る方がいらっしゃるとは思いませんでした。
その話が出るまで誰も思いつかないと油断していましたよ。

もしくは気づいていたけど言わなかったですかね。



決戦の魔女

 楠里の体から魔法力が溢れ出る。

 

 一体何処にそんな量を隠し持っていたのかという程である。その量は、先程芳佳が烈風丸を握っていた時に匹敵する。

 

 己の寿命を犠牲にして行使した魔法だが、恐らくそう長い間維持はできないと楠里は感じている。

 だがそうしてでもあの特異個体を止めなければ、本当に手が付けられなくなる。

 

 近代武器の主力を務める銃や砲を完全に無力化し、剰えそれを操る人間にすら実害を齎す性能を持ったネウロイは、今ここで倒さなければならない。

 そして今この場でそれが出来るのは、銃を使わずに戦う白兵戦を経験済みの楠里や坂本だけである。

 

「津家、お前ッ」

 

 芳佳に匹敵する魔法力を放つ楠里だが、自身もその量に適応出来ずにいる。

 今の今までわずかな魔法力しか扱って来なかった影響で、その余りに膨大な魔法力の制御が追いついていない。

 

 このままではただ暴走して悪戯に魔法力を消費するだけである。

 

 だが楠里の手には魔法力を吸い尽くす妖刀が握られている。故に溢れた魔法力は片っ端から刀身へと吸い込まれて行き、その色を変質させていく。

 

 芳佳が振るった時の様にビームを放てそうなほど光り輝いた烈風丸は、突如としてその輝きを収めた。

 

「まさか、失敗!?」

 

 急に魔法力の圧が収まった事に驚いた芳佳だが、坂本は信じられない物を見つめる表情だ。

 

「驚いた……魔法力が全て刀身に圧縮されて縫い込まれている」

 

 芳佳が魔法力の量に物を言わせる範囲攻撃なら、楠里は一ヵ所に魔法力を集めて強度を高める一点集中と言えよう。

 

 その魔法力を圧縮して縫われた烈風丸に輝きは無く、黒ずんだ刀身から凄まじい圧を放っている。

 魔法力は肉眼を通してみた場合、大抵は綺麗な水色である。だが綺麗な水色と綺麗な水色を掛け合わせれば綺麗な色が出来るという話ではない。

 

 今回の場合100の魔法力があったと仮定し、まずは10の魔法力を刀身に縫わせる。それが済めばまた10の魔法力を同様に縫わせるという作業を繰り返して切れ味や強度を高めている。

 そして水色を何乗も重ね合わせた結果、どす黒い刀身が出来上がったという訳だ。

 

 もっと身近な例を示すと、海をイメージすると良い。

 海面や水中は綺麗な青系の色だが、深海では何も見えない漆黒となる。それに比例して水圧も凄まじくなっていく。

 

 芳佳の場合は10×10の魔法力を同時に全て展開してゴリ押しするという表現が近い。

 

 もし今の烈風丸の刀身に虫が止まれば、彼の名槍『蜻蛉切』のような逸話が再現されるであろう。因みに506の黒田中尉が持つ『扶桑号』と別の1本を合わせ、扶桑三名槍とも呼ばれて現存している。

 

 話は逸れたが、楠里は銃剣にも同様の方法で魔法力を縫わせて口に咥えた。

 

「その魔法力が無くなれば死ぬんだよ!? 今ここで楠里ちゃんがそんな事しても、誰も喜ばないんだよ!?」

 

 楠里は右手で芳佳の頭を撫でると、その涙を優しく拭い去った。

 そして坂本に向き直り敬礼を送り飛び立った。

 

 無論、脳内麻薬術式の発動も忘れていない。

 

「……必ず帰って来いよ」

 

「~~~ッ、楠里ちゃんの馬鹿あああああああああ!

 

 

 右脇に烈風丸を両手で構え、刀身が左向きになるよう銃剣を口で構えながら、楠里は嘗て無い程の速度で空へと上がった。

 

 遠くでは坂本から無線で状況を把握したミーナ達が楠里を追いかけようとするが、誰一人として追いつく事が出来ない。

 恐らく零式ストライカーユニットの想定された設計性能限界を軽く通り越すその速度は、その場に居た全ての将兵の度肝を抜いた。

 

 烈風丸と銃剣の刀身から縫いきれなかった微々たる魔法力が小さな残滓として空中に撒かれていく。

 

 楠里の機動に合わせて細く広がるその残滓は、ジェット戦闘機がアフターバーナーを噴かした際に出来る飛行機雲の様である。違いがあるならば色が黒である事だろうか。

 

「鴉が舞っている」

 

 誰かが言い出したその言葉は伝染し、ミーナ達を始めとして、艦隊の乗員にも広がっていく。

 

 

 凄まじい音を立てて交差する楠里と特異個体。

 

 それが何度も何度も続いている。

 

 交差する度に辺りに轟音が鳴り響き、その風圧は海面に大きな波を作り出す。

 

「神話の戦いなのか……?」

 

 銃火器を使って異形を撃つ近代戦ではなく、剣を使って化け物を討つ御伽噺や英雄譚の様に。

 

「あの、何をしてるんですか?」

 

 天城の甲板に居た作業員が、隣からした物音に気付いて横を見た。

 

 そこには1人の士官服を来た兵士が、対装甲ライフルにその弾丸を装填している所だった。

 

「ん?……あぁ、今戦ってる津家大尉な、俺の昔の上官なんだよ。長い間死線を共にしたお陰で、あの人が何を考えて何を望んでいるのか大体分かるんだよ。これ、俺だけじゃなくてあの人の部下で俺の同隊だった奴全員出来るぞ」

「え……はぁ?」

 

 意味が分からないといった作業員は、対装甲ライフルを持って甲板中央へ向かうその背中を見送った。

 

 そして目的の場所にやってきた士官は、艦首方向に寝そべり射撃体勢を整えて、士官用の通信を使って艦橋へ連絡を入れた。

 

『なんだ貴様! 何故銃を持ってそこに居るか!』

 

 艦橋からもその士官の動きが見えたらしく、どういう意図があるのか即座に無線で詰問される。

 

「津家大尉は以前の上官でして、もうすぐ対装甲ライフルで自分を撃てって言って来ますよ」

 

 それを聞いた杉田艦長らは何を馬鹿なと叱りつけるが、その数秒後、驚くべき無線が飛び込んできた。

 

『―――こちら津家大尉、対装甲ライフルを用いて本官への発砲を願います』

「ね?」

『何を言っているんだ津家大尉! その様な事をすれば君が死ぬのだぞ!?』

『時間がないので急いで準備を―――』

「相変わらずですなぁ大尉殿。既に大尉殿を狙っておりますよ。いつも通り(・・・・・)でいいですかね」

『流石ね。後で頭撫でてあげるわ』

「そりゃどうも……距離1,000、進入角度そのまま、速度2k増速、弾頭模擬(ゴム)弾。大尉殿、死なないでください」

 

「―――善処はするね」

 

 

 その士官の直ぐ真上を楠里が飛び去った。

 

 次の瞬間、引き金を引かれた対装甲ライフルから大きな発砲音が鳴り響いた。

 

 銃口より凄まじいエネルギーを持って放たれた弾丸は、楠里の後ろに張られたシールドに甲高い音を立てて着弾する。

 

 楠里は弾丸の推進力を用いて強引な加速を得た。

 コレは最果て時代、魔法力を少しでも節約する為に考えた方法である。

 

 弾丸を受けて押されつつ加速する事により、魔法力を無駄にせず瞬間的に加速する。

 

 無論まだ銃弾が防げる程度のシールドが張れていた時にしか出来なかった方法だ。

 最果て4年目ともなれば、この方法は既に使えなくなっていた。

 

 この部下も他の最果て時代の部下も、初めてこの方法を楠里から聞いた時、揃ってコイツ頭可笑しいと意見が一致した。

 だがそんな頭可笑しい方法を真顔で淡々と行わなければ死ぬ環境だったのだ。

 

 当然、まだ理性が残っていた楠里も当初はやりたくなかった。そんな贅沢も直ぐに言えなくなったが。

 

 空砲を用いて重い物体に加速を強いるというのは理解出来るが、訓練弾とはいえ味方を撃つなど誰が考えるものか。

 

 ともかくその弾丸をシールドで受けて押し上げられた楠里は、過去一番の速度で特異個体に肉薄した。

 

 相手は予想外の速度で迫って来た楠里を避け切れず、初めて烈風丸の斬撃を真面に喰らってしまった。

 

 

 半分程まで切り裂かれたその跡には、小さくではあるがコアが見て取れた。

 

 だがそのコア周辺も驚異的な再生速度で補修されていく。

 

 無論そんな事を許さない楠里は、再生したネウロイの装甲を再び斬りつけて再度剥がした。

 

 そしてここで遂に、烈風丸に縫わせた魔法力が底を尽き、刀身の色合いも元に戻った。

 

 楠里は坂本に心で謝罪しつつ烈風丸を捨て去り、銃剣を握り直してコアに肉薄した。

 

「烈風穿・錐」

 

 隙を突いて銃剣を突き刺した楠里は、その場で右向きに回転し始めた。

 

 ドリルで掘削する様に、螺子を電動ドリルで締めるように。

 

 ガリガリと辺りに不協和音を響かせながら、強化した刀身で無理矢理抉り貫く。

 

 10秒か、20秒か。どれ程の時間かは分からないが、遂に限界を迎えたコアが甲高い音を立てて砕け散った。

 

 

 次の瞬間、そのコアが繋ぎとめていたネウロイの体は大きな音と共に破裂し、辺りに巨大な残滓を振りまいた。

 

 

 それを見た全ての将兵が、今度こそ作戦成功を確信して勝ち鬨を上げた。

 

 艦内も甲板も海も空も陸も関係無く、司令部の人間も全て喜びに包まれた。

 

 

 1945年7月。

 

 ヴェネツィア・ロマーニャ上空を覆っていたネウロイの巣は破壊された。

 同時に、未知の性能と行動原理を持った特異個体も撃破された。

 

 

 

 

 寿命とは、老化による肉体機能の衰えで心臓が止まったり、細胞分裂が出来ずにどんどん弱ってしまい、生命を維持できなくなる事だ。過程や解釈に違いはあれど、肉体的な死とは、二度と現世で動く事の無い物体へと変わる事を意味する。

 

 津家楠里に植え付けられた代償という固有魔法は、視力だろうが筋力だろうが、あらゆるものを魔法力に変換できる。

 視力や筋力といった身体機能も、記憶や感情と言った精神的な機能も魔法力に変換できる。

 

 だが代償の名の通り、その機能が戻ってくる事は絶対に無い。

 

 そして楠里は今回、残りの寿命全てを代償に魔法力を願った。

 

 

 その契約は問題なく履行され、あの宮藤芳佳に劣らない凄まじい魔法力を一時的に手に入れた。

 

 当たり前だが、そんな不正な方法で手に入れた魔法力が永続する筈も無く、30分もせずにその魔法力は消え失せる。

 

 制限時間がある中で特異個体を倒した楠里は、天城の甲板で皆に見守られていた。

 

 最早体に脈は無いに等しく、心臓も後数秒で止まるだろう。

 

 いつかの時の様に、周りに居たウィッチ達は涙を流す。

 

 だが当の楠里と言えば、穏やかな気持ちである。心の中では『見守られる最期もいいな』的な舐め腐った思いが渦巻いている。

 

「目を開けなさい楠里さん……開けなさい!」

「楠里ちゃん、楠里ちゃん!」

 

 徐々にその瞳を閉じていく楠里だが、他のメンバーはそれを許さない。

 

 まだ生きて欲しい。こんな終わり方はあんまりだと叫ぶ。

 

 折角苦労して勝ったのに、メンバーが欠けたら意味が無いじゃないか。

 

 特にルッキーニなどは大声で泣いている。自分の故郷を守る為だったとは言え、それで大切な友人が死ぬ間際なのだ。

 

 更に今回は、茂野少佐の様な医師も居ない。

 

 はっきり言って詰みである。

 

 楠里の過去を思えば、こうやって大好きな人達に囲まれてというのは、考えうる限りでは最高の終わり方である。

 

 残される側の気持ちなど全く考えない身勝手な楠里の思いは、力を貸していたワタリガラスをも唖然とさせる。

 

 

―――うーわ、コイツをこのまま眠らせるの何か腹立つ。

 

―――だから言っただろ? 楠里の身勝手な思いを聞き続けてると、周りの人間が可哀想になってくる。そして最終的に『お前いい加減にしろよ』って気持ちが芽生えるんだよ。

 

 楠里に力を貸していたワタリガラスと、以前力を貸していたハシボソガラスの分け御霊が、楠里の体の上で話し合っている。

 

 時の流れは現実から切り離されているため、辺りの人間は止まっているし存在も気づかない。

 

―――で、1回休みの制限を無理矢理振り切って来たのか。

 

―――あの茂野とかいうのを転移させてやろうと思って。あのなんか良く分からない規格外の化け物ならどうにか出来るだろ。

 

―――あぁ、アイツ死んだ。

 

―――……は? なんで????????

 

―――ある意味楠里を庇って。

 

―――はあああああ!?

 

―――根本的な解決にはならないけど、方法ならあるじゃん。

 

―――あぁ貯蓄?……まあいいか。

 

 この場合の貯蓄とは、使い魔が信仰やら畏怖やらで集めた力の事を指す。言い方などそれぞれで違うため何でも良いが、力とは即ち魔法力の事だ。

 

 そういうとハシボソガラスの分け御霊は、舞鶴の山中にある寂れた祠へ意識を飛ばし、本体へその旨を伝えた。そうして瞬時に送られてきた『まあそれなり』の魔法力を、分け御霊は楠里へと縫い付け出した。

 

 因みに何故そんな微妙な量なのかといえば、本体の持ってる魔法力が現状では、楠里の手によって集められた量しか無いからである。そもそも祠の場所自体を知る人間が最早楠里しか居ないため、持てる力も楠里が『ありがとう』や『助かった』といった感謝を捧げた分だけしか無い。

 

―――お、心臓が若干活性化した。でも全然足りんな。

 

―――だな……あっ。

 

 その瞬間、ハシボソガラスの分け御霊が掻き消えた。

 

―――ん?……マジ?

 

 ワタリガラスが振り返ると、そこにはハシボソガラスの本体、つまり大本の使い魔が居た。

 

―――来ちゃった♡……ごめん。

 

―――滅茶苦茶気持ち悪かった。え、消える気?

 

―――ん、どうせもう祠とかも誰にも見つけられないだろうしな。

 

―――存在を力に変えて楠里に縫い付けても、持って1年だぜ? しかも誰もお前を覚えてないから二度と復活しない。いうなれば俺らにとっての死だぜ?

 

―――コレみたいに惰性で生きるよりいいじゃん……後頼むわ。

 

―――あぁはいはい。使い魔誑しだなぁコイツ。

 

『……いや要らない。もう十分生きたよ』

 

―――俺の覚悟犠牲にすんな馬鹿。

 

 そう言ってハシボソガラスは全身を光らせて楠里に吸い込まれていった。

 

―――お前の為に消えたアイツな、俺の古い友人なんだよ。アイツがあそこまで人間に入れ込むって初めてなんだよ。

 

『今度は、あの子の分も背負うのかぁ』

 

―――いや絶対そんな事求めてないぜアイツ。楠里が平和に過ごしてくれる事を願ってるんだよ。

 

『……』

 

―――あ、そうだ言い忘れてた。あの野郎は自分の事をハシボソガラスなんてあざとく可愛い子ぶってるけどな、その正体的なのは八咫烏だからな。

 

『は?』

 

―――因みに俺……私はネヴァンって呼ばれてた。まぁそれはそれとして、引き続き契約は続行となりますんで、ご愛顧のほどよろしくお願いしまーす。はい帰れ。

 

 

 

 皆が悲しみに暮れる中、突如として楠里の目が開き、ぬるっと上半身を起こした。

 

『きゃあああああ!?』

 

 死んだと思われていた人間が、突如として動き出した。

 

「ぞ、ぞ、ゾンビか!?」

 

 リベリオンのパニック映画の様な展開で、シャーリーは思わず銃を抜いた。

 

 楠里はゆっくりと辺りを見回し、今際の際に見た2体のカラスの語り合いを思い出し、それが真実であると確信した。

 

 自分の心臓に手を当て、嘗ての相棒が齎してくれたその事実に涙する。

 

「く、楠里ちゃんが生きてる。生きてるよ!」

 

 芳佳その言葉は辺りに伝染し、死んだと思われていた人達の昏い表情が消し飛んだ。

 

「津家、本当に津家なんだな!?……生きてる……だが心臓の鼓動が遅い?」

 

 坂本が楠里の心臓に耳を当てて涙を流す。

 

 楠里は辺りの人間に聞こえるように掻い摘んで事情を説明し始めた。

 

「前の使い魔が、その身を犠牲にして魔法力をくれました。1年程度という短い時間ですが、その魔法力が尽きるまでは動く事が出来ます。今の私は心臓が止まった直後の死体の様な物です。使い魔というか使い魔の魔法力で腐敗や劣化が止まっている状態です」

 

 まぁ今回は死体というより、本当に死ぬ寸前の状態で時が固定されて動いていると言うのが真相だ。

 

 健常者の場合、心臓の鼓動は1分間に60回や70回が平均である。だが今の楠里は1分間の鼓動の回数を10回前後にまで減らした。

 これでは体のあちこちに影響が出るのだが、使い魔の魔法力がそれを何とか補っている。

 だが無論デメリットもある。

 

 これにより体温はほぼ無くなったと考えても良い。他人と握手した時、まるで死人の様に冷たいと言われるのは確実だ。

 さらに触覚・握力・筋力の喪失。これらが失われた事により、只でさえ細い楠里の体は見るに堪えない事になっていく。今直ぐに細くなる訳ではないが、時間の問題である。

 

 次に視力。左目はその光を完全に失い、視力を喪失。右目の視力は半分に落ち込んだ。

 航空戦を主体とするウィッチにとってあまりに致命的な喪失である。

 

 体温低下や心拍数異常に伴う各種能力の大幅低下。例としてスタミナ等。

 思考力の低下の可能性も危ぶまれたが、幸い考える力は衰えていなかった。

 

 脳に酸素が送られ難い状態なのに結構な事である。

 

 

「何で生きていられるの!?」

 

 そう言った天城所属の軍医の意見は正しく、周りに居た軍医の部下も頭を凄い勢いで縦に振った。

 

 だが使い魔の魔法力が無くなれば直ちに死ぬのは事実であり、どれだけ長く持っても1年程度だ。

 

 使い魔達は魔法力が少ないと言っていたが、死に際の体の時を止めて動かすなど、膨大な魔法力が無いと無理である。仮にあったとしても、人間には不可能だ。

 

 あくまで少ないと言う認識は使い魔基準での話であった。

 

 

 

 ネウロイの巣を破壊した第501統合戦闘航空団が本格的に解散し、魔力を失った芳佳と楠里は扶桑皇国へと戻ってきた。

 

 ミーナ達からは散々に欧州に居ろと言われたのだが、何かあった時の為に魔法力があって医療の知識がある宮藤家が近い方が良いとされた。

 

 なら私がとハルトマンが立候補したのだが、正式な医師免許を持っていないハルトマンでは能力不足と判断されてしまう。

 

「昇進の話が上がっている」

「嫌です」

 

 扶桑皇国海軍横須賀鎮守府。

 その庁舎の中にある総司令部にて、楠里と扶桑皇国海軍のトップ達が話し合っていた。

 

「また……また(・・)映像が撮影されていた! しかも今度は我が扶桑の人員が撮影したからもうどうしようもないんだよ!」

 

「貴方達の努力不足でしょう!?」

 

「うるせぇだったら変に活躍すんじゃねぇよ! 火消しやる身にもなれ畜生!」

 

 階級を上げたくない排斥派と階級を上げて欲しくない楠里が、楠里擁護派人員と総長と坂本の前でとんでもない事を言い合っている。

 

 総長と坂本が頭を抱え、本来楠里の味方の筈の司令部要員が楠里を変な目で見るというカオスな状況だ。

 

「佐官ですよ佐官。どうするんですかコレ」

「……もう決まってしまったんだ。お前がここで銃でも抜いてくれれば直ぐに何とかなるが」

「今は無いです。やるなら坂本さんらに迷惑が掛からない様にしてください」

「言えた義理じゃねーんだよなぁ」

 

 

 因みに総長は先日、数ある楠里の秘密の中でも一番ヤバい秘密を教えられた。

 

 見つけたとか探し出したのではなく、教えられた。

 

 誰に何を教えられたのか。口が裂けても言えない総長は、早く引退して孫と遊びたいと心から思っている。無論楠里の事も孫の様に可愛いが、如何せん核弾頭に近い。

 

 津家楠里に関して、良きに計らう様にと念を押された総長は胃薬を飲みつつ窓の外を見た。

 

 今回の戦いを通して、楠里はまた色々な物を失った。

 残ったものと言えば右目の視力と両耳の聴覚、四肢と記憶ぐらいである。

 

 使い魔の魔法力を使えば今まで通りの飛行や戦闘は出来るが、次からは銃や装備を持つ筋力と握力を始め、戦闘機動に耐える為の魔法力も使わなければならない。

 

 なので1年という寿命は正確ではない。魔法力を使えば使う程に寿命も減っていくのだ。

 楠里の元の魔法力は、もう無いのだから。

 

 全ては嘗ての使い魔が遺してくれた魔法力頼みである。

 

 

 だが楠里はそれだけでも十分に満足している。

 嘗ての部下達の事も、JFWや総長達の事も、使い魔達の事も。

 

 皆覚えているのだから。

 

 

 津家楠里はハッピーエンドを迎えたのだ。

 

 

 時は1945年7月、夏の猛暑が本格的に襲って来る季節の事であった。

 

 

 夢幻の世界線,ED.

 




・本編のあれやこれや

心拍数低いと不整脈とか色々起きますよね。薬漬けは魔法力でそれを誤魔化しているだけです。便利ですよね魔法力。創作と言うことで大目に見てください。

弾丸をシールドで受けて加速に関しても大目に見てください。

猛スピードのウィッチが甲板上を飛行したら、甲板上にいる人って吹っ飛ばないですか?という意見もあると思いますが、大目に見てください。

Q甲板上に居た嘗ての部下は?
Aあの後楠里に頭なでなでされた。

結論:創作上の演出だから許して♡


・夢幻の世界線の後書き

特に無し。
強いて言うなら一番描写していて面白くない場所を突破したね程度の感想。
ハッピーエンド。

・予告

次の劇場版ですが、アニメ本編と発進しますっ!のアニメと漫画版をミックスして、そこに多少のオリジナル展開が含まれた物になります。
なのでまた文字数が1万字超えたりするかもしれません。

お時間があればお付き合いください。

それではありがとうございました。

劇場版や3期を書くに辺り描写方法を変更すべきか

  • 今まで通りの三人称視点
  • 一人称視点
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