『津家少佐へ。爆撃隊は定刻通りにルートを飛行中。突入地点到達まで後10分。追加情報として少佐が突入する方角とは反対の方角からもう1機が同時に突入します。2つの方向から同時に攻撃を加えて敵を撃破、そのまま交差して離脱してください』
「そういう大事な事は是非事前にお知らせ願いたいですね」
楠里が無線機に悪態を吐くと、代わりにパットン将軍が返答した。
『急遽決まっちまってな。すまんが柔軟に対応してくれ。後文句はブラッドレーの野郎に言ってやれ』
『少佐、同時突入するウィッチに関しては生死は問わない。駄目そうなら見捨てて構わん』
「極力そうならないよう努力します。これより無線封鎖を行います」
『健闘を祈る』
楠里はその言葉と同時、眼下に敷かれた街道へと視線を向けた。うっかり地面に激突しないように高度を下げて、当初の予定通り10ft、約3メートルまで降りた。だがそれで終わりではなく、エンジンを全力で回して街道を突き進む。
最高速度であるため、ほんの僅かな操縦ミスで地面に激突してしまう。ミスをしたと感知してブレーキを掛けても絶対に間に合わない高さ、それが10ftという高さだ。街道も真っ直ぐに伸びている訳ではなく、カーブもあれば坂道だってある。その所々に瓦礫や薙ぎ倒された木々が散乱しており、少しでも気を抜けばぶつかってしまう。運よく激突する瞬間にシールドを張れたとしても、勢いで高度制限を突き破り、挙句に魔法力感知で発見されてしまう。
であるから、楠里に求められるのは高度3メートル以内で零式ユニット二二型の最高速度を出しながら障害物を避けていく作業だ。しかもベルリン周辺はネウロイが生み出したであろう厚い雲が常時発生しており、視界も悪い。その中を何の誘導も無く目視で飛ばなければならない。
「……」
楠里は少しでも反応速度を高めるために特殊強心剤を打ち込む。後先考えていない薬物の乱用だが、残念な事に基本性能だけでは対処が難しいのだ。
耳に届くのは自身が操るユニットのエンジン音と風切り音。
嫌がらせの様に変な倒れ方をした大木や、ミスリードを誘うような芸術的瓦礫の山などが楠里を襲う。明らかに人為的に倒されたであろう監視塔の瓦礫の上に、廃棄された軍用車両が垂直方向に突き刺さっていたりと、面白おかしいオブジェが沢山ある。
その中でも特に質の悪い物がある。まるで段違い平行棒の様に別々の高さに倒れた木だ。少しでも陸上型ネウロイの侵攻を遅らせる為に作られた即席バリケードだ。だが空陸一体のネウロイからすれば道端の小石程度でしかなかったらしく、迂回するなりビームで壊すなりされたらしい。
廃車を押しつぶす様に倒壊した木だが、1メートル程だけ潜れる隙間があった。楠里はユニットが壊れる覚悟で隙間に飛び込む。飛び込むと同時、地面に接触したユニットが不協和音を鳴らし、衝撃で火花が辺りに飛び散る。それを無視してやっと潜り抜けて高度を上げた楠里の目の前には、おかわりの木が鎮座していた。それを視界に入れた楠里は即座に背面飛行を行い、頭から無理矢理高度を下げた。背中に背負っていた機関銃が地面に接触し、衝撃でバラバラになる。
主力武装を失った楠里だが、何故か心は奇妙なまでに凪いでいる。脳裏に思い浮かぶのは、ブラッドレー元帥の言葉だ。
ウィッチは基本的に何処でも重宝されるし、常に人員不足なのだ。そんなウィッチを惜しげも無く見捨てて良いとは、何とも親近感の湧く話ではないか。そんな風に思いながらも、その捨石であろうウィッチはどの様な人物かを想像してみる。
またもや倒れた大木を回避しつつ、まず頭に浮かんだのは犯罪者という線だ。だがそれならばこんな重要な作戦に投入されるだろうか。正規兵扱いでないにしろ、ベルリン奪還後に恩赦が確約されているなら話は別だが。
次に思い浮かんだのは特殊部隊。ミーナやラル少佐ですら把握していない精鋭ウィッチを動かしている。だがそれならば見捨てる事はしない。
「そういえば、久々に独りだ」
楠里の傍には基本的には誰かいた。以前撃墜された時でさえロスマンが居たし、竹井大尉にも早急に発見して貰えた。最果てで墜ちた時は確かに独りだったが、基地周辺まで戻れば誰かに会えた。どれだけ捜索の必要は無いと言っても、部下たちは行動可能な範囲で探してくれる。
思えば、生まれてから常に独りであれば此処まで来れなかった筈だ。
501や502を始めとする各JFWの人員たち、司令部で後ろ盾となってくれているガランド中将や総長。悪態を吐きながらも治療してくれた軍医少佐や使い魔。
最果てでも部下や北方司令部に殴り込んできた中央憲兵隊。命令とはいえ楠里を捨てる役目を負わされた父親の私兵に、目的があったとはいえ形だけは育ててくれた孤児院。
節操の無い下半身だが自分を生み出した父親と、そんな父親に簡単に捨てられた顔も知らぬ母。
思えば色々な人に関わって来た。逆を言えば、この中から1人でも欠けていれば今ここに居なかっただろう。
あと気になる人と言えば、存在だけは最近聞かされた腹違いの姉だろうか。ガランド中将にはどうでもいいと言ったが、それは目の前に現れなければというだけだ。いざ実際に目の前に現れても、別に恨みで攻撃したりする訳ではないが、どんな顔なのか確認するぐらいは行う。
廃棄された車両の間をすり抜け、何度目かの開けた視界を確保した。
色々と考え事しつつ飛び続ける事5分。
遠く離れているが、正面からエンジンが響いて来た。
楠里が改めて音の発生源を注視すると、事前に言われたウィッチであろう1名の姿を確認した。
そのウィッチが見えたという事は、街道の真ん中に鎮座している黒い
幸いにも直ぐに意図が伝わり、同時攻撃を行う事となった。お互い正面を向いての交差状態で発砲しては流れ弾の危険がある。その為2人が持ち合わせていた銃剣で2方向から同時に斬りつける。
―――3、2、1、今。
2つの刃が鐘型ネウロイの装甲を切り裂く。幸い小型であったためか、コアも同時に破壊する事が出来た。
それと同時、今まで通って来た街道を挟む森や、正面のウィッチが飛んできた街道を挟む森などから、一斉に残滓が上がった。
その数秒後には、ネウロイが撃破された時特有の残滓がどんどん広がっていき、森全体を残滓で染め上げた。周りに幾重にもあったネウロイの反応が一斉に消失したのを確認した楠里は無線封鎖を解除した。
「無線封鎖解除。警報型親機の破壊に成功」
すると、無線の向こうでは歓声が響いた。
『良くやった! こちらでもレーダーでの反応消失を確認したぞ! 全爆撃隊は爆撃コースへ突入開始しろ!』
指揮に集中する為、無線はここで切られた。この後は爆撃隊に合流し、奪還作戦に参加する事になる。
楠里は反対からやって来たウィッチの顔を見た。
閉じられた瞳にどす黒い隈。着ている服はボロボロで、隠し切れない生傷が体中に見えている。
銃も三八式歩兵銃と随分と旧式で、履いているユニットも一一型と古い。
まるで鏡を見ているような感覚に陥った楠里は、ウィッチの所属を確認した。
「差し支えなければ、所属をお聞きしても?」
「……私は442のイージス」
「随分と古い装備でやつれていますね。大丈夫ですか」
「慣れました。引き続き貴方の指揮下に入りつつ奪還作戦の前線で戦うよう指示を受けています」
楠里はその顔を見て何か引っかかるが、靄が掛かった様に思い出せず、一先ずは区切りを付けた。
「分かりました。今頃は気化爆弾が投下されている頃ですので、私達も急ぎましょう」
「了解……貴方のお名前は?」
「私は『緊急事態発生! ベルリンに巨大壁型ネウロイが出現! それと同時に夥しい数の小型ネウロイが出現し、ウィッチの防衛網を突破、爆撃隊の被害が拡大しつつあります!』―――急いだほうがいいですね」
「そうですね」
楠里とイージスはエンジンを回して、味方が戦っているベルリンへ向けて向かいだした。
▽
2人がベルリンへ到着した時、既に作戦は撤退戦へと移り変わっていた。
501部隊が足止めをし、爆撃隊が全力離脱している最中であった。
どうやら芳佳も魔法力温存の為に優先的に下がる事となったらしく、静夏と共に戦線を離れていた。
『来たわね。合流はいいから2人は宮藤さんと服部さんの護衛に付きなさい』
現場で一番階級の高いミーナの指示を受け、今しがた大型ネウロイと戦闘を開始した静夏の下に駆け付ける楠里とイージス。
だが、いざ銃を構え戦闘に入ろうとしたその時、機転を利かせた静夏がコアを見つけてネウロイを撃破した。
「あ……や、やった」
自分が大型機を撃墜した事が未だ信じられないのか、僅かに茫然とした静夏。疲労と魔法力切れに伴い、そのまま意識が遠くなって墜落しかける。
しかし寸前で駆け付けたシャーリーが静夏を受け止めた事で、事無きを得る。
シャーリーの褒め言葉と、芳佳の撤退完了の報告が同時に入り、任務を達成した静夏は笑みを浮かべた。
「あの大型機をよく1人で落とせましたね。流石ですよ服部軍曹」
「ありがとうございます津家少佐! ですが、これも任務ですので!」
楠里は静夏の頭を軽く撫でると、シャーリーに静夏を護送するよう頼んだ。
「任せろ。活躍した服部はこの状態で基地へと送ってやるぜ」
「え、待ってください? 流石に自分で飛べますよ!?」
「遠慮すんなって。へへへ……なるほど中の上って所か」
そうしていると撤退してきたミーナ達と合流した。
「お疲れ様。爆撃隊に被害が出たけども、それも最小限に抑えられたわ」
「それは何よりです。で、こちらの方はどうしますか」
楠里は軽くイージスへ視線を向け乍らミーナに問いかけた。
「彼女の指揮権はブラッドレー元帥に頼み込んで、私が譲り受けました。これを以て貴方は442部隊から、一時的ではありますが501へ仮所属です」
そこまでミーナが人材に固執するのは珍しい事であった為、楠里はミーナの顔を見た。だが伊達にラル少佐とやりあっているミーナではない。特に何か表情に出す事無く指揮を続けている。
▽
基地へ全員が無事帰投してから数日後。
その日に発行された新聞の一面には、静夏の活躍が大々的に記載されていた。
楠里やイージスを始めとしたウィッチは、ミーナの執務室に集まり、お茶会がてら静夏を褒めている。憧れの人達から褒めちぎられているのがむず痒い静夏は、身を捩らせて頬を染めながら頭を振っている。
バルクホルンとハルトマンは新聞の内容が真実を語っていない事に渋い顔となっている。傍に居た楠里は窓の外を向きながら紅茶を飲んでいる。
器用にも太陽の光で反射し、窓に移り込んだ新聞の内容を見ているというオマケ付きだ。反転していてもなんのその、無駄に器用に読み進めた楠里は、確かに真実を語っていないと結論付けた。
「で、だ。ミーナが指揮権を捥ぎ取ったウィッチ、そこのお前。以前ベルリン郊外の森で情報を渡してくれたウィッチだな」
バルクホルンがそう聞くと、楠里を除いた全員の視線がイージスに向いた。
「連合軍第442即応任務部隊所属、コールサイン『イージス』です。所属などの仔細は軍機にて伏せられております」
「相変わらずふざけた名乗りだ……!」
バルクホルンが怒りで若干詰め寄るが、ミーナがそれを制した。
「貴方の所属は既に私の配下、つまりは442では無く501所属よ。なので442に課せられていた軍機は適用されないわ。まあ色々と伝手は使ったけどね。上官として正式な経歴を開示するよう命じるわ」
イージスは何処か気が抜けたようにミーナへ視線を向けた。瞼は閉じられているが。
「はぁ、では……私は家葛 形。扶桑皇国海軍、軍曹です」
「ケイ・ヤツヅラ。ならば家葛軍曹、貴方は何者?」
溜息をついたイージスは、もうどうにでもなれと思い、ぽつぽつと自分の過去を簡単に語り始めた。
「父は元とはいえ扶桑皇国海軍の中将でして。本土の北方司令部を預かるぐらいには能力がある人物でした。私を溺愛していた為、見ず知らずの人達の功績を奪い、私の功績として中央へ報告していました。無線機の向こう側へ常に横暴な態度な父は嫌いでしたし、ヒステリックな母も私は嫌いでしたよ。特に何もしていないのに階級だけが上がるのが不審過ぎて、独自で調べた事もあります。分かったのは、遥か北の最果ての前線基地で頑張っているウィッチの功績を全て奪っているという事実ですが」
話を聞いていた静夏以外のメンバーは、楠里へと僅かに視線を向けた。だが楠里は窓の外を見たまま何も言わないし、動かない。
「私はそれが嫌で、何度もそのウィッチを助けようと色々と動きました。まあその度に父や取り巻きに阻まれ続け、最後には事態を嗅ぎ付けた扶桑の英雄と中央憲兵の手によって全て晒上げられましたが。最初は質問だったのですが、最後は狂気的な軍医少将の実験台で色々と弄られ、用済みの判定を食らった私は、即応任務部隊という名の懲罰部隊に放り込まれました。助けようと動いていた動きが確認出来たので、寛大な処置にしたらしいです」
「他人の功績を奪ったのなら、その分は罰で働くのは当然です!」
静夏が当たり前かつ当然の事をイージスに言った。
「そうですね。退役までの間、給金無しかつ無休で働き続けるか、即刻処刑かを選ぶ自由ぐらいは貰えましたよ。功績を不当に奪い、無いにも等しい補給で死地で戦い続けたそのウィッチは、私の腹違いの妹というんですから、世の中は儘なりません」
「その妹さんは、貴方には会いたくないでしょうね。会ったとすれば殺されても文句など……」
「服部さん。あまり憶測で物を言う物では無いわ」
「ですがミーナ中佐! この人は反省しているとはいえ扶桑軍の恥です!」
静香の言葉を、501のメンバーは黙って聞いていた。そして視線だけを楠里に向けている。
もう色々と分かっているメンバーからすれば、肝心の楠里が何も言わないのであれば、自分たちが何か言うのはおかしいのだ。
やがて楠里は紅茶の入ったカップを手に持ちながら振り返った。
ボロボロな姿のイージスを改めて見た楠里は、黙ってカップをソーサーに置いた。
楠里は腹違いの姉は興味無いとガランド中将に言い放った。そして自身も目の前に本人が現れたとしてもいつも通りだと思っていた。
実際に対面し、本人が過去を語ったのを聞いた楠里は―――本日の哨戒要員のシフトの事を考えていた。
今目の前で罪の告白をしているのが父である中将なら、陸戦隊が味わった苦しみを少しでも分からせるべく顔面を潰す程度はするのだが。
聞けばこの姉も父の被害者だと言うではないか。自ら進んで事を起こしていたのではなく、押し付けられる形だったのだ。大体現在進行形で自身と似た境遇の人間に対して何を言えというのか。
なので楠里は何も喋らない。
イージスの話は少しも脳に入る事無くすり抜けている。
挙句には心の中で『あ、この人使えるかも』程度しか考えていない。楠里は何事も無かったかのように、普段使っている椅子に腰掛けると、書類作業を始めた。
「……何も言わないの?」
ミーナが代表して小声で楠里に尋ねるが、楠里は『はい』と答えた。周りからすれば、元凶の楠里が特に何かアクションを起こさないのであれば、機密の観点から何も言わない。
そうなんだねとか、大変だったね程度の同情半分の相槌を送るだけである。
だがミーナがふと気になり、楠里が記入している書類を横目に確認した。
その書類には、こう記載されていた。
助命嘆願及び指定人員所属要請書。
ミーナ以外のメンバーがイージスと親睦を深める為、気分を変えて話し合っている。ミーナは優しく楠里の頭に手を乗せると、皆に気付かれない様に撫でた。
「優しい子ね」
「は?……はぁ?」
心の底から『何言ってるんだこの人』と疑問を浮かべる楠里。
そして今更私がその妹だと言う気も更々無いし、それを盾に脅しもしない。
楠里はただただ、初めて出会った腹違いの姉に対して、何の興味も抱いていない。今も助けると言った気持ちではなく、戦力確保の気持ちで動いているに過ぎない。
それを優しいと言われ、勘違いされても困ると、楠里は心の中で呟いた。
ちなみにだが、仮に陸戦隊へ誹謗中傷等を行うようなら、楠里はイージスを躊躇無く殺そうとしていた。
だがこの事は本人の心の奥底に仕舞われる事となった。
時は1945年。ベルリンの解放は、すぐそこまで迫っていた。
▽
撤退戦から数日後、基地は非常に慌ただしかった。
「ヴィルケ中佐と宮藤曹長は司令部へ出頭している為、私が指揮を執ります。現在キール軍港司令部に大型ネウロイが接近中。パットン将軍隷下の陸戦ウィッチ隊が迎撃に出ましたが高度が高すぎる為、迎撃不可。現在は非戦闘員の避難誘導中。501部隊は即時出撃し、接近中の大型ネウロイを迎撃します。また、本作戦においては、ええと……貴方はどちらで呼べばいいんですかね」
「イージスで良いです。皆様の空をお守りします」
楠里は501が全員ユニットを装着したのを確認すると、号令を出した。
「ではイージスさんも501へ臨時編成します。服部少尉の支援を行ってください。総員出撃」
その号令が下ると、楠里を先頭に一斉に離陸する。僅かな時間で高度を上げたウィッチ達は、管制塔から連絡を受ける。
『こちらネーデルラント基地管制塔。宮藤曹長は魔法力温存の為出撃不可との事』
分かりましたと返答した楠里は、遠くに見える大型ネウロイへと視点を定めた。
「少しすればヴィルケ中佐も上がってきます。フォーメーションを崩さずに迎撃に当たって下さい。必ず2人以上で対処するように……聞いてますか服部少尉」
「……あ、はい! 大丈夫です!」
「イージスさん、お願いします」
「了解」
そう言って始まった迎撃戦だが、敵の装甲が非常に固い。
合流したミーナもその異質さを感じ取ったのか、作戦を1から練り直している。そのネウロイは人類が使う戦略爆撃機の様な形をしている。富嶽そのものの形だが、小型ネウロイを吐き出すユニット等が搭載されており、ビームの威力も桁違いに高い。
「かったいなーもう!」
ハルトマンですら愚痴を言う程に、こちらの攻撃が一切通じている様には見えない。
そうして戦闘を続けていると、静夏から無線が入って来た。曰く、以前ベルリンで倒したネウロイと形が酷似している為、コアの場所が分かるとの事だ。
ミーナはそれを有効打になると判断し、総員で静夏の援護に入るよう命を下した。その援護を受けた静夏は、以前コアがあった場所へ辿り着く。だがそこにはコアの影も形も無く、ただ分厚いトーチカの様な装甲があるだけであった。そして小型ネウロイに囲まれた静夏は、中に交じっていた自爆型の攻撃を受けてしまう。負傷して羽の部分で意識を失った静夏の周りには、小型ネウロイが群がっている。
またそれと同時にネウロイより謎の破片が大量に吐き出され、辺り一帯での通信障害を引き起こした。
そして止めと言わんばかりにその巨体の高度を急激に下げ始める。それが向かう先は、キール軍港の司令部であった。
「このまま突っ込む気!?」
ミーナが思惑に気付くが、あの巨体を止めるのは生半可な事ではない。更に静夏も人質になっている。
チャフと呼ばれる金属片が舞い散る中、イージスが発言した。
「僅かに気を引いていただければ、私が中へ突入して救出します。ただ万一を考え、イェーガー大尉に同行を要請します」
「私か? いいぜ、何か方法があるってんなら付き合ってやるよ」
楠里はミーナに視線を向けると、ミーナはどうやら許可を出す方向の様だ。
「では、行きます―――脳内麻薬術式、最大出力」
「何だと!?」
思わずシャーリーが声に出すが、その直後に、良くも悪くも見慣れた機動で小型ネウロイの中へ突入していくイージス。それを慌ててシャーリーは追う。
もう方法が無いと悟ったミーナは銃を投げ捨て、ネウロイの下部に回り込んでシールドを張る。ほんの僅かでも時間を稼ぎ、地上の人間が退避できる様にする。そして何より静夏の救出をする。そんな思惑を全員は悟ったのか、バルクホルンとハルトマンがミーナと同じようにシールドを張って時間を稼ぐ。
もはやこれまでかと思ったその時、大型ネウロイよりも巨大なシールドが突如として現れ、大型ネウロイの落下速度を緩めた。
その魔法力に反応したのか、静夏を取り巻いていた小型ネウロイの包囲網に小さな穴が空く。シャーリーとイージスはすかさず突入すると、2人で静夏を確保して離脱した。
周りの人員が退避した事を確認したペリーヌが、自身の固有魔法を発動し、範囲内のネウロイに雷撃でダメージを与えていく。小型は消し飛ばされ、大型の装甲が削られる。
「コアだ! サーニャ!」
「了解!」
目ざとくコアを見つけたエイラの素早い報告と、即座に対応したサーニャの連携により、キール軍港を襲ったネウロイは爆散した。
▽
「……コア、撃ち抜いたんですよね?」
芳佳が魔法力の使用過多で意識を失い、地上に運ばれてから数分後。
未だに空中に漂い続ける残滓を見た楠里はサーニャに問いかけた。
「うん。間違いなく壊したよ」
楠里は不自然な程に上へと漂っていく残滓を見て、まだ終わってないと確信した。
「……エイラさんとハルトマンさん、あとイージスさんはもう一度私と上がって下さい」
「な、お前サーニャの言った事が信じられねーってのか!?」
「信じてますよ。ただコアが1つと限らないのはエイラさんも知ってるでしょう」
現にほらと楠里は指さすと、一部の残滓が形を成し始めている。
「わ、私も行きま―――痛ッ」
「服部少尉、さっさと治療を受けなさい」
そう言って静夏を地上に置き留めた楠里は、指定した3人と一緒に再度空へと上がった。
「なぁ、さっき服部を救出する時、お前固有魔法を発動したよな?」
エイラは楠里も気になっていた事を聞いた。
「私は固有魔法を最初は持っていませんでした。ですか、その……とある実験により植え付けられたといいますか。この魔法だけ行使出来る様になったんですよ。不眠不休で稼働し続けられるので便利ではありますが、使うだけ寿命を縮めるでしょうね。この魔法のオリジナルを持ったウィッチはさぞ苦労したのが分かります」
「……だろうね。実際植え付けられた君も過酷な環境だった訳だし」
「これが血筋とでも言うんですかね」
楠里が小声でエイラに話しかけるが、エイラは『知らねー』とおざなりに返事をした。
「お、見えて来たけど何アレ、まさか逆翼? 逆翼には良い思い出無いよー」
先程の大型ネウロイの大きさに比べると、その差は歴然である。
通常の戦闘機を更に一回り程小さくしたその逆翼躯体は、如何にも高機動出来ますといわんばかりである。
楠里らは知る由も無いが、とあるフライトシューティングに登場した機体に似ていなくもない。
「どうやって当たるのさ」
「どう当たるにしてもまずは戦ってみなければ何とも言えません」
楠里がそう言うと、イージスも同調した。
「簡単か難しいは実際に殴れば分かります」
「……えーと、つまり」
エイラが変な目線で楠里とイージスを見て、ハルトマンは呆れた視線を向けた。
『空戦で確かめてみましょう』
ハルトマンとエイラはキレた。
私は自分で作ったオリキャラを殺せると信じている
なんかこう良い感じに処分出来ると信じている
斬新なアイデアが浮かぶと信じている
脳内AIもそれを信じている
だが違った(´・ω・`)