あとまた内容重複してたんですって。
最後までコレならもう改善の見込みは無いな。
解放され、復興作業が始まってまだ数日しか経っていないベルリンにて。
偶然にもネウロイの攻撃から逃れ、殆ど無傷であった総合病院。
伝統と格式ある建築様式を残しつつ、近代建築技術が盛り込まれたその病院は、過去類を見ない程の早さで業務を再開した。
オペレーション・サウスウィンドで傷ついた兵士達を真っ先に収容する事が目的であったが、その他に匿名のVIPの治療をする為だったとも言われている。
そんな豪華な病院の最上階、現代で言う所の特室に当たる部屋で、楠里はベッドの上から窓の外に広がるベルリンの景色を一望していた。
部屋の窓は開いており、春先である為か冷たい風が入ってきている。
寒いから窓を閉めようかと思ったが、動かない自身の両足を見てため息を吐いた。
結局、炭化した左腕の外見は戻りはしたが、神経やらは復活せずに動かない。両足の機能も魔法力の補助が無い今は動かす事が出来ない。
移動する為には車椅子が必要なのだが、その車椅子にも最早自力では乗る事が出来ない。唯一動く右手で這うようにすれば可能性はあるが、万一転んだ時などは悲惨だ。
ナースコールなどの機器は未だに開発されておらず、用がある場合は回診を待つか、何か大きな音を立てる必要がある。
不便な体になったと舌打ち1つ、楠里は諦めて手帳を読み始めた。そうして過ごす事数十分、部屋の扉が開き、ミーナが入って来た。
「調子はどうかしら?」
楠里はその姿を見ると、読んでいた手帳を閉じて横に置き、ミーナへと顔を向けた。
「あ、えっと……確かヴィルケ中佐でしたね」
「……えぇ。でも私の事はミーナでいいのよ?」
楠里はそんな事を言われてもなと、困った様に頬を掻いた。
右手以外の四肢は動かず、相も変わらず全身は傷だらけ、顔の半分は火傷をしており、目に光も宿っていない。
真っ先に奉げた自身の記憶は完全に消滅し、芳佳の強引な魔法力を以てしても一部だけしか取り戻す事が出来なかった。
その一部というのは、軍に入隊する直前の記憶までと言う事だ。
代償の固有魔法は、何も一気に記憶の全てを消した訳ではなかった。新しい記憶から順に遡り消していったのだ。
芳佳の介入があった時にはその記憶は既に殆どが消されており、水際で食い止めてこの状態に落ち着いた。
だが楠里からしてみれば、つらい孤児院から抜け出す為に軍門を叩いた翌日、何故か占領されている筈のベルリンで目を覚ましたのだ。話を聞けば5年以上の月日が流れ、ベルリンは既に解放されているのだという。挙句に自身はその際の作戦を含め、軍歴はもう八面六臂の大活躍だったのだとか。
なんのこったよと楠里は思うが、確かに古新聞で見たベルリンの街並みではあるし、孤児院で受けた虐待の傷の他に、全く見覚えの無い傷があちこちに出来て居る。
顔の半分がいやに風当たりが良いと感じれば、火傷が真皮にまで達しているというのだから、もう笑うしかない。
放り込まれた病院で自分の経歴を聞いてみれば、どこの三文小説だと言わんばかりのオンパレードであった。
齢9歳の子供が1年足らずの訓練で、基地司令と航空戦力を兼任?
補給や手柄を取られて、固有魔法があったとは言えほぼ無休で4年間防衛線をし続けた?
偶然にも英雄に発見され、事態が明るみになってエース部隊へスカウトされた?
挙句には巣を破壊する作戦に2つも従事し、世界中のエースから一目置かれている?
「何の冗談よ」
口調も昔に戻った楠里が言い放った第一声が、コレなのだ。
だが懐に持っていた手帳を見れば、確かに自分の字であるし、その文章の書き方や言い回しも正しく自分であった。
普通であれば混乱し、錯乱なりするのだが、楠里はそうはならなかった。
いや、頭の中では疑問や混乱で一杯だ。だがどういう事か、心というか精神面は異常な程に凪いでいる。
楠里自身でも訳が分からない程、落ち着いているのだ。この程度、今更慌てる事ではないと、心の奥底で、本能と呼ばれる部分がそう告げている。
「良く知らないんですが、中佐階級って毎日病院に来れる程暇なんですか?」
普段から波風経たない口調を心がけ、誰に対しても丁寧に接していた楠里であるが、壮絶な経験も無くなった今の楠里からすれば、軍人で偉いから何だというのが本音だ。だから散々迷惑を掛けて世話になったミーナにでさえ、こんな口調となる。
「暇ではないわ。でもね、代表で私が来なければ、今頃この病室には30人近いウィッチで溢れ返る事になるわね」
「それはそれで嫌ね」
と、記憶を失う前の楠里が書いた『自分宛』の文章を目に通しつつ、ミーナの情報を頭に入れた。
自分がどれだけ迷惑を掛けたか、その度にどれだけ心配させたかなど、事細かく記されたその内容は、手帳の最後のページまで続いていた。
お世話になった、出会った、手紙だけだが交流があった、全ての人物の細かな情報が記載されている。
まさか将官や元帥クラスにまで自身が関わっていた事に驚いたりもした。
「さて、と」
ミーナは楠里を車椅子に乗せると、膝の上にブランケットを掛けた。そのまま車椅子を押して病院の外に出た。
津家楠里というウィッチは今回の戦いで重傷を負い、一時的に軍属を外れた。今の楠里からすれば、さあ軍で生活費を稼ぐぞと思っていたら突如、英雄扱いされ戦死扱いされたレベルだが。
復興作業が進むベルリンを、乗っている車椅子をミーナに押してもらいながら周る。
「おー、今日は元気そうじゃねーか」
瓦礫を除去していたエイラとサーニャがミーナと楠里を見て近づいて来た。
「えっと……リトヴャク中尉とユーティライネン中尉さんでしたっけ」
「うっわ、鳥肌立った……エイラで良いよかたっくるしい」
「私も、サーニャで良いよ?」
そのようなやり取りを他のメンバーと繰り広げていたのが、ここ最近の楠里だ。
そんな中でも特に自責の念が強いのが芳佳だった。楠里の記憶を完全に戻せなかった負い目から、最初はずっと泣きじゃくっていたのだが、いつかもっと成長して取り戻すと心に誓ったのも新しい。
春先の冷たい風と、それに反した暖かな日差しの中で、501や502のウィッチが集まり、504や506から来た援軍のウィッチ数名も其処に加わった。
そんな名だたるエース達の中に、車椅子に座った少女が1人。その少女は周りを見てどこか落ち着かない様子だったが、周囲のウィッチはそれにすらも柔らかい笑みを浮かべている。更にその周りには、かつて少女が率いていた部下達も居る。
楠里は欧州ではそれなりに有名人である為か、解放されたベルリンを取材に来ていた記者たちは、その奇跡の様な1枚を撮る為、近づこうとした。
だがそう簡単に行くはずも無く、記者のあしらい方になれた人員や、現地の住民が協力して意図的に遠ざけられていく。
そんな中で唯一、その集まりに少しだけ近づく事が許され、1枚だけ撮影の許可が下りた記者が居た。
その記者は一切ブレが無い完璧なアングルで、全員の顔が笑顔になった瞬間を的確に狙い、かつ全員の顔がばっちりと見える奇跡的な1枚を撮影した。
記者の撮った写真は新聞に掲載されて大反響を呼ぶ事になる。
大反響が起こった数ヶ月後、1人のウィッチだった少女が、多くの仲間に見守られながらこの世を去るのだが、当事者たち以外に知る人間は居ない。
だが唯一、朧気にその事情を理解していた記者は、この写真の事を後年こう語った。
『最果ての魔女は、その類い稀なる力を以て、多くの魔女を支えたのだ』
―――1946年、ロンドンタイムズ記者、アンジェ・C・ノーザンライト
▽
「さて、ベルリンは解放され、ネウロイに対して我々人類は大きな楔を打ち込むことに成功しました。ですが、オラーシャやアフリカを始め、まだまだネウロイの巣は多く存在します。そして私やバルクホルン少佐も後僅かな時しか飛べません。次代を担うのは貴方達になります。津家少佐が引退し、この部隊の運用やウィッチも新たに調整する事になりました。そこでまずは1名、501に補充要員を加えます……入って来なさい」
「連合軍第442即応任務部隊から正式に501に着任致しました。イージス改め、家葛形軍曹です。義妹の抜けた戦力を埋める為、全力を尽くします」
「家葛さんの使い魔は
「了解。後、義妹より伝言を預かっています」
「楠里ちゃんから?」
「はい。読み上げます」
『いつか、
葬送の世界線,ED.
シャブ漬け少女のストライクウィッチーズ,fin.
以前、小説内に設定集載せればとご意見を頂いたのですが、小説内で丸々1話設定集で使いたくなかったので活動報告になった訳です。
まだ没ネタ集終わって無いから完結してません。
今までの回想やらキャラとの絡みは書いていたけど、長くなりすぎて鬱陶しかったので省略し、エピローグはサラッと流しました。
描写して無いですが、最期にはちゃんと記憶が戻ってる状態です。
本作の設定集1↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=253534&uid=174708
文字数制限なので設定集2↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=265423&uid=174708