まあこの1話だけですし、丁度いいですね。
442
あの忌まわしき大戦から70年の月日が流れました。
皆さまこんにちは。シャーロット・C・ノーザンライトです。今週もワールドミリタリーパワーの時間がやって参りました。
先の大戦では数多くの兵士や部隊、ウィッチらが活躍しました。新しい怪異が未だに出現し続け、完璧な平和とは言い難い現代ですが、先人達の必死の戦いにより、私達は今日を生きています。
さて、本日取り上げる話題は『第442即応任務部隊』です。
戦時中、戦後問わず『パープルハート・チーム』と皮肉られたこの部隊を、本日は取り上げていきます。
そもそもこの部隊が出来た経緯が特殊なのはご存知でしょうか。
当時のリベリオンでは人種による差別が横行していました。戦局の変化に伴い、その差別されていた人種からもリベリオン軍に志願する者が現れましたが、上層部はその扱いに窮しました。
自由の国を謳っている手前、表面上は何もありませんでしたが、実際には様々な軋轢が生じていたのです。
現代では大きく改善され、その人種や彼の部隊に参加した兵士らに対して大統領直々に勲章が贈られるなどしていますが、当時は非常に冷遇されていました。
そういった人種と、軍法会議に掛けられた兵らが行きつく果てが、この部隊だったのです。
それだけであれば懲罰部隊という認識なのですが、ネウロイという脅威を前に、部隊内での結束は強かったとの報告があります。差別され冷遇されていると分かっていた兵士も、犯罪を犯した兵士も、分け隔てなく一丸とならなければならないという状況でした。
国の為、自分の為と理由は様々ですが、間違いなく現代にも語り継がれる部隊です。
その要因は2つあります。
まずは『任務成功率100%』です。如何に過酷でも、使い捨てと同義の様な残酷な任務でも、この部隊は必ず成功という結果を叩き出しました。
それを為し得た理由が、彼の部隊の名を知らしめた要因の2つ目となります。
すなわち、『部隊損耗率350%』という、聞き間違いの様な被害率です。
例え方は様々ですが、1人平均3回死んで、そこから更に瀕死になるという事です。
もっと分かり易い例えも存在します。
『部隊が3回死傷で全滅して、補充された兵士の半分も死んだ』と言われれば、その異常性が分かるのではないでしょうか。
現にその数字通り、結成当時の部隊要員は部隊長含め全員戦死しており、2回目と3回目に補充された兵士も全員戦死しています。そして4回目に補充された兵士が半分死んだ時点で大戦が終結した訳です。
最終的に生き残ったのは、空戦ウィッチ1名のみでした。更に生き残ったウィッチも、ベルリン解放作戦の折に死亡しています。
大戦がもっと長引いて続いていれば損耗率400%となっていたのは間違いないでしょう。
1939年の部隊発足時、指揮系統はまだリベリオンにありました。
ですが少しでも欧州で活躍の機会を得たいが為、この部隊の最終的な指揮権はリベリオンが持ちつつ、現地での任意編成や戦闘指揮等は連合軍の各司令部へと任されました。
そうして欧州各地を転戦し、任務達成率100%を叩き出したこの部隊。
当初はウィッチは居ませんでしたが、負傷者が増え続けたり状況が悪化したためウィッチも若干名補充されました。
とは言っても情報は全て散逸しており、詳しい事は未だに分かっておりません。果たしてどの様な人物であったのでしょうか。
『シールド』という人類の盾の名を与えられたこの部隊の謎を、何時か解き明かす日が来る事を確信しています。
1944年
ガリア北部・ディジョン戦域
リベリオン陸軍航空隊第42飛行戦隊
キャロライナ・ライオット・リーパー曹長
「掃き溜めへようこそ新入り君。私が現状この部隊唯一のウィッチだ。コールサインは『ライオット』」
「……はい」
「えーと、ケイ・ヤツヅラ軍曹、コールサインは『イージス』か。中々大層な名前を貰ったな」
「……」
「ここでは本名も階級も無い。あるのは与えられたコールサインだけだ」
「どうして、こんな事に」
折田形にとって人生はそこそこに順調であった。
扶桑軍人で中将階級、華族の血が流れている父を持ち、母は地元の名家出身の由緒ある血統。
そこそことは言うが恵まれた人生を歩んできた。
国へ奉仕する為に海軍に志願し、それなりの成績で士官学校を卒業した後は、父が管轄する北方司令部所属のウィッチとなり、階級も順調に上がっていった。
父の口添えもあったのかもしれないが、撃墜数に対して異常に早く上がる階級に疑問は尽きなかった。
だが形は事あるごとにヒステリックを起こす母が嫌いであったし、司令部で常に通信機に悪態を吐く父も嫌いであった。
何もしていないのに上がる階級の謎は、恐らく通信の向こう側に居る人員の手柄を取っているという結論に至るまで、そう長い時間は掛からなかった。
このままではいずれ破綻して自分の人生が滅茶苦茶になる。
そう思った形は、何らかの形でその理不尽な目に遭っているウィッチを支援しようと試みるが、その全てを父である中将と取り巻きによって阻止される。
魔法力もとりたてて優秀ではない為、欧州の戦地では何も出来ないと判断した中将は、自分の娘の可愛さに目が曇っていた。
この折田形という存在が、想像以上に父である中将を嫌っている事を見抜けなかった。
そうして遂に事態が明るみに出たのだ。
扶桑の英雄と呼ばれるウィッチが中央司令部からの強制査察を行い、今の今まで行って来た中将の事が晒し上げられた。
そこからはもう大変だ。
片棒を担いでいたと判断された形は拘束され、名家出身の母は社交界で爪弾きにあい精神を病んでいった。
質問が尋問に変わり、尋問が詰問に変わり、詰問が拷問へと変わった。
何週間か痛めつけられ、自分は何も知らないと答え、でも変えようと努力はしたと必死に証言した。
そしていつからか拷問は実験に変わり、最後にこう言われた。
『コレはもう使えない。だが変えようとしていた事実はある為、酌量の余地はある』
この一言を以て、折田形の人生は決まった。
戦果を挙げても認められず。
補給も受けられず。
毎日死ねと命令される部隊で。
退役までの間無給で働き続ける事が出来れば、死刑は免れるのだという。
名前も父の姓であった折田から母の性である家葛に変わった。
そうして目隠しをされて粗大ゴミの様な扱いでやってきたのがここ、欧州の中でも特に激戦区であるガリア北部だった。
麻薬、睡眠薬、鎮静薬、向精神薬など、あらゆる薬を体に打たれた形は、もはや自意識も曖昧な人形に成り果てていた。
「じゃあイージス、これからよろしく。ネウロイを殺したりネウロイに殺されたりしていこう」
ライオットはそういうとテントを出て行った。
時は1944年。
イージスと呼ばれたウィッチが戦死する2年前の出来事であった。
日に何度も襲撃してくるネウロイに対して、他の正規部隊の迎撃用意が整うまで遅滞戦闘を繰り広げる日々が続く。撤退は許されず、支給される装備は旧式も旧式。
酷い物であれば撃った瞬間暴発して手首が物理的に持って行かれる。
また睡眠時間も酷い。平均して2時間目を瞑る事が出来れば幸運な方で、襲撃が止まない時は何日もぶっ通しなのだ。
後世の評価では部隊の結束が固かったなどと言われているが、実際はそんなものは無い。
こんな場末の懲罰部隊擬きに送り込まれる時点で、誰も彼もが人間的には終わっている破綻者だ。
イージスを最初に案内したライオットなどは特に酷い。
リベリオン陸軍所属とはいえ、軍に入る前はリベリオン本土で相当暴れまわった殺人犯だ。
おまけに容姿も良い。その為か指揮官に取り入っては色々と甘い蜜を吸っていた。
まあウィッチは処女でなければならない為、本番までは行っていないが。
そうして甘い蜜を吸っているライオットですら、普段は不眠不休で戦い続けなければならない。
撃墜数や戦功は加算されないが、オラーシャ帝国で人気の単語である『ノルマ』はある。
週間で指定された数以上を撃破しなければ、問答無用で簡易射殺が実行される。
これはウィッチも地上兵士も関係無く課されるのだ。いわばこの部隊に繋がれている奴隷の証であり、逃亡を企てても無駄なのだ。
なんせ逃亡者を捕らえたり密告した者は、役に立つ部品と認識され、僅かだが優遇措置が取られる。である為、部隊の人間は脱走を企てる者が居ても止めない。
脱走した後に捕まえて評価を上げようと目論んでいるからだ。
そんな環境が続けば、誰しも脱走しなくなる。過去に一度集団脱走が行われたが、その時はまあ理不尽な結果に終わった。
442の後ろには常に督戦隊擬きも陣取っており、直ぐに狙撃される。
この掃き溜めで、イージスは無心で生き残り続けた。
そうして過ごしていた数か月後。
最早慣れ切った数十度目の九死に一生を得たイージスは、喉の渇きを我慢しながら前線野営地へと帰還した。しかしいつもは直ぐに出迎えて来るライオットの姿が確認できない。
「あぁとうとう死んだか」
などとイージスは結論付け、ボロボロの火器を保管庫へと投げ込んだ。
「時々暴言吐くよな」
心外だと言わんばかりにライオットが姿を現した。
「あぁ生きてたのね。はいはいごめんね」
「……今、見境無き医師団が来ている」
「何それ……え、ホントに何それ」
「とにかく行ってみな……疲れるけど疲れ取れるから」
胡散臭いと思ったが、いつもは馬鹿騒ぎしているクズらが大人しいって事はそれなりの理由がある。
「向こうか。何が待っているのやら」
そうして新たに設置されているテントに近づき、恐る恐る中に入るイージス。
「お、本命が来たな。まあ座れよ」
中に居たのは白衣を着た黒髪の扶桑人のウィッチであった。体格は小さく、何処か不気味な目をしているウィッチは、イージスの姿を認めると着席を促した。
「貴方は?」
「私は茂野夕姫、階級は少佐でコールサインは
「渡り鳥?……随分大層なお名前ですね」
「神話の盾の名を使うお前には負けるよ、なぁ折田形」
その言葉と同時、イージスは閉じていた(正確には閉じているように見える糸目)をスッと開き、冷たい視線を投げつけた。
「その名を出してどうする気ですか」
「どうもしねーよ? ただお前が精々あと数年は生きられるように処置してやるのと、良い事を1つ教えてやろうと思ってな」
―――信用出来ない。そもそも機密を知っている人間がそんな事をして何の意味があるのよ。
イージスはそう心の中で茂野少佐を評した。
「まあ確かに信用出来ないだろうな。機密を知る軍人としては特に意味は無いが、私個人としては意味があるんだよ」
「なッ」
不気味な寒気に耐え切れず、思わずイージスは椅子から立ちあがった。右手を懐に宛がおうともする。
目の前のこの少佐は、たった今自身が心の中で思った事を的確に言い当てて返答したのだ。
「座れ。お前は懐に隠してる銃剣で不意を突こうとしているがな、私にそういった不意打ちやら算段はほぼ通用せんぞ」
「……化け物」
イージスは逆らえないと確信し、椅子に座った。
「お前以外は診終わったから、このテントはもう誰も入って来ない。さっさと上着脱いで診療台に寝ろ……幼気な女子供に劣情なぞ催さんから安心していいぞ」
傷だらけの裸体を一部晒したイージスは、大人しく白いシーツが敷かれている簡易的な診療台へと寝転んだ。
「何をするんですか」
「ちょっと骨格の矯正やら、圧迫している魔法力伝達器官を和らげたりな」
その後数分、テント内には体の矯正作業をした際に鳴る骨の音が引っ切り無しに鳴り響いた。
「次、視力やら聴力検査」
これまた不気味な程に体が軽くなったイージスは、もうどうにでもなれと諸々の診断を受けた。
「結果は?」
「言うまでもなく酷いが? 正直今すぐ後送からの除隊案件だけどな」
「……」
「それが出来たら苦労してないって? 言っておくがまだ味方と言える航空戦力が有るだけマシだと思った方が良いぞ。お前の探し人は、お前の仕事+部隊管理やら基地運営やらやってたからな」
「分かっていますよ」
「あぁそうだ。良い事を教えていなかったな……お前の探し人な、生きてるぞ」
「教えてください」
「駄目に決まってんだろ。と言いたいが、今から言う条件を呑めば、何処にいるかぐらいは教えてやる」
別に復讐がしたい訳ではないイージスは、茂野少佐の提示した条件を呑んだ。この条件自体、イージスにとっても破格であり、茂野少佐にとっては何のメリットも無い。
もしやこんなに回りくどい事をしなければ、私が条件を呑まないと思われていたのだろうか。
実に実に心外だとイージスは後に憤った。
そして数十分の時が経ち、とうとう処置が終わった。
「これで終わりだ。あの軍医少将がお前に植え付けた固有魔法は不完全でな、使い過ぎると簡単に廃人になる。本来の持ち主はまだ耐性があったから良いが、お前は……まぁ、うん」
「聞いていませんでしたが、この固有魔法は何という名称なんですか」
「アイツはこの固有魔法を『脳内麻薬術式』と読んでいたな」
この固有魔法の名称が、後々イージスが探し人を発見する時のヒントになるのを、まだ彼女は知らない。
時は流れて1年と半年後。
世界はネウロイとの戦争を続けているも、大きな動きがあった。
ガリアとロマーニャを覆っていた巣が第501統合戦闘航空団によって破壊され、東欧に巣食っていた巣も第502統合戦闘航空団によって破壊された。
それに伴い、イージスが所属する442即応部隊の任地も、ガリアからベルリン方面へと変わった。
最初は3桁居た兵士もいつの間にか死傷により全滅しており、再度補充された兵士も既に8割が消し飛んだ。
だがこの部隊に撤退といったモノは無い。勝利か、死かの二択しか選べないのだ。
すっかりと擦れた形は、稀に別の部隊から流れて来る酒を呷っていた。
「先輩、また酒ですか」
周りの人間はバタバタと死んでいき、いつの間にか形が最古参の人員となっていた。当初に形を出迎えたライオットは既に戦死している。だが階級も上がらず、戦死者名簿にも載らない。
彼女の最期は悲惨なものであった。不意の攻撃に対処出来ず腹部をネウロイのビームで裂かれてしまった。
腹から臓物を覗かせながら、子供の様に泣き叫ぶ。
そんな彼女は、泣いている途中で顔面にネウロイのビームを喰らい、見事に頭部が消し飛んだ。
糞尿を撒き散らしつつも焼け焦げた匂いを漂わせながら地面に叩きつけられた遺体。
そんな最期を遂げた遺体は丁寧に埋葬すらされなかった。
ここは戦場で、基本的に男しかいない。
頭部が消し飛んでも腹部が裂かれていても、事を致せる輩は存在する。ましてやここは懲罰部隊、正規部隊なら即刻銃殺刑だが、それを監督する人間すらいないのだ。
そしてライオットの遺体は味方に穢され続け、最後は塹壕から投げ捨てられた。
形ことイージスはその時初めて人間に恐怖した。死しても尚あのような扱いを受けるのかと。
だがそれと同時に、扶桑本土では顔も名前も知らない誰かに、似たような事を自分は強いて来たのだ。
因果応報かと諦めて、死ぬときは全身を消し飛ばして貰うかとも思っていた。
「飲まなきゃやってられない」
イージスの後輩で配属半年を迎えたウィッチに目を向けた、
トリニダード・バックラー・スコーピオン軍曹
現在はイージスとバックラーだけがこの部隊のウィッチだ。
▽
ガリアとヴェネツィアが解放され、次はいよいよベルリンとなった時期。
連合軍がキール軍港を必死で防衛している最中、珍しく442へ死んで来い以外の命令が入った。
曰く、ベルリンを占領する巣より高速ロケット型ネウロイを放ち、重要拠点を狙っている。442所属のウィッチはこれを偵察せよ。
また本作戦における武装は一切認めず、また首に小型爆弾装置を装着する事。定時連絡を怠った場合、司令部は直ちに爆弾を起動し、イージスらを処理するとの事だ。
「狂ってる狂ってる狂ってる狂ってる狂ってル」
運良くなのか、運悪くなのか。結局なんやかんやと生き残ってしまったイージスの後輩であるバックラー。
つい先日前までは新人が数名は居た。
『ランタン』『カイト』『デュエリング』『アイアス』『スヴェル』
だがその全員がこの環境に呑まれ、ネウロイの攻撃で散っていった。その死に様を延々と見続けたバックラーは、とうとうその精神の許容範囲を超えてしまった。
1つの単語しか口に発さなくなり、目の焦点は定まっていない。イージスもその新人らの死を間近で見ていたため思う所もあるが、最早自身が生き残る事で精一杯であった。
そんな精神状態のバックラーが、集中力を要する偵察任務など出来る筈が無い。
「……少しは黙れば?」
イージスがバックラーに棘のある事を言うが、反応は返ってこない。2人は現在木陰に隠れ、地上を偵察する航空型ネウロイから身を隠している所だ。
「……んひッ」
不気味な笑い声が突如としてイージスの横から聞こえ、薄気味悪いと思いながら横目でバックラーを見た。
「……おい」
するとそこには、目を限界まで見開かせ、これ以上無い程の『笑み』を浮かべたバックラーの姿があった。口裂け女の様に壮絶な笑顔を見せるバックラーは、ゆっくりとイージスへ振り向いた。
「えぁあー?」
おおよそ言語とは言えない鳴き声を発したバックラーは、突如としてその場から立ち上がり、奇声を上げながら開けた場所に躍り出た。
本来ならイージスは即座に追いかけるなりするが、もうああなっては無理かと見捨てた。
その想像通り、巡回のネウロイがバックラーを直ちに発見し、そのビームを容赦なく放った。
ウィッチと言えど所詮人間。脆いその肉体は一瞬で損壊し、バックラーを見るも無残なオブジェクトへと変貌させた。
「お休み、バックラー」
本名を知らないイージスは、バックラーに軽く黙祷を送ると、その場を静かに離れた。
そうして偵察結果を何とか司令部へ報告し帰還する途中。
501部隊のウィッチが付近で作戦行動中の為、辺り一帯の詳細を伝えるようにと別命が入った。
どうせ逆らえないイージスはその任務を引き受け、焚き火をして野営しているウィッチの下へ向かった。
合流した英雄たちに伝える事を伝え、最後に周辺にウィッチの死体があるから見ないようにと警告をして去っていた。
気になる話が幾つかあったが、今の自分には関係無いかと切り捨て、闇夜の中をイージスは歩いた。
そうして死地から帰還したイージスを待っていたのは、ベルリン周辺に居る警報型ネウロイの掃討命令であった。
高度制限を受けるが全速で飛び続け、反対から突入したウィッチと親機を挟撃するらしい。
442の残存戦力はイージスと歩兵部隊15名。
その15名も、イージスが偵察を行っている間に全員が戦死した。
どうやら上層部はイージスの戦死を以て、正式に442を抹消する気らしい。
薄々そうだろうとは思っていたが、逆らえる訳でも無い為、ただひたすらに低空飛行を行う。
作戦自体は成功し、反対から突入した津家楠里なるウィッチと共にベルリン上空に到着すれば、既に作戦は崩壊し、撤退戦へと移行していた。
その後は何とか撤退に成功し、501司令官のミーナがイージスの指揮権を交渉で捥ぎ取って来た。何ともおかしな話だが、バックラーにすらしなかった昔話を、こうも簡単に口にしてしまったイージス。
腹違いの妹は一体どうしているのかと思いつつ、この部隊の副官だと言うウィッチに目を向けた。
「……どうしました?」
「いえ、津家少佐は随分とお若い様に見えます。失礼ですがお幾つですか」
「さぁ……なんせ孤児なもので。生まれた生年月日が正しければ、今年で15だか16だかですよ」
「なるほど」
▽
全くもう。全くもうだよ全くもう。
何となく妹だろうなとは思っていたが当たっていた。
良き人達に囲まれ、英雄と言われているからイージスは気付いても何も言わなかった。恐らく向こうもこちらをどうでも良いと思っているのだろう。
ならばせめてこの命尽きるまでは盾になろう、そう誓った。
誓った筈なのに、この愚妹はどうにも自己犠牲や献身が大層好きなようだ。
真面な教育は受けた事が無いのは知っているが、人間此処まで歪な精神になるだろうか。
記憶を代償に魔法力を得て、皆の頭から自身の事を忘れさせる。
余りにも腹が立ったので姉の言う事聞いて大人しくしろよと言ってやった。
するとどうだろうか、姉と思った事は無いと返して来た。
あーそうだろうともさ、うっせうっせ。
「あの救いようの無い屑の種から生まれた時点で同じ穴の狢でーす残念でしたぁー!」
今の今まで我慢してきた分盛大に言ってやったのだと、後のイージスは語る。
それでも強行しやがった妹は、事が終わった後盛大に怒られてた。
空を見上げ、501に引き取られるまでの事を軽く想い出す。
曇天だったベルリンは晴れ渡っている。
イージス以外の442人員は戦死した。
だが妹は第9陸戦隊を数名生き残らせた。
442は結束力など無かったが、妹はそこら辺りは誠実な態度で絆を育んだのだ。
それが津家楠里と家葛形との決定的な差なんだろうなと思った。
「お休み、妹」
目を瞑り寝息を立てる津家楠里の傍で、彼女を傷つけ続けてきた家葛形はそう呟いた。
▽
この世界には、太古から人類に牙を剥いて来た怪異が沢山いる。
だが人類の中には魔法力を行使し、その怪異を撃退する存在―――ウィッチが居た。
ウィッチ達は類い稀なる才能を振るい、何時の時代も道標として在り続けた。
1939年、突如として欧州に現れたネウロイは、その勢力圏を忽ち拡大させ、人類をヨーロッパ大陸から駆逐した。
だが人類は諦めていなかった。
新たに開発した魔法の箒を用いてネウロイと戦う少女達、人類の命運は彼女らウィッチ達に託された。
この話は、そんなウィッチ達の中にも、一風変わった経歴を持つ少女達も居る。
多くのウィッチを支えた『
数多のウィッチを繋いだ『
現れては場を搔き乱した『
彼女たちは正史にこそ載らないが、確かに此処に存在していました。
『いつか戦いが終わり、皆さんと共に平和に暮らせる日が来る事を願いつつ』
1946年 津家楠里 家葛形 ベルリンより皆さんへ。
これにて本作は完結となります。
10ヶ月近くの間お付き合いいただきありがとうございました。
長い後書きは活動報告に載せますので、お時間が有ればどうぞ
本作の後書き↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=269675&uid=174708