雷使いも異世界からやって来るそうですよ?   作:水槽のスイマー

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第十七話

居住区を抜けて、俺達は貯水池に向かう。

どうやら、十六夜が手に入れた水樹の苗を設置するらしい。

 

貯水池では、ジンとコミュニティの子供達が水路の掃除をしていた。

 

「あ、みなさん!水路と貯水池の準備は調っています!」

 

「ご苦労様ですジン坊っちゃん♪皆掃除を手伝っていましたか?」

 

ワイワイと子供達が黒ウサギに群がっていく。

黒ウサギは子供達に随分と好かれているらしい。

 

「黒ウサのねーちゃんお帰り!」

 

「眠たいけどお掃除手伝ったよー」

 

「ねえねえ、新しい人達って誰!?」

 

「Yes!とても強くて可愛い人達ですよ!皆に紹介するから一列に並んでくださいね」

 

可愛いとか何言ってんのコイツ?とか思っている間に、黒ウサギは指をならして、二十人くらいの子供達を横一列に並ばせていた。えらく統制されている。

 

考えてみれば、俺がこのくらいの子供と会ったことなど、小さい頃を除けばこれが初めてかもしれない。

そう考えるととても不安だ。

 

久遠と春日部も似たような反応を見せている。

唯一、十六夜だけがわりと慣れた反応をしていた。とても意外だ。

でも、十六夜くらい突き抜けた奴の方が子供うけはするかもしれない。

…………よし、子供に関することは基本的に十六夜に任せよう。

 

「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、雷堂瞬矢さんです。皆も知っている通り、コミュニティを支えるのは力のあるギフトプレイヤー達です。ギフトゲームに参加できない者達はギフトプレイヤーの私生活を支え、励まし、時には彼らの為に身を粉にして尽くさねばなりません」

 

「あら、別にそんなのは必要ないわよ?もっとフランクにしてくれても」

 

「駄目です。それでは組織は成り立ちません」

 

久遠の申し出を黒ウサギは今までで一番真剣な声音で断じた。どうやら、これは自慢の耳を引っ張られることよりも譲れないことらしい。

黒ウサギに子供が出来たら教育ママになりそうだ。

 

「コミュニティはプレイヤー達がギフトゲームに参加し、彼らのもたらす恩恵で初めて生活が成り立つのでございます。これは箱庭の世界で生きていく以上、避ける事ができない掟。子供のうちから甘やかせばこの子達の将来の為になりません」

 

「………そう」

 

「此処にいるのは子供達の年長組です。ゲームに出られないものの、見ての通り獣のギフトを持っている子もおりますから、何か用事を言い付ける時はこの子達を使ってくださいな。みんなも、それでいいですね?」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

耳がキーンとした。子供とはいえ、流石にこの人数で叫ばれたら音波兵器とたいして変わらないと思う。

 

「ハハ、元気がいいじゃねえか」

 

「そ、そうね」

 

「耳がいてぇ」

 

不安そうな俺や久遠、春日部と違い、十六夜はヤハハと笑っている。やはり子供のことは十六夜に押し付k……任せよう。うん。

 

「さて、自己紹介も終わりましたし!それでは水樹を植えましょう!黒ウサギが台座に根を張らせますので、十六夜さんのギフトカードから出してくれますか?」

 

「あいよ」

 

暇潰しがてら、石垣から貯水池をを覗いてみる。

所々がひび割れてはいるが、立派に水路が残っている。

 

「随分とデカイ貯水池だな」

 

「そうだね、ちょっとした湖ぐらいあるよ」

 

「ニャー」

 

「はいな、最後に使ったのは三年前ですよ三毛猫さん。元々は龍の瞳を水珠に加工したギフトを貯水池の台座に設置してあったのですが、それも魔王に取り上げられてしまいました」

 

なんと、黒ウサギは春日部と同じで猫の話がわかるらしい。いや、今の話で注目するところはそこか?とも思うが。

 

「龍の瞳?何それカッコいい超欲しい。何処に行けば手に入る?」

 

「さて、何処でしょう。知っていても十六夜さんには教えません」

 

「まて、話が逸れているぞ」

このやり取りは長くなりそうだから、先に切らせてもらう。

ジンも心得ているようで、ちゃっちゃっと話をもとに戻す。

 

「水路も時々は整備していたのですけど、あくまで最低限です。それにこの水樹じゃまだこの貯水池と水路を全て埋めるのは不可能でしょう。ですから居住区の水路は遮断して本拠の屋敷と別館に直通している水路だけを開きます。此方は皆で川の水を汲んできたときに時々使っていたので問題ありません」

 

「あら、数㎞も向こうの川から水を運ぶ方法なんてあるの?」

 

「はい。みんなと一緒にバケツを両手に持って運びました」

 

「半分くらいはコケてなくなっちゃうんだけどねー」

 

「黒ウサのねーちゃんが箱庭の外で水を汲んでいいなら、貯水池をいっぱいにしてくれるのになあ」

 

「……。そう。大変なのね」

 

久遠は若冠ガッカリしたような顔をする。もっと画期的な方法だと思っていたんだろう。まあ、ここまで原始的な方法だとガッカリもするか。

 

「それでは苗の紐を解いて根を張ります!十六夜さんは屋敷への水門を開けてください!」

 

「あいよ」

 

十六夜が貯水池に下りて、水門を開けた直後に、黒ウサギは苗の紐を解いた。

すると根から水が溢れ返り、激流のように貯水池を埋めていく。

 

「ちょ、少しはマテやゴラァ!!流石に今日はこれ以上濡れたくねえぞオイ!」

 

水門の鍵を開けていた十六夜は、水に襲われかけて若冠キレて石垣まで飛び上がる。

不覚にも少し笑ってしまった。

 

「うわお!この子は想像以上に元気です♪」

 

想像以上に大量の水を出している水樹の苗はすごい速度で貯水池を埋めていく。

 

暫く、その光景を見ていると、もう既に月が出ていることに水面に浮かぶ十六夜の月を見てきずいた。

 

異世界に来たという記念すべき日なら満月の方がふさわしいんじゃないかな?とか思いながら少しの間その月を見つめていた。




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