雷使いも異世界からやって来るそうですよ?   作:水槽のスイマー

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第八話

「ねえ瞬矢。結局強力な電気を放つ物ってなんだったの?」

 

黒ウサギに連れられて“サウザンドアイズ"に向けている最中、春日部に思い出したかのように訊かれた。

 

「ああ、それのことな。ほら、この短刀だよ。雷切丸っていうんだ」

 

「へえ、でもなんで確認しに行ったのに手に入れてきてるの?」

 

「いやな。手に持ったらギフトゲームが始まっちゃたんだよ。雷切丸はそれの賞品だ」

 

春日部に“雷切丸の所有者選定"の内容を軽く説明していると、街路樹として桜のような木が植えられている通りに差し掛かる。

 

「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合いの入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

 

「………?今は秋だったと思うけど」

 

「あれ?なんか全員違うな。俺のところは普通に春だったが」

 

「皆さんそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

 

「へぇ?パラレルワールドってやつか?」

 

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども……今からコレの説明を初めますと一日二日かかってしまいますので、またの機会ということに」

黒ウサギが振り返る。どうやら店についたらしい。

 

どうやら閉店の時間らしく、店の前には看板を下げる割烹着の女性店員がいる。

 

「まっ「待ったなしです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

「なんて商売っ気の無い店なのかしら」

 

「まっ全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて」

 

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

「出禁!?これだけで出禁とか御客様嘗めすぎでございますよ!?」

 

「なるほど、“箱庭の貴族"であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

 

「…………う」

 

「俺達は“ノーネーム"ってコミュニティなんだが」

 

「ほほう。ではどこの“ノーネーム"様でございましょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

なるほど、“名"と“旗印"がないコミュニティのリスクというのはこういうことを指すのだろう。

 

「はぁ……。いいよ黒ウサギこんな店員の態度もなってない店来る必要ないよ」

 

「ムッ、それは聞き捨てなりませんね」

女性店員は顔をしかめ俺に問い詰めてくる。

 

「言葉通りの意味だよ。例えこの店が“ノーネーム"お断りの店だったとしても、断るにわ断るなりの姿勢ってものがあるだろうが。そんなものもちゃんとできていない店員が店番をする店なんてたかが知れてる」

 

「くっ、け、けどそれは「いぃぃぃやほぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギィィィィィィ!」

 

女性店員の言葉を遮り白い少女が店の中から黒ウサギめがけて飛んで来た。

それに抱きつかれ、街道の向こうにある水路まで吹っ飛ぶ黒ウサギ。

女性店員は頭を押さえ 、俺達は唖然とする。

 

「……おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

 

「ありません」

 

「なんなら有料でも」

 

「やりません」

十六夜はいち早く立ち直り女性店員と割とマジな口調でそんなやり取りをしている。

 

「し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!フフ、フホホフホホ!やっぱり黒ウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」

白い少女の皮を被ったオッサンがいる。

見た目はそこそこ可愛らしいのに、なんて残念な中身だろう。

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

耐えきれなくなったのか、白夜叉をこっちの方に投げる黒ウサギ。

 

クルクルと回転しながら飛んで来た少女を十六夜は、

 

「てい」

 

足で受け止める。

うわ、結構いいところに入ったな、アレ。

 

「ゴバァ!お、おんし、飛んで来た初対面の美少女を足で受け止めるとは何様じゃ」

 

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

お腹を押さえ悶絶している少女とヤハハと笑いながら自己紹介する十六夜。

 

俺達と白夜叉の初の邂逅はとてもカオスはものになった。




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