ここで私事ながら週刊投稿というタグをなくしたいと思います。というのも私自身文章を書くことは大分ローペースなのでだったら自分のペースで書きたいと思ったからです。
それ以外に特に変わったことは無いので今後とも拙い文章ですが楽しんで頂けると幸いです。
ココアを好きになったのは純粋さが己の全てだった時代、雨でびしょびしょになった俺を気遣った祖母が淹れてくれたのが始まりだ。それ以来なにかとココアを飲んでしまう。
こんな風に喫茶店で人を待っているときも例外じゃない。
「苦いコーヒーに甘い砂糖はいかが?」
「いやこれココアだ」
やっと来たかとため息をつきながら真顔を努める。いつもとは違い髪を下した彼女は「おい笑えよ☆」とスウィーティーな顔で微笑んだ後ミルクティーを注文した。
呼んだのは俺なのにこんな仕打ちをしてもお互いなにも思わないのは数年来の友だからかもしれない。
しゅがはがミルクティーを頼んだところでさっそく高垣さんのことについて相談しようかと思ったがまずは気になっていたしゅがはの今の状況から聞くことにした。
「最近調子どうよ?」
「何その質問ー、うふん、昔よりもライブが楽しいし~番組も少ないけど出演させてもらえてるし、あとあとラジオも一本だけやってみないかって~」
自分のアイドル活動を喜々として話すしゅがはに聞いているこっちも自然と笑みがこぼれる。昔はしゅがはも沙織も売れないアイドルだったので俺はよく二人のサイフにされたものだ。
あの時から私たちはトップアイドルになると冗談交じりながら宣言していた片割れが少しづつ成長していることに胸がいっぱいになった。
「ホントしゅがははよくやってるよ」
「だろだろー、もっとほ・め・て☆てか褒めろ♪」
どんなに成長しても態度は変わっていないのだから呆れのような懐かしみのようなため息が漏れる。
「そういうところは変わらないんだな」
「それはヨシ吉もおなじだゾ」
「俺は変わっただろ」
「唐突に消息不明になったかと思ったら自殺志願者の丁寧口調になってた時はぶん殴ってやろうかと思ったけど……」
こいつの凄いところを質問されたら消音にするかしないかで印象がガラリと変わるところと答える自信が沸々と湧き上がってきた。それくらい清々しい顔で拳を突き出された。
「今だにしゅがはって呼んでるところはポイント高いよ?」
俺がしゅがは呼びを義務づけられたのは初めて会ってすぐだった。俺が沙織に引っ張られてライブ会場に初めてやってきたときファンの人といざこざを起こしてしまった。
その仲裁に入ってくれたのがしゅがはで、なにかお礼がしたいと言ったらしゅがは呼びが始まった。
「ちなみに今の俺のポイントって何ポイントくらいなの?」
「五百ポイントくらい溜まってたけど~自殺未遂分でゼロになったから今は一ポイントだゾ☆」
「じゃ、その一ポイント使うから相談乗ってくれる?」
「ガッテン♪」
それ今の流行に刺さるのか? という言葉が小骨のように喉につかえたのでココアで無理やり流して本題に入った。
「前にさ、美優が俺のことを噂してるって聞いたけど……どんなこと話してんの?」
「はは~ん、気になっちゃう?」
「そんな大したことなければいいんだ」
「いやだいぶ大したことあると思うんだけど……」
珍しくしゅがはが真顔になったのでもしかしてマイナスなことを噂されているかもと頭で心当たりを探り始めた。ちょうど同じタイミングでミルクティーが到着したのでしゅがははオーバーにリアクションした。
しゅがははミルクティーにストローを指しながら意地悪そうに話し始めた。
「美優ちゃん普通の時は特になにも言わないけど酔っぱらうとヨシ吉の自慢ばっかするよ」
「……例えば?」
「私のために命かけてくれる~とかこの間は二人でデートに行きました~とか……」
心配するだけ損だったようで思わずホッとしたがその反面美優のお酒の弱さが心配になった。
「オーケー、もういい。じゃあ高垣さんとはどんな感じなの?」
「なんで楓ちゃん? まあいいけど、候補生の時から年齢が近かったはーと、早苗さん、瑞樹さん、楓ちゃん、美優ちゃんは割と仲いいと思うよ」
ってことは高垣さんは美優から俺ののろけを聞いた上であんな行動を取ったってことか、意味が分からない。
「で、なんでそんなこと聞いたの☆教えて♪」
「実は高垣さんにキスされたんだ」
しゅがはは飲んでいたミルクティーを逆噴射しコップの中身は噴水となった。その様子に店員さんも心配そうに一瞥してきたが気にしないで下さいと手で制した。
「ゴホッゴホッ……それマジ?」
「相談の主な理由はそれだし」
しゅがはは、ううーんと唸っている。その行動が目の前の水たまりから目を背けるためじゃなく真剣に考えてくれていると信じた俺は机を拭くことに専念した。
「楓ちゃんがヨシ吉のことを好きって言ってるのはあんまり聞かないかな~、前にレッスン一緒になった時も前のプロデューサーより助かってるくらいしか言ってなかったよ?」
「じゃあ、酒に酔った勢いってことも考えられるんだな?」
「あんまり考えたくないけどその可能性もあるかもね」
頭の片隅で自分に迫ってきた高垣さんが浮かぶ。もしあのアプローチが嘘なら相当な悪女だ。かといって会った回数が片手程度の男に本気で恋なんてできるのだろうか?
「解決する簡単な方法ならあるゾ☆」
「ほんとか!」
「美優ちゃんにコクれ」
今度はこっちが噴き出す結果となり流石に二回目なので店員さんに怪訝なまなざしを向けられた。しゅがははしてやったりとほくそ笑んでいた。
さっきの根に持ってやがったな。
「付き合うのは……トップアイドルと呼ばれるようになったらって決めたんだ」
「ヨシ吉が?」
「二人で」
「ならそのこと言えばよかったじゃん~、ヘタレか?」
思わぬボディーブローに俺はK,Oされた。確かにきっぱり断れなかった自分はヘタレだ。
体が悔いある選択に耐え切れなくなり心がバブル状に溶けていくのが分かった。
「その通りでございます……」
「そ、そんな落ち込むなよ……ほら元気出して!」
しゅがはに励まされ何とか固体に戻れた俺はもう一つの疑問を聞くことにした。
「あとさ、美優からまさきって名前聞いたことない?」
「まさき……? いや聞いたことないけど……ひょっとしてこれ?」
「小指を突き立てられても俺には判断できないから訊いたんだけど……」
しゅがはは腕を結んだまま首を横に振るだけだった。こっちも不発か、いや寝言で聞いたくらいだから大したことないのかもしれない。
それでも不安感は拭えなかった。
「今日相談したかったことはこれで全部だ。わざわざ聞いてもらって助かったよ」
「前みたいに連絡されないよりはまし」
珍しく佐藤心の顔で答えられ真剣に向き合ってくれていたことを実感した。
「ところでヨシ吉、サオリンの墓参りは行った?」
「え?」
「もうすぐ一周忌、ついでに言うと犯人も捕まって一年」
しゅがはに指摘され改めて思い返すと俺は沙織の墓参りには一度も行ったことは無かった。遺骨があるからといっても所詮は偶像で本人の魂がそこにあるわけじゃない。それが一年前に俺が出した結論だった。
それでも今は行かなければならない気がした。報告しなければならないことがたくさんある。
「……今の仕事が一通り片付いたら行くよ」
「今度はすっぽかすなよ」
俺は佐藤心を見てしっかりと頷いた。
カフェから事務所に戻ったのと同じタイミングで美城常務とのミーティングの時間になった。予定時刻の五分前に着いたのだが美城常務はすでに座っていた。以前のようにお菓子は置いてなかったせいか入って早々小さじ一杯分くらい睨まれた気がする。
「ここはあまり装飾をしないようだな」
「装飾ですか?」
美城常務の指摘は内装のことを言っているのだろう。前に他のプロデューサーの部屋に行ったらアイドルの私物が置いてあったり宣伝ポスターが張ってあったりと最低限のものしか置いていないうちとの違いを目の当たりにした。
だとしても俺も美優も私物を持ち込むタイプじゃないのでこれからオリジナリティーが加わるとしたら高垣さんだろう。
「まあ、そんなことはいい。それよりも本題だ。今回次の三船美優のライブのためのポス
ター及び広告の依頼先としてシーザーに頼むことになった。そこで過去に勤めていたことのある君に白羽の矢が立ったというわけだ」
「なるほど……でも今の僕に可能なんでしょうか?」
現在美優のプロデュースに加え人気の高まっている高垣さんも見なければならない。今まで以上に多忙な日々にようやく慣れてきてのこの仕事だ。うまくいくか心配でならない。出来ることなら行きたくないし……。
「おや? アイドルのためなら死ぬんじゃなかったのか?」
「そうも言えなくなったんですよ」
美城常務はなぜか少しうれしそうに「そうか」と一言つぶやいた。そしてすぐに表情を戻すとある資料を取り出した。
「何ですかこれ?」
「今回の件がうまくいけば三船君にもこの話が通るかもしれない」
資料には夏フェスアイドル部門極秘と書かれていた。このタイミングで見せたということはこれがメリットになるということだろう。
「346アイドル部門中から五名を夏のフェスで歌うためのユニットとして選出する。今のところ決まっているのはセンターの高垣楓だけだ」
「そこに美優も入れるかもしれないと?」
「ああ、君がシーザーで何らかの成果を上げれば枠を勝ち取るのは確定になるかもしれないな。そうそうこの話が各プロデューサーに届くのは一か月後だ」
同じアイドル部門といえどライバルであることに変わりはない。この情報アドバンテージは大きい。しかしだとしたら極秘の情報をわざわざ広告会社に行くだけで見せる必要があったのか。
「なぜそんなに僕のことを?」
「今回のケースは特殊でね。君に任せたいのはシーザーの業績がここ数か月で飛躍的に伸びていることの調査だ。いくら子会社とはいえ経営状況を見せろとは言えんのだよ」
確かに元社員であればそれくらい簡単に聞き出せそうではある。
「もちろん無理に引き受ける必要はない。君がシーザーを退職した理由はすでに把握している。だから……」
「引き受けます」
かつてのトラウマが蘇るかもしれないのは怖い。でもいつまでもトラウマに振り回されていたらダメだ。
「分かった、それではまたこちらから追って連絡する」
美城常務は出て行った。しかし奇妙なことになった。もう二度と関わることなんてないと思ってたのに……。
ふと白髪交じりのきつそうなかつての上司の顔が浮かぶ。あの人はまた俺に突っかかってくるのだろうか。
「今度こそ負けねーぞ!」
「誰に負けないんですか?」
「うわぁ」
痛くなった胃に喝を入れたつもりが肝を冷やすことになるとは思わなかった。ってか高垣さんいつから居たんだよ。
驚き隠せないまま見つめていると高垣さんはニコニコと近寄ってきた。
またキスされると思い少しだけ身を固くする。その様子を見てか高垣さんは頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
「そんなに身構えなくてもいいじゃないですか。プロデューサーとアイドルの関係なのに」
「あなたには前科があるじゃないですか!」
「何も四六時中取って食おうとしているわけじゃありません」
「前は食われましたけどね……」
前と言った瞬間高垣さんは照れたように顔を隠した。その姿だけ見たら愛らしいのだが濃厚なキスの味が俺から純粋さを剥いだ。
「照れないで下さいよ! 言ったこっちが恥ずかしいじゃないですか」
「でも……流石に日本酒は遠慮しておくべきでしたね……」
「そっちのことじゃ……」
高垣さんはふわりと体重なんてないみたいに俺にまとわりついて耳元で囁いた。
「……また味わいたいものですね」
全身に針金が刺さったみたいに指先まで硬くなる。ギギギと音を鳴らしながら首を動かすと高垣さんははにかんだ笑顔で微笑んだ。
「仕事に行きましょうか……プロデューサー!」
美城常務からのメールでは美優は広告会社を一日体験という企画で巡るらしい。その付添人として俺が呼ばれ取材内容はシーザー側がまとめてくれる流れのようだ。
株式会社シーザー。広告代理店としてCM、新聞、雑誌、看板、WEBサイトの広告等を手掛ける中小企業。社員数は百人前後くらいで創業二桁ぐらいはあるらしい。
俺がここに入ったのは東京に出てきたのとほぼ同時だった。演劇部として大会に出ていたのを知っていてくれてる人がいたため割とすんなり入れた。
最も入った後は中々の地獄でマーケティング理論や営業にコツを叩きこまれると同時に常に流行にはアンテナを立ててフットワークも軽くしていなければならない。
当然スケジュール管理は必要になるしずっと頭をフル回転させていなければならない。
聞けば聞くほど大変で……でも初めのうちは楽しかった。
「シーザーってどんな会社なんですか?」
それは美優の顔合わせのために車を走らせているときだった。思いがけずそんな質問をされた。もちろんそれは何を扱っているかなんていう業務的な質問じゃなくて俺からみてどんな環境だったのかということだろう。
「どんな会社か……」
言われてみて思い浮かべたのは大嶋さんのパワハラ……ではなく駆け出しのころの心地いい酸欠感だった。
「いい会社ですよ……元々広告業界はどこも血反吐を吐くぐらい忙しいですし。でも自分が携わった広告が世の中の関心を集めてるときとかすごく嬉しかったし。クライアントの笑顔を見るのとかも気持ちよかった気がします」
「なんか意外ですね」
「遺書で書いてたことと違って?」
「あ、えっと……はい」
美優は図星とばかりに視線を移す。助手席から見える景色なんてこっちと差異はほとんどない。そんなに照れることでもないのに。
広告マン自体はむしろ好きだった。確かに大変ではあったけどその分ずっと動いてなくちゃいけなくて、だから余計なことを考える暇もなかった。
「俺があんなに沈んでたのは沙織が死んだからですよ。あとパワハラ上司にもそれまでは出会っていませんでしたし」
「そういえば沙織さんってどんな方だったんですか?」
「しゅがはから聞いてないですか?」
美優は首を横に振った。
「あいつは……いつもキラキラしてたんですよ。高校時代からいつも行事の真ん中にいて、皆を引っ張ったり盛り上げたり……俺も引っ張られた一人でした」
少しずつぼやけていくあいつの顔少しずつかすれていくあいつの声、過去は過ぎ去ってしまえばあとは少しずつ手放していくしかできない。世界はもう沙織を覚えてはいないだろう。
「けど今考えたらああいうカリスマはこの業界に入るための最低限の才能なんでしょうね」
運転しながら一番初めに思い浮かんだカリスマは今日は一人で番組の収録だ。事情の知らない彼女は電話口で「私一人ですか? このままロンリーにされたら論理的になっちゃうかも」と意味不明な脅しをしてきた。
「私には……そんな才能あるでしょうか?」
「ありますよ。なかったらプロデューサーなんてしてません」
あ、今となりを見たら恥ずかしさで死ぬと直感した俺たちはシーザーに着くまで一言も話さなかった。
学生時代校長室掃除とかはテンションが上がった。普通なら絶対に入れない領域に入っている感動があったからだ。けどまさかその感動を何十年ぶりに味わうことができるなんて思っていなかった。
俺が社員だった時代、クライアントとの相談や対応にこの部屋を使った記憶がない。この会社を離れて数か月で改修工事でもあったのかそれともここはVIP専用応接間なのか。
VIP室に通された俺たちは世間話をしながら待った。
事務所のソファーよりも格段に腰心地のいいのでつい沈んでしまう。もう少しで自宅ムードになりかけたその時扉が開き俺は急いで姿勢を正した。
「遅くなりまして申し訳ございません、改めまして加賀秀俊と申します。この度はよろしくお願いします」
あまりの丁寧な態度に慌ててお辞儀をする。流石社長なだけあって以前の社員であってもクライアントなら丁重に接するようだ。
「よろしくお願いします」
「しかし吉木君、少し見ないうちに346に勤めているとは恐れ入ったよ」
その笑顔からはあまり感情を読み取ることができず発言の意図が分からなかった。だからこの後どう展開していくかを考えている時だった。
「……ところで大嶋さんという方は今いらっしゃいますか?」
隣から火矢が飛んだ。唐突な質問に俺もそして社長も硬直する。社長はしどろもどろになりながら小さく話す。
「……大嶋のことをご存じ……なのですか?」
「はい、少し話したいことがあって」
いつになく怒気を見せる美優に戸惑ってしまう。十中八九俺の遺書のせいだ。
「美優、なんで大嶋さんのことをここで」
「すみません……でもどうしても話しておきたくて」
「ひょっとして吉木君から聞いたのかな?」
社長の問いかけに頷くしかなかった。これだと俺が陰口言ったみたいでいやだな。
「そうか……やっぱり君はあいつに想像以上に苦しめられていたみたいだね」
「他人事みたいに言わないでください! その人のせいで徹也さんがどれだけ……!」
「美優!」
オーバーヒートした美優は自分の愚行に気づいたようで小さく「すみません」とつぶやいて深々と座り込んだ。これから一緒に仕事をするのにこんな軋轢が生まれるとは思わなかった。
しかし社長の行動は予想外のものだった。
社長は立ち上がると俺の真横で土下座をした。高級そうなカーペットには似合わない行動だ。
「本当にすまなかった」
社長の咄嗟の行動には俺も美優も呆然とするばかりだった。
「頭を上げてください!」
俺はしゃがみ込んで社長の肩を揺らす。ひとまず落ち着いたようで社長は元の位置に戻った。
「君が……クビ、正確には大嶋の身代わりになってから一か月ほどでパワハラ問題が明らかになった。それを機に社内の大革命が起こってね」
「それじゃあ最近の業績向上の理由は?」
「君が知ってくれてるようで嬉しいよ……今までの古い年功序列を幹部陣から撤廃したんだ。そのあとに君を連れ戻そうという話も持ち上がったんだけど誰一人君に連絡がつかなくてね。きっともう僕らのことを見限ったんだとばかり思っていたよ」
ブロックはするべきじゃなかったなぁ。
「け、携帯買い替えまして」
「ふふ」
美優、頼むからそのタイミングで笑わないでくれ。
しかし社長特に気に留めていないようでそのまま和やかに会話は続いた。
はい!ここで提案があります。
たかがきさんのダジャレが私全く思いつきません。
ラクダのようにらくーになんてお粗末なものばかり
きみ達のダジャレを感想で教えてください。
たくさんの意見を頂けると嬉しいです
くだらないと思うものでも構いません
なんでもいいので送ってください。
いも(まるでフルコン出来ない)