管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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魔法少女リリカルなのはStrikerS 18話「翼、ふたたび」でのクロノとヴェロッサ視点の話です。


12翼、ふたたび(クロノとヴェロッサ)

 ジェイル・スカリエッティの地上本部襲撃から明けて、新暦75年9月13日本局標準時AM0900。

 時空の狭間に建設されている時空管理局本局、中央庁舎の中にある次元航行部隊大会議室にクロノはいた。

 その大会議室では、通称「海」の主だった幹部を集めて緊急対策会議が開かれていた。

 ドーナッツのような円卓に時空航行部隊総司令官を筆頭として、各方面隊を預かる方面隊司令官や遺失物管理部長クラスの面々が顔を並べている。

 なかには混乱のおかげで会議に間に合わず、通信用の空間モニターを席に浮かべているものもいたが、時空管理局の2大実力組織のひとつ海の頭脳達が集結した会議は、最初から座礁しつつあった。

 

「そもそも、一個人になぜこれだけの兵力を有していたのだ、捜査部は何もつかんでいなかったのか?!」

「確かにミッド地上において、密輸が増えてきているといった報告は受けてはいた。だが、こういった事態と結びつけるのは不可能だった」

「それは些か認識不足していたようですね。我が出入国管理部では、ミッド密入する偽装船を数隻拿捕している。その中にはあの魔道兵器の材料もあると報告していたはずだ」

「数隻?あの数のガジェットを作るのに数隻で足りるはずがない。君たちの網はずいぶん穴だらけだな」

「それは非政府組織に不必要に特権をばら撒いている教会に言ってくれ。そのために査察部だろう」

「すべての非政府活動を調査するなど不可能だ。我々にはほかにも対処しなければならないところがあるのでね」

「地上部隊か、ならなおのこと査察部は何をしていたのかと問いたい。地上部隊上層部とジェイル・スカリエッティと繋がりがあっただろうことは明白だったはずだ」

「そういった動きを調査するには根拠になる証拠が必要だった。そういった情報を探し出すのは捜査部の仕事だろう」

「こちらも人手不足でね、スカリエッティのような広域次元犯罪者を取り締まるには、各方面隊の協力が必要だったのだが協力的ではなくてね」

「なんだと!」

「捜査権がないだの何だのと、何の情報提供も受けずになにを協力しろと言うのだ!」

「だいたい、なぜ我が艦隊を出撃させない。」

 

 ジェイル・スカリエッティ一味に対する対策を話し合うはずの会議は、今回のこの騒ぎの責任の所在を明確にするとの名目で、責任の押し付け合いの場になってしまった。

 「陸」でレジアス中将への査問が始まっているのなら、まだ中将を悪者にすることで意思の統一を図ることも可能なのだが、相手が地上の守護者いうこともあり「海」や「陸」の上部組織、安全保障理事会も査問の実行をためらっているようだ。

 

(唯一、積極的に事態の収拾に乗り出そうとしているのは、第9艦隊か・・・。思惑が透けて見えるな)

 

 第9艦隊はその名のとおり第9管理世界方面を守護する艦隊である。この第9世界は先進管理世界ではあるが、政治体制やイデオロギーの違いからミッドチルダとはとにかく仲が悪い。

 地球でたとえるならば同じ国連でもアメリカとソ連の仲が悪かったようなものである。この期に乗じて手持ちの艦隊をミッドチルダ方面に駐留させ、軍事的優位を確保することが目的かもしれない。

 

 

 

(とはいえ、今うかつに発言すると六課壊滅の責任と地上の混乱の責任を混同して攻撃されかねないし・・・、これはヴェロッサにアースラ使用の許可を任せて正解だったな。)

 

 クロノがこの場にはいない友人のことを思っていると、会議室内の言い合いや話し声が、波が引くように小さくなっていく。皆、出入り口付近を見ている。

 

「そういった論争は、よそでやったらどうかね?」

 

 会議室に入ってくるなり発した、ラルゴ・キール栄誉元帥の一言で幹部たちは冷静さを取り戻したようだ。まだ、少々ざわついていた室内が静まり返る。

 

「クロノ・ハラオウン提督」

「はい、元帥」

 

 ラルゴ元帥が名指しで指名して来たので、ある種のイヤな予感を感じながら、クロノは返事をした。

 

「今回のこの状況に対するプランを持っているかね?」

「はい、いくつかは」

「発表したまえ」

 

 クロノは六課や騎士カリム達の調査内容を踏まえ、スカリエッティに対する六課主体の対応策を提示した。

 その間、鋭い視線や悪意を感じてはいたが、ラルゴ元帥は二度頷き肯定した。

 

「うむ、では実行に移りなさい。君には1個分艦隊をつける、旗艦はクラウディア。今すぐ、準備にかかりなさい。私も細部を詰めた後に増援に向かわせてもらう」

「はい」

 

クロノは退出しながら思った。

 

(これで初動の対処は僕ができるな、六課にとっても悪くはない話だ。だか、これでも事態の収拾がつかなかった場合、僕たちの責任になる)

 

 ラルゴ元帥ほどの実力者ならクロノのプランと同じかそれ以上のものを腹案として持っていたはずだ。

 だが、あえてクロノに提示させたということは、失敗した場合は初動対処のミスという名目でこちらを切るつもりだろう。

 なにしろプランの立案者はクロノ自身なのだから・・・

 いまごろ、会議室の中ではそのときのため根回しが行われていると邪推しても、被害妄想ということはあるまい。

 

(さらにスカリエッティとレジアス中将との繋がり証明されない場合は、この混乱の責任も六課に押し付けて来るかもしれないな)

 

 食えない人だ。と、思いながらも六課が負けるところなど想像もしていない自分がいることに気がつき、自分自身に呆れる。

 

「いつの間にか、僕もあの三人に影響されていたんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 アースラの使用許可を取り付けた後はやてを待つ間、ヴェロッサは当のアースラが停泊している整備ドックに立ち寄った。

 ドック内では整備員たちが、手際よく作業を進めている姿が見える。各班ごとの指揮を執っているのはずいぶんと年配の整備員だ。

 

(おかしいな?アースラは訓練名目で整備していたはずだから、新人整備員が多いはずなのに)

 

 ヴェロッサが疑問を感じていると、全体の整備指揮を取っている制御室からの放送が聞こえてきた。

 

「よーし、各種配線系のチェックは終了だ。外装に取り掛かれぐずぐずしている奴は、一緒に溶接しちまうぞ」

 

 荒々しい声が放送で流れ若い整備員を急き立てている。ヴェロッサには聞き覚えがあった。

 

(この声の主は去年定年退職をしたはずの整備監督の声だ)

 

クロノがアースラの艦長だったころ、任務を終えて帰ってくるとアースラを出迎えてくれたのが、彼と彼の指揮する整備チームだったこともあり、ヴェロッサとも顔見知りだった。

 

 

「監督」

「ん、ロッサキッドか、久しぶりだな」

「ええ、退官パーティー以来ですね」

 

 ヴェロッサが制御室を訪ねると、監督が向かい入れてくれた。無愛想な態度だが職人気質の彼はこれでも歓迎してくれている。

 どうやらアースらの整備指揮を執っているのは彼のようだ。

 通常、アースラの様な艦艇が建造されると、莫大な予算がかかるということもあり最低でも30年以上使われる。

 彼はL級艦船の開発計画の時点から関わってきた整備員で、彼にとってはL級艦船は整備員としての人生そのものだ。

 彼の指揮ならば安心して任せることができる。

 

「あなたが整備をしてくれたとなると、はやて達も喜ぶでしょう。」

「ああ、あの訓練室をよくぶっ壊してくれた、小さい譲ちゃん達か?」

 

 新品同然に整備したはずの艦を送り出すたびに壊された記憶が蘇り監督は顔をしかめた。

 ヴェロッサが慌ててフォローをする。

 

「彼女たちはもう隊長ですよ。そんなに無茶はしません」

「あの嬢ちゃん達がね。どうりで俺もこいつ(L級)もロートルになるわけだ」

「またまた、予備役とはいえあなたも彼女(アースラ)も現役じゃないですか」

「いや、おれは予備役じゃねぇ」

「え、どういうことですか?」

 

 予備役などの管理局員としての資格がなければ、場合によってはアルカンシェルを搭載するような艦艇の整備する許可など下りるはずがない。

 ヴェロッサが問いただすと、現在の彼の立場は非常勤の嘱託教官だった。2年間の契約で整備員を教育する教官として招かれているそうだ。

 ほかにもすでに管理局を離れて独立した整備員たちが仮契約で駆けつけているらしい。おかげで後数時間で出港準備が整う見込みらしい。

 

「この短時間で?」

「とうぜんだろ、みんなこの艦とは長ぇ付き合いだ」

「ええ、この混乱のなか皆さんよく集まってくれました」

「ん、あらかじめ決まってたことだろ?聞いてねぇのか?」

「え?」

 

 まったくはじめて聞くことに友人や姉が自分に話していない計画でも在ったのかと疑っていると、監督が続ける。

 

「六課の副隊長といったか、あの背高ノッポ」

「ケーニッヒ3佐」

「ああ、そんな名だったかな?俺もほかの連中もあの若いのに誘われた口でね。召集の連絡はロウランとかいう代理人がやったらしいが・・・」

「なるほど」

 

 ヴェロッサの知らないところで六課の文官たちが動き回っていたらしい。

 ヴィルヘルムは現在病院の集中治療室で手術中なので、連絡をしたのはグリフィスのようだが事前に根回しをしていたのだろう。

 待ち合わせの時間になり、監督に挨拶を済ませるとヴェロッサは制御室を後にした。

 

(はやては部下に恵まれているな。あとははやてのやる気しだいか・・・)

 

 落ち込んでいるようだったら少し元気付けてあげようと思いながら、アースラを眺めていると背後から誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえた。

 振り向くとはやてがいた。

 

「はやて」

「ヴェロッサ、ごめんな。おまたせや」

 

 一日中動き回っていたのだろう少し疲れが見える。

 

「さすがのはやても、ちょっと元気がないかい?」

「ん?、まぁ、そやね」

 

 はやては少し自嘲じみた口調で口を開いた。

 

「ギンガやヴィヴィオをさらわれたんは大失態や。部隊員たちにも怪我させてもうたしな」

 

 はやては責任感の強い子だ。思いつめすぎてはいないだろうか?ヴェロッサは心配したが杞憂にすぎなかった。

 

「そやけど、持っていかれたもんは取り戻すし、今度は絶対ちゃんと守る」

 

 強い言葉だ。そしてその意思も感じる。これがはやてだ。ヴェロッサはうれしくなってはやての頭を撫でた。

 




揺り籠へ突入するなのはとヴィータ
スカリエッティのアジトへ突入するフェイト
そのとき、残った者たちは…、
次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS、『決戦』へ!!
テイク、オフ

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