管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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魔法少女リリカルなのはStrikerS 21話「決戦」に、向かう人たちの様子です。


13『決戦』へ!!

「・・・・・・」

 

 暗くて何も無い場所にヴィルヘルムはいた。

 いや、いたというのは正確ではない、何しろ自分の存在すら認識していなかった。

 ただ、後になってもグリフィスが話しかけてきたのは、覚えていた。

 

「副長、聞こえていますか?グリフィスです。申し訳ありません。副長が奮戦してくださったにもかかわらず、六課を守りきれませんでした」

 

 ここでグリフィスは言葉を詰まらせた。言葉にしたことで、こみ上げてきたものがあるのだろう。

 

「被害を報告します」

 

 被害はひどいものだった。六課庁舎の防御システムはその機能を失い、管制機能もほとんど破壊されてしまった。基地というハードウェアとして何の価値も無い状態だった。

 次に基地としてのソフトウェア、人の被害。こちらは比較的マシと言える。死亡者は0、重傷者の数も数名程度ですんだ。庁舎が攻撃された際、火災も発生したことも考えると、ハッキリ言って奇跡の類だ。

 通常、単なる火災でも死者が出てもおかしくはないが、結果的に遊兵になってしまったアース2、アース3の両名が負傷した隊員たちにシールドを張って回っていたらしい。

 だが、ギンガ、ヴィヴィオの二名が拉致されてしまった。スカリエッティのことだ、すぐに殺されることはなくても、何かの実験の被験者にされてしまう可能性がある。一刻も早く救出に向かいたいところだが、スカリエッティのアジトはいまだ判明せず、地上本部も沈黙したままだ。

 ここまで説明をしていたグリフィスに何か連絡が入ったらしい。

 

「次は吉報を持ってきます」

 

 と言い残し病室を出て行った。

 

 

 

 

 それから数日たったころには、ヴィルヘルムは意識が戻らないまでも、夢という形で状況を把握できるまで回復してきた。どういうわけだか、グリフィスを筆頭に見舞いに顔を出すものたちが全員、状況を報告して行くために鮮明な夢を見ていた。

 今日も病室ということもあり遠慮がちなノックの音とともに、はやてがやってきた。

 はやては、先に見舞いに来ていたシャマルに声をかけた。

 

「シャマル、動き回って大丈夫なんか?」

「はやてちゃん、ええ、大丈夫よ。明日にはヴィータちゃんの体も見てあげたいですし…」

 

 シャマルは彼女自身怪我人であったが比較的軽症であり、医者としての使命感もあったのでほかの負傷者の様子を見て回っていた。

 

「無理だけは、せんといてや」

「へっちゃらよ、このくらい。それに私はアースラには乗らないし…」

「だからこそや、シャマルには怪我をした。みんなのお守りをしてもらわなあかんからな」

 

 はやてはそこでニヤッと意地悪そうに笑うと、ヴィルヘルムのベッドに近づくと顔をつつく。

 

「ほら、ここにもでっかくて手のかかるのがおる。普段、訳知り顔で、「課長のデスクワークは効率的ではありません」なんて、いやみったらしく私の仕事を取っていく癖に、今は私に仕事残してお昼寝中や」

「・・・・・・」

 

 ヴィルヘルムが反論できないことをいいことに言いたい放題。シャマルが何も言わないのは、病院内で大笑いをするわけにはいかないと笑いをこらえているからである。

 はやては少しの間、悪口を並べた後、この数日間で自分たちが本局から引っ張ってきた戦果を、中でも本局所属のミッド地上航空魔導師隊の一個大隊指揮を執ることを自慢げに語った。

 管理世界において大隊というのは常設の部隊規模ではない。有事の際、戦闘部隊のとして編成される部隊単位だ。では、大隊というのがどのくらいの規模の部隊になるかというと、まず一個分隊が約4~10人、それが3~4個分隊集まり小隊となり、小隊が3~4個小隊集まり中隊、大隊となっていく。万年人手不足の管理局なので、平均して300人程度の魔導士集団が大隊と呼ばれる。

 しかも本局所属の航空魔導士は地上に比べて比較的高ランク魔導士が多い。15~16がAAAランク級の魔導士ということだ。その中に高度な対AMF戦をできるものが何人いるかわからないが、かなり心強い戦力となる。

 

「借り物の部隊やけど陣形や何やらは、副長との机上演習の作戦を使うから問題ない」

 

  はやては交代部隊をアースラに乗せる気はなかった。交代部隊には重症のものもいるし、半数は地上部隊出身者、もしかすると本局所属の航空魔導士との相性が悪いかもしれない。

 はじめて指揮を執る部隊で戦うことになるが、はやても伊達に大隊指揮の資格を持っているわけではない、戦闘指揮能力は十分高い。それに彼らもプロだ事前に陣形のプランを渡しておけば混乱することなく従ってくれるだろう。

 

「だから副長、心配あらへん。交代部隊とゆっくり休み」

 

 はやてはそう言うとベッドから離れた。グリフィスが復帰してはいたが、ヴィルヘルムをはじめとした文官たちにも怪我人が出てしまったため、はやてのこなさなければならない仕事は山積みだった。病院に顔を出せたのも、本局行きの転送装置が順番待ちになってしまったからだ。事件の混乱はこんなところにも出てきている。

 

(疲れている。なんて言ってられへん。まだ、やらなあかんことがある)

 

 はやては六課襲撃の可能性を見逃していた自分を恥じていた。予言を覆そうとするあまり、ヴィヴィオの重要性を見逃していたのだ。もっと警戒していたらもう少し打つ手があったはずだ。事実、はやて、なのは、シグナムはほとんど遊兵となり戦闘機人や騎士達と接敵すらしていない。

 

(それにしても、ヴィヴィオをさらったんはなぜや。聖王家の血筋で戦闘機人を作るにしても、遺伝子データさえあれば、別に今さらう必要はないはずや)

 

 スカリエッティの意図が分からず思わず顔に出してしまったらしい。シャマルが心配そうに声をかけてきた。

 

「はやてちゃん、大丈夫?無理してない?」

「うん、心配あらへん」

 

 あわてて取り繕いながらもはやてははっきり言った。

 

「事件が起こったなら真直ぐそこに向かっていくこと、エースとストライカーをそこに向かわせてあげること。それだけはどんな邪魔が入ってもやり遂げる。絶対に!」

「・・・・・・」

 

 シャマルはそれ以上何も言わなかった。自分の主は優しいが一度こうといったことについてはなにを言っても止めてくれない。こうなったらもう信じるしかない。

 

「ちゃんと休憩だけはとってね」

「うん、アースラに戻ったら少し休憩できるはずや」

 

 シャマルの助言にそう答えながらはやては病室を出た。

 

 

 

 

 さらに数日、半覚醒状態のヴィルヘルムは長距離念話使おうとしていたがうまく回線が開かない。

 

(フロイライン、どうした。フロイライン ドルンレースヒェン。念話を増幅しろ)

 

 デバイスに呼びかけても返事がない。破壊されてしまったのかとヴィルヘルムが本気で心配し始めたころ病室の外での騒ぎが聞こえてきた。

 

「困ります、避難をしてください」

「大丈夫さ、すぐ終わる」

 

 ノックもなしにドアが開いて、騒ぎの張本人が入ってくる。無精ひげに眼鏡、スーツの上に白衣を着た科学オタクぽい容貌の男だ。

 

「あ、確か副長の・・・」

「やあ、・・・シャマルさんだったっけ?」

 

 空間モニターでニュースを見ていたシャマルが対応をしようとすると、かろうじて記憶のすみに名前があったといった感じで男は答えた。人の名前を覚えるくらいなら円周率を覚えたほうがいいと思っていそうな態度だ。

 あんまりな態度にシャマルが呆気にとられていると、ヴィルヘルムに近づくと頬をひっぱたく。

 

「起きろ、『監査役』。よくも私の娘を傷物にしてくれたな」

「黙れ『ハカセ』、人のデバイスを勝手に持ち出すな。おかげで念話が使えなかった」

 

 目を覚ましたヴィルヘルムが答えると、ハカセは待機モードの懐中時計の姿になったドルンレースヒェンを手渡した。

 このハカセと呼ばれた人物はヴィルヘルムが民間時代、会社の立ち上げに参加した一人で、技術部門だったこともあり、ヴィルヘルムのデバイスを作ったマイスターでもあった。

 六課襲撃を聞きつけて自分の作品ドルンレースヒェンの様子が気になり、病院で無断で回収、修理を行った。彼の頭の中の心配の度合いはヴィルヘルムが3割、ドルンレースヒェンが7割だった。

 

「副長、まだ起きちゃ」

「いや問題ない。それに課長たちも難儀しているようだ」

 

 シャマルが起き上がろうとするヴィルヘルムに近づくと、彼はそう答えた。

 消されずに宙に浮いたままの空間モニターからは突如として浮上した巨大船のニュースが流されている。

シャマルも本音を言えば今すぐに駆けつけたかったが、それははやてに止められていた。それに医師として、重症をおっていたヴィルヘルムを戦いに行かせる訳にはいかない。

 規則にうるさいヴィルヘルムなら、交代部隊ともに待機命令が出ているといえば止まるはずだと思い伝えたが・・・

 

「幹部とは命令違反をするときに、その判断をできるものがなる階級のことだ。ただ命令に従っているのでは曹士と変わらん」

 

 と、あっさり命令を無視した。すると、

 

「お、副長、分かっていらっしゃる」

「話せるわね」

「そうでなくては」

 

 いつのまにか来ていた交代部隊の分隊長達がヴィルヘルムの意見に賛同した。

 

「シャマル、まだ不満があるのならお前だけ置いていってもかまわんぞ」

「うっ・・・、ちゃんと命令をいただけます?」

「当然だ、いまならボーナスの勤評も期待していい」

「行きます!」

 

 シャマルはこの誘惑に負けた。欲しかった新作バックがある。

 

「ハカセ、お前何できた?」

「ヘリだ。管理局設計の民間用」

「貸せ、お前はほかの患者と一緒に避難しろ」

「ちゃんと返せよ、お前がいなくなってから『言い出しっぺ(社長)』がうるさくなりやがった」

「整備して返す」

 

 ヴィルヘルムは振り返り、各分隊長に命令を出した。

 

「動けるものを集めろ、交代部隊、出動!」

 




逃げる事のできない自分だけの戦い
自分が憧れた本当に欲しかった強さ
勝利を掴むのはいつだって踏み出す勇気
次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS、『Stars Strike++』
想いを込めて
テイク、オフ

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