「ガジェット混成編隊、こちらへの突入進路に入ってきます」
「12時方向からCW順に識別」
「敵最大射程まで10キロ」
「対空戦闘!火器管制室、艦橋指示の目標、攻撃開始!」
「航跡番号Ga-201~Ga-206、主砲、攻撃開始!」
エースとストライカー達が各所で決戦を行っている時、六課新本部『アースラ』も激し迎撃戦を行っていた。主砲の反動がわずかに艦を揺らすとほぼ同時にコンソールに表示されたガジェットの編隊が消滅していく。
「Ga-201~Ga-206、撃墜」
「ガジェット群G5、2時方向、距離30」
「右舷、多目的魔力誘導弾で対応、発射!」
主砲の死角、別の角度から接近してくる編隊に対して、グリフィスはすぐさま中距離誘導弾で対応したが、ガジェットの数が多すぎた。さらに別の角度からの編隊にさらに接近を許してしまう。
「ガジェット群G6、3時方向、ピッチ80度、直上、来ます!」
「多目的魔力誘導弾、続けて打て!」
「Ga-217、218、219さらに接近、フィールドに接触」
「防御フィールド、AMFで分解されていきます」
「敵弾発射!」
「近接防御火器、独自の判断で攻撃!」
ミサイルが至近距離で爆発。ミサイルの破片と防御火器によって破壊されたガジェットの残骸が、アースラに降り注ぎ小さな傷を作った。最も上の階層にいたならば雨音の様な音が聞こえただろう。
防御フィールドと各所に設置された機銃で、ガジェット達の攻撃を凌いだグリフィスはすぐさまアースラの各部署をチェックする。
「損傷軽微。各部署、問題ありません」
異常なしの報告を聞いてグリフィスは胸をなでおろした。が、想定していたよりも激しい攻撃がアースラ搭乗員の精神を削っていた。それに、ゆりかごを止める為に空戦戦力がすべて出払ってしまったのが痛い。今やアースラはスカリエッティに対する反攻作戦の旗艦と言うべき存在だ、絶対に落されるわけにはいかない。
「陸士108部隊に連絡」
どこからか空戦戦力を回してもらえないか。と、苦心したグリフィスは部隊長のはやてと繋がりのある陸士108部隊に地上の様子を訪ねた。
通信が繋がり白髪で巌のような顔立ちの初老の男がモニターに映る。ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐。陸士108部隊の部隊長にして、ギンガとスバルの父である彼は地上側の指揮官ながら、『海』や『陸』といった枠組みにとらわれない柔軟な思考をもった得難い指揮官だ。
『海』の見習い指揮官であるグリフィスが情報を求めても拒むことなく地上の様子を教えてくれた。
「ああ、市街地戦の防衛ラインは何とか持ちこたえている。ガジェットどもが相手なら、なんとかならぁ」
「はい」
「そっちの赤毛が鍛えてくれたうちの連中と航空隊の高町嬢ちゃんの教え子たちが最前線を張っている。だが現状でギリギリだ。ほかに回せる余裕はねぇし。戦闘機人や召喚士に出てこられたら一気に崩されるかも知れねぇ。」
「戦闘機人5機と召喚士一味は六課前線メンバーと交戦中です。」
「そうかい・・・」
洗脳されたギンガがスカリエッティの戦闘機人として戦いに参加していることはゲンヤも知っているはずだ。シャーリーが彼に告げた報告はギンガとスバル、姉妹同士の激突を示していたが、彼はそれ以上言葉を口にすることはなかった。
「どこもギリギリか・・・」
通信を切ったグリフィスは思わず毒づいた。陸士108部隊にはとてもこちらに回してもらえる戦力など残ってはいない。
(それでも副長なら、どこからか戦力をひねり出してきそうだ)
「新たな目標が3個編隊に散開しつつ接近、G7、G8、G9と識別」
「迎撃用意」
グリフィスの思案は新たなガジェットの出現に邪魔をされた。すぐに各部署に迎撃準備を取らせようとしたところで突然艦が揺れた。爆発だ、それもかなり大きい・・・
「主砲ビーム砲1番2番が沈黙!」
「通信妨害対抗装置に異常…いえ、破損、攻撃されています!」
オペレーター達は信じられないといった様子で状況を報告する。それもそのはず艦外の様子を確かめる為のカメラを使ってもエネルギーケーブルやアンテナを切断された通信妨害対抗装置以外何も映らない。
今、またアンテナの1つがひとりでに倒れていく。
「さらに敵機20、30まだ増えます!」
アースラの謎の状況などお構いなしにこちらに向かってくるガジェットは増え続ける、不可視の攻撃による被害も。このままではAMFの影響ですぐに通信も使えなくなってしまう。
とにかく艦にとりついた何か。おそらくガジェットの残骸とともに、アースらに降り立ったのであろう目に見えない敵をどうにかしなければならない。グリフィスは意を決し指示を出した。
「総員隊ショック態勢、機関最大!ロール角、+360」
「ロール角、+360!!」
操舵を担当しているルキノが驚きの声をあげた。
ロール角+360ということは艦を360°横転させろということだ。グリフィスは艦を回転させて見えない敵を振り落とす気でいるらしい。次元空間ならまだしも、惑星の重力圏内でそんなことを行えば艦内はメチャクチャになってしまう。
シャーリーもグリフィスの常識外れの指示に驚き彼の顔を見た。そこにはいつもの穏やかな表情はなく「負けてたまるか!」という強い意志を感じる。付き合いの長いシャーリーも見たことがない表情なので一瞬ドキリとしてしまったが、なんとなく理由も察しがついた。六課が襲撃された時のことを思い出しているのだ。
グリフィスは六課襲撃の際、同じⅡ種キャリアの副長が前線に立ち、戦っているのをモニター越しに見ていることしかできなかった。もちろん、指揮所要員として恥ずかしくない働きをしていたし、魔導師でも騎士でもない彼が戦闘に参加できるわけではなかったが、結果的に六課を救えなかった悔しさが彼の心に滞留していた。それが普段は常識的、規範的な指示を出す彼に大胆で攻撃的な指示を出させている理由だろう。
しかし、アースラは老朽艦、重力圏内での無茶な操艦に耐えられるだろうか?
再び爆発、幾つかの機銃が破壊された。
迷っている時間はない。すでに通信回線にはノイズが入り、通信妨害対抗装置のアンテナが減っている影響が出てきている。ぐずぐずしていると通信手段を失い、アースラだけでなくはやて達も孤立させてしまうことになる。
シャーリーは艦内にアラームを鳴り響かせ、警告のための放送を流す。
「こちらブリッジ、これより当艦は360°横転を実施します。各員は作業をいったん中止。退避ブロックに移動し・・・」
シャーリーのアナウンスの途中で再び爆発。
今度は何処がやられたのか。と、コンソールをチェックしたが新しい損害はなかった。かわりにカメラに見たこともないガジェットの残骸が映る。鋭利なカマが付いた虫のようなデザインの機体が小爆発を起こして煙を出している。その機体のすぐそばで同型機体が現れる、その機体もまた体を震わせると小さな爆発を起こし動かなくなる。十秒もたたないうちに同じ現象が数度起きアースラの被害拡大が止まった。
シャーリーがカメラの映像を良く見ると、新型ガジェットは機体の真ん中を撃ち抜かれ装甲内部を焼き切られている。
援護?でもいったい誰が?
その疑問に答えるように通信が入った。
「よう、海のひよっこ諸君。こちらの声が聞こえているかな?こちらは地上第3情報収集隊、情報戦機ファルケ・アウゲン、君達の手伝いをさせてもらうよ」
声の主、ファルケ・アウゲンは強力な対通信妨害波を発生させ、通信回線を開き情報連結をしてくる。どうやら彼らは情報戦能力を最大に生かし味方をステルス飛行で連れて来てくれたらしい。
アースラのコンソールに、ファルケ・アウゲンと数機の味方が表示される。その機体達からファルケ・アウゲンを中継して通信が入る。
「アルトセイム航空団第503隊だ。君たちにつく」
「湾岸警備第203パトロール中隊だ。貴君を援護する」
「こちら地上空挺旅団第二中隊だ。ごねた部隊長は拳で説得してきた。俺たちにも手伝わせてくれ!」
地上部隊の援護にブリッジ内が驚きに包まれる。特に地上空挺団が援護に駆けつけてくれるとは思っていなかった。彼らは地上本部部長の直属部隊、海にとっての政敵と言っていいレジアス中将の手足の部隊だ。
ざわめくブリッジを沈めたのはいつもの声だった。
「グリフィス!残りの兵装で右2時方向、中距離の編隊に攻撃を集中しろ!長、短距離は無視してかまわん!」
「了解!多目的魔力誘導弾、攻撃開始」
ヘリの起こす騒音に負けないヴィルヘルムの大声に、グリフィスが即座に反応し攻撃を指示する。
ヴィルヘルムが乗る巡洋艦搭載型のヘリがアースラの艦橋近くに接近すると、エア分隊が空中に飛び出し、グランド、アース分隊がアースラに飛び下りた。
「陸戦魔導師部隊はアースラに降下、対空防御!空戦魔導師は接近してくる編隊を削り取れ!」
あとに続く機体に乗った魔導師達もヴィルヘルムの指示で戦場に飛び出していく。
ほぼ同時に離れた所にいた敵編隊に光が飛び込み数機まとめて吹き飛ばされた。巡洋艦の多術式魔力砲の光だ。巡洋艦から通信が入り艦長の声が響く。
「今度は遅刻せずに済んだようだな」
アースラのセンサーでも巡洋艦の姿を捕らえる。もしアースラの降下ハッチからのぞき込めば、遥か下方に巡航艦が米粒サイズで見ることが出来ただろう。
生き残りは空戦魔導士が仕留めていく。しかし、対ガジェット戦に不慣れな地上の隊員達には窮地に立たされる者もいる。
「くそ、背後に付かれた!振りきれない!」
Ⅱ型に追われ逃げる空戦魔導師の姿を捉えたエア4は即座に相棒のエア1のデバイスに情報を送る。
「OK、任せな」
スコープと握把、そして、CVK792-Cカートリッジシステムを追加した狙撃仕様汎用デバイスを担いだエア1は短く答えると狙撃態勢に入る。スコープを覗きこむとデバイスは視界の中にエア4の探査魔法の情報をもとに、肉眼では姿を確認できない敵の姿も疑似的に表示してくれた。Ⅱ型は昆虫の様な機種を背負って飛んでいる。
エア1はニヤリと、頬を緩ませる。
「ワン・ショット、ツー・ダウンだ!」
発射された魔力徹甲弾はⅡ型と昆虫型をまとめて射抜いた。
撃ち落としても、撃ち落としても、ガジェットは大量に現れてくる。幾つかの機銃が破壊されてしまったアースラの防御では空中で撃ち落とし切れず、1編隊に数機は取り付いてくる。が、ガジェット達の幸運もそこまでだった。接近したガジェット達は、ヘリからアースラの艦上に降下し待ち構えていたグランド、アースの両分隊と地上空挺団の陸戦魔導師達に片づけられていく。
最も前に立ってガジェットを薙ぎ払っていくのは、グランド2、グランド4のコンビだ。地上空挺団の援護を受けながら、グランド2は支給品の槍型デバイスを改造したハルベルトでガジェットを両断する。
「直上より7機接近!」
地上空挺団のフルバックの声に反応して見上げると大型のⅢ型を先頭に数機が固まって突っ込んでくる。六課襲撃の際にも使われていた錐行陣形の応用だ。
それを見たグランド2は鼻で笑った。
「進歩の無い連中ね。グランド4、やれるわね!」
「ああ」
グランド4が弓を構えると魔力によって矢が精製される。鏃は四つに割れた変わった形をしている。
「おう!」
気合とともに矢が放たれると矢は四方に飛び散り、投ガジェットを捕らえる投網状の結界に変化、ガジェット達を捕らえる。
そこにグランド2が追撃を掛ける。ハルバルトを構えるとその刃が振動し始めた。
「レゾナンツ・シュラーク」
振動をおびた斬撃が飛ばされ結界にぶつかり消滅する。不発…。ではない、斬撃に乗せられていた振動が結界に共鳴、結界内で反射されながら増幅していく。内部のガジェットは最初何の変化も見せなかったが、増幅されていく振動に耐えきれなくなり最ももろい部分から順にひびが入っていき、最後は動力炉さえ耐えきれなくなり爆発した。
「すごい・・・」
縄張り意識が強いはずの地上部隊がその垣根を取り払い、見事に連携している。しかも、『海』所属の六課の援護をしてくれている。
地上本部からの視察など、事あるごとに地上からの圧力を感じていたグリフィスは感動しながらも、ヴィルヘルムの手腕に驚いた。自然と疑問が口に乗る。
「副長、一体どうやって、これだけの戦力を集めたのですか?」
「集めてなどいない、私のしたことは現状をクラナガン外の部隊に流してやっただけだ」
ヴルヘルムによると、地上本部襲撃で出来た穴を埋めるためクラナガン近隣の部隊は、支援を目的として準備をしていたが、レジアス中将も本部に引き籠ってしまっていたため命令もなく、ゆりかご浮上の混乱で情報も届かず、動くに動けないでいた。そこに、ヴィルヘルムからの情報提供があり、よろこんで協力を申し出てきたというわけだ。
もっとも本来ならば彼らの指揮権はヴィルヘルムにはないので、彼らはあくまで自主的に行動を起こし、たまたま作戦エリアが重なったという形を取っていた。
「それにしても地上空挺団まで、駆けつけてくれるとは思いませんでした」
ヴルヘルムはグリフィスのちょっとした偏見に苦笑いをした。
「勘違いしていないかグリフィス、地上部隊の全てがレジアス中将の強引なやり方に賛同しているわけではない。それに現場の局員たちの大半はこの世界を守りたくて管理局に入った者たちだ。陸だろうと海だろうとこの世界の為に戦っているものを助けるのは当たり前だ。違うか?」
「…いえ、違いません!」
グリフィスは知らぬ間に偏見を持っていた自分に恥じ言った様子だったが、それを振りはらうように返事をした。
(とはいえ、現場の意見とその上司の意見が違うのは往々にしてありえることだ。地上本部からの命令がない以上、事後承諾してもらわないとシビリアンコントロールを犯したと言われかねない)
ヴィルヘルムはマルチタスクの1つを使い魔導士隊の指揮を取りながら思案する。
(そうなったとき六課が扇動したと追及をかわすには、レティ提督あたりの名前で次元航行隊法80条『緊急時における地上部隊の統制』を適応してもらうのが無難か?だが、それだと発令時刻以降の混乱の責任も彼女がかぶることになるな…、そのリスクを回避するにはレジアス中将を悪者にして責任を押し付けるのが一番だな。上手くいけばレジアス中将とその腰巾着どもを分裂させてやることが出来る。レジアス中将のスカリエッティとの繋がりや犯罪性を証明することが鍵になるな…)
そこまで考えてヴィルヘルムはまだ戦っている最中だと言うのに、もう戦いの後の事後処理を考えていることに気が付く。
六課の隊長陣の中でそんなことを考えている者はいないだろう、彼女達は純粋にスカリエッティの犯罪を止めようとしているだけだ。それに比べて自分はどうだろう?六課の為と言いながら自分の保身を図ろうとしているだけではないか?そう考えずにはいられなかった。
(純粋でいられる年ではなくなったということか…。オジサン扱いされるわけだ)
ヴィルヘルムははやて達の純粋さを羨ましく思うと、やれやれと首を振って雑念を払い、戦闘指揮に意識を集中し始めた。
揺り籠の機動ポイント到達まであと僅か
最終決戦の行方は星の光のその先に
次回、魔法少女リリカルなのはStrikerS、『ファイナル・リミット++』
本当の気持ちに、テイク、オフ
面白かった、つまらなかった、正直な気持ちでもちろん大丈夫です。
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何卒よろしくお願い申し上げます。