管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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21戦技披露会IN六課Ⅱ

 はやての試合開始の指示で、ヴィルヘルムは待機状態のドルンレースヒェンに命じて騎士甲冑を身に纏う。それに合わせてシグナムも甲冑を装備し、アギトとユニゾンする。

 ユニゾンしたことで甲冑にもアギトの魔力が混ざり変化する。青紫基調の色合いの服と金色の篭手、背中に二対の炎の羽、それが今のシグナムの姿だ。騎士というより剣を持った炎の精霊と言った出で立ちのシグナムに対して、ヴィルヘルムの姿はまさに騎士と呼ぶに相応しいプレートメイル姿で、顔を覆うバイザーが嘴のように尖ったアーメット型の兜を被っている。

 

(長身の槍使いか…)

 

 ヴィルヘルムに前マスター、ゼストを重ねてしまいそうになりアギトは慌ててその考えを振りはらった。

 

(何、考えてるんだ!あたしは。向こうは旦那と違って人格式アームドデバイスに頼ってるようなやつじゃないか。石突きのカートリッジシステムだって回転式だ)

 

 そうやって自分を落ち着かせていると、アギトの様子に気が付いたシグナムが念話で語りかけてきた。

 

『どうした?アギト』

『なんでもねぇよ、マスター。それより作戦はあるのか?』

 

 新しいマスターを心配させないようにアギトは話を逸らしたが、作戦を聞きたかったのも事実だ。互いの得物は剣と槍。単純に戦うのであれば間合いの広い槍の方が有利だ。

 

『ない』

『は?』

『作戦はない』

 

 聞き違いかとアギトは聞き返したが、シグナムはハッキリと言い返した。

 

『正確には立てようがないと言った方がいい。元々、副長は一般幹部だからな。戦闘データがほとんどない。ガジェットと戦闘機人との戦闘では射撃をメインにしていたが、対人戦闘でどんな術式を使うのかは不明だ』

 

 シグナムもヴォルケンリッターの将といわれるだけあって、事前に相手の情報を得ることの重要さを理解していたが、副長の戦闘記録は閲覧できないようになっていた。戦力過剰の六課に文官として紛れ込む処置の一環だろう。

 

『ええ、じゃあ、どうするんだよ!』

『当然、正攻法で押し切る。お前のマスターが、槍ごときに遅れを取る騎士ではないことを見せてやろう』

 

 慌てるアギトに答え、己の炎の魔剣を片手中段に構える。50m先で対峙しているヴィルヘルムも槍を構える。それを見た実況の二人が叫んだ。

 

「お二人の準備も完了しました。」

「時間無制限、一本勝負!」

「「レディ・ゴー」」

 

 開始と同時にシグナムは一息に間合いを詰め、小手試しと言わんばかりに切りかかる。ヴィルヘルムは動かず迎え撃つ姿勢を見せた。

 疾走するシグナムは剣の間合いまであと一歩というところで、槍のスコールの出迎えに会って足を止めた。

 

(なかなか速い)

 

 剣と鞘で受け、捌きながら心の中で感想を漏らした。ヴィルヘルムの槍は言わばバルカン砲だ。シグナムがJS事件の際に対峙したゼストの様な一撃必殺の重さはないが、何より引きが速く攻撃間の隙が少ない攻撃でこちらを寄せ付けない。 並みの剣士ならば剣の間合いに入るまでに、三発は槍撃をもらうことになる。

 

『マスター、相手の攻撃は軽い。シールドを張って突っ込んじまえ!』

『それもいいが、もうすぐで目が慣れる』

 

 攻防が10合を数えた時点で、シグナムはもうヴィルヘルムの槍の速さに慣れつつあった。そこで高出力のシールドに力を割き、攻撃の威力を落とすより、鞘のみで捌き重い一撃を叩き込むという選択をした。

 アギトも見るからに丈夫そうな甲冑を着ている相手には、その方が有効だと判断し賛成した。

 

『よし、いくぞ』

『おうよ』

 

 今まで攻撃を防ぐことに余裕があることを欠片も見せていなかったシグナムは、ヴィルヘルムにとって一番虚をつくタイミングで鞘のみでの防御を開始、一撃目を捌きながら飛び込む。

 二撃目を受けると同時にカートリッジを単発ロード、剣が火炎に包まれる。ヴィルヘルムもシグナムに合わせてカートリッジを使ったが、条件が同じなら槍と鞘の相対速度が変わらない。

 三撃目に合わせて鞘を操る。槍は鞘に弾かれ懐に入ったシグナムの一撃が難なくヴィルヘルムを直撃する…、筈だった。

 

「_ッ」

 

 シグナムが理性ではなく本能で防御フィールドを強化した瞬間だった。ヴィルヘルムの槍の速度が跳ね上がり、鞘でのガードを置き去りにしてシグナムに襲いかかる。それでもシグナムは迷わず愛剣を振り抜いた。

 

ゴゥッ!

 

 互いの攻撃が互いの防御に、ぶち当たり衝撃と熱をまき散らす。シグナムは剣撃と飛び込んだ勢いを殺さず、体を入れ替えように間合いを離す。

 

『アギト!』

『こんの!』

 

 長い槍から逃れる為にアギトが火炎弾を放つが、瞬時に現れたランサーによって迎撃された。予めデバイスに自動で迎撃するようにセットしていたとしか思えない発射速度だった。

 再び、対峙する両者。

 ヴィルヘルムの肩装甲はザックリと切り裂かれていたが、シグナムにも肩と脇腹に非殺傷設定でのダメージ痕が残っていた。

 

(やられたな…)

 

 シグナムの左肩、脇腹に魔法陣が浮かび上がり魔力が強制的に排出される。術式を解析したアギトが驚きの声を上げる。

 

『こ、これって、黄槍の呪い!』

『いや、あの古代ベルカの二槍使いの魔法なら血が噴き出しているはずだ。古代ベルカ式の魔法を再現したプログラムだろう』

 

 アギトと会話をしながら魔力出力を落とすと、強制放出されている魔力の量も少なくなる。どうやら、掛けられた者の出力の何%かを放出させてしまう呪いのようだ。常時魔力を高めるのではなく、素早く出力調整をしてやればある程度の魔力放出を抑えてやることが出来る。

 

『二つ受けたうち、フィールド強化の間に合った脇腹の放出量は少ない。与えたダメージの量に魔力放出が比例している。バリアガードでしっかり受けることができれば、呪いを受けることはなさそうだ』

『ちくしょー、ちくしょー、マスターの一撃もバリアで軽減されるし、魔力の並行運用がメチャクチャうめぇ』

『その通りだな。一撃の重さはこちらの方が上のようだが、総合的な処理能力はあちらの方が上のようだ』

 

 

 

「ご、互角、両者互角です!」

「副長、強い!」

 

 アルトが叫び、スバルが感嘆の声を上げた。特にスバルはヴィルヘルムが戦っている姿を見たことがほとんどなかったので、相当驚いている。

 アルトは興奮気味で解説席に話を振った。

 

「解説のお三人は副長の戦いっぷりをどう見ますか!?」

「副長が使った魔法は、強制転送で使うコアを捕まえる技術と正統派魔女が使うエンチャントカースの理論を応用した魔法だね。正しいプログラムの理解と練習が出来ればA+ランク位で器用な人なら出来るかも」

「仕掛けるタイミングも上手い。シグナムが防御から攻撃に移る隙を狙ってる。そうなると、最初の連続突きはワザと単調な攻撃にして、大きな攻撃を誘ったんだ」

「シグナムに呪いをかけても魔力の総量が圧倒的に違いすぎる。副長は何とか持久戦に持ち込みたいはずや、対してシグナムは短期決戦にしたいはず。その辺の攻防に注目やね」

 

 興奮気味の実況席に比べて解析席の三人は冷静だった。三人とも現役の空戦魔導士らしくすでに自分ならどう対処すべきかと考えているのだろう。顔が戦っている時と同じ表情になっている。

 

 

 

 今度はヴィルヘルムから動いた。一気に間合いを詰めシグナムに猛烈な連撃を浴びせてくる。今度は巧みに緩急を付けこちらのタイミングをズラしている。

 

『わわ、なんだよ、アイツ!持久戦に持ち込むんじゃなかったのかよ!』

『いや、正しい行動だ。まだこちらの魔力は十分にある。中距離からの火龍一閃を使わせたくないのだろう』

 

 アギトとの融合したシグナムには火龍一閃という中距離範囲攻撃魔法を持っている。ヴィルヘルムがあくくまで待ちの姿勢を見せるなら、槍の間合いの外から薙ぎ払ってしまえばいい。

 

(白兵によって活路を開く!副長もなかなかに騎士だ!)

 

 高速の撃ち合いが数合、ヴィルヘルムが仕掛けてきた。今まで突き一辺倒だった攻撃に払いを混ぜ、シグナムの太刀筋を鈍らせるとカートリッジを2発ロード。

 

『デカイのが来る!』

『シールドで弾くぞ!』

 

 重い一撃を逸らされたものは必ず大きな隙を見せる。いくらヴィルヘルムの甲冑やシールドが丈夫であろうと、気勢が乗れば叩き切る自信がシグナムにはあった。

 

≪ジャマーフィールド、感知≫

『え』

『なに!』

 

 レヴァンティンの発した警告は間に合わず、出現したシールドは容易に穿たれた。

 

(AMFを纏った多層フィールドの槍!)

 

 ヴィルヘルムの放った槍は1層目に高濃度AMF、2層目に呪術付与の多層フィールドをまとわりつかせた槍。ミッド式射撃魔法ヴァリアブルシュートの現代ベルカ式版といえる代物だった。

 

 破魔の槍の穂先は真っ直ぐ心臓に迫る!

 

ガッギャギャギャ!

 

 穂先と胸の間に滑り込ませた左腕の篭手が耳障りな音を立てて抉られていく。槍の力は止まらない左腕ごと心臓を突き刺すほどの力がこめられている。シグナムは剣の腹で槍の柄を叩き、同時に体を捻る。槍はどうにか心臓直撃コースをそれ、脇の下に外れた。

 ヴィルヘルムの攻撃は止まらない。槍を捕まえる前に槍は引き戻され、突きの構えを見せる。

 

(今度はこちらの番だ!)

 

 突きだされた槍を鞘で受け、突き刺ささせる。槍が引き戻される瞬間に手を離せば、鞘の串刺しが出来きあがる。

 レヴァンティンの鞘は騎士甲冑と同じくシグナムの魔力で編まれた物質で出来ている。騎士甲冑と同じ仕掛けをすることも可能だ。

 

(くらえ!)

 

 ドウン!

 

 シグナムの精神波に反応して防御機構リアクターパージが反応。鞘が爆発する。リアクターパージは化学兵器でいうところの爆発反応装甲だ。使い方を誤ると周囲に立っている味方に被害が出るほどの衝撃力がある。

 今回、シグナムはあえて被害が出やすいように衝撃を設定していた。

 爆発に煽られヴィルヘルムの体が僅かに傾く。

 

「シッ!」

 

 ヴィルヘルムの態勢が僅かに崩れた所に、間髪いれずに蹴りを入れさらに態勢を崩させる。シグナムは蹴りの反作用を利用して後方に跳び、距離を取った。

 カートリッジを2発ロード。シュランゲフォルムとなったレヴァンティンが、火炎で出来た蛇のようにしなる。

 

『剣閃烈火!』

「「火龍一閃!」」

 

 アギトの炎熱加速とシグナム・レヴァンティンの炎熱変換により、煉獄の炎と化した斬撃がヴィルヘルムを襲う。ヴィルヘルムは不自然な姿勢のまま、無理やり砲撃魔法を放とうとしているが、通常の砲撃魔法程度ではこの魔法は止められない。

 

『へ、その程度で止められるかよ!』

『体勢が悪い、回避も不能』

 

 烈火がヴィルヘルムを襲う!

 




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