こちらの用件を話し、事情を尋ねるとパステル婦人は「息子は管理局に無実の罪で逮捕されそうになったとき、行方不明になっちまったよ」と答え、「息子を見つけるまで連絡するんじゃないよ!この税金泥棒!」と、罵声を浴びせ通信を切ってしまった。
罵声を浴びせられたヴィルヘルムだったが、この程度でまいるほど神経は細くなかった、ケロリとした表情で、驚き眼をパチクリさせているフェイトに尋ねる。
「どうする?テスタロッタ執務官、とても友好的には見えなかったが?」
「あ…、一応状況確認だけでもしておきたいです。それに無実の罪というのも気になります」
「わかった。知り合いの地上部隊の捜査官に調べてもらおう」
地上部隊からの連絡が来たのは、フェイト達がシャーリー達と合流したころだった。夜も更け黒ずみ掛けた蛍光灯が頼りなく照らす、広報連絡本部資料室の作業スペースの机の上に通信用の空間モニターが開かれる。
連絡をしてきたのはダックスにある0076部隊の捜査官で、ヴィルヘルムの知人の後輩に当たる若い捜査官だった。若いといってもフェイトより年上で20代後半ぐらいの年齢で、まあ、平均的な地上部隊の曹士といった印象だ。
「はじめまして、ケーニッヒ3佐。自分はゼファー・オリーブ陸曹であります」
「協力ありがとう、オリーブ陸曹。話しは聞いているか?」
「はい、先輩から」
「では、お願いする」
ゼファーによると、1年前、ディオが除隊後に、働いていた薬品工場が麻薬精製に手を貸した疑いがあり、本局の捜査官が大挙として押し寄せてきた。このときの本局捜査官の一人は横暴で態度の悪い捜査官だったようで、ろくに下調べをしないうちに、ディオも精製に関わっていたのではないかと疑ったらしい。身の危険を感じたディオは姿を消し、行方不明になった。そのあと、ディオと麻薬精製との因果関係がないことが証明されたが、彼は行方不明のままらしい。
「連中、本命の工場長を捕まえたと思ったら。申し送りもろくにしないで帰っていきましたよ」
うんざりした表情でゼファーは「いい迷惑です」と続けた。
こういった小さな摩擦の積み重なりが、今の管理局での海と陸の溝に繋がっていったとヴィルヘルムは思っているが、彼の力ではどうにもならないことでもある。が、そうは思わなかったものもいる。ティアナがゼファーに聞いた。
「パステル婦人は、捜索願を出していないんですか?」
「ディオが姿をくらませた翌日に、出しているようですが…。当時でも、25歳の成人男性でしたからね…」
つまり捜索はしていないということだ。成人男性が自分の意志で出て行ったのだから、地上部隊も本腰は入れていないだろう。
ゼファーがお茶を濁すと、ティアナの言葉にトゲが生えた。
「捜索願が出ているのに、なぜ、捜索はしていないんですか?!」
幼いころ、大好きだった兄がいなくなった時に、兄の名誉を傷つける扱いを受けたせいか、ティアナはこの手の話には敏感だ。間違ったことは正さなきゃ!という思いと勝気な性格が相俟って、言葉を抑えることが出来なかったようだ。
「まさか、本局が関わっているとは思いませんでしたので。申し訳ありません!」
言葉のトゲで刺されたゼファーは明らかにムッとしたようだ。一番階級が上のヴィルヘルムに謝罪したが、言葉の外で「もともと、あんた達(本局)の責任だろう!」と言っているようだった。
「いや、重要人物というわけではないんだが、とある事件で彼の調書が必要だったんだ。当たってしまってすまない、陸曹」
尚も言いつのろうとするティアナが発言する前に、ヴィルヘルムは割り込んだ。視線でティアナを押しとどめながら、頭を下げる。
「それに、ディオ・パステルの行方不明の件は、こちら(本局)のミスです。同じ本局捜査担当として、恥じ入るばかりです」
フェイトもそれに習った。
階級が上の二人が自ら頭を下げたことで、ティアナもゼファーも頭に上った血が下がったようだ。互いに礼儀に反したと謝罪した。
「テスタロッサ執務官、どうする?調書は他の所からも送られてくる。正直に言ってディオの調書それほど重要ではない」
「いえ、探します。裁判までは、まだ2、3日あります」
フェイトが返事をすると、ティアナは嬉しそうな表情をした。
ヴィルヘルムもフェイトの意図が裁判の為というより、パステル夫人のもとに息子を返そうとしていることは分かっていたが、何も言わなかった。
「ゼファー陸曹、ディオの足取りはどこまでわかっていますか?」
「資料だと、給料日前でほとんど金を持っていなかったそうです」
お金のない人間が行き着く先は決まっている。ヴィルヘルムが意見を言った。
「なら、近くの貧民街だろう」
「ああ、それならここです」
ゼファーの端末から地図データが送信され、新たな空間モニターが開く。メインストリートから離れた寂れた町の地図が表示された。売春婦やドラッグの売人が街角に立ち、壊れた街灯が並ぶそんな町だ。範囲も広く、こういった町だと警邏隊員ですら、どこに誰が住んでいるか把握できていない場合が多い。ティアナが率直な意見を言った。
「この範囲を2、3日ではちょっと無理があるのでは?」
「監視システムは…」
シャーリーが聞くとゼファーは首を振った。後進世界の寂れた都市には、そんな高価なものはない。
「こういう時は、営業妨害をしてやればいいのさ」
「まあ、それが一番有効ですね」
ヴィルヘルムの言葉の意味がわかったのは、画面の向こうのゼファーだけだった。だが、フェイトはこの世界の捜査官が賛成したのなら、その方法がいいだろうと判断し、ヴィルヘルムに方法を任せることにした。
「明日の朝、民航機でそちらに向かう。ディオ写真、長期監視用の車、ホットラインを用意できるか?」
「ええ、その程度でしたら」
「頼んだ」
通信を終えるとヴィルヘルムは連れに宣言した。
「本日の作業はここまでだ。ホテルに行って一休みするとしよう。明日は長いぞ」
翌日、ダックスへ向かった一行は0076部隊を尋ね、車を受け取った。
ティアナが車に添えつけられている小型電子レンジや、トランクにおさまっていた折りたたみイスを眺め、首をひねりながら聞いてきた。
「副長、それで営業妨害ってどんな方法なんでしょうか?」
「大して難しい方法じゃない。売人や夜の女の多い場所で、買いに来るやつに制服を見せびらかしてやるだけだ」
「売人を捕まえるのではなくて?」
「いや。私達が行うのは制服を見せびらかせるだけだ。それを行うことによって、どんなことが起こると思う?」
「え、売人が一時的に他の通りに移っていく…ですか?」
そして、制服を着たものがいなくなったら、舞い戻ってくる。ティアナには意味がある行動には思えなかった。
「不正解だ。彼らは移動などできない」
「えっ!」
当たり前の答えを言ったつもりだったのに否定され、さらにわけがわからなくなり、軽く混乱するティアナを見てシャーリーが手助けをする。
「あのね、ティアナ。ドラッグを売ってる人達は、細かく縄張りが決まっているの。この人はこの通りの2ブロックとか、この人はあっちの通りの3ブロックとか、コレを守らないとひどい喧嘩になってしまうの」
「控えめな表現だな。縄張りを侵すと殺人事件に発展することも多い。だが、局員に手を出せば、それこそ局員が大量に集まってきて、それこそ商売にならない。歯向かいたくても、ここの売人連中には管理局と事を構えるほどの力はない。なら、売人達はどう考える?」
ここまでくると、ティアナもひらめいた。とっとといなくなって欲しい局員を追っ払うには、局員が来た理由になった奴を突き出せばいい。
「町の住人に密告させるってことですか?」
「そういうことだ」
「それなら、ホットラインには一人残っていたほうがいいですね」
3人とやり取りを聞いていた、フェイトが提案し、渉外担当のシャーリーに0076部隊に残ってもらい、捜査官としての動きを期待しているティアナを同行させることにした。
残ったシャーリーに売人が一番密集している通りを聞き出してもらっているうちに、フェイトたちは長期戦に備えて、テイクアウトできる食事を買いに行くことになった。
一行がメインストリートに通りがかった時、ヴィルヘルムは裏路地の様子を確認すると、小腹がすいたといって車を止めさせた。車が止まったのは、この町にしては掃除が行き届いている大き目の通りで、路上には屋台が数件並んでいた。
「通過儀礼をしてやろう」
「…副長はどなたに?」
ヴィルヘルムの言葉に、フェイトがあまり気乗りしないような顔をした。
「ここの地上部隊に配置されて間もない時だ。その時も捜査の手伝いに借り出された。地上の准尉や3尉なんてモノは、3士よりこき使われるからな」
「そうだったんですか…」
「そっちは?」
「執務官の研修期間に先輩に…、社会見学だ。と言われて…」
「なるほど、どこでもあるのだな」
フェイト達は車を降り、ティアナを屋台に誘った。
先程から意味深な会話をする上司に一抹の不安を覚えたが、ヴィルヘルムに「ここの名物を食わせてやる。付き合え」と、言われてしまえば断るのも悪い。車を下り誘われるまま屋台の1つに向かう。
誘われた屋台でヴィルヘルムが買ったのは使い捨ての容器に入ったスープで、ほぐした魚と野菜をトマトと香辛料で煮込んだもののようだ。ミッドではあまり嗅いだことのない独特の香りがする。
容器を渡したヴィルヘルムは「食べてみろ」と言って、こちらを見ている。フェイトもだ。
しかし、ティアナはフェイトの表情が気になった。フェイトの表情は子供のころ兄に意地悪をされた自分を「しょうがないお兄ちゃんね」と、言って慰めてくれた母の顔に近い。
このスープに何かあるのかしら?…とても辛いとか?
「どうした?ランスター2士」
「い、いえ、何でもありません!」
仕方がないわね!えい、…ままよ!
プラスチックのスプーンでパクリと一口…
「あ、おいしい!」
「それは、よかった」
スープの味はトマトの酸味と魚や野菜から出た甘みが絶妙だった。思わず素直な感想を漏らしてしまう。
これはおいしい…疑って損した。
「その料理、気を付けないと魚の代わりに、便所紙を使って水増ししている場合があるからな」
「…ブッ!…ゲホッ、ゲホッ!」
ヴィルヘルムの言葉を聞いたとたん、ティアナは大きく咳き込んだ。
疑うべきだった…もう、飲み込んじゃった!
大きくせき込むティアナの背中をフェイトがあわててさする。
「ティアナ、ティアナ!落ち着いて。ここのは大丈夫だから!」
咳き込んだときに飛びっ散り、顔についたスープをフェイトがハンカチで拭いてくれたが、ティアナは恨みがましい視線を向けた。
あんな意味深な会話をしていたところを見ると、フェイトも知っていたはずだ。知っていて何も言わなかったのだから、フェイトも同罪ではないか。
ティアナの視線を受けて罪悪感を刺激されたフェイトが、泣きそうな顔になりながら説明した。
「あのね、これはミッドや他の先進世界から出たことのない隊員に、必ずやる通過儀礼のようなものなんだ」
「…通過儀礼、ですか」
抑えているつもりだったが不機嫌そうな声がでた。フェイトはますます慌て、縋るような視線でヴィルヘルムを見た。犯罪者の罵声には毅然としているフェイトだが、身内に恨まれるのは苦手らしい。普段の冷静さが、微塵もない。
しょうがなくヴィルヘルムが説明する。
「まず、君の食べたスープは、水増しなんてしていない。保障しよう」
そう言われてもティアナは気味悪そうにスープを見ている。さらにヴィルヘルムは説明を続ける。
「裏路地を見てみろ。人が使っている程度には汚れているが、それなりに掃除がされているだろう?」
「は、はい…」
ティアナが裏路地を覗き込みながら頷く。が、それが何を意味するのかわからないようだ。
「こういった場所は、公共サービスが行き届いている場所だ。そういった場所では先ほど言ったような水増しは行われない」
「公共で働いている人たちの出入りが多いわけだからね。すぐに営業停止になってしまうんだ」
あ、なるほど、二人の意図していたことがわかった。
「つまり、公共サービスが食事の安全の基準になると?」
「絶対ではないけど。ある程度の基準になるってこと。行ったことのない世界とかで役に立つんだ」
納得はした。でも、もう少しイイ伝え方があるのではないか?と、思ってしまう。それが顔に出る。
「そんな顔をするな。経験に勝る知識なしと言うだろ。それに私が同じことを言われたときには、実際に紙を食わせられたんだぞ」
ヴィルヘルムが渋面を作ったのを見て、ティアナは驚いた。
この副長でも、こんな顔をするのか、と。
路上駐車しかけた車が、ティアナ達の服装、管理局の紋章が入ったコートを見るなり、慌てたように速度を上げて離れていった。
コレで何台目だろう?
ティアナは10台を超えたあたりで数えるのを止めていた。空を見上げるとドンヨリとした曇り空。冬の弱々しい太陽が真南を少し過ぎたあたりに見える。
「まったく、まだ、お昼ですよ…!」
言ったティアナのいるのは、ダックスで最も治安の悪い貧民街だ、路上にはごみが落ちているし、建物の壁やら塀には落書きがされている。通りに出ている人々は不健康そうな顔をした売人や、冬だというのに露出度の高い服に派手な化粧の女達で、迷惑そうにこちらを見ている。
ティアナには、薬に手を出す者の考えが分からなかったし、夜の女達と呼ばれる商売があるということは知っていたが、それが明るいうちから行われているのが信じられなかった。
何考えているんだろう、男って。と、顔に書いてある。
「ろくに仕事がなくて暇をもてあましているんだろう。経済的に貧しい国ではよくある光景だ」
車から出した折りたたみのいすに座り、道路に出ていた廃材を一斗缶で燃やし暖をとっているヴィルヘルムが答えた。イスが体格に合わないのか、先ほどから居心地悪そうに体を揺すっている。
同じく折りたたみイスに座るフェイトは何も言わなかったが、愉快な顔などしていない。
「まあ、女、子供が来る場所ではないな…」
言ったヴィルヘルムとフェイトが立ち上がった。彼らの視線の先、ティアナの背後から街角に立っていた女が歩いてくる。女からの安い香水の臭いに顔をしかめながら、ティアナも椅子から立ち上がり、ヴィルヘルム達から少し離れてデバイスのみを起動する。コレで万が一のことがあっても援護できる。
歩いてきた女はティアナを見て舌打ちをすると、ヴィルヘルムに食って掛かった。
「ポリが何のようだい!!おかげでこっちは商売上がったりじゃないか!!」
女に詰め寄られても、ヴィルヘルムは平然としたまま、質問をぶつけた。
「ディオ・パステルって男を捜している。君は知らないか?」
「ここで本名を名乗るバカなんて、いるわけないだろ!」
「この人です。心当たりありませんか?」
答える女にフェイトが懐から写真を取り出し女に見せた。女は写真を除きこむと、鼻を鳴らしながら言った。
「はっ、ディルじゃないか。こんな小物捜してどうするんだい!」
「ちょっと事情があってね。居場所を教えてくれないか?」
「…」
女は迷ったようだったが、他の街角に立つ女達や子悪党達が見ているのに気がついて、視線をそらしながらいった。
「町の人間は売れない」
「そうか、では、残念だがここに居座り続けるしかないな」
「ちっ、くたばりな!」
女は吐き捨てて去っていった。
女がこちらから離れると、女に胡散臭い格好をした男が近づき、一言、二言話すとすぐに裏路地のほうに消えて行った。女のほうはこちらを一睨みすると携帯通信端末をいじくっている。
フェイトが呟く。
「これで管理局がディオを捜しているという噂が、元締めの耳にも入るといいんですが…」
「大丈夫だろう。こういう場所での噂話は、君の戦闘機動より早いからな。暗くなるころには、向こうからメッセンジャーが来るだろう」
「やっと折り返しですね」
ティアナは自身を抱くと、ブルッと身震いをした。
冬の太陽は足が速い。17時ともなるとあたりは真っ暗になった。かろうじて壊れていない街灯が頼りなく道を照らしている。女達や売人達は本日の商売を諦めたのか、姿を消し周りには人っ子ひとりいない。
日が落ちて急激に下がった気温に耐え切れず、ティアナは対寒フィールドを張り、車の電子レンジで例のスープを温めた。ひどい目にあった曰くつきの代物だが、この際贅沢は言ってられない。
ヴィルヘルムとフェイトもコーヒーや紅茶を温めて啜っている。
フェイトはサベージの状況が気になるようだ。ヴィルヘルムに赴任してきたときの状況を、熱心に聴いている。
「私が赴任した時は首都の次元港が改装中でな。その時の物資の調達を取り仕切るのに私が呼ばれた。だが、ここ数年のサベージでは働かない大人が多くてな」
「働かない大人ですか?」
「ああ、このサベージは数十年前までは鉱山で栄えていた世界だが、その鉱山は他の世界の資本で発展したものだったんだ。ところが、その当時のサベージ政府は鉱山がもたらす利益は自分たちの実力で得たものだと勘違いした」
鉱山で働いていたのは他の世界の者だったが、何もしなくても鉱山の権利で大量の金が入ってきたサベージ政府はその金をばら撒き市民の人気を得ていた。だが、鉱山が掘りつくされると、他世界の企業はとっとと撤退。残ったのは鉱山マネーに甘え切った大人達。
「まあ、大人達については自業自得だが、子供たちがそれに付き合わされるのを見るのは気分が良くないからな。転任する前に、上層部やNGOに幾つか公共事業や学校を建設するように企画して働きかけた。その幾つかは、成果が出始めているらしい。…倍率は高いらしいけどな」
管理局の幹部と言え、出来ることは限られている。
「ま、何人かの子供は救えただろう。と、思っておくべきだろうな」
「…私には、少し難しいです。みんな助けたいですから…」
「みんな、か。…まあ、それも間違いではないが…」
各世界には、各世界の悩みや問題があるらしい。
ティアナは2人の話を聞きながら、サベージでの出来事を振り返った。初めは執務官の捜査に参加できることがうれしくて仕方なかったが、今は捜査活動よりも、ミッドとは違う世界の情勢や異文化に触れられたことの方が大事に思えてきた。
もしかして、八神部隊長もそれを狙ってたのかしら…?
上司がタヌキと言われる理由が何となくわかった気になっていると、フェイトのデバイス、バルディッシュの警告を発した。
《左方向300ヤード、一般市民が近づいてきます》
三人は会話をピタリと止め。暗い路地に目を凝らすと、3ブロック先の街灯の下に小さな人影が見えた。人影は小走りに近い早歩きでこちらに真っ直ぐ近づいてくる。
「子供…」
フェイトの呟きがティアナの耳に届く。そう、人影は子供だ。ヴィヴィオ位の子供がこちらに歩いてくる。恐らくこの辺の夜の女の子供だろう。
「メッセンジャーだな。テスタロッサ執務官。君が話してくれ、私が話しかけるより子供が安心する」
「はい」
「念の為、言っておくが金は渡すなよ。私達の目の届かない所に行った途端、殴られて奪われるのが落ちだ」
「…はい」
メッセンジャーボーイは、歩み寄ったフェイトの前に立つと二コリともせずに言った。
「ねーちゃん達、人を探してるんだって?」
「うん、この人。ディオ・パステルという名前なんだけど。知ってるかな?」
フェイトが写真を見せながら言うと、少年は覗きこんでいった。
「オレはしらねぇけど、知ってそうな奴なら知ってるぜ。聞いたら教えてやる」
「うん、ありがとう。ここに連絡して…」
「ああ、いいぜ」
フェイトが名刺にホットラインの番号を書いて渡した。受け取った少年の小さな手にはペンダコが出来ていた。
立ち去る少年の背中が見えなくなるまで見守っていたフェイトが呟く。
「あの子、勉強を頑張っているみたいです…」
「そうか…、教育を受けることが出来ているなら。この町から出ることも、もう少しいい生活をすることも出来るだろう」
「そう、だといいんですけど…」
フェイトがティアナ達の元に戻ってくると、彼女は鼻をクスンクスンさせていた。
泣いているのだろうか?
ティアナが不安になり見上げると、それに気が付いたフェイトは左右の二の腕を擦りながら誤魔化すように笑った。
「えへへ、ちょっと寒くて…。恥ずかしいよね…」
「いえ…」
全く信じられなかったが、ティアナはそれ以上追及しなかった。ヴィルヘルムもそのことは触れずに言った。
「日付が変わる前には連絡が入るはずだ。密輸事件なんて手早く解決しよう…。不正な商売を潰すことは、経済を豊かにすることにつながるはずだ」
ゼファー・オリーブ陸曹
ダックス陸士0076部隊、捜査官。ヴィルヘルムの知り合いの後輩。本局に多少反感を持っているが協力してくれる。
面白かった、つまらなかった、正直な気持ちでもちろん大丈夫です。
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何卒よろしくお願い申し上げます。