管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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昨日からUAがかつてないほど伸びて若干引いてます。
読んでいただいて、感謝しつつ…。
え、なに、今日氏ぬの俺…。と、思ったり…。


30Quite a lot of time passed since Force

 新暦82年、第97管理外世界の西暦で言うなら2021年になり、数カ月たったころ。エクリプスウィルス騒動も沈静化し、管理局特務六課も解散。高町なのはと、八神ヴィータも本局武装隊航空戦技教導隊5番隊に戻り、次世代の翼を守り育てる仕事に戻っていた。

 そんなある日、

 

「ちょう、何人かで集まって飲まへん」

 

 子供の頃からの幼馴染にして、管理局特務六課では上司だった八神はやてから、会食の誘いがあった。二人の教導官が予定を確認すると、ヴィータは直帰する予定の日であり、娘の居る高町なのはも、娘が習っている格闘技仲間と泊まり込みの合宿を行うとのことで、参加に意欲的だあった。

 そしてその当日、はやての予約をいれた外観はちょっとお洒落なレストラン風、中は現代日本の居酒屋という、成人した日本人なら違和感を覚えそうな店に二人が出向くと、十数名規模の人数が入ることが出来そうな椅子席に個室に二人は案内された。中に入るとすでに殆どの参加者がそろっていた。

 

「あ、なのは、ヴィータ」

 

 執務官を務め、なのはとは同居しているフェイト・T・ハラオウンが声を掛けた。空いていた彼女の隣になのはとヴィータが着く。空いているのは後2席、フェイトの隣中央左の席に腰を下したなのはから見て、中央の長机を挟んで対面左端から、シグナム、アギト(子供サイズ)、リィン(子供サイズ)、空席、ヴィルヘルム、ゲンヤ、ザフィーラ(人間形態)、手前側左から、空席、ヴィータ、なのは、フェイト、クロノ、ヴェロッサという席順だった。皆、はやてに縁があるものが集められている。

 

「なんだ、はやてのヤツ。言い出した者が遅刻か?」

 

 クロノがワイングラスを傾けながら言った。はやてが指定した時間まであと5分ほどあるが、0次会と称して男衆はすでにグラスを傾けていた。宴会に用意されていたオードブルに手をつけ、並んでいるお酒の瓶のコルクも2本抜けている。普段それぞれのお目付け役(娘や妻、シスター)の目がないので、羽目が外れているのだ。クロノに関していえば、隣の義妹(フェイト)があきれた目で見ているので、きっと後で妻に怒られることになるだろう。

 

「ヴィルヘルム君は、何か聞いていないのかい?」

 

 ヴェロッサが、はやての下で副司令官の立場にいるヴィルヘルムに尋ねた。

 

「シャマル医官と合流してから、こちらに来ると、それ以外は…」

 

 ヴィルヘルムが仕事用の顔でヴェロッサに答えた。

 家族とはいえ、勤務明けにわざわざ医者であるシャマルと合流することに、引っ掛かりを覚えた陸士108部隊長ゲンヤ・ナカジマが口を開いた。

 

「なんだぁ、あのチビ、何処か悪いのか?」

 

 そもそも、自分の副官でありユニゾンデバイスでもあるリインフォースを置いて、行動することも気になる。八神家にとって末っ子組でもある彼女に聞かせたくないことでもあるのだろうか?

 

「いえ、定期健診のようなものです…」

 

 答えたのは守護獣ザフィーラだ。店に入るため人間形態でいるのはいいとして、本当に珍しいことに酒を飲み、少々多弁になっている。

 四つ葉のクローバーよりもなかなか見かけない光景に、なのははフェイトに念話で話しかけた。

 

『どうしたの?ザフィーラ?すこし、浮かれてる?』

『そうなんだよ、ほんの少しなんだけど。副長も少し硬いし』

『そうだよね』

 

 なのはとフェイトの二人には、公私両面で感情を表に出すタイプではないザフィーラが、なぜが地に足が付かない様に見えた。一方、副長の方は公式の席では、鉄面皮で通しているがこういったプライベートの席では、洒落の聞いた会話を好んでいた。特にはやてとの言葉の応酬は、それを聞く友人たちを楽しませているのだが、今日は仕事用の仮面を外さずにいるのが気になった。

 

『アコース査察官がいるからかな?』

『ヴェロッサ?』

 

 査察官職にあるヴェロッサは、確かに管理局の部隊の行動や管理状況を評価、指導する立場にある。普通ならおべっかの一つも使いそうではある。

 

『でも、副長、肩書に物怖じするような人じゃないよね?』

『そうなんだよねぇ?どうしたんだろ?』

 

 なのはは他の参加者の様子を見たが、他の男性陣は普段と変わらない様子で、ヴィルヘルムとの交流が最も多いゲンヤのみが、時折ヴィルヘルムの様子を盗み見ている。ゲンヤも違和感を覚えているようだ。ヴォルケンリッターの女性陣もいつもの様子に見えたが、周囲をうかがっている二人に気が付いたシグナムがチラリと視線を投げた。二人が念話でヴィルヘルム達の様子の訳を知っているかと尋ねると、

 

『聞いていない。…が、すぐに分かるだろう。黙っていろ…』

 

 と、いつもよりややつっけんどんな答えが帰ってきた。シグナムもなぜか緊張しているようである。戦闘前の緊張ではなく、例えるなら親戚の子供がピアノの発表会に出場するときの保護者の緊張。娘がストライクアーツの試合に参加するとき、フェイトが似たような表情になるので、なのはには分かった。そんなことをなのはが考えていると…。

 

「いや~、ごめん、ごめん、遅れてしもたわ~」

「ごめんなさい、皆さん」

 

 参加者の最後の二人がやってきた。はやてが空席の内のヴィルヘルムの隣につき、シャマルも残りの空席に座ると、0次会に不参加だった者たちもグラスに飲み物を注ぎ始めた。

 

「そう言えば、はやて、姉さんが今日は来れなくてゴメンってさ」

「ああ、カリムにも声を掛けたんやけどな~、忙しいならしゃあないわ」

「そう言えば、今日はどういった名目の会食なんだ」

「ああ、それなぁ、この後発表や」

 

 グラスに酒を注ぎなおしたヴェロッサが義姉の不参加を詫び、クロノが聞いた。はやてがはぐらかしながら、自分のグラスを持ったので、自分とフェイトのグラスに酒を注ぎ終えたなのはが、注ごうとすると断られた。

 

「あ、なのはちゃん、それはええわぁ。リィン、もらってええか?」

「あ、はい」

 

 はやてはリインフォースの持つデキャンタから、オレンジジュースを注いで貰っている。

 はやては二十歳を超えてからこういった席では、お酒を飲むようになった。そのことを知っていたなのはが聞いた。

 

「はやてちゃん、明日のお仕事は朝早いの?」

「い~や~?久しぶりのお休みや~」

「え、じゃあ、お酒じゃなくていいの」

「ああ、そう言う事か…」

 

 はやてはいったん言葉を切った後、自分の腹部をなでながら言った。

 

「お酒は、お腹の子っちに悪いから、最近は飲んでないんや」

 

 はやてが発言した瞬間、皆の会話が止まった。数名の者を除き皆、遠慮がちにはやての腹部を一度見てから、視線が彷徨わせたが、時間の差はあれど、最終的にヴィルヘルムにたどり着いた。

 誰も口に乗せなかったが、まあ、そういうことなのだろう。

 

「い、い、いつの間にゅ…」

 

 顔を真っ青にし、体を震わせたヴィータが、定まらない人差し指をはやてとヴィルヘルムの方に向け、回らぬ口を何とか開いた。漫符の表現をするなら、大量の縦線がヴィータの顔に書かれていそうな表情だった。

 二人は付き合っていないと言い張っていたヴィータは、「いつの間にそういう関係に?」と、いう意図で言った。しかし、シャマルは少しヴィータの意図とは、違った答えを言った。

 

「今、二カ月よぉ。しかも、多胎児」

「ビル、何人いるか知りたいぃ?」

 

 はやては意地悪そうな満面の笑みで、ヴィルヘルムを見上げる。

 当のヴィルヘルムは、はやてをまっすぐ見返し、眉をあげる。気心知れた人間とプレイング・カードでも、楽しんでいるときに、相手の手札に感心し、「そう来たか」とでも、言いたげな顔だ。

 

「確かに予想外だ。が、今は他に聞きたいことがある」

 

 ヴィルヘルムははやての左手を取ると、手のひらに収まる程度の小さな箱を、腰ポケットから取り出し握らせた。はやての手の中で、ターコイズブルーの箱がパカッと開かれる。

 

「結婚してくれないか?」

 

 箱にはシンプルなデザインではあるが、見る目があるものなら唸りそうなソリティアタイプの婚約指輪が収まっていた。

 はやては視線を指輪とヴィルヘルムの顔の間で、3度ほど行き来させた後、口を開いた。

 

「あ、あれ?おかしいなぁ?最終イニング、3点リードで、最高のクローザーを登板したつもりやったんやけど…」

 

 言いながらはやての声が徐々に震えだした。

 

「そのクローザーより、まず私を信頼してほしいものだな」

「しとる、しとるよ。でも、この子っち達に闇の書の影響があるかも知れへんし…、いきなり、3人やったし、受け入れてもらえるか不安になって…」

 

 はやての瞳からぼろぼろと大粒の涙が零れ、吃逆で体が震える。

 

「ああ、3人なのか…、それは、少し工夫がいるな。だが、大した問題じゃない」

 

 ヴィルヘルムがはやての肩を抱くと、はやてはヴィルヘルムの胸に額を押し付けた。しかし、ヴィルヘルムは少し眉を寄せた。

 

「それより、問題なのは君がまだ返事を返してくれないことだ。黙っていられると、なかなか不安なんだ」

「…ふっ、ふふふ、お互い様ちゅうことやね」

 

 ヴィルヘルムに肩を抱かれたまま、顔をあげたはやての顔は涙が止まっていなかったが、とても美しい笑顔だった。

 

「はい、もちろん、結婚しよか」

 

 言ってから、はやてはもう一度体をヴィルヘルムに預けた。婚約指輪の箱もしっかりと両手で包み、絶対に返さないという意思が見える。

 途端、周りを囲っていた者達が、色めき立つ、

 

「お、おめでとう、はやて」

「はやてちゃん、よかったね」

 

 歓声を上げる同級生。

 

「…フー、見事です、副長」

「収まるところに、収まったな」

「あ、シャマルだけじゃなく、二人とも気が付いていたのかよ!」

「はやてちゃんの、子供」

「あたしが、末っ子じゃなくなる日が来た!」

「さあ、これから忙しくなりそうね」

 

 各々の思いを抱く、守護騎士たち、

 

「エイミィと、レティ提督と、グレアム提督…」

「まいったなぁ、順序が違うってシャッハが怒りそうなんだけど」

「娘どもに、今の話をせがまれそうだな…」

 

 近親者にどう伝えようと、考え込む友人たち。

 その日は、日付が変わるまで、声が小さくなることはなかった…

 




んっ!誰だ!俺を起こそうとするのは?
今は部隊長様が働いていないのだから、休日くらいゆっくりさせてくれ…。
次回、管理局世界の人々 六課の副長編 最終話『いつかの朝』
終わりじゃなくて、きっと続いていく

面白かった、つまらなかった、正直な気持ちでもちろん大丈夫です。
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