管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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33チーターをなのは達と絡ませてみた2

 そのころ、陸戦魔導士訓練場の上空では、時空管理局本局武装隊で教導を行っているときには、凛々しくも優しい表情で生徒たちを見守っている高町なのはが、目を点にして間の抜けた表情をしていた。

 元六課のフロントメンバーのあられもない姿に思考が停止してしまっている。

 

(あれ?何でこんなことになったんだっけ?)

 

 決まっている。自分が呼んだエイブラハムの仕掛けたウイルス攻撃により、元六課の教え子たちがセットアップに失敗したからだ。

 なのはとエイブラハムが出会ったきっかけは、機動六課の解散後、なのはとヴィヴィオが巻き込まれたある事件が切っ掛けだった。この事件は海鳴市までも巻き込んだが、管理外世界で起こった出来事であり、事件の首謀者が特殊な立場にあったため報道規制が引かれ、認知度は低く抑えられている。

 その事件で解決の為に派遣されたエージェントの一人がエイブラハムだった。出会った当初、管理世界ではまず見ることのないエイブラハムの戦闘方法に、なのはも驚かされた。

 彼特有の戦闘方法は、元六課のフロントメンバーにもいい刺激になる。と、考えていたのだが、なのは達が巻き込まれたのは根の深い事件だったため後処理に時間がかかった。

 最近は、ようやくひと段落がつきエイブラハムのスケジュールにも余裕が生まれてきたらしい。丁度、春はみんなの都合が合わず、開催を延期していた『大自然旅行&オフトレーニング』にも休みが重なっていたようなので、なのはの誘いで半ば強引に参加してもらった。

 そして、今に至る。

 確かに、なのはもエイブラハムがウイルス攻撃をするだろうと、予想はしていたのだが、まさかいきなりこういう攻撃を選択するとは、思ってなかった。

 

「なのは」

 

 遠くで誰かが読んでいるが、なのはが反応できずにいた。

 すると、変身シーンで攻撃するというお約束破りの張本人が、なのはが飛んでいる近くの建造物の屋上までやってきた。バリアジャケットの腕に仕込まれたワイヤーガンを駆使した見事な動きだったが、今のなのはの目には入らない。

 

「おい、なのは!!」

「え、ええ!!」

 

 かなりの大声を出されてなのははようやく相手に気が付いた。見るとエイブラハムが顔からストールを下ろして声をかけていた。黒髪の短髪、あまり際立った特徴のない顔の右目には傷跡が、左目は眼帯型のヘッドマウントディスプレイで覆われている。

 

「デバイスのセットアッププロセスを妨害するウイルスを使ってみた。始めて使うウイルスだったが、索敵も攻撃もない所を見ると上手くいったようだな」

 

 実戦では相手がバリアジャケットを着るタイミングなど分からないので、お蔵入りになっていたモノが試せてうれしいと上機嫌なエイブラハム。それに対して混乱気味のなのはが詰め寄る。

 

「アナタ君、あれ、わざとやったの?」

 

 思わずエイブラハムの本名、というか、友人しか知らないプライベート用の名前を呼んでしまった。

 

「そっちの名前を呼ぶということは、動揺しているな。なにがあった?」

「え、っと、ティアナとキャロが…!なんというか…、あれな姿に…」

 

 年頃の娘達が素肌を晒しているとは、さすがに言いづらくなのはの声が尻すぼみになっていく。

 

「ん?、セットアッププログラムが走らないようにウイルスを組んだつもりだったが、想定していた効果は出なかったみたいだな」

 

 エイブラハムの使うウイルスによる攻撃は、効果がある時は強いが確実性がある技ではない。デバイスのウイルススキャンに引っ掛かり、魔法効果を減衰させる程度に留まる場合もあるし、全く効果が出ない場合もある。コンピューターゲームのRPGなら、相手の能力を下げるデバフや、状態異常をひき起こすスキルがあると思ってもらえれば分かりやすいだろう。

 実際に相手の魔法プログラムに攻撃するには、何よりも相手の情報が必要とされる。その情報収集の一環として、エイブラハムはなのはに尋ねた。

 

「因みに、どういった効果が出た?ミッド式と近代ベルカ式で効果に差はあったのか?」

 

 言いながらエイブラハムが、フロントメンバーのスタート位置が見えるよう、屋上のへりに向かおうとする。いくらフリードが目隠しになってくれているとはいえ、ティアナ達を完全に覆い隠せているわけではない。エイブラハムのような後衛型のサーチャーなら、まるっと見えてしまうかもしれない。

 そう思ったなのはは、あわててエイブラハムの前に回り込んだ。

 

「わっ!ダメダメ!今は見るの禁止ーー!!」

「…?ウイルスの効果は出ているんだな?なら、どの段階で効果が出たんだ?説明してくれ」

「えっと、…ベルカ式の二人はバリアジャケットの生成途中で…。ミッド式の二人は…その…脱衣の最終段階というか…、とにかく、セットアップ中の攻撃は禁止ーー!」

 

 なのはの肩越しにフロントメンバーを見ようとするエイブラハムをバタバタと手を振って止める。ずいぶんと子供じみた仕草をしてしまったが、エイブラハムは動きを止めてくれた。

 が、眉間によったしわの数を増やす。

 

「その怒り方、ヴィヴィオにそっくりだな。いや、ヴィヴィオが君に似ているのか…」

 

 エイブラハムは嘆息してから続けた。

 

「ヴィヴィオが真似するから、そういった感情表現は辞めた方がいい。アリサも言っていたぞ。君達の怒り方は、ミスター・ゴボラのようだと…」

「な…、ひ、ひどいよ。アリサちゃん、そんな風に思ってたの!!」

 

 Mr.Goboraは、第97管理外世界の日本で世界的に有名な特撮怪獣映画である。50年以上前に上映された『ゴボラ』に始まる一連のシリーズ作品及び、それらの作品に登場する架空の怪獣の名称である。

 発言者のアリサとしては、ピンク色の破壊光線を撃ちながら戦うなのはに対して、半ば冗談まじりに言った発言だったのだが、第三者(エイブラハム)からのまた聞き効果で誇張して聞こえてしまった。思いのほか傷ついた表情を見せたなのはに、エイブラハムは慌てた。

 

「いや、アリサも冗談で言ったんだと思うぞ。…まあ、女性に対してミスターは酷いよな」

「そこじゃなーーい!!!」

 

 ビミョーな女心を理解しないエイブラハムに、なのはがヒートアップしていき、更に動転したエイブラハムが失言をくり返す。

 

「ああ、そ、そうだな。怪獣な訳ないよな…。最近、CW社と武装試験を行っている姿はカッコイイからな。グレートガイアに出てくる連邦軍の白いヤツ…?」

「ああ、言った!!とうとう、言った!!アナタ君が、言っちゃいけないことを言いました!!!」

 

 グレートガイア、第97管理外世界の日本における往年の名作アニメ。鉄鋼艦隊・グレートガイアを始めとする一連の作品群のタイトルである。各作品はいくつかの世界を共有して発表されている。その他、従来からのグレートガイアとは異なる世界観に基づいて描かれた新しいグレートガイアシリーズも発表され、それらもまたアナザーグレートガイアとして、根強い人気がある。

 

「あ、あれ?カノンの発射音はどう聞いても、ビームライフルだと…、すずかも同意していたんだがな?」

「すずかちゃんまで!!そんなこと言うチーターさんは、BANだよ。BAN」

「うあ!!レイジングハートをこっちに向けるな!!!」

 

 故郷における代表的な怪獣とスーパーロボットに例えられ、なのはが高度を取りながら遺憾の意を伝える。と、エイブラハムもその場から飛び退く。

 エイブラハムが両手のひらを何度も下げる「落ち着け」のジェスチャーをしながら、なのはに言った。

 

「ところで、俺の戦技を教え子に体験させたいのは分かるが、生徒に肩入れし過ぎじゃないですかね、教官殿」

 

 含みのある言い方をするエイブラハムに、なのはが答えず笑みを返すと同時に、激しい雷鼓が轟いた。

 

 

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