管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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36チーターをなのは達と絡ませてみた5

「おい、なのは…!」

「どうしたの?アナタ君」

 

 焦った様子のエイブラハムに、なのはが何事かと近寄ると、エイブラハムが頭の痛い問題を抱えたように、なのはに尋ねた。

 

「ヴィヴィオがストライクアーツを始めたというのは本当か?」

 

 なのはは何が問題なのか分からず小首を傾げる。

 

「元々スバルに基礎だけ教わっていたのを続けていて、自主練習していたのは知っているよね?」

「ああ、てっきりエクササイズだと、思っていたんだよ」

「最初はそうだったみたいだけど、ノーヴェに教わっているうちに、楽しくなってきたみたいだよ」

「楽しみを見つけるのは、別にいいことなんだけど…。格闘技を始めたこと、桃子さんに話していないだろ」

 

 そこが問題だ。と、エイブラハムがなのはに指摘した。

 なのはもあっと声を出して、同意する。

 母(桃子)との電話やメールは、娘に友達が出来たとか、こんなことを言ってくれたとか、本当に平凡な母子の会話がほとんどで、何かの資格を取ったとか習い事を始めたなど、報告を忘れがちになる。

 

「そうだったかも!メールを送って…」

 

 なのはが、思い出したかのように地球の通信端末を取り出すと、エイブラハムが慌てて止めた。

 

「いや、待て待て!!」

「どうしたの?」

 

 なぜ止めるのか?と、問うなのはにエイブラハムは、少し遠回りの説明をした。

 

「恭也さんの所の下の双子いるだろ」

「晶くんと蓮ちゃん?」

「ああ、あの二人も最近、御神流を始めたらしい…」

「うん、聞いてる」

「この間、翠屋を尋ねたら、その話を桃子さんに聞かされてな。こう続けていたんだよ」

「う、うん」

 

 不穏なものを感じたなのはが身構え、エイブラハムが顔を引きつらせて続けた。

 

「これで戦うことと関係を持っていないのは、わたしとヴィヴィオだけになっちゃったのよ。ヴィヴィオは司書の資格も取ったって言っていたし、剣とか武道とか攻撃魔法とかに興味ない、イイ感じの女の子に育ってくれそう。と、とてもニコニコしながら言っていたぞ」

 

 地球に住んでいるなのはの家族は武術を修めている。なのはが魔導士して、争いごとや危険と隣り合わせの仕事を選んだ際にも、「そういうもの」として受け入れてくれるのも早かった。

 しかし、武術とは無縁な母、桃子はそう言った感覚を共有できずに、一人で思い悩んでいたかもしれない。仲間外れ気分を味わっていた桃子は、武道や戦技を行っていない(あくまで桃子視点で)ヴィヴィオが高町家の子になったことで、戦うこととは無縁の者同士のシンパシーを感じていたのかもしれない。

 

「え、えっと、どうしよう…(すっごっく、言いにくくなっちゃった)」

 

 間違いなく桃子は、ヴィヴィオが格闘技を習うことについては、本人の意思を尊重して反対などしないと思う。ただ、少しだけ残念そうにする桃子の姿も簡単に想像できた。

 

「えーと、えーーっと(想像したら、本当に言いにくい)」

 

 自分が地球を飛び出すことを認めてくれた尊敬する大好きな母である。悲しい顔や肩を落す姿は見たくない。できればなるべくショックを与えずに、母に報告する方法はないかと、うめき声を上げるなのは。

 すると、エイブラハムがなのはの肩に手を置いた。なのははエイブラハムが妙案を思いついたのかと、顔を上げた。が、

 

「じゃ、桃子さんへの報告は頼んだぞ」

 

 面倒な仕事を部下に押し付けるパワハラ上司のように、言うだけ言ってエイブラハムは去ろうとしたが、なのははその背中に組み付いた。

 

「…放せ、なのは」

「アナタ君、お願い!見捨てないで!!」

 

 エイブラハムがチラリとヴィヴィオ達の方を見ると、大人二人がもみ合っている姿にさすがに気が付いたいるようだ。心配そうにこちらの様子を伺っている。

 なのはとエイブラハムはが、「なんでもない」と、誤魔化すと、ヴィヴィオとコロナは怪訝な顔をしながらも、ルーンライターの操作に興味を移した。

 エイブラハムとなのはは、続きの会話を念話で行う。

 

『見捨てるも何も、普通に報告するしかないだろ!』

『だって、だって、そんなこと聞かされたら、すっごく言いにくいよ!』

『知るか!その辺の話は、家族の話だろ!どうにかしてくれ!』

『酷いよ!話を持ってきたのは、アナタ君じゃない。無関係じゃないでしょ』

『そうは言ってもな!あ、君が管理局に入る時はどうだったんだ?』

『あの時は、そう、フェイトちゃんとはやてちゃんも一緒に入局するって話になって…、一緒に同じ道を進みたいなら…って、話をリンディさんとしてたことが…』

『お、その手で行こう!!コロナの他にも、最近仲良くなり始めたって子いたよな』

『リオちゃんね!そ、そうだね、友達と楽しくエクササイズしているうちに…、って感じに…』

 

 と、会話をしていると、エイブラハムがなのはを突然抱えて飛び退く。ほぼ同時に、

 

《Protection》

 

 レイジングハートのオートガードが二人を包んだ。そこに、ゴーレムの拳が飛び込んできた。拳はエイブラハム達が先ほどまで立っていたところに落ち、派手に煙を上げながら四散した。テラスの床や家具も壊れていないのは、非殺傷・安全設定の賜物だろう…。

 

「ママ!!アナタさん!!」

「お二人とも、大丈夫ですか!!」

 

 ヴィヴィオとコロナが声を上げ、駆け寄ってきた。

 どうにも、ゴーレムの出力操作を失敗し、振り回された腕がすっぽ抜けて、テラスに向かって飛んで来てしまったようだ。

 

「ビックリしたー、うん、でも、大丈夫だよ。アナタ君も、平気?」

「問題ない。だが、気を付けろよ、いくら非殺傷設定とはいえ、痛いものは痛いからな」

 

 言いながらエイブラハムは、ヴィヴィオ達が駆け寄って来る際に放り出したルーンライターを拾い上げると、ゴーレムのに入力された行動コマンドを確認した。

 

「うあ、なんだこれ?どんな理屈をこねたら、こんな魔法の組み方になるんだ?」

「ご、ごめんなさい・・・」

 

 エイブラハムの言葉に謝ったのはヴィヴィオである。つまり、ゴーレムの操作を失敗したのもヴィヴィオと言うことである。

 素直に謝罪するヴィヴィオに感心しながら、エイブラハムは言った。

 

「ヴィヴィオ、君の魔法のセンスはいい方だとは思うが、ゴーレムの様に繊細さが要求される魔法を、理論ではなく感覚で組んではいけない。どんな副作用がでるか分からないからな」

「はい、以後、気を付けます・・・」

 

 ヴィヴィオが殊勝な態度を取る傍らで、なのはが気まずそうにそっぽを向いた。まるで、身に覚えがあるかのようだ。

 フォローのつもりか、そこでコロナが提案する。

 

「あ、アビーさん。私、前に自分で組んだゴーレムの行動アルゴリズムがあるんです。試してイイですか?」

「ん、見せてもらっていいかい?」

 

 コロナが自分の端末から、プログラムソースを表示する。エイブラハムが確認すると基本に忠実な手堅い内容だった。

 

「ああ、これなら問題ない。試してみるといい」

「うう、こういう魔法はコロナには敵わないな~」

「ふふ、どうでしょう?」

 

 言いあいながら、再びゴーレム操作に挑戦し始める二人。子供たちを心配したフェイトが寄ってきて見守っているので、今度は万が一、ゴーレムが暴走するようなことがあっても問題なさそうだ。

 他の大人たちもそう思ったようで、個々の雑談に戻っていく。

 だが、視線を感じてエイブラハムが見れば、背の高く髪をセンターポニーにした女性がこちらを見ていた。女性、シグナムはエイブラハムにニヤリと笑いかけてから、視線をそらした。

 

「あーあ、おっしょー、完全にロックオンされたでぇ」

 

 その様子をみていたはやてが、エイブラハムに寄ってきた。

 

「どういう意味だ、はやて?」

「咄嗟に飛んできたパンチを躱すような、いい動きなんてするから。バトルマニアを刺激してしもたんや。明日の模擬戦は要注意やで…」

 

 ケッケッケッとはやては怪しく笑った後、エイブラハムの左頬に貼られた湿布を見た。

 

「しっかし、スバル達もヤルようになったなぁ。シグナムかて、なのはちゃんのお兄さんと始めて打ち合った時には、対応しきれんかったんやけど…。昼間の模擬戦であの子達、おっしょーにイイの入れたんやろ?」

「…いや、これは模擬戦後、別件だ…」

 

 聞いてきたはやてに対して、エイブラハムが口ごもりながら答える。

 

「ん?どういうことや?」

「あんたは海鳴出身だったな。ティアナとかいう…、あの執務官はアリサに性格が似ている…」

「ティアナにやられたん?」

「そうだ。後は自分で考えろ、あんたは捜査官だろ」

 

 頭の上に疑問符を並べるはやてに対し、エイブラハムは話を打ち切った。

 

 

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