管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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37チーターをなのは達と絡ませてみた6

 時間を戻して模擬戦終了後、なのはがスバル達のいる屋上に降りると、キツネに摘まれたような顔をしたスバルが、ぺたんと座ったまま言った。

 

「ま、負けちゃった」

「て、いうか、何なんですか?あの人?本当に人間ですか?」

 

 スバルの言葉にティアナがつづく。ティアナにとって、強い人=魔法の上手い人なので、魔法をほぼ使わずに、魔導士や騎士と渡り合う者がいるのが信じられない。

 自身も魔法を使わない攻撃で、撃墜判定をもらったにも関わらず、何かしらのウィルスで、判定にズル(チート)されたと、思ってしまう自分がいる。

 

「戦闘能力者。わたしの実家では、アビー君ぐらい白兵戦が強い人を、そう呼ぶんだ」

「俺ぐらい強い…ね…。俺は美由紀さんに勝ち越したことないぞ」

 

 なのはが説明をすると、エイブラハムが反論しながら、フリードから飛び降りる。

 キャロもフリードを屋上に着地させると、一番辛そうにしているエリオを介抱し始めた。それを見たエイブラハムが言った。

 

「ああ、騎士の坊や、もう少し我慢してくれ…」

 

 言った後、スバルに近寄る。

 

「下半身の力が入らず立てない。で、あっているか?」

「あ、はい」

 

 戸惑いながら返事をするスバルの背中にエイブラハムが、手を置いた。

 

「わ!」

 

 スバルが驚いてフィールドの出力を上げたが、

 エイブラハムは気にせず、スバルの背を指でやわらかく触れた。

 

(あの柔らかさがクセモノだよね)

 

 その様子を見たいたなのはが思った。

 通常バリアジャケットを着た魔導師に、外部からダメージを伝えるには3つの方法がある。1つ目は最も一般的な方法、ジャケットのフィールドの防御力を越えた出力の攻撃をぶつける方法。この方法だと100の防御に200の攻撃をぶつけると、その差分の100がダメージになる。一番単純だが防御より攻撃が上回らないと、攻撃はすべてはじき返されてしまう。

 2つ目はジャケットの防御設定にない物質で攻撃する方法。JS事件の地上本部襲撃際、戦闘機人が使用した新型のシビレ薬がこの方法に当たる。

 3つ目はジャケットが反応しない弱い力を利用する方法。

 バリアジャケットは光や音など、人体に影響のないほど弱い力は通過させてしまう。外部からの刺激をすべてはじき返してしまうと、術者の視覚や触覚といった五感を確保することはできないからだ。指で押された程度の力では、フィールドは必要な刺激として取り入れてしまう。エイブラハムはこのフィールドの性質を利用して点穴を仕掛けている。

 

「ほらよ」

「うわ、とと…、おお、た、立てる!」

 

 エイブラハムがスバルの腕を引くと、フラつきながらもスバルが立ち上がる。

 次にエイブラハムがエリオに近づき体の数か所を指で突いた。するとエリオの苦痛も和らいだようだ。

 

「打撃の衝撃で混乱した体を落ち着かせただけで、ダメージが抜けたわけではない。昼飯は軽いものにしたほうがいいな」

「…どうも」

 

 返事をしながらも、エリオは少し残念そうにしている。

 育ち盛りの上に、朝からの訓練でお腹を空かせた後で、節食を命じられるのは大食漢のエリオにはかなり辛いことのようだ。

 

「すごい技術ですね。サイバー戦については、理論的に可能だろうと噂程度には聞いたことがありますけど…」

「いや~、それより戦闘技術でしょう。ルーフェン武術界の拳仙と呼ばれる人の中には、顔出しNGの人もいるって聞いたこともあります。もしかして…」

 

 エリオを治療するエイブラハムの様子を見ていたティアナとスバルが言った。

 

「そんな上等なモノじゃない。まともな名前すらないぐらいの技だ」

「えー、勿体ない」

「この技は相手を制するための技じゃない。魔法をろくに使えない連中が、戦場で生き残るために編み出したもの。基本的に邪道の類なんだよ」

 

 エイブラハムは皮肉気に顔を歪めると言った。

 

「それとも、お前たちは、だれか殺したい相手でもいるのか?」

 

 突然の物騒な言い様に、スバル達がギョッとして首を振る。エイブラハムは満足げにニヤリと笑いうと続けた。

 

「なら、王道を学びな。俺と違って、才能と教師にめぐまれているのだから」

 

 自分自身を卑下するような物言いを聞いたなのはが、ムッとした表情になり言った。

 

「またそんな言い方して、その技術でわたしと、ヴィヴィオを助けてくれたじゃない」

「どうだったかな…。まあ、管理局の相手は基本的に犯罪者やはぐれ者だろうからな。相手が使ってくる前提の模擬戦ぐらいには、役に立つかもな」

「もうっ!」

 

 頑なな態度のエイブラハムに、なのはが口を尖らせた。

 二人の会話を聞いて、ティアナには思い当たる話があった。

 

「なのはさん達を助けたって…、もしかして、次元航行船拿捕事件ですか?」

 

 ティアナが言ったのは、新暦76年に起きた事件である。ロストロギアの不正使用を行った次元航行船が第97管理外世界で拿捕されたという事件で、初動対応したのが休暇中のなのはだった。と、発表されている。が、執務官や捜査官の中でも、全容がいまいち掴めないまま、記憶の彼方に押しやられていっている事件だ。

 

「うん、まあね」

「あの事件って結局…」

「ああ、ええっと…」

「その事件は捜査中であります。高町1尉」

「にゃはは…。だ、そうです」

「…」

 

 なのはに釘をさすように、会話を遮るエイブラハム。ティアナは胡乱な目を二人に向けたが、調査中の事件の守秘義務も分かっていたので、それ以上は追及はしてこなかった。

 少しだけ、気まずくなってしまった空気を破るように、通信用の空間モニターが開いた。

 

「さー、みんな、お昼ですよー」

 

 柔らかな声で昼食の準備が整ったことを知らせていたのは、ホテルアルピーノのオーナー、メガーヌである。

 メガーヌは皆がバリアジャケット姿でいるのを見ると、あらまあと少し驚いた顔をした。

 

「まだ訓練中でした?もう終わるころだろうと思っていたのに…」

「え、まだ、終わってなかったの?こっちは我慢しているのに!」

 

 メガーヌの脇から、メガーヌを色々小型化というか、幼くしたような女の子が空間モニターに顔を出した。メガーヌの娘、ルーテシアだ。

 数年前までは置かれていた環境のせいで、感情を表に出せずに無口で大人しかったが、現在は母の元で本来の明るい性格が表に出てきている。

 

「ちょっと、ルーテシア!失礼よ、お客様に向かって!」

「ああ、イイですよ。ルーテシアはお友達ですし…」

「もう、甘やかさないでください、なのはさん。こう言うことは他のお客様相手でも出るんですから」

 

 娘を叱るメガーヌをなのはが宥めようとしたが、娘のイイ性格が最近表に出始めいていることを把握しているメガーヌは厳しかった。

 ルーテシアの方もこうなったら素直に謝った方が、身のためと思ったのか殊勝な態度を取った。

 

「はーい…、失礼しました。お客様…」

 

 しかし、後にあの子の悪だくみは洒落にならないと称されるルーテシアは、ニヤリと笑い続けた。

 

「でも、お客様方、急いだほうがよろしいと思いますよ。八神司令達が到着していますし、ヴィヴィオとコロナはお腹と背中がくっついちゃいそうな顔をしていますから」

 

 暗に急がないと昼食がなくなる。と、言ってルーテシアは空間モニターを閉じてしまった。

 エリオに負けず大食漢のスバルが慌てた。

 

「なのはさん!急ぎましょう!」

「ふふふ、そうだね。最近、ヴィヴィオもよく食べるようになったから…」

 

 スバルの声に、なのはが微笑みながら返し、バリアジャケットを解除。トレーニングウエア姿に戻った。

 それに習い、他の者たちも次々とバリアジャケットを解除したのだが、

 

「…ッ!!!」

「ふぇっ?」

 

 ティアナとキャロが驚きの声を上げた。皆が見れば、トレーニングウエアの二人の前に、ヒラリと布状の物がひるがえる。

 ティアナはそれが地面に落ちる前、皆がそれが何か気が付く前に引っ掴むと、背中を向けてしゃがみ込んだ。そのまま、ぶるぶると肩を震わせ始めた。

 キャロはそれが地面に落ちるまで、キョトンと何が起こったか分からないといった顔をしていたが、それが地面に落ちた後、自分の下腹部やヒップを触ってからひと言。

 

「スースーします」

 

 キャロの目の前に落ちたのは、可愛いデザインのローライズだった。

 

「わっ!」

「…腰が冷えるぞ。…痛っ!」

 

 それを見たエリオが慌ててそっぽを向き。いらない感想を漏らしたエイブラハムは、バチンとなのはの両手で目を隠された。

 

「ああ、もう、ほら、キャロ!すぐ履いて…、イイやもう、しまって、しまって」

 

 男二人の耳にそんなスバルの声が聞こえ、衣擦れのような音が聞こえたかと思うと、

 

「はい、もういいよ」

 

 なのはの許しの声があがる。同時にエイブラハムの目からも、手が離される。

 エイブラハムはヒリヒリと痛みの残る瞼を擦りながら周りをみる。ティアナはしゃがみ込んで肩を震わしたままだった。キャロの上衣のポケットが、なんとなく膨らんでいるように見えるのは、気のせいではないと思うが、それを追及するほどエイブラハムも命知らずではなかった。

 

「ああっと、すまん。多分、最初のウイルスの副作用だろう。分解途中の衣服の組成がズレて、再構成の際の位置座標にバグが出たんじゃないかな?」

 

 エイブラハムは気まずそうに言った。それを聞いたエリオの想像力が働いてしまう。

 

(キャロとティアナさんは、同じミッド式でウイルスの効果が同じだった。つまり、ティアナさんも今、履いてなッ…。いや、なにを考えているんだ、ぼくは!!)

 

 考えてしまった自身を責めるエリオ。

 一方女性陣の方もエイブラハムの言葉には全く納得はできない様子で、

 

「ああ、なるほど…?」

「はぁ…?」

「…」

「アナ…、アビー君…ッ」

 

 ティアナは一度ピクリッと大きく肩を痙攣させるだけだったし、憮然としたなのはが、フォーマル用の名前を呼んで、エイブラハムに非難する視線を向けた。

 

「…一応言っておくが…、意図してやったわけじゃないぞ…」

「…ッ!」

 

 なのはの視線に耐えられなくなったエイブラハムが言い訳じみたことを言ったが、ティアナは今度は二度、肩を痙攣させただけだった。

 

「…ダメだな、アリサが完全にへそを曲げた時と同じリアクションだ」

「そういう時、どうしてるんですか…」

 

 何故か少しだけ語気を強くして、なのはが言った。エイブラハムはなのはの態度に頬を引きつらせながら答える。

 

「とりあえず、一発もらうかな?それで、とりあえずは気が晴れるらしい…」

 

 アリサの場合、キックだけど。と、言葉の外に続けるエイブラハム。

 皆の反応は素直だった。しゃがみ込んだままのティアナ以外が、スススッと、エイブラハムから距離を取る。

 

「…」

 

 エイブラハムは、ため息を着いてから、覚悟を決める。

 ピシッと気を付けの姿勢を取る。

 

「よし!来い!」

 

 次の瞬間、勢いよく立ち上がったティアナが、拳を振りかぶる。

 その拳から少しはみ出した布の色を見たエイブラハムが、「情熱的な色だな」と思った瞬間、ティアナの右フックが頬を捕らえた。

 

 




おもちゃ箱編「チーターをなのは達と絡ませてみた」この話で終了です。
今回のオリ主はArcadiaで未完で終わってしまった話に出したデバフ白兵戦キャラの再利用です。
未完で終わらなかったら六課メンバーとこんな出会い方をしていただろうと妄想しています。

面白かった、つまらなかった、正直な気持ちでもちろん大丈夫です。感想、評価を頂けましたら、励みになります。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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