管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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2022年04月01日(金)0600投稿の管理局世界の人々64話にて、63話の「海鳴市の夜Ⅵ」を二重に投稿してしまうという、人為的過誤がございました。
下記の通り訂正いたします。

64話、「海鳴市の夜Ⅵ」削除
64話、「海鳴市の夜Ⅶ」投稿

読者の皆様にご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫びするとともに、訂正いたします。
(マジで反省&凹)
こちらの過誤に気づき、お声がけくださいました方々には、感謝いたします。
これからも、管理局世界の人々にお付き合いいただければ幸いです。


64海鳴市の夜Ⅶ

《索敵波感知2、6時方向、2mile》

『それなりの腕利きらしいな。追いつかれるぞ!』

 L3Sのセンサーが捉えた情報を通信で監視していたパーシングが言った。

 センサーの6時方向を精密モードに切り替えると、さらに詳しい情報が体内のシステムに送られてくる。

 追跡してきた魔導師の出力は2人ともにAランク相当、立派な空戦魔導師といえる。さらにエシュロンやアブレストといった連係攻撃の訓練も受けていることも考えるなら、その戦闘能力はAAランク相当と考えるのが妥当だろう。出し惜しみできない相手ということだ。

 だが、

『高町1尉がいないなら。何とかなるだろう』

 自惚れではなく、冷静な戦術眼からそう答えた。陸戦ならともかく、単独の空戦ではやられてしまうところだが、L3Sの支援があるなら問題はない。

 すずかを放り出して高町なのはに追跡をためらわせた甲斐があったというものだ。

『そう、うまくいくかぁ?』

『いかない。アリサの容体を知ったら、間違いなく追ってくる』

『じゃあ、どうするんだ』

 後方支援が専門とはいえパーシングも素人ではなかったが、相棒の手持ち装備では2名+オーバーSランク相手に有効な戦術を思いつけなかった。

『正攻法では、無理だな』

『諦める。なんて言わないだろうな』

『まさか、課に入ったばかりで課長に消されてしまう』

『じゃあ、どうする気だ?』

『引っかけてやればいい』

 最初の追っ手と高町なのはが交戦圏内に入る時間にはタイムラグがある。

 素早く対処できれば、逃げるチャンスは十分にある。

 考えた作戦を実行するために、L3Sに命令を送る。

『1号機、武器ボックスを開けろ。2号機、指示する行動にかかれ』

 

 

 

 

 

 エイミィの操る通信機材に中継されたユーノからの音声のみの通信に。

 なのは達は忍者のハッキング攻撃を警戒し、情報リンクは行わず単純な音声のみの通信を使用している。これにより情報交換の高速化は出来ないが、その分ハッキングの影響を受けにくいという利点がある

 声に疲労と焦りを滲ませたユーノが言った。

『イデア・グレンヌ。あの宝石はそう呼ばれているロストロギアで、JS事件の際、聖王教会中央教堂の宝物庫から盗まれた者のリストの中から見つけた。あの宝石に体内に入れられるとその相手の「記憶」を食べて大きくなんだ』

『それじゃあ、アリサちゃんは!!』

 ユーノの言葉に驚きながら、アリサを見る。

 すずかがアリサに自分達の話を聞かせているが、アリサはまるで覚えのない話をされているかのように、怪訝な顔をするだけだった。

 個人的な記憶――思い出の一部がすっかり抜け落ちてしまっているようだ。

 

『そう、アリサの記憶はあの宝石に取り込まれている。消化された記憶は、超純エネルギーに変換されてしまうらしい』

『そんな!』

『追って!なのは!エネルギーとして、記憶を消費される前にあの水晶を取り戻すんだ!それで記憶を取り戻せる可能性がある』

『ホント!』

『ああ、盗まれる前にこのロストロギアを研究していた女性がいたんだ。名前は…たしかエメリ・ド・ヴォワ…』

 説明を続けようとするユーノの通信を遮って、キャバリエとクロムウェルの通信が割り込んできた。

『被弾した!どっから撃たれたんだ!メーデェー、メーデェー!』

『あいつは、逃げたんじゃない!避難したんだ!対空攻撃が…!』

 通信越しに先行した護衛達の戦況が伝わってくる。今、クロムウェルの反応が急に微弱になった。落とされたようだ。護衛達は劣勢に立たされているようだ。

(急がないと)

 こちらの状況に気が付いた、ユーノが説明を止める。

『記憶を戻す方法を調べておくよ』

『わかった!お願い!ユーノ君!』

 飛行魔法フライアーフィンを発動させると、忍者を追跡することを察したすずかが心配そうに見上げてきた。

 その隣では、なのは達との記憶を失ったアリサが、空飛ぶ人間を見て慄然としている。

 アリサにヘンなものを見るような目で見られて、胸の奥に鈍い痛みを感じる。

「すぐに戻るから!待ってて!アリサちゃん!」

 そうだ、ロストロギアを取り返せば、アリサからこんな目を向けられることもなくなる。

 アリサを安心させるために言ったつもりの言葉だったが、むしろなのは自身の闘志が湧いてきた。

 逆にいえばアリサの視線は、それだけなのはを狼狽させた。

「二人を頼みます!」

「「了解」」

 陸戦魔導師のマークとコメットに任せ、なのはが飛んだ。

 ほんの数秒で、音と彼女の狼狽は置き去りにされた。

 

 

 

 

 

 夜空を飛ぶこと数分、なのはが洋上に入ると、キャバリエからの通信にノイズが入った。

『敵は2…』

《妨害波動検知》

 キャバリエの通信はそこで途絶えた。

 突如として割り込まれた通信妨害によって、通信を経たれてしまったようだ。

 なのはは即座に通信妨害を逆探知し、防御機動(ブレイクターン)を取った。ここまで強力な通信妨害が届くということは、敵の攻撃誘導波も届くということだ。

 案の定、すぐにレイジングハートが敵の誘導弾の反応を捉えた。キャバリエと合流させないための牽制攻撃。

 対抗攻撃として、だめもとで遠隔制御の誘導弾を一発だけ放つ。出現から数秒で桜色のディバインシューターは反転し、術者であるなのはに襲いかかってくる。やはり、誘導能力を持つ術式では忍者の改竄思念で利用される。遠隔操作のブラスタービットも使えないと考えた方がいい。

 なかば、諦めてきたことなので冷静にフィールドのG中和能力限界の回避軌道とショートバスターで誘導弾を迎撃するが、それだけ時間と手間を取らされることになる。

 

 ドン!ゴゥン!

 

 フィールド越しに衝撃波を感じた。

 レイジングハートが分析。遠距離で大口径榴弾と砲撃を検知。

『・ら…。バイ・リ・反応を…』

 要領を得ないキャバリエからの通信の後に、再び衝撃!大口径榴弾だ。ダメ押しの一撃を食らってキャバリエが沈黙する。

 真っ白なパラシュートが夜空に広がる。キャバリエのデバイスが被弾を検知し、BJの形状を変化させたのだろう。昨今のデバイスが活きているなら、術者が気を失っていても自動的に術者を守る保護機能が付いている。それが作動している限り、魔導師の生存率は極めて高い。

 保護を彼の愛機に任せて追跡を続行する。

『これで一対一…。いや、違うね。L3Sはスペック上、ある程度だが自動で戦闘を行うこともできたし、遠隔操縦も可能だから一対二と考えるべきだよね』

《いいえ、マスター。二対二です》

 主の問いに、レイジングハートは自分を忘れるなと反論した。そんな愛機に頼もしさを覚えながら、なのはは意見を求めた。

『そうだね…。でも、彼のウイルスは脅威だよ。飛行系魔法がウイルスにやられちゃうと、そのまま墜落ってことになりかねない』

《問題ありません。目標のL3Sが使用しているのはこちらに近いミッド系飛行魔法。今、ウイルスを使用した場合、目標自身の飛行魔法にも影響が出ます。》

『そうだね。じゃあ、行くよ!レイジングハート!』

 相手との速度差を考えると、そろそろ射程距離に入る。

「エクシード、ドライブ」

《イグミッション》

 追跡の為の高速機動、省魔力の概念を切り捨て、防御力と高出力優先の戦闘態勢に入る。BJも変化しミニだったスカートもロングスカートに替わる。

 今まで敵の解析を恐れて使用していなかったレイジングハートのセンサーをアクティブに、密度の濃いパルス波動が照射される。たとえどんなに敵の妨害能力が優れていたとしても、これで数秒間はロックオンが可能だ。

「センサーコンタクト!ショートバスター!」

 砲撃。桜色の光が夜空を切り裂く。

 さすがの忍者も初見で、なのはの最速砲撃に妨害を仕掛けるのは出来なかったようだ。避けるため敵は右旋回をしつつ、位置エネルギー(高度)まで利用し回避行動を取りつつ、再び誘導弾を放ってくる。

 これに対して、なのはは魔力出力を弱めず、位置エネルギーを落下の加速に変えて更に加速。同時にチャフをばら撒いた。

 敵誘導弾は相対速度の大きさとチャフによって、なのはを見失いあらぬ方向に飛んで行った。

 一方、忍者とL3Sの回避はそれほどうまくいかなかった。ショートバスターが巻き起こした衝撃波に煽られ、速度を落とした。敵との距離を一気に詰め有視界での戦闘が可能な距離まで詰め寄る。

(見えた!)

 有視界に忍者の跨がるL3Sを捉える。ここまで近づいてしまえば、たとえ相手が誘導能力に勝っていても、優劣の差にはならない。

 忍者は速度・位置両エネルギーを失い、こちらはタップリと加速した速度エネルギーがある。魔力出力は相手が忍者・L3S合わせてAA+程度に対して、こちらはS+、こちらの方が遥かに上だ。

 空戦において相手より高エネルギーを保持していることは圧倒的な優勢を示している。しかも出力が勝っているということは、急上昇・急加速などでエネルギーを回復させる能力も勝っている。と、いうことだ。

「ストレイト」

《ウイルス検知、射角妨害》

 レイジングハートの警告。

 砲撃の射線に誤差を生じさせて狙いを外すプログラム。感染力が強く、効果がでるまで期間が短いウイルスだが魔法を完全に無力化するほどの力はない。

 構わず、発射!

「バスター」

 反応炸裂効果が高めてあり、敵密集地では敵対象を伝播して連鎖爆発を引き起こす直射砲。加害範囲の広いこの砲撃なら、多少狙いが外れようと避けきれるものではない。

 砲撃が炸裂!衝撃をまき散らすが忍者がいない。

 砲撃直前に躱された!

 視覚ではない空間認識能力が敵は後方だと告げている。肩越しに背後を見る。視界に移ったのは、跳ねまわる自分のツインテールの一房。

 いた!

 L3Sの腹が見える。忍者はL3Sの尻尾を真下にして機首を垂直にさせ、急減速をさせていた。

 ピッチング(横軸)方向に姿勢を上下させるが、高度の変化がほとんど出ないコブラという機動だ。効果はご覧の通り、なのはは急激に変化した速度差に対応できずに、オーバーシュート(追い越し)をしてしまった

 L3Sの機首が下がり、水平方向に復帰する。

 機上の忍者が銃を構える。銃の先でカード型デバイスが魔法陣を展開していた。L3Sは口を左右に開く、中からのぞく砲門。

 先に撃ったのはL3S。迫る大口径魔力砲弾をなのはは急速旋回して躱した。砲弾の信管が作動し爆発したが、十分に速度を保っていたなのははその加害範囲から余裕を持って離脱できた。

 続けて、忍者がシュートバレットを魔法陣に向けて発射した。そのとたん、魔法陣の放つ魔力反応が急激に上昇した。

《警告!敵魔力出力、急速上昇》

『まさか、バイナリーボム…!?』

 通常ではあり得ない魔力の反応に、レイジングハートが警鐘をならす。なのはも驚きはしたが、教導隊の資料で理論を聞いたことがあった。二つの異なる魔法をぶつけ合わせることによって、激烈な魔力反応を起こさせる合体魔法の一種。しかし、運用には複雑な制御能力が必要な筈で大抵は不発に終り、安定した運用は出来ないとされいるのだが、忍者は制御能力にかなり自身を持っているようだ。

(落ち着いて、いくら忍者が制御能力に優れていても、バイナリーボムで複雑な弾道誘導はできないはず)

 なのはの読み通り、魔法陣から放たれた魔力が濁流のように襲いかかってきたが、誘導のない直射砲撃だった。

 なのははこれを殆ど直角に上昇して躱す。

 フィールドの中和能力を超える強烈なGと、高出力魔力運用の負荷に歯を食いしばって耐える。

 誘導弾の追撃に備え、チャフを自動射出できるようにレイジングハートに指示を出したが、それはなかった。チャージしていた魔力をすべて使い切ったのだろう。今度はこちらの番だ。

 上昇したことで速度を下げ、そのまま、忍者を後方から見下ろす位置に着く。

 旋回、加速能力に劣っていると自覚のある忍者は、エイミィのセンサーが地形の関係から死角になる座標に向かって一目散に逃げている。あまり時間はかけられない。

 このまま、上昇することで稼いだ位置エネルギーを速度に変換し後方から攻撃しても先手は取れるが、また、速度差を利用してオーバーシュートを狙ってくるかもしれない。そこでなのはは上方から螺旋軌道を取りつつ忍者を追った。

 こうすることで、なのはは忍者よりも長距離を飛ぶことになるが、高い速度エネルギーを維持しつつ、進行方向に対しての速度差を減らすことができる。万が一、相手をオーバーシュートしてしまったとしても、通常の軌道に戻ることで素早く離脱することが可能だ。

 激しく回転する視界の中、レイジングハートがパッシブセンサーで相手を捉える。

 ダメ!忍者はまたこちらの射角を乱してくるに違いない。それに今日は月が出ているせいで魔力風が大きい。

 直感で照準を修正…。

 今!

「ショートバスター!」

 発砲!

 忍者はウイルスと回避機動で逃れようとしたようだったが避け切れず、L3Sの防御を破ると尻尾の付け根から伸びているスラスターを根こそぎ吹き飛ばした。

 L3Sは推力を失って落下、水柱を上げながら緊急着水する。

その直前、忍者はL3Sを飛び降り、背中のアンカーガンのワイヤーをパラシュートに変え落下速度を制御すると、水面に着地した。水の上を歩く魔法を持っているようだ。

 忍者が銃を構えて、再びバイナリーボムの構え。だが、砲撃の威力はこちらの方が上だ。切り札になる一発を用意して、スピードを落とさず旋回。正面から砲撃を狙う。

 

ガツン!

 

突然の衝撃に蹴り上げられる。

「……!」

 エクシードの分厚いフィールドのお陰で体は傷付かなかったが、飛行のバランスが大きく乱れる。2発、3発と被弾した後、何とかバリアを張り続く数発を受け止めたころには。

 攻撃は何処から?

 見回すと海面からセンサーの付いた頭だけ出したL3Sが見えた。

 2機目!

 不利な状況でのフード付きとの戦闘中も姿を現さなかったのは、ずっとこの退路を確保させていたようだ。クロムウェルを不意打ちしたのも、この機体だったのだろう。

 忍者の砲撃が来る。再加速を諦め、足を止めて砲撃に移る。

「エクセリオン・バスター」

 ほぼ抜き打ち気味で反撃。狙いとタイミングでは、忍者の方が圧倒的に優位だったがそれでもパワー負けはしなかった。砲撃同士がぶつかり合い、エクセリオン・バスターが徐々に押していく。

 なのはがカートリッジをロード。更に魔力を込めようとした瞬間、突然、敵砲撃が止んだ。

「!」

 背後に気配に振り返る。見覚えある本棚型の魔法陣から忍者が飛び出してきた。

 手が届くような接近戦。詠唱不要の高速起動魔法でも、今からチャージしていたのでは間に合わない。奇妙に間延びした時間の中、忍者の指を伸ばした左腕がゆっくりと近づいてくる。

(かかった!)

 桜色の閃光が走った。

 あらかじめ起動しておいたアクセルシューターが、スカートの中から飛び出し忍者に襲いかかったのだ。

 アクセルシューターは誘導能力のある射撃魔法で、忍者に乗っ取られる可能性があるが、改竄思念と言っても万能ではない。誘導弾の誘導方式や通信方式によって、いくつも種類がある。忍者は起動した魔法を素早く見極めそれに適した改竄思念を発生させている。

 つまり、魔法の発動に気づけなければ、有効な改竄思念は使えない。

 なのはが切り札として用意していたアクセルシューターは、あえてフィールド出力と同じ程度の魔力に威力を落とし、外部から魔力センサーでは見分けがつかないように調整していた。

魔力出力の低い忍者にはこれで十分…、

 

ガッ!

 

 この不意打ちにもかかわらず、忍者は右手に持ったままだった拳銃のブルームハンドルで受け止めた。だが、さすがにバランスを崩し攻撃を中断した。拳銃も衝撃で弾かれ明後日の方向に飛んでいく。

(いまだ!)

 エイブラハムの治療のお陰で快復してきたとはいえ、未だに残る違和感を無視して最大出力。フィールドの強度に任せて頭から忍者に突っ込む。

 戦術もへったくれもない。子供の喧嘩以下の突進に、完全に意表を突かれた忍者が弾き飛ばされ海面に叩きつけられる。

 忍者をいったん無視、そのまま飛んで、アクセルシューターが弾き飛ばした拳銃型デバイスを空中でキャッチした。デバイスはグリップ部分が焦げてはいたが、その他の部分は新品同様だった。

「やった」

《第一目標、クリア》

 そう、なのはは忍者を逮捕することにこだわってはいなかった。第一目標はあくまで奪われたアリサの記憶を取り戻すことだ。

 すぐさま、拳銃型デバイスにアクセス。ロックは掛っていなかった。ストレージデバイスなのでAIの抵抗も機械的だ。

 格納されたイデア・グレンヌを探す。

 最も新しい無名のファイル。

 あった!

《フープバインド、起動》

 ファイルに触れた瞬間、拳銃の残弾カートリッジが自動的にロードされ、拘束輪がなのはの周囲に複数出現した。

(罠!)

 気が付くのがワンテンポ遅すぎた。

(でも、イデア・グレンヌは何処に?)

 そう思いながらも、バインドを破ろうと足掻くが、カートリッジ数発を利用した4重のバインドはそう簡単には破れない。

 波の音を立てて忍者が再び水面の上に立つ。手には数枚のカード。そのすべてを使ったクリスタルケージが発動し、なのはは更に厳重に拘束された。

 その忍者に水中戦装備をしたL3Sが、空中戦装備の機体をけん引してきた。忍者は空中戦の機体に近づくと、武器ボックスから『刀傷の付いた拳銃型デバイス』を取りだした。

 バインドの制御権が刀傷の付いた拳銃型デバイスに引き継がれた瞬間、なのはの手の中の拳銃型デバイスが煙を吹いた。記憶媒体や演算装置が焼けて、アクセスしようとしても何の反応もしなくなる。

(やられた!)

 忍者はなのは達から逃れている間に、デバイスをすり替えていた。

忍者の使っているのは量産型ストレージデバイス。レイジングハートのように強力なAIを持っているわけでも、強力な魔力増幅器を持っているわけでもなかったが、癖がなく同じ機種なら殆ど同じ感覚で使用できる。

 また、この手の量産型はレイジングハートのように魔導師の相棒ではない。単なる道具を破棄しても惜しくはない。

 量産型の殆ど唯一と言っていい強みを利用された。イデア・グレンヌも『刀傷の付いた拳銃型デバイス』の中だ。

 L3Sが僚機をけん引したまま、潜航し始めた。

 拘束されたままの不自由な体で、クリスタルケージに体当たりする。

 ダメ。ビクともしない。

 抜け出すには最低でも数分は掛るだろう、そのころには忍者は追跡不可能なエリアまで離脱しているはずだ。

 なんとか、忍者を引きとめようと、なのはは最後の賭けに出た。

「お願い!待って!アビー君!」

 忍者は振り向かなかった。

 その名前を拒絶するように、海中に姿を消した。

 

 




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