81ガールズ・ナイト・アウト
管理局世界のトップニュースという舞台で、EC因子適合者やヴァンデイン・コーポレーションという単語がおどらなくなった時期、無人世界「カルナージ」。
ホテル「アルピーノ」の一室、キングサイズベットを複数連結させ、成人女性が5人並んで横になってもかなり余裕のある寝台の中心で、八神はやては妄言を叫んだ。
「第何回か!私立聖祥大附属校!チキチキ女だらけのパジャマ・パーティー!」
「「「わー!!」」」
はやての言葉に、参加者たちがお約束の合いの手と拍手を送る。
しかし、アリサ・バニングスは拍手をしながらも、ツッコミを忘れない。
「女だらけって、これってバチェロレット・パーティーでしょう?男が参加してどうすんのよ…」
「ははは!世の男の人達は残念やな、ポロリもあるのに…」
「あってたまるか!」
「そうか~?みんなポロリとイキそうなかっこうやないか」
「あんたが用意したんでしょうが!」
はやての言葉に乗って、語気を強めていくアリサを前にしても、はやてはニコニコと笑っている。
「でも…」
はやてからみてアリサ側の奥にいるフェイト・T・ハラオウンが顔を赤らめながら言った。
「少し恥ずかしいね…。この格好…」
枕を抱いて体を隠そうとするフェイトの姿態を見るはやての顔が、ニコニコからニヤニヤとした薄笑いにかわる。そのままはやてはフェイトのロングスリップ姿を視線で舐めまわすと、フェイトは顔をますます赤くして俯いてしまった。
「やめなさいっての!セクハラおやじか、あんたは!」
見かねたアリサが二人の間に割って入る。しかし、はやては視線の標的を変え、アリサのキャミソールとフレアパンティの組み合わせに視線を這わせた。
「アリサちゃんも、ナイスですね!」
「やかましい!」
何処かの監督だかお笑いタレントだかと同じ口調でサムズアップするはやてに対し、アリサが三白眼になった。
しかし、はやては気にする素振りも見せず、アリサ達とは反対側に並んで横になった友人たちに向き直って言った。
「もちろん、二人もファンタスティック!!」
「ふふ、ありがとう、はやてちゃん」
「にゃはは、今日は一段とノリノリだね…」
ナイトガウンを羽織った月村すずかがさらりと返し、ベビードール姿の高町なのはが困ったような笑みを返した。
「そらまぁ、独身最後の夜を楽しまんと」
なのはに答えながらネグリジェ姿のはやてが、振り向いた拍子にずれたコットンブランケットをお腹に掛け直そうとする。
と、すずかが素早く手を貸した。
「羽目を外すのはいいけれど、お腹だけは冷やしちゃダメだよ」
ずいぶんと目立つお腹になった友人に、丁寧にブランケットを掛けながらすずかが忠告する。
「おっと、ありがとう、すずかちゃん」
姉のほか、経験の多いすずかの言葉は、さすがのはやても素直に聞いた。
「まったく、身重なのに何だってこんなスケスケのを選ぶのよ」
アリサが自分を含め友人たちの姿を見回す。
皆、身に着けている物の種類は違うが共通点が一つ。使われている生地の大半がシースルーやレース、スリットや編み上げを多用していた。それらは肌を隠す、覆うなどの守りの概念が一切なく、見る者の心を狙い撃ちするための、挑発的で攻撃的なデザインが採用されている寝間着?である。
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それらはすべてはやてが用意し、5人で入浴している間に、ルーテシア・アルピーノにそれと着替えをすり替えさせるという手段で、強引に着せたものだ。
「ええやろ、ビルには悪いけど、この子っちが出てくるまで、こんなん着る機会は少なくなるやろからな~」
「ああ、はいはい」
はやてがお腹を撫でながら、明日、旦那になる相手の名前を出したので、アリサは惚気られてはたまらないと、話題を変えるために左右を見渡した。
目に入ったのはヘッドボードやサイドテーブルに置かれた飲み物や軽食。そして、参加者に事前に配られた結婚式の案内とパンフレット。
アリサがその1部を取る。表紙にはこの無人世界「カルナージ」の写真があった。
「しっかし、あたし達まで魔法の世界に来ることになるとわねー。人生何があるのか分からないものだわ」
「そうだね。新型ウイルスの影響もあったし…。わたし達が御呼ばれされるとは、思ってなかったよ」
「二人を呼ばんわけないやろ。まあ、地球の人だけ別で披露宴って話もあったんやけど、二人のお家は長年現地協力をしてもらってた実績があるしな。複数の次元を結んでいる管理局は免疫チェックも充実しとるからな。そんなら、ええ機会やから二人にも、こっちの世界を覗かせてあげよ思って」
「光栄ね。免疫検査もあっという間だったし、地球にも導入してほしいくらいだわ」
地球であった新型ウイルス騒ぎのおかげで母国と日本との往来で苦労しているアリサが言う。
「でも、よかった。魔法の世界の結婚式には参加できないもの。って、思っていたから」
続くすずかも実に楽しげに言うと、フェイトのほうを見た。
「お義兄ちゃん(クロノ)とエイミィの時のこと?」
「うん。こっちでもパーティーはしたけど、日本の結婚式みたいに百人以上は入れるホテルの宴会場で…。ってことはなかったでしょ」
「うん、あの時は…、ごめんね。まだ、渡航申請が下りにくいころだったから…」
兄達に変わって、フェイトが謝罪する。
「ううん、いいの、その分、なのはちゃんとはやてちゃんに写真や動画を見せてもらったしね」
すずかが言いながら、今度はなのはの方を見る。
「うん、あの時の動画は我ながらいい画が取れたと思うな」
すずかの視線に、なのはが少し自慢げに答えた。
子供のころ漠然と映画監督に憧れていたこともあるなのはは、今でもAV機器の取り扱いが得意だ。今回のはやての結婚式の撮影係も担当している。
「そういえば…、はやての選んだ式場って、エイミィさんの時とずいぶん違うのね。何と言うか…、雰囲気?」
なのはの言葉に、当時見た映像を思い出したアリサが感想を口にした。
「ああ、そら、ミッド系の人とベルカ系、宗教の違いやな」
「うん、そうだね。お義兄ちゃん達はそんなに信心深くないから、セレモニーも役所で済ませちゃったし…」
アリサの感想にはやてが答え、フェイトがクロノのあじけないセンスを残念に思いながら同意した。
「アメリカでも、セレモニーとパーティーは別々の場所でやることが多いわよ。パーティーの規模は日本に近いかしら…?はやてはここで両方やる予定なんでしょ」
「うん、教会の知り合いがおるからなー。それにベルカ系の結婚式は、いわゆる身内だけの結婚式っちゅうやつや…」
「お国柄なんだろうけど、ずいぶん違うんだね」
すずかも明日の予定表を覗きながら言った。すずかが案内や事前に聞いていた話をまとめると、ベルカ式の結婚式の特徴は以下のようなものらしい。
・結婚式は聖王教会の神父が立ち会う
・ウェディングドレスは購入するもの
・お色直しがない
・準備・手配は全て自分たちで
・義理でゲストを招待しない
・ご祝儀ではなくプレゼント?
・新郎新婦がダンスを披露
・深夜まで続く・・・
・結婚式の中心は新郎新婦とその家族
・皿割りなどのベルカならではの風習
「ふん!残念ね。ガータートスがあったなら、しっかりと撮影してやろうと思ったのに!」
ガータートス、花婿が花嫁のスカートにもぐりこんで、身につけているガーターを外して参列者(未婚の男性)に向けて放り投げるアメリカの結婚式の定番。
アリサが今までされたセクハラ(胸揉み)の仕返し。と、言わんばかりに挑発したが、はやてはニヤリと含み笑いを返す。
「ん?もしかしてほしいん?何やったら、引き出物の代わりに渡したろか?」
言いながらはやては身に着けたネグリジェの裾を抓み、きわどい所までたくし上げると、ひらひらと振って見せた。
アリサが「いるか!」と、怒鳴ろうとしたが、
「わ!ダメだよ!はやて!」
「…ッ!」
アリサよりも早く響いたフェイトの声で、言葉を飲み込んだ。
「どうしたの?フェイトちゃん、大きな声を出して…」
フェイトの声に驚いたなのはが聞いた。なのはにもフェイトが大声を出した理由が分からない。友人だけの時間に、はやてが悪ふざけをするのはいつものことだからだ。
「で、でも、バチェロレッテ・パーティーの格好で、そういうことをするのは…、…恥ずかしい…」
「なにを恥ずかしがっているのよ。女同士でしょ…。て言うか、さっきまで一緒にお風呂に入っていたじゃない」
「そうだけど、その、お風呂以外で、こういう格好は普段しないよね…、スースーするし…」
「へ…?…ッ!すーすーって、…あんたまさか!」
もごもごと口籠るフェイトの様子に、アリサが何かの疑惑を思いついたようで半眼になった。
「フェイト、ちょっと見せなさい…」
「へッ、えっ!こ、怖いよ…、アリサ…」
ジト目のままに躙り寄るアリサに、恐怖を覚えたフェイトがスリップの裾を抑えて、遠慮気味の抗議を示したが、
「うらぁ!股を開きなさい!」
「ひゃぁ!ア、アリサ、やめて!」
フェイトの抗議などに耳を貸さず、アリサがフェイトに襲い掛かった。アリサが、それこそガータートスを行う新郎のように、ロングスリップの裾を捲り上げ頭を突っ込むと、『自主規制君』が「見せられないよ!」と書かれたフリップを掲げていた。
「なんで、着けてないの!」
スリップの中からアリサを追い出そうと、必死にアリサの頭を両手で押しながらフェイトが言い返した。
「だって、だって、はやてとすずかが、バチェロレッテ・パーティーでは着けないのが普通だって!」
M字に広げられた足の間に、顔を入れられるという、非常に恥ずかしい思いをしたフェイトが涙目になりながら、はやてとすずかを見た。
しかし、二人は…
「わぉ、フェイトちゃんってば大胆!」
「開放的なのが、好みなんだね」
フェイトに嘘を教えた二人は、堂々と素知らぬ顔を決め込んだ。
「ふぇっ、ええ!!」
あっさりと突き放され、ぴえん顔になったフェイトに追い打ちを掛けるように、はやてはネグリジェの裾を先ほどよりも大胆に抓み上げる。その動作に合わせてすずかもナイトガウンの前を開け広げる。
抓み上げられたネグリジェの下から総レースのショーツが、ナイトガウンの間からはシアー素材のテディが覗いている。
すっかり騙されたことに気が付いたフェイトの体から力が抜け、アリサに対する抵抗も諦めた。
「うう…。みんながイジメる」
ベットに身を投げ出し、いじけたことを言い出したフェイトをクスクスと笑うはやてとすずか。
悪戯の仕掛け人二人を呆れた顔をしたなのはがたしなめた。
「二人とも、やりすぎ。フェイトちゃんが優しくて、許してくれるからって…。久しぶりに会えてうれしいのはわかるけど、次はわたしが代わりに怒っちゃうよ」
「「は~い」」
なのはに怒られてはたまらないと、はやてとすずかが返事をする。
スリップから頭を抜いたアリサは、フェイトに向かっていった。
「でも、あんたもよ、フェイト。あの二人の言うことを真に受けてどうするのよ。そんなんじゃ、変な男に引っかかるわよ!」
「だ、大丈夫だよ、それは…。ファンは悪い人じゃないし…」
フェイトの言葉の後半は小さく、アリサ達に聞かせるつもりで言ったわけではなかったが、アリサ達、四人は当然のように聞き逃さなかった。
「ファン?聞いたことある名前ね。ああ、フェイトを追い抜いて資格を取った子だったかしら?」
「ああ、せやったな。いまは、弁護士やったっけ?」
「うぅっ!そうだよ…」
過去の失敗のコンプレックスを刺激され言いよどむフェイトを見て、すずかは質問する相手をなのはに変えた。
「なのはちゃん。ファンさんって、どんな人なの?」
「フェイトちゃんの後輩の明るい子だよ」
なのははそこで言葉を切ってから続けた。
「…女の子にも人気がありそうな感じの…」
なのはのその発言をめぐって、管理局世界でのフェイトの様子を知らない二人がざわついた。
「ちょ、ま。大丈夫なのそれ?」
「はやてちゃんは、何か知ってる?」
「管理局に入局してたときは、ずいぶん浮き名を流してたって聞いてるんよ」
人差し指でこめかみを突きながら、渋い表情をするはやて。その表情がフェイト以外の女たちに伝播していく。
「だ、大丈夫?フェイト。あんた、お金とか渡したりしてないわよね」
「そんなこと頼まれたことないよ」
アリサが真剣な顔で言ったので、フェイトは少し慌てた。ファンが詐欺師のように思われてはたまらない。
「二人のためにこの契約の保証人になって。とか、言われても断るって約束、破ってないよね」
「破ってないよ。なのはまで信じてくれてないの!」
「都合のいいときだけ呼びつけて、デートもなしにホテル行こか。なんて言われてもキッパリと断らなあかんで…」
「行って…、…デートはしてるけど…、ファンはそんな人じゃないから!なんで信じてくれないの!」
DVを受けていることに気が付いていない被害者女性のような扱いを受けて、さすがにフェイトの声が大きくなった。
それを聞き4人が目配せで会話をしてから…。
「だって、フェイトちゃんは…、なんて言うか…」
「優しすぎるところがあるから…」
「せやなぁ、そこが問題やな…」
「まあ、いい機会だから言うけど…、フェイトは…」
なのは、すずか、はやて、アリサの4人が異口同音に言った。
「「「「付き合う男性をダメ男にする、ダメ男職人になりそう」」」」
「そんなことないよ!!…いや、私はそういうところがあるかもしれないけど…」
反論した傍から自信がなくなったのか、声が小さくなったフェイトだが言葉を続ける。
「ファンの方がしっかりしているから…」
続いたフェイトの言葉には確かな信頼を感じたはやて達の口元にムフフと笑みがこみ上げていった。
「ほう、じゃあ、聞かせてもらおうやないか…」
こうして、女子会という名目の男どもの品評会が始まった。
面白かった、つまらなかった、正直な気持ちでもちろん大丈夫です。
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何卒よろしくお願い申し上げます。