管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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この話はForceの後、31いつかの朝~ノッポの副長とマテリアルな娘達~のさらに後の話になります。

登場人物
ヴィルヘルム:機動六課で副長を務める。その後、はやてと結婚。4児の父。
つむじ:ヴィルヘルムとはやての三つ子の長女、自称、王又はディアーチェ。
マレーネ:次女、本人はシュテルと呼ばれたがっている。
ゾイ:三女、本人曰く「ゾイは世を忍ぶ仮の名、真の名はレヴィ!」


Force編 特務六課 ノッポの副長
86新八神さんちの日常風景 上


 

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「「ラハイマルおろしに 颯爽と」」

 キッチンで食洗器の規格にあわない食器を洗っていたヴィルヘルムは、聞こえてきた二つの歌声で本日のハーリングの試合結果を知った。

「ああ、今日は早寝できそうだな」

 妻のはやてが贔屓にしているチームが負けた日は、その愚痴に付き合わされるヴィルヘルムは、ハーリングチーム『マコンティアズ』の勝利に安堵していると、三女のゾイが不満の声を上げた。

「ええっ!キングスが負けた時って、王様、寝言でぴえんするんだけど…」

「ん?お前たちも寝不足か?」

 子供の睡眠時間を気にしたヴィルヘルムが聞いた。

「「輝く我が名ぞ マコンティアズ」」

 はやて達の歌をBGMに答えたのは次女のマレーネだ。

「…いえ、おトイレに起きた時に、寝言を聞いただけです。王もお昼におねむになることはありませんでした」

「それならいい」

 マレーネの返事に安堵しながらヴィルヘルムが洗った皿を手渡すと、マレーネが布巾で水分を取る。

 拭いた皿の出来栄えに納得したマレーネは、少しどや顔で皿をヴィルヘルムに掲げて見せた。

 キチンと水が拭きとられていることを確認したヴィルヘルムが頷くと、マレーネがゾイに皿を手渡す。

「お願いします」

「りーー」

 受け取った皿をゾイがドタバタと食器棚に戻していく。何とも騒がしい動作なのだが、不思議と力加減は分かっているようで、皿を割ったり、躓くことはない。が、ヴィルヘルムは一言釘を差した。 

「ゾイ、もう少し足音を小さくな。我が家には赤ん坊がいるのだから」

「あ、は~い」

 今度はソロリ、ソロリとした動作で皿を片付け始めた。

 三人の流れ作業で皿洗いを終え、ヴィルヘルムが二人の頭をなでながら礼を言うと、リビングダイニングから聞こえてくる歌も佳境に入ったようだ。

「「オウ オウ オウオウ!!

  マコンティアズ!!

  フレ フレフレフレ!!」」

 応援歌を歌う声が大きくなっている。これではゾイに騒がしくするなと躾けた意味がない。しかも、歌声の一つにはかなりの怒気が含まれている。

 そろそろ、様子を見に行くか。っと、エプロンを外してリビングダイニングに向かうと、見えたのはorzのポーズを取る長女つむじ。と、得意になっている妻はやての姿。

 応援しているキングスが負けてしまったつむじは、痛恨の表情を浮かべて言った。

「うぐぐぐ、誰や!負けたチームは勝ったチームのユニフォームを着て、相手チームの応援歌を熱唱せなあかん、なんて、罰ゲームを考えたんは!!」

「そら、つむじや、つむじ」

 革命を起こされ政権を奪われた王のごとく悔しがるつむじ。口調も母親と同じ妙なイントネーションの言葉遣いになっている。対するはやては若干煽るような口調だ。

「ううぅ、7イニングのあの1点がなければ勝てたのに…」

「王、引き際も肝心かと…」

「王様、スポーツマンシップなんだぞ!!」

「ぐぬぬ…、認めたくないものだな、若さゆえの過ちというものを…」

 つむじの口から某赤い彗星の名台詞が出たところで、さすがにヴィルヘルムがツッコミを入れた。

「何歳のつもりだ。つむじ」

「うう、宰相~」

 ソファーに身を預けるヴィルヘルムに、顔を向けるつむじ。その眼には涙が溜まっていた。つむじは着ていたマコンティアズのTシャツ(大人用の為サイズが会っていない)を脱ぎ捨てると、ヴィルヘルムの膝の上に飛び乗ってきた。

「若さやのうて、幼さやろ…」

 はやてが放り出されたTシャツを畳みながら、自分の娘に追撃を掛けた。

「まあ、その分伸びしろがあるかもしれへんな。キングスと同じで…」

 キングスはここ数年Bクラスの成績が続いている。意地の悪いことに、はやてがそのことをいじってくる。

「くぅ~!!!」

 悔しがるつむじがヴィルヘルムにしがみつき、顔を胸に押し付けてきた。その様子を見てはやてはニヤニヤと笑っている。

(はやてめ…。監督が変わって以来マコンティアズが、Aクラスを維持しているからって調子に乗っているな…)

 これは少しつむじを加勢してやらねば。と、考えたヴィルヘルムはマレーネに視線を投げる。

 マレーネは一瞬キョトンとしたが、すぐにヴィルヘルムの意図に気が付いたようだ。さすが自称『理のシュテル』を名乗る娘である。

「…確かに、ウエストリーグでは、キングスが一番伸びしろがありそうですね。マコンティアズは監督交代以来よくて2位で、リーグ優勝はありませんから…」

「うっ!」

 一考してから口を開いたマレーネの言葉が、はやての心にクリティカルダメージが入る。

「あ、一昨年はフォモールに負けたんだっけ?」

「ふぐ!」

 ゾイが思い出したように続く。ゾイが贔屓にしているチーム『シュヴァルベン』は、『マコンティア』『キングス』とは別リーグのため、あまり興味がないような口調だった。が、間違っていなかったためマレーネがうん、うんと頷き続ける。

「今年もドラフトで新人の獲得に失敗したのが痛いですね…」

 マレーネの言葉でつむじも勢いづいて口を開いた。

「マコンティアズ!ダメ!絶対!10ヶ条。第7条、ファンのマナーが悪すぎる」

「がはっ!」

 ダメ!絶対!10ヶ条。20年以上前の話になるが、ドラフトを前にアプローチを受けていた選手がマコンティアズ入団拒否の姿勢を示すために発表した声明である。

 これを武器にしたつむじの言葉に、はやてのHPが0になった。

 うめき声を上げ崩れ落ちるかと思われたはやてだったが、

「うえ~ん(笑)、娘たちがいじめるwww」

 ウソ泣きをしながらはやてがヴィルヘルムの座るソファにやってくると、しがみついていたつむじを抱き上げる。引きはがされる形になったつむじが「ああっ!!」っ、抗議の声を上げたが、はやてはそのままヴィルヘルムの膝の上に腰を下ろした。

「副長~、慰めてぇん」

 はやてが猫のように頬摺りをしてくる。それをつむじが阻止しようと、ヴィルヘルムとはやての間に割り込もうと四苦八苦している。はやてはその姿をニヤニヤと性格悪そうに笑っている。

「はやて、大人げないぞ…」

 つむじの頭を撫でてやりながら、ヴィルヘルムが言うと、はやてが片目でヴィルヘルムをチラリとみてから…。

「むう、もう少し、独り占めさせてくれても、ええんやない?」

「あいにく、リビングにいるときは家族の父親だ」

「リビングにいる時は…、ねぇ…」

 ヴィルヘルムの言葉に、はやてがふむふむと頷いてから、ヒョイと身を離した。はやてとヴィルヘルムの間に入り込もうとしていたつむじが勢い余ってバランスを崩す。

 つむじが倒れる前に、はやてがつむじごとヴィルヘルムに抱きつく。

「むぎゅ!」

「はい、ぎゅ~」

 ヴィルヘルムも応じるようにハグしてやると、興奮していたつむじの表情も徐々に緩んでいく。

「…ん」

「あ、僕も、僕も!」

 いつの間にかマレーネが手を広げてハグの催促をしている。ゾイもそれに乗っかる。

 ヴィルヘルムがはやてと顔を見合わせ、二人を招き入れる。

 はやて+子供たち3人さすがに重いな。と、ヴィルヘルムが思っていると、マレーネがが呟く。

「みんな、仲良し…」

「そうやな~」

 答えるはやてのヘラヘラとした声に、つむじが今一度闘志を燃やしたようだ。ヴィルヘルムの胸の辺りに押し付けられていた顔をグイっと上げると、

「おとんは、おかんに甘い!そんなんだから、おかんが放恣に流れるのだ!」

 ヴィルヘルムは、

(放恣なんて言葉どこで覚えてきたのだろう…)

 と、思いながら答えた。

「そんなことはないぞ。叱るときは叱っているし、意見が対立することもある」

「え、そうなの?」

「…知りませんでした」

 娘たちはにわかには信じられないようだ。

 ヴィルヘルムがはやてをチラリと見ると、はやてはニヤッとヴィルヘルムを見た。今では家庭と職場で役割分担が出来ているので滅多にないが、結婚した当初は結構な口論に発展したことも多い。

(そういえば…)

 ヴィルヘルムはふと、思い出した。

 特務六課の際に、はやてと意見の衝突した時のことを…

 




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