管理局世界の人々~Force編 おもちゃ箱~   作:ゴケット

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89出撃準備と命令

「観測指定世界ベルテシャツァル?」

 はやてとヴィルヘルム、特務六課実働部隊の幹部が集まった会議室。空間モニターに表示された資料に、見慣れない世界名を見つけたなのはが小首を傾げた。

「せや、鉱山世界とか資源世界って言う人もおるけどな」

「主にダークマターの観測・採取を行うのに、大小様々なクラスの衛星が設置されている世界だよ」

 はやての説明を捕捉するように、フェイトが続ける。なのはは武装隊幹部としての言葉遣いで聞いた。

「フェイト執務官は知っているんですか?」

「うん。なにしろ、ヴァンデイン・コーポレーションの採掘プラントもある世界だから」

「__ッ!」

 それを聞いて眉を潜めたのはヴィータだ。この鉄槌の騎士は、専務のハーディスが我が社の研究は、エクリプス感染者の脅威を取り除くための研究と言いつつ、第4工場に大量の感染実験のなれの果てを保管していたことに嫌悪を覚えていた。

 直情的なヴィータらしい反応だと思いながらも、はやては視線で制止し、話を続ける。

「そう、査察部のヴェロッサのからの依頼でな。その採掘プラントのある惑星ダニエルの警備任務や」かおにださないようにしながら、ヴィータの声に愛想笑いをしていると、「私も2尉に賛成です。」

「警備任務?それ警備部の仕事じゃね?なんでうち(特務)に回ってくるんだよ」

 砕けた口調のままのヴィータに、ヴィルヘルムが視線だけ動かして警告したが、ヴィータは気が付かなかったふりをして無視した。

 はやての方は構わず続けた。

「先のフッケバインのヴァンデイン・コーポレーション第4工場襲撃を踏まえての警戒強化や。彼らに対して効果的な装備を有している部隊は少ないから、うちにも声が掛かったんや。いやー、人手不足にも困ったもんやなー」

「笑えないっての!」

 茶化しながらはやては言ったが、

(と、いうのは、表向きやな。ヴェロッサのホントんところはフェイクを使った情報漏洩箇所の発見が狙いやろな)

 複数偽情報を流し、フッケバインやヴァンデイン・コーポレーションがどう動くかによって、情報漏洩の場所を測ろうとしているのだろう。

(フッケバインか、ヴァンデインか、それとも他の誰かか?誰が糸を引いているの皮知らへんけど、水漏れさせている実行犯は、案外、管理外世界出身の小娘が出世するのが気に入らへんって程度の理由だったりして…)

 ネガティブな考えを顔に出さないようにしながら、ヴィータのツッコミに愛想笑いをしていると、

「私も2尉に賛成です。」

 ヴィルヘルムが口を開いた。

「まだ正式な予定は来ていませんが、先のフッケバインからの伝言に対する審議や査察。他にも部隊運営予算についての懸念事項も我が隊はかかえています」

 『部隊運営予算』の所に、ほんの少し、はやてにしか分からないよう僅かに語気を強めている。はやてとの予算のやり取りについて言いたいことがあるらしい。

 はやてが、この野郎(#^ω^)と反論する前に、ヴィルヘルムが続ける。

「課長ご自身の負傷を理由に断りをいれた方がいいでしょう」

「わたしも副長と同じ意見です。先日もご自愛くださいと進言したばかりですよね」

 ヴィルヘルムになのはも続く。他の部下たちも同じような意見のようで、フェイトとヴィータも、うんうん、っと、頷いている。

 しかし、はやては部下たちの意見をはねのけた。

「確かに断る理由としては、十分なんやけど…。この査察部からの依頼、今回は受けます」

「「「___!」」」

「よろしいのですか?」

 会議の行く末を無言で見守っていたザフィーラが口を開き。はやてが答えた。

「この世界の特性から言って、私の机上演習N81 Designs11の想定が当てはまるでしょう。局員が直接エクリプスドライバーと接触する可能性は低い。私が行うのは戦闘指揮のみで体への負担はないと言ってええ」

「Designs11、宇宙空間における対艦戦闘。…ヴォルフラムは落されるわけにはいきません」

 ヴォルフラムには魔導師ではない搭乗員もいる。いくらフィールドなどの技術が発展していても、生身の人間が宇宙空間に放り出されたら長くは持たない。今回フッケバインとの戦闘になった場合、かなり危険な状況での戦いが予想される。

「だからこそや、仮に本当にフッケバインが動くんやとしたら、前の伝言に対して、はっきりとお返事したろと思ってな」

「わかりました」

「お、おう」

 はやてが普段口元に湛えている笑みを消して言うと、ザフィーラは己の主の決意を感じながら了承し、ヴィータがやや気圧されて答えた。

 一方、幼馴染の二人ははやてが思い詰めているのではないかと、心配しているような様子だったが、はやてがパチンとウインクをしてやると、ユーモアが消えていない程度には冷静だと思ってくれたらしい。

 ヴィルヘルムも反対せずに黙ってうなずいた。

「では、この任務を受けることを前提に各部門で準備を…」

 はやては、フェイトに尋ねた。

「ヴォルフラムの整備補給は?」

「ディバイドゼロ・エクリプスの後遺症は認められず。その他、予防整備も問題なし。人さえ乗ってもらえれば、いつでも出航可能な状態を維持できています」

 次になのはを見ながらはやてが続ける。

「実働班は?」

「総員16名、事故3、事故内容:通院1(はやて)、入院2(シグナム、アギト)になります」

「…なのはちゃん、私は」

「「事故は3です(^言^)」」

 なのはがはやてを戦闘の員数外と報告すると、はやては反論しようとしたが、なのはとシャマルが背筋が凍りつくようなとっても素敵な笑顔をしたため発言を取りやめた。

「今回の任務だと、装備品の方が問題だな。カノンとハンマーはともかく、調整項目の多いグラディエーター、オクスタン、S2シールドは使える状態じゃねぇな」

 ヴィータが戦闘教官としての意見を言った。

「うん、じゃあ、すでに訓練を行っているカノンとハンマーでの対処を主軸にしよか。副長、装備の補充は?」

 はやてがヴィルヘルムに尋ねた。

「整備用パーツの充足請求が上がっていますが、2度か3度の戦闘にならば十分耐えられるでしょう。新規装備の前渡し物品も、一両日中には目処が着く予定です」

 なんだかんだ言ってヴィルヘルムははやての指示に従い、新規のAEC装備の補給の手筈も整えてくれたようだ。

「はやて、もしこの宙域で戦闘が行われるのだとしたら、監視衛星群のコントロールがひつようだよ」

 次に口を開いたのは執務官であるフェイトだ。

 惑星ダニエルの周辺には旧暦時代から、かなりの数の観測衛星が稼働している。観測衛星からの情報を受けることが出来るなら、精度の高い空間座標が手に入れることができる。それに確率はかなり低いが、衛星との衝突事故予防にも有効だ。

「わかっとる。すでにベルテシャツァルの稼働している監視衛星の管制する権限を貰っとる。衛星からの各種データもうちの艦で扱える。ダークマターは目にも見えへんし、電磁波を使ったセンサーでも捉えられへんから、艦以外からの情報も欲しいやろ?」

「うん、外部とヴォルフラムのセンサーで照合が取れるなら、目標物の有効反射面積や周波数特性の問題も少なくなるから」

「では、フェイト執務官はシャリオ達と、その辺の航路図の作成、管制誘導システムのアップデートをよろしゅう」

 はやてはフェイトに指示を出すと、今度はなのはとヴィータに顔を向けた。

「艦隊戦中にヴォルフラムの内部に飛び込まれるのが一番怖い。前回はこちらがフッケバインに飛び込んだ方やったけど、ドゥビルとかいうムッキムキはジャンプが得意なんやろ?」

「はい、ドゥビルの能力は戦闘中に確認しています。戦闘時には艦にディストーションフィールドを使用。直接飛び込まれないように、座標を欺瞞します。更に、陸戦魔導師を巡回させて、即応体勢を維持します。外壁に取り付かれた時は、空戦魔導師が対応します」

 なのはが答えると、はやてが納得したように頷いた。

「うん、それで行こか。では、正式な命令を発刊をまって行動に移る。以上、解散」

 取り敢えず特務六課はうまく回っている…。と、はやてには思えていた。

 

 

 

 

 

 

「なんじゃこりゃ~~~!!!」

 翌日、執務室にて命令を受け付けてしまったはやては叫び声を上げた。

 十数秒後、一応ノックはあったが、返事を待たずにヴィルヘルムがはやての執務室に入ってきた。

「……」

 両手を広げて、手のひらを上に向けるポーズのまま、はやてが固まっていると、ヴィルヘルムが深くため息をついた。

 ヴィルヘルムがこめかみに手を当て、煩わしそうに頭を振ってから口を開く。

「……聞こう」

「これを見てみぃ!」

 ヴィルヘルムの声で、はやてがパッと動き出す。はやては二つの空間モニターを表示させた。

 

特務本一般命令120号 

特務機動隊六課

新暦81年○○月□□日から、新暦81年○○月△△日までの間、 観測指定世界ベルテシャツァル 惑星ダニエルにおける、衛星軌道警備を命ずる。

 

 

 

本次航日日命令104号

二等陸佐 八神はやて

新暦81年○○月□□日から、新暦81年○○月△△日までの間、特別審査会への参加を命ずる。

 

 ヴィルヘルムが空間モニターを覗き込むと、上記の内容の命令が映し出されていた。ヴィルヘルムがしかめっ面を作ってから口を開く。

「日付がまるかぶりだな。…ずいぶん人気がありますね。課長」

「皮肉を言いないな。ともかく、命令が下りてしまった以上は私は審査会で、どつきあいしてこなあかん。指揮の代行をお願いします」

「予算の調整の方が、まだ終わっていないのですが…」

「予算については、今日明日で決まることやない。衛星軌道警備を優先」

「…了解」

 ヴィルヘルムは不服そうだったが、はやてにも拒否できないことは分かっているのだろう。頷いた。

「では、三等陸佐ヴィルヘルム・チェスロック・ケーニッヒは、新暦81年○○月□□日から、新暦81年○○月△△日までの間、 観測指定世界ベルテシャツァル 惑星ダニエルにおける、衛星軌道警備任務の指揮代行につきます」

 姿勢を正し、言いながら敬礼をするヴィルヘルムに、はやてが答礼を返すと、彼はそのまま執務室を後にした。

 はやては副官のリインフォースⅡを呼び出すと、幾つか指示を出した。

「リイン、審査と査察用にまとめておいた資料を再度チェック。フッケバインの動向を可能な限り最新のモノにしたい」

 はやてはここで思い出したように、天井を見上げた。

「ふぅ~ん、リイン。ビルが稟議の承認を止めている予算申請も、こっちにまわしてぇ。あと、なのはちゃんとフェイトちゃんに連絡…」

 




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